第二話 怒りの鉄槌!?
「今日も元気だ、飯が美味い! ………さてミオンに会いに行くか」

 昨日の事もあり、朝一で行くことにした。ミオンは道具屋の店員なので、とりあえず道具屋へ向かう。
 そして、道具屋につくと、ミオンにピピの紹介状を渡す。
 ミオンは紹介状を読むと…

「兄を探すんですって!?」

 …と叫んだ。

(また、叫ぶし…… なんか嫌な予感しかしないんですけど……)

 昨日の出来事が全力で浮かんだのだった。

「でも、兄はあちこちを回っていて~探すのが大変ですわ」

(仕事か何かかな? マスタートンマって名前だし…)

 名前を間違えて覚えたらしい。

「少し前にテレポート装置だか何だかを作ったから一層探すのが難しくなったんです~」

(……遊び人か、浮浪者ですか?)

「兄を探しますから、その間、私のお仕事手伝ってください~」

(手伝わないと教えてくれないんだね……)

 しかたがなく、配達の手伝いを始めた。多少の不安はあったが、それを信じるしか今はない。
 たまたま、配達先で大地の神官ジメンフのつぶやきを聞く。


(ミオンはまた、兄さんを餌に使い走りをさせてるな… ひひひ…)
(鈍い奴…お前はミオンに騙されているんだ…)


(な・ん・で・す・と・!・? あのアマ~!!!)


 配達する度に頭に血が上っていた彼女だったが、つぶやきを聞いて怒りが頂点に達した。
 鈍足なドワーフとは思えない速度で道具屋へ走り出す。そして、道具屋につくと扉を壊さんばかりに開ける。

「キ・サ・マ」
「次はここへお願いします」

 爆発寸前の彼女に対して、次の荷物配達先を指示するミオン。

「キサマシッテイタナ」
「どうしたんですか? うちの店は迅速配達で有名なんですよ? 私の兄の事を探すことは心配しないでくださいね」
「断る」
「何を言っているんですか?」
「嫌」

 ミオンの襟首を掴むと右腕を振り上げる。すでに格闘武器は装着済みだ。

「……知っていたんだろ…最初っから……!」

 可愛い顔が鬼の形相に代わっている。ゴゴゴゴ……と音が聞こえそうだ。

「ひぃ」

 ミオンはそれを見て短い悲鳴を上げる。

「どこだ?」
「あ、兄は今回村野東の廃墟によって、ルシアンの業績を褒め称えにドワーフの王国の東の端に行くと言ったそうです。最後に北の海辺から広い海を見学すると言ったそうです。それ以上は知りませ~ん」

 ミオンの顔は全力の泣き顔だ。一気にゲロした。

「本当か?」
「ほ、本当ですよ~」
「そう…… こ…れ…は…お…れ…い…ね!!」
「へ?」

 ミオンを殴り飛ばした。

「ギャパァ!?!」

(何でこう、ムカつく奴ばかり……)




 数時間後。

「うわぁ!」

 道具屋に入ってきたドワーフが悲鳴を上げた。壁の一部になってしまった、ミオンを見たからだ。

「………… ブツブツ…… ヒィィィ…」

 と、何か呟いていたという。
 とりあえず、死ななかったらしい。




「さてと、トンマとやらを探さないと…あいつの兄だからムカつく奴なんだろうね~ なんかもう疲れてきた。あの娘のアルティザンへの転職もこんなに大変なのかな?」

 そう言いつつ、地図を広げる。

「えーと、廃墟って言ったから炭鉱かな? 炭鉱に海岸に…東の端か。はぁ、全部探すしかないのか。とりあえず近い所から当たるか」




 炭鉱。今は使われていないが、モンスターが住み着くようになってしまっている。

「さーて、トンマは何処じゃ~」

 取りつくし捨てられた炭鉱とはいえ、結構広く深い。モンスターの住処にもなっている場所である。
 しかし、彼女の実力なら炭鉱内のモンスターは敵ではなく、襲い掛かってくる奴から殴り倒していった。
 そして…


「む~。やっと、見つけた……… トンマ………」

 炭鉱の奥、螺旋状になった箇所がある。その最下層の広くなった場所に奴はいた。マスタートーマだ。



「あの~」

 恐る恐る声をかけた。ミオンの兄であるので、何をしだすかわかったもんじゃなかった。

「お、どなた?」

(へ…?)

 どうも女っぽい喋り方である。
 それに不安を覚えながら、彼女はミオンからの手紙をトーマに渡したの。

「ミオンの手紙? なになに? ふむ、スカベンジャーになりたいの? じゃじゃ、私が言うとおりクエストしなさい」

(……気持ち悪い喋り方。ヒューマンにそういうのがいるって聞いたことがるけど、ドワーフにもいたんだね。オカマ?とかいうの。でも、やっと試練を受けられる。)

 若干の不安を覚えながら、転職の試練を受けれることに安堵した。ほんの少しだけ。

「最近、体が甘い物を要求するんだわ。どう思う?」
「………」
「友達が言うには鉱山地帯のハンターベアーを捕まえると時々出てくるハニーベアーというヤツがいるんだけどほっぺが落ちるぐらい蜜を持っているって」
「………………」
「そのハニーベアーをを殴り倒してスウィーパーでくなく探して蜂蜜の壷五個だけ持って来てよ」

(なんじゃそりゃあああ!)

 あの妹にこの兄である。どっかおかしいと彼女は思った。
 一次転職とはいえ、難しいもの厳しいものを覚悟していたモノはガラガラと崩れていく感じを受けた。
 ちなみにハンターベアーは鉱山地帯の西部にいる。
 彼女自身何度も拳で語り合っているのでよく知っていた。結構強くてやばかったことも何度あった相手である。
 トーマはテディベアの図鑑を取り出して彼女に渡した。

「これは…? クマの図鑑…? ですか?」
「そうよ。これを持ってないと、いくらハンターベアーを倒してもハニーベアーは現れないわ」
「へ~」
「それじゃ、よろしくね」
「はい」

(不安は多量にあるけど… ま、やってみますか。)




 彼女は鉱山地帯の西部にやってきた。
 海に近く、少し開けた場所だ。目的のハンターベアーはこのあたりに生息している。

「そういえば、何体倒せば目的のハニーベアーが現れるか聞いてなかったな。ま、いいか」

 武器を弓に持ち替え、遠距離からハンターベアーを狙い撃つ。当たればこっちに向かってくるので、接近するギリギリまで弓で攻撃する。
 そして、格闘武器の射程距離に入ったら持ち替えて殴る。
 ひたすらこれの繰り返しである。たまに休憩挟むが…

「はぁはぁ。まだ出んのか。結構倒したと思ったけど……」

 休憩中につぶやくが出ないもんは出ないのである。

「……続けるか」




「うおりゃぁぁぁ!!」


「てやぁぁぁっ!!」


「とりゃあああっ!!」


「ていやぁぁぁっ!!」


「ちょんわぁぁっ!!」


「くっそー!」




 彼女の叫び声が海岸に響くのであった。