第一話 帰郷
 ここは異世界。エルモアデン大陸という巨大な大陸がある。
 そのエルモア地方遥か北に四方に高い山脈に囲まれた外部から遮られているスパイン鉱山地帯がある。
 そこには『大地の種族』と呼ばれるドワーフ族がすむ村があった。
 常に『強い勢力に味方する』政策をとってきたドワーフは他の種族に嫌われているが、彼らの持つ組織力と経済力が巨大な力を持っていた。
 ヒューマンが支配した現在においても。
 しかし、事態は一変したのだった。



 シーレンの復活---



 過去、ドワーフたちにより討伐され眠りについた『アースワーム・トラスケン』が復活する。
 シーレンの命を受けたトラスケンはドワーフ村を襲い壊滅されたのだった。
 シーレン復活による疫病に打ち勝つことができたドワーフであったが、トラスケンにはかなわない。ドワーフの長老たちは村を捨てることを決める。
 そして神聖な力によって保護を受けているといわれる『話せる人の島』へ出向き、再起をはかることになった。




 ドワーフ族が『話せる人の島』へ移住してしばらくしたある日。
 一人のドワーフが元ドワーフ村へ戻ってきた。外界へ長く旅をしていたのだが、村壊滅を聞き、戻ってきたのだった。

「なんてこと……」

 建物は全壊状態。しかもトラスケンと戦ったであろう仲間たちの死体が点在している。
 時々、トラスケンのいびきか寝返りか、ものすごい音を立てて地面が揺れる。

「墓も作れる状況じゃないんだね。ごめんね、みんな」

 元村の中を歩きながら、そうつぶやき、まだ村にいたころを思い出したのだった。




 …

 ……

 ………

 …………

 ……………

 ドワーフ村では、成人を迎えた若きドワーフたちが旅に出る日である。
 『集めること』と『作ること』に特化した種族であるドワーフは、世界を見ることによって進む道を決めるようだ。

 また、ドワーフは他の5種族に比べ特殊だった。
 背が低く、140cm前後しかない。それに加え、出発の地の光景はある意味異様だった。
 80超えたと思われる老人と12歳前後の少女しかいない。
 種族特性である。
 ドワーフ男性は若いうちから深いシワが刻まれるが、ドワーフ女性は成長しても見た目が変わらない。
 彼らドワーフ族を創造した豊穣の神が何を思ってこうしたは未だ不明である。




 わずかな平地で豪快な声が響いた。

「うおりゃぁぁぁ!!」

 ホワイトストーンゴーレムと呼ばれるゴーレムが万歳をして倒れた。

「ハァハァ… あー、痛かった…」

 今、ホワイトストーンゴーレムを倒したのはドワーフ女性だ。
 このドワーフ女性は、他のドワーフと少し違っていた。
 普通ならば鈍器や槍を持ち、狩りをおこなう。専用のスキルもあるので種族推奨武器とも言える。
 が、このドワーフは両手に奇妙な形をした武器を装備していた。
 たまたま、緑色の巨人(彼女は後で、炎の種族オークであることを知った)が露店で売っていた武器。格闘武器と呼ばれるドワーフ村には売ってない武器であった。

「ふぅ、疲れた」

 その場にぺたんと座る。

「さすがに痛いなー。でも、確実にダメージを与えられるからいいかな」

 格闘武器は両手武器のため、盾を持つことが出来ない。相手が攻撃をミスをする以外、確実にダメージを負ってしまう。オークらしい武器ともいえる。

「相変わらず、殴ってるねー」

 知り合いのドワーフ女性がやってきた。こちらは槍を持っており、モンスターをかき集めては一気に倒すという、別の意味で豪快な狩りをするドワーフだった。
 集めすぎて瀕死の状態で村へ運ばれたのも何度もある。

「まぁね。で、今日はどうしたの?」
「ん~。そろそろ、転職時期だと思って」
「転職?」
「うん。貴女もそろそろ、その時期じゃない? どっちに進むの?」
「う~ん???」

