最終話 そして…よくここまでこれたもんだね
(きゃ~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~!!!!)




 彼女は……生まれてはじめて一番速く走ったような気がした。風になったような気がした。
 来た道を逆走する。三叉路で左に曲がればすぐ、ギラン城の村であったが気が付かず、そのまま来た道である右へ曲がってしまう。


 走る。
 走る。
 走る。
 走る。
 走る。
 走る。
 走る。
 走る。
 走る。
 走る。
 走る。
 走る。
 走る。
 走る。
 走る。
 走る。

 ドラゴンっぽい奴は途中であきらめて帰ったようだが、彼女は気がつかなかった。

 走る。
 走る。
 走る。
 走る。
 走る。
 走る。
 走る。
 走る。
 走る。
 走る。
 走る。
 走る。
 走る。
 走る。
 走る。


 とりあえず、ディオン城の村へ飛び込んだ。

「ハァハァ… ここまでくれば逃げ切れたはず…」

 後ろを振り返るが何もついてこず。

(よかった… 死ぬかと思った。でも、一応配達依頼はこなしたから良いかな? とりあえず、戻りますか。)




 ディオン城の村を出発。グルーディオ城の村へ向かう。今度は景色を楽しみながら進むことにした。
 ギラン城の村方面は、もう少し強くなってから来ようと思いつつ、進む。
 そして、グルーディオ城の村についた。

(う~ん、さっきのダークエルフのおねーさん居ないみたいだね~。)

 急ぐ旅ではなくなったので、露店を見て回ることにした。転職すれば、上位の武器防具を扱うことができる。下見のようなものだ。
 ただ、所持金が乏しいので、先に購入しておくことができないのは少し悔しかった。

(高いね~。400,000ってどんだけよ…)

 露店の設定金額見てそう思う。どうやったら買えるんだ。

(転職したら今以上に頑張んないとダメだね~。)




 露店をほどほどにして、グルーディオ城の村を出発。
 こちらも問題なくグルーディン港の村へ到着。そのまま、倉庫へ向かった。

「ラウトさ~ん、行ってきたよ~」
「大馬鹿野郎の奴はもう着いている。助かった。礼を言わせてもらう」

(それはよかった…)

 彼女は安堵した。そのとき、ラウトが彼女の所持品に気付く。

「なんだそれは? ちょっと見せてみろ」
「これですか? トライさんから貰ったんですが」

 ラウトにそれを見せると彼は唸った。

「あーん、それ…… うちのやつが大切にしてたあれか? 悪いな。返してもらうぞ」
「え? 落し物とか言ってましたけど」
「あの野郎……」
「まあ、お返ししますよ」

(えっと、ラウトさんの奥さんの下着? これドワーフの女性が着るの?)

 驚き半分で包みを渡した。

(あ、ラウトさんの奥さんってヒューマンなのかな? それともダークエルフなのかな? この前のおねーさんみたいだった合いそうだけど……うらやまくやしぃ。)

 多種族を娶ることは珍しいがないことはない。
 彼女は会ったことはないが、ギランの名品館の店主夫婦はドワーフとヒューマンだ。

「ラウトを発見して、渡してくれたから、クエスト完了だな。だから約束は守らんとな。さあ、あんたが望んでいたスカベンジャーの印だ」

 レイブンリングという指輪を渡してくれた。スカベンジャーへの有資格者の証となるアイテムである。

「これを持ってあそこにいる倉庫番長モークのところに行けばスカベンジャーに転職させてくれるはずだ」
「はい!」




 倉庫番長モークのところへ向かう。

「モォ~クさぁ~ん」
「ん? ワシは牛ではないぞ?」
「これは失礼しました」
「何かようか?」
「これ持ってきました」
「む、レイブンリングか。そうか…」

 彼女はレイブンリングをモークに渡した。モークはそれを受け取り、確認した後こう言った。

「さぁ! おめでとう! やっと君も誇らしい鋼鉄の門ギルドの一員になったぞ!」
「わ~い。スカベンジャーだー」
「転職完了した奴に言っていることなんだがな。忘れるでないぞ。『世界で一番惨めな奴は、金のないドワーフだ』、この言葉を忘れずに活動に頑張りな!」

(金のないドワーフっておいらのことじゃ……)

 体全体を使って喜びを表現したが、少し落ち込んだ彼女であった。だが、彼女にとっては新たなスタートである。




 こうしてスカベンジャーになった彼女は世界中を駆け回る事になる。
 ドラゴンバレーのドラゴンっぽい奴より強くなって、復讐したりした。別個体だったようで、ただの八つ当たりである。
 そして………数年がたった。彼女はスカベンジャー上位職のバウンティハンターになり、最上級職のフォーチュンシーカーになった。

(よくおいらなんかが、ここまで来た…… でも、ヴァラカスの鬚なんてソロで抜いてこれるかー!!)




……………

…………

………

……




(まー、よくここまでこれたもんだね。)

 今の彼女は最上位職のさらに上の職であるオーセルローグとなっている。武器も格闘武器からほんのり光る短剣二刀だ。

(これからもがんばりますか。……いつかは村復興へ力貸せたらいいかな。)

 全滅した村を惨状をもう一度見回して彼女は、アデンへ戻っていったのだった。




(そういや、トンマどうなったかな? まー、どうでもいいか。)


おしまい