第捌話 『音楽-Israfel-』後編
 ネルフのミサトの執務室。別名カオス。そこへやってきた蔵馬。ミサトより来るように言われやってきたのだ。ちなみにアスカがガニマタで先に行っている。
 蔵馬の何時もの表情と、機嫌悪さMAXのアスカを見比べ、ミサトは今後の作戦を説明した。

「本当ですか?」

 呆れて蔵馬が言った。

「ほんとうよん♪」

 ミサトが対使徒との作戦として提案したのが同時に使徒の光球の破壊であった。そのためにはぴったりとあったコンビネーションが必要である。そのコンビネーションを作り出すために提案が……アスカと蔵馬の同居。しかも使徒復活まで同室で暮らすというものだった。実際は長時間のダンスの練習なのだが。

「命令拒否は認めません♪ 時間が無いから♪」

 さも楽しそうに言うミサト。

「ちょ……ちょっと、みさと!!! シ…南野君が夜ムラムラ来て、襲ってきたらどうするの!?」

「大丈夫♪ シュウイチ君、そんな度胸無いから♪」

(……どういう目で見ているんだろう? ミサトさんは?)

 蔵馬は元々妖怪であり、人間界と縁を切って魔界へ帰ろうと思っていたぐらいなので、人間関係はあまりよくない。目的である使徒打倒とゲンドウ調査のためにここにいるだけなので学校では、女生徒にはもてるがデートしたりすることもない。基本誰ともかかわらないように最小限の動きしかしてなかった。
 逆にそれが蔵馬のクールさに女生徒の人気急上昇。男子生徒の嫉妬急上昇なのは別の話である。

「でも……」

 しぶるアスカ。ミサトはそれを無視するかのように言った。

「明日は午前六時起床よ♪ 報告書出さないといけないから、先に行くわ♪ じゃあね♪」

 部屋を出ていくミサト。それに噛みつくアスカ。

「ちょっと!! 待ちなさいよ!!! 話は終わってないわよ!!!!!」




 一日目……
 同じ部屋にベット二つで眠る二人。訓練疲れである。しかし、蔵馬はヒッソリ起きていた。目だけで周りを見回し、隠し監視カメラの存在をチェックする。

(訓練を名目に何が起きるか楽しんでるんじゃ?)



 二日目……
 音楽をかけ、決められたステップで同じステップを踏む。息を合わすための訓練である。蔵馬はアスカに動きを合わせ、アスカはわが道を行く。先は長そうだった。



 三日目……
 進展はあまりない。隠し監視カメラで見ていたミサトがシュウイチに動き(アスカに襲い掛かる等)がないので不機嫌だった。



 四日目……
 二人が踊っているのをミサトと様子を見に来た加持が見ていた。

「アスカ」
「はい」
「何度言ったらわかるの? 一人で飛ばさないでシュウイチ君にあわせるのよ」

 ミサトはちゃらんぽらんなアホに見えるが一通りの訓練を受けた軍人でもある。二人のわずかな差を見抜いた。アスカの方がわずかに先行しているのを。

「南野君のレベルに落としてやるなんてアタシには出来ません。それに南野君がアタシにあわせれば済む事です」
「俺は初日からあわせているけど」
「嘘ばっかり……」
「何故君は、肩に力を入れてるんだ? そりゃ、君はすでに大学を卒業し、エヴァの操縦は俺より上だ。でも、自分が特別なんて思わない方がいい」
「アンタ……このアタシに忠告する気!?」

 うがーっと噛みつかんばかりのアスカ。蔵馬はそれを見つつ続ける。

「忠告? そんなつもりはないさ。でも、疲れるだろう?」
「なんですって!? アンタ何様のつもりなのさ!!!」

 蔵馬はそれを見て、すっと部屋を出て行く。

「ちょっと、シュウイチ君!? 何処に行くの!?」

 ミサトがその行動に驚き声をかけた。

「外の空気を吸いに行ってきます。今のままじゃ無理ですので、彼女が落ち着いたら教えてください。それじゃ」




 四日目……
 蔵馬が部屋を出て廊下へ出て、公園のような場所にやってくる。地下にある空間だが、外にいるように感じた。

(人間の技術はすごいものだな。おっと、今の俺も人間だったな。)

