第貮拾六話 『人-lilin-』後編
「ぬうぅぅうううううぅぅあああああああぁぁぁぁっ!!!!!」

 ほえるアスカ。
 量産型エヴァの首根っこを捕まえた弐号機は、兵装ビルに叩き付けた。
 衝撃で倒壊した兵装ビルの下敷きになる量産型エヴァ。しかし、弐号機は引きずり出す。
 首根っこを捕まえたまま、放り投げた。他の量産型エヴァを激突する。

「これでラストォォォォオォォオオオオ!!!」

 激突した量産型エヴァに向かって駆け出す弐号機。そして右ストレート炸裂。
 二体まとめてパンチが貫通した。

「んぐぅぅうぅぅ!!!!」

 貫通した右腕を無理やり引き抜く。

「ぐあああああああ!!!!」

 上空から何かが飛んできた。量産型エヴァの武器だ。

「!」

 気がつくアスカ。
 A.T.フィールド発生し、変形する量産型の武器。
 その形状は槍状に変形した。

「これは…! ロンギヌスの槍!?」

 その槍で弐号機へ攻撃する量産機。
 その槍に対抗し、弐号機はA.T.フィールド防ぎにかかったが無残にも破壊されてしまった。

「!!!!」

 その時、弐号機顔面数センチ前で止まった。
 アスカは貫かれると思った。しかし止まったのだ。

「え…?」
『おそくなってすまない』
弐号機のプラグ内で響く声。
「…? シュウイチ…? 何やっていたのよ!」
『いろいろとな…』

 壊れた兵装ビル街から電源を引っ張り出す初号機。どうらや弐号機の活動限界が近かったらしい。弐号機の背に接続した。

「いろいろって何よ!!」
『それよりも見ろ』
「へ?」

 蔵馬が指し示した場所では、弐号機に倒されたはずの量産型エヴァが動き出していた。
 壊れた箇所の再生も始まっている。

「な!?」
『使徒をそのままエヴァ化したようだな』
「やっと倒したのに…」
『再スタートだな。やれるか? アスカ?』
「もちろん! でも、もう一回やっても同じことが起きるわよ?」
『コアを探し出して破壊するしかあるまい』
「何処にあるのかも不明か…」
『ああ。どうする?』
「もちろんやるわよ」
『第二ラウンド開始だ』

 初号機と弐号機は再起動した量産型に向かっていった。




「これは一体…?」
「このままでは我らの計画が…」
「何処で間違ったんだ…」

 黒いモノリスが幾つか浮いている暗い部屋。しかも幾つかは光なく応答しない。
 そんな部屋の中で一人、人がいた。
 ゼーレの長であり、人類補完計画委員会、委員長。キールローレンツその人だ。
 騒ぐメンバーを他所に沈黙している。
 おそらく頭の中では何故こうなったか思案しているのであろう。
 何故、我らの計画がこうも簡単に。
 そのとき、悲鳴が響き、モノリスの光が一つ消えた。

「……」

 キールは何も言わない。そこへ誰かが入ってきた。

「加持リョウジ。君かね」
「はい」

 キールは後ろを向かず、口を開く。

「私を殺しにかね? 他のメンバーを殺したのは君の手の者かね?」
「そうです」

 蔵馬からの手紙には簡単に言えば『ゼーレを頼む』しか書かれていなかったが、加持はその裏を素早く読んだのだ。ゼーレの壊滅と。
 そこで加持は近場にいる『仲間』に連絡を取り、依頼したのだ。

「そうか…」

 胆のが据わっているキールは、動揺しない。

「どうやら、君は知っているようだね? 何故、我々ゼーレの人類補完計画が失敗したのを」
「御馳走にとんでもない物が入っていたんですよ」
「とんでもない物? 南野か?」
「いえ、南野シュウイチ君です」
「南野の息子か。あれがイレギュラーだったのか…」
「彼と人以外の者が関わってくるとは思いもしなかったようですね」
「人以外の者? 南野の息子は人ではないのかね?」
「彼は人間です。ただ、知り合いにいるようですよ。幼い頃、親から聞きませんでしたか? 幽霊とか怪物とかの話を」
「うむ。遥か過去にあるな。それと関係があるのか?」
「その知り合いが幽霊とか怪物とか呼ばれる者らしいですね」

 ここで加持が言ったのはクー・シーのことでった。牛ほどでかい犬であり人語も解するのでそう思ったのだ。

「さて…加持君」
「はい」
「私をどうするかね? 殺すのかね?」
「そうしたいですね」
「しないのかね?」
「貴方を殺したところで全てが終わる気がしません」
「南野から殺すなと?」
「そんなところです」

 ここは加持独断だ。しかし、顔には出さない。

「そうか」

 ふーっと溜息をつくキール。安堵の溜息が甘いなと言う溜息かはわからない。

「この私に何をさせようと?」
「まずはネルフ本部違法占拠者に対しての処置を。そしてこの件について…」
「よかろう。私が全てかぶろう」
「よろしいんですか?」
「何、かまわん」
「わかりました」
「ゼーレの計画は南野に任せた時点で終わっていたのかもしれない」
「それはどうですかね?」