 ドワーフは駆け出しのドワーヴンファイターから、収集系のスカベンジャーと製作系のアルティザンに転職が出来る。

「ま、時間はあるし。じっくり決めたほうが良いよ。後戻りは出来ないからね」

 転職は一回きり。そのあとはさらなる上位職への転職以外ない。

「うん。で、キミはもうどっちに進むか決めたの?」
「アルティザンになろうかと思っているよ。制作楽しいし」
「制作かぁ」
「うん。でも転職を指導してくれるドワーフって誰だか知らないから、今探してるの」
「とりあえず、旅に出られる年齢になったらそのまま追い出されるような感じだったしねぇ」
「あはは…… それじゃまたね」

 そう言うと彼女は道を走っていった。




 座ったまま、彼女は考える。

(転職か…どっちにしようかな……)
(スポイルは楽しいし…クリエイトは…あ、ウッドンアローしか作ったことないや。)
(うーん。やっぱ、自分は製作系は向いてないのかな~。)
(スポイル、やっぱ、面白いし。そっちに行くか~。)

 …意外と単純だった。




 ドワーフ村の何処かにスカベンジャーになるための試練を与えてくれるドワーフがいるらしいという情報を得る。

(あの人しか居ないみたいね……)

 コレクターピピ。噂ではスカベンジャーを極めるとなれると言うコレクター。真偽は定かではない。

(ま、ただの噂よね。)



「スカベンジャーになりたいですって!?」

 ピピに聞くと驚かれた。

「あの、そんなに叫ばなくても……」
「それはそれは感心な事なのです~! 貴女の様に賢い方が少なくなって、近頃では本当に珍しいのです」
「えと、私、賢くないし…… 本音いえば魔法使ってみたいかなーと」

 ドワーフには魔法職がなかった。故に憧れもあった。

「アルティザンになれば、一生人の下で死ぬほど働かされるんです~。重い財布を拝む事は出来ませんよ~」
「スルーかよ……」

 どうやら自分の世界に逝っているようである。

(ヤバい人なのかな? アルチザンの件、それはそのドワーフのやり方に問題があるんじゃ……? とりあえず、聞いている振りをして試練の情報を得ないと……)

 アルティザンの悪口?や自慢話を散々言い続けるピピ。聞いている振りをしているとはいえ、聞いているのが辛くなってくる。

(まだかな~)

 終わらない。
 素晴らしく舌が回るピピ。

(ねぇ、もう、ゴールしてもいいよね?)

 変な電波拾ったり。

(………)

 話し続ける事、数時間後……

「では、お話しましょう~」

(ふぅ、やっと本題だよ。自慢話は聞き飽きたよ。)

 心なしかげっそりした表情。ご愁傷様~という感じで避けて通行していく仲間たち。
 それをしり目に気持ちを入れ替えたのだが…

「実は試練について何も知らないんです~、てへっ」


 ぶち。


 キレた。


 あれだけ自慢話を聞かされた挙句、知らぬとは。
 彼女は、怖い笑顔を浮かべながら、両手に武器をセット。殴りかかろうと構えた。

「ナンデスッテ? イママデタエタノハナニカナ? サァ、シノウカ?」
「ちょ、ちょっと待ってください!!」

 慌てるピピ。
 顔は青ざめていた。

「ナニカナ?」
「スカベンジャーは、マスタートーマだけが承認する事が出来るのです」
「マスタートンマ?」

 初めて聞く名前だった。少なくともこの村にはいない。

「マスタートーマです」

 名前の訂正をしてくるピピ。

「トーマの行方は彼の妹であるミオンが知っています。聞いてみて下さい。紹介状を渡しますから、おちついてくださぁい」
「はぁ」

 ため息をつくと武器を外す。多少顔色の変わっているピピから紹介状をもらう。

「それでは、頑張ってくださいね~」
「ツギハナイデスヨ?」
「は、はい~」

(しっかし、疲れた…あーあ、日が暮れ始めてるよ…朝一で来たって言うのに…腹減ったな…)

 カラスが空で鳴いていた。