 噴水まであり、近くにあるベンチに腰を掛けた。

(さてどうなることやら。)

 蔵馬は呼び出しがあるまでここにいることにして目をつぶった。やることは特にないのである。
 そこへ、わずかな妖気を感じる。ここは地下にあるネルフの施設である。妖怪がいることに内心驚く。
 その妖気の持ち主が声をかけてきた。

「このような場所にいたのか」

 蔵馬が目を開け、声のした方に顔を向けると、牛のような大きな犬が一匹いた。

「クー・シー? なぜこのような場所に?」
「汝を探していた」
「俺を? 妖精の丘とやらには手を出してないはずだが」
「例のバケモノについて情報が入ったのでな。我や妖精たちには全く関係ないので放っておくつもりであったが、汝の事を思いだしてな」
「例のバケモノ? 使徒のことか」
「人間たちはそう呼んでるな。長く妖精の丘を離れられないので簡潔に言う」
「わかった」
「ここの大深度地下に妖精が迷い込んでな。そこで十字架に張り付けられた七つ目の巨人の上半身を見たそうだ」
「十字架に張り付けられた七つ目の巨人の上半身だと?」
「詳細は不明だ。興味もないがな」
「そうか、わかった。ありがとう」
「それはなにより」

(十字架に張り付けられた七つ目の巨人の上半身か…… 使徒の目的はそれか? 奪還しに来てると?)

 蔵馬の考えは、当たらずと雖も遠からず。だが、確証がない。

「む。人間が来たようだ。我はここで消えるとしよう」

 クー・シーはそういうと消えた。そして、クー・シーが言っていた人間がやってきた。加持だった。

「加持さん?」
「シュウイチ君ここにいたのか」
「彼女落ち着いたんですか?」

 蔵馬がそう聞くと、加持は難しい顔をした。

「アスカは何か考え込んだままさ。ただ、ミサトがね」
「ミサトさんが?」
「ものすっごく、機嫌悪い」
「……」
「悪いけど戻ってくれないかな? 八つ当たりで殴られそうで」
「…… わかりました」
 蔵馬はそういうと立ち上がり、戻っていく。




 その後ろ姿を見ながら加持は思う。

(彼は一体…? 資料では特に気になることはなかったが、俺の感が警報を発している。新たな勢力の手のものなのか?)




 最終日……
 明日決戦。最後の訓練が始まる。

「シュウイチ」

 先に来ていたアスカが蔵馬が来ると口を開いた。

「何かな」
「これだけは言える。アタシはアンタを認めない。でも、今は使徒を倒すことだけを考える。アンタの言われたことも後回し」
「何だか知らないが少しは肩の力が抜けたか?」
「どうかしら」

 そこへミサトがやってきた。後ろには加持もいる。

「まだ、喧嘩中かしら?」
「さあ、どうだろうな。でもやらなきゃいかんだろう」
「加持がまともなことを…!」
「俺をなんだと」

 呆れる加持。

「まあ、いいわ。二人ともさっさと始めるわよ!」




 使徒再戦当日。
 ネルフの予想通り、自己修復の終わった二体の使徒が行動を開始した。

「来たわね。シュウイチ君? アスカ? 準備良い?」
『…… いつでも』
『何時でもいいわよ』

 それを聞いたミサトはエヴァ発進を指示。地上に射出されるエヴァ。目の前には使徒が二体、並んで待っていた。あざけ笑うような感じもする。

「ミュージックスタート!!」

 エヴァ内に音楽が流れる。コンビネーションの訓練のために散々踏んだステップのときにかかっていた音楽だ。




 音楽に合わせてエヴァ