 ネルフ本部第二発令所にゲンドウがレイと共にやってきた。

「司令!」
「現状は?」
「量産型エヴァと初号機弐号機が戦闘中です」
「ネルフ内の侵入者は?」
「シュウイチ君が手配したよくわからない者達が対処してます」
「よくわからない者だと?」
「これを見てください」

 モニターにネルフ内各所の映像が浮かぶ。

「これは…」

 言葉を失うゲンドウ。モニターには我が目を疑う光景が写っていた。
 人の形をしているが人ではない。カヲルのような人型使徒とも違う。
 得体のしれない化物が映っていた。

「シュウイチ、お前は何なんだ……」




「だあああああ!!」

 弐号機が量産型エヴァを投げ飛ばした。立っていた量産型エヴァのコピーロンギヌスの槍に貫かれ、爆発。
 二体の量産型エヴァは消し飛んだ。

「はぁっ、はぁっ、はぁっ…」
『大丈夫か?』
「誰に物を言ってんのよ!」
『それなら大丈夫だな』
「シュウイチ、そちらはどうなのよ」
『見ればわかるだろう?』

 初号機の右腕が量産型エヴァの体を貫いていた。その手には球体がある。おそらくそれはコアだ。
 その球体を握りつぶすと爆発する量産型エヴァ。
 巻き込まれる初号機だったが、何事もなかったように爆炎の中から現れた。

『な?』
「そうね」
『これで終わりか?』
「んー。そうみたいねー」

 回りを見回すアスカ。動いている量産型エヴァはなかった。

『再起動している奴がいないか?』
「そうね、それだけは気をつけなくっちゃね」

 回りを見回す蔵馬とアスカ。コアを砕かれ肉塊となっている量産型エヴァ。動く様子はない。

「なさそうね。で、これからどうする?」
『戦いは終わったようだな。後は…父さん達に任せよう』
「南野司令達に? あ、そうか。政治面の戦いが残ってるかー」
『アスカ? 君がやってみる?』
「じょーだん! やらないわよ」
『ふふ…』
「何がおかしいよ!」
『さあな』
「何かムカつくわね。ま、いいわ。ミサト聞こえる?

 アスカはネルフ発令所につなぐ。

『アスカ? 無事だったのね?』
「もちろん! で、こっちは終わったから戻るわ。そちらはおわった?」
『ええ。シュウイチ君が手配したモノ達が終わらせちゃった』
「シュウイチが手配?」
『こんなの』

ミサトは化物たちの姿が弐号機内のモニタに映された。

「うげぇ」

 どうやら、その姿は強烈だったらしい。




 最大の難敵であったエヴァ量産機を絶滅させ、蔵馬とアスカはネルフ本部へ戻る。
 残骸は担当部門が片付けるので、そのままにしてある。
 人工的に生み出されたコアは全て破壊してるので再起動する様子は一切なかった。

 そして、二人が第二発令所へ戻った時には、化け物達の姿は消えていた。

「おかえり二人共。ところであの化け物達の事聞きたいんだけどいいかなぁ~? シュウイチくん?」
「ミサトさんにはミサトさんの裏があるように俺にも裏がありますので、お答えできません。答えないってわかってて言ってませんか?」
「ち。バレたか。ま、万が一教えてくれたらお礼しに行こうかと思ったけどね」
「そうですか」




 第三東京市を囲んでいた戦略自衛隊は、量産型エヴァが全面敗北を見ると即座に降伏してきた。
 まさに怪獣大決戦の様子を見て、上のお偉方がビビって撤退してしまったのだ。
 とりあえず、一部侵入してきた部隊の皆さんは、引き渡した。化け物達に襲われて倒れていた隊員たちも致命傷を受けたわけではないので、そのままお帰りしてもらったのである。

「まったく……」

 その全面降伏の情報やネルフ内の舞台の様子を聞いてゲンドウはあきれたのように呟いただけだったそうだ。





 後日。
 キールの全証言とともにその関係者が国際裁判にかけられる。日本でもネルフへの攻撃を指示した者も辞職し、全てを受け入れ刑務所の中だ。

 ここからゲンドウが暗躍を開始した。
 国連に働きかけ、特務機関ネルフの非公開組織から、公開組織への変更させた。表面上はオーバーテクノロジーの管理研究組織として。
 ただし、上層部の面々の変更はない。これもゲンドウの手腕である。
 調子こいて入り込もうとした人物はいたようだが、裏で潰されたらしい。

 さて、戦場と化した第三東京市の再建も最大の問題である。
 ここでもゲンドウは財界を動かし、急ピッチで再建が進んでいる。
 疎開をしていた人々も少しずつであるが、戻り始めていた。
 驚いた事に復興に向けてのボランティアが多かった。
 ゲンドウはこれを見て、人間は見捨てたものではないな、と思った。









神の悪戯か…

悪魔の気紛れか…

それとも必然か…

改変された世界…

伝説の極悪盗賊妖狐蔵馬の人への転生…



新たな世紀がはじまった…