第六話 ドラゴンバレーへの道
 ぼよん。


(ぼよん?)
 地図見ながら歩いていたら、誰かにぶつかってしまった彼女。
 なんか変な感触があったので地図をどけると先ほどのダークエルフ女性が立っていた。どうやら彼女にぶつかったらしい。

「ご、ごめんなさい。地図ばかり気になってたんで」
「こちらこそ。あ、さっきのドワーフのお嬢ちゃんね」
「ダークエルフのおねーさん」

 実年齢はお互い知らない。見た目でしかも名前も知らなかったのでそう言ったのである。

(さっきのぼよんっておねーさんの胸にぶつかって跳ね返った音なのね。やっぱ、うらやまくやしい。)

「地図見ててってどこかに行くの?」
「ドラ… いえ、ギラン城の村の方向へ行こうかと思って場所を確認してたんです」

 ドラゴンバレーと言ったら、全力で止められそうな気がしたので言い換えた彼女であった。

「そう。んー、じゃこれも何かの縁。一緒に行かない? 途中までだけど?」
「一緒にですか?」
「ここにあるグルーディ城の村へ行く途中なのよ。どう?」
「え、でも…迷惑では?」
「ぜんっぜん。まあ、馬車なんてものないから歩きだけどね」
「私は構わないですが…」
「よし、じゃあさくっと行きましょう!」
「はあ」

 このおねーさんは多少強引なところがあるらしい。彼女は押し切られるような感じで了承した。もっともおねーさんの方は強引とも思っていなかったようだ。

(旅は道連れ、世は情けっていうからいいかもね。)




 ダークエルフのとおねーさんとグルーディオ城の村へ向かうことになった彼女。彼女の中ではおねーさん固定であった。
 そのおねーさんとの身長の違いから、歩幅が大きく異なる。そのため、おねーさんはあわせてくれていた。ありがたいごとである。
 おねーさんは何度か行ったことがあるらしく、道すがら、危険度の高いモンスターやスルーしても何もしてこないモンスターを教えてくれた。
 彼女にとっては未知の世界である。こちらもありがたかった。

(見た目、私よりつよそーなモンスターばかりだね。)




 しばらくして、グルーディオ城の村へ到着する。

「ここが、グルーディオ城の村だね」
「ほへー」

 城下町だけあって比較的広く、人も多かった。中央広場には露店が数多く開いている。

「私はここで用事あるからお別れだね」
「短い間でしたが、ありがとうございました」
「いえいえ。だた…」
「ただ?」
「ここから先は、今まで進んできた道にいたモンスターより強いのが多いから気を付けてね」
「!?」
「道通りに進めば大丈夫かと思うけど、気を付けることはこしたことはないよ」
「わかりました。ありがとうございます」
「それじゃー、またどこかで会いましょーねー」

 おねーさんは笑顔で手を振りながら、露店の多い方へ行ってしまった。

(いつかは恩返ししたいなー。)




 露店も気になるが、早々に出発することにした。地図上では左端から右端である。日が高いうちに進んでいこうと思ったのである。
 道通りに進み、橋へ差し掛かると一陣の風が過ぎた。

(!?)

 エルフだった。足の速さでは全種族最速である。ドワーフごときでは追いつけるレベルではない。

(いーなー。足速くてー。)

 しばらく進むとディオン城の村が見えてきた。このあたりまで来ると村の近くでもモンスターが徘徊していた。気を付けないと襲われてしまう。 

(うひょー。いろんな意味でコエー。)
(多分、勝てない。絶対負ける。)

 ディオン城の村の中も少しは見たかったが、時間が惜しいのでスルーした。
 そしてさらに進んでいくと道が禍々しくなっていく。地図を開くと『処刑場』と書かれている。
 道こそちゃんと整備されてないが、不気味な雰囲気のする小道へ枝別れしていた。そちらの方をちらっと見ると、なんかギャーギャーいう声やズシンズシン歩く音がする。

(…処刑場というくらいだから、死体とかゾンビとか悪霊とか幽霊とか妖怪とかバケモノとかとかいるんだろなー。怖いなー。)

 怖いので早めに通過する。そして、再びしばらく行くと三叉路についた。看板が立っていたので見ると、『ギラン城の村』『オーレン方面』『ディオン方面』と書かれている。
 そこで地図を取り出して確認すると『オーレン方面』へ行けばドラゴンバレーに行けることがわかる。
 少し進むとドラゴンっぽいモンスターがそこら中に飛んでいるのが見えてきた。

(うは。あれが噂のドラゴンかぁ。想像より小さいけど油断は禁物だよね、やっぱり。)

 少し道を進むと道の隅でぽつんと立っているドワーフを見つけた。

(あいつかな?)

 とりあえず話しかけてみることにした。




「あのー?」
「なんや?」
「何しているんですか?」
「いやな、品物売っていたんや。もうちょっとで死ぬところやったんだけどな」

(そりゃそうだよ。)

「ドラゴンバレーの中に羽の生えたメチャ可愛い娘らに乳隠しを売りに行たんだけど、歯むき出しておまけに髪を振り乱して追いかけて来んのを必死に逃げて来たんや」

(乳隠しって…… 何を売っとるんじゃァァァ!)

 サキュバス族が生息しているようだ。彼はサキュバスに物を売りに行ったらしい。

「もう家に帰りたいわ~」

 半分泣きそうである。よく見ると肌は擦り傷だらけだ。自慢の髭も少し乱れている。本当に命からがら逃げてきたことがわかる。

(だったら来るなよ…… でも、この人かな。ラウトさんの甥っ子さん。)

「大変なところ申し訳ないんですが、グルーディン港の村の倉庫番ラウトさんをご存知ですか?」
「わいのおっちゃんや」

(どんぴしゃね。)

 とりあえず生きてたことを安堵した。さすがに死体を発見しましたという報告は気が重い。
 彼女は呆れ顔でラウトより預かったテレポートスクロールを渡した。

「これは… わ…わいのおっちゃんがよこしたんか?」
「そうです」
「おっちゃん~ わいがアホやったんや。戻ったらおっちゃんの言うことをちゃんと聞くからな。おおきに。これはここであっちこっちさまよいながら拾ったもんやねんけど受け取ってな。わいの気持ちや」

 包みに入ってないが、何か布のようなものを貰った。おもむろに広げるとそれは…サキュバスのアンダーウェアだった。つまり下着。

(……… 拾った下着を人に渡すのかぁぁぁぁ!)

 思わず、まじまじと見てしまう。
 彼女はドワーフの成人女性ではあるが、背が低く(ドワーフ平均身長はある)、体型もほぼストーン(こちらもドワーフ平均サイズ)である。

(しかし…大胆な……はぁ、おいらでは着れないな。とりあえず、戻るか……ん。)

 気がつくと目の前には誰も居なかった。さっさとテレポートスクロールつかって帰ったようである。

(いつのまに… 一言声をかけて帰ってくれればいいのに… って、うわ!)

 こちらも気が付かないうちにドラゴンっぽいモンスターが近くに来ていたらしい。目があってしまった。しかも、ニヤリと笑ったようにも見えた。

(これはまずいよね。まずすぎるよね。襲われるわよね。)

 ドラゴンっぽいモンスターはゆっくりと獲物を狙うようにこちらに飛んで来る。




(きゃ~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~!!!!)