雨が降っていた
窓の外には
あの時のように
強い
強い雨が降っていた
全てを洗い流すような
「あれからもう10年になるのか」
どこか夢を見ているような瞳でそう呟く
『まもなく東京駅・・・』
「竜君、帰ってきたよ約束を守りに・・・」
司は電車を降り
ひとりホームに立つ
さっきまでの雨は嘘のように消え
変わりに春の太陽が覗いていた
司が駅を出て思い出の中にある風景を思い出しながら歩いていると、ふと何処からか、仔犬の鳴き声が聞こえてきた。
「なんだろ?」
不思議に思いそちらを見ると、さっきの大雨のせいで水嵩の増した川をダンボールが凄い勢いで流れていく。
「・・・・・・・・・・・・・・・」
ダンボールの中から弱々しい仔犬の鳴き声が聞こえる。
「大変です!!!」
そう言うが早いか司は持っていた荷物を捨て川に飛び込む。
・・・・・・・・・
ザバ!!
「そう言えば・・・私・・・泳げな・・・」
そう言って沈んで行く司。それを見ていた一人の男が川へ飛び込む。
そして、凄い速さで司の沈んだであろう場所まで泳ぐ。
・・・
・・・・・・
・・・・・・・・・
「う・・・ん、ここは・・・どこ・・・?」
目を覚ました司は土手で横になっていた。
司は誰かが助けてくれたんだと気づき辺りを探す・・・
が、そこにはすでに誰も居なかった。
「そう言えば、仔犬さん・・・」
そう言い横に置いてあったダンボール箱の中を確認してみる。
ダンボールの中には元気よくしっぽを振る仔犬がいた。
「良かったです・・・」
司は仔犬を抱き上げ抱きしめる。
司がふと土手の上を見上げると、司と同じくらいの男が司たちを見下ろしていた。
「よ、やっと目ぇ覚ましたな」
司は一瞬知らない人に声をかけられて困惑したが、すぐにこの人が自分達を助けてくれたんだと気づき・・・
「あ、助けていただいて、ありがとうございました!!!」
経緯を推理し、この人に迷惑をかけてしまったと思い司は凄い勢いで頭を下げる。
「あの・・・こう言っては失礼かもしれないんですが・・・」
司は言いづらそうに口篭もる。
「何で・・・その・・・助けてくれたんですか?」
司はごもりながら聞いてみる。
この町じゃあ、自分の利益にならない事は見てみぬふりが常識だからである。
「そんなんは良いから、春に水泳やって冷えとるんとちゃうか?
これでも飲んで暖まりぃや」
男は司の問いには答えず、持っていた缶コーヒーを投げる。
司は呪力の加護で体温調節は出来ているので寒いとは感じていなかったが行為はありがたく貰う事にする。
「ありがとうございま・・・キャ!!!」
暖かいものをくれると思っていた司はその冷たさに驚きの声を上げた。
暖かいと思っていた物が持ってみると実は冷たかった、これは司じゃなくても驚くだろう。
「はははははは・・・・・」
男がその反応を見て子供が悪戯を成功させたときのように笑い出す。
「う~・・・わざとですか~?」
司は自分のその反応を見て笑っている男を睨みつける。
「ははは・・・いや~、悪い悪い♪悪気は大いに在ったから許せ」
凄い言い方である。司はこの男の第一印象は良い人と思っていたが、その事に激しく自己嫌悪を覚える。
「全然日本語になってないですよ~~・・・」
泣きながら男に講義の声を上げる。
「もう大丈夫そうやな、そんじゃあ、俺は人を待たしてるんでこれで・・・」
そう言いかけて男の動きが止まる。
「そう言えば、忘れとったけど」
そう言い司のほうへ向き直り言葉を続ける。
「俺は神凪竜也言うねん。覚えといてな」
そう言い司のほうを見る・・・
「たつ・・・や・・・くん・・・?」
呟くと言うより漏れると言ったほうがいいような、そんな司の声にならない声。
そして、顔を上げた司は泣いていた。
「竜君・・・私だよ・・・司、御堂司だよ。やっと・・・やっと帰ってこれたんだよ」
そう言い涙が溢れる顔で竜也を見つめる。
が、竜也の顔には曇りが差していた。昔馴染みが再開した時とは無縁のような・・・そんな悲しそうな顔を・・・
「俺の知り合いに『司』なんて奴は・・・おらん・・・」
そんな言葉が彼の口から漏れる。
司の陰陽解説コーナー
ぱふぱふ ドンドンドン
どうもです、二回目の解説コーナーなんですけど・・・
それっぽい言葉が出てきてないですね・・・
どうしましょう・・・
じゃあ、今までの人物紹介でもしましょうか。
と言う事で
一人目『御堂 司 (みどう つかさ)』
このSSの主人公兼ヒロイン
白髪を腰まで届くまで伸ばしている
かなづち
陰陽寮一の術士だった
二人目『七観 塁(ななみ るい)』
プロローグに出てきた黒髪の少女
陰陽寮の管理人
三人目『神凪 竜也(かんなぎ たつや)』
・・・?
(あまり言うとネタばれになるから)
と言う所ですね♪
それではまたです~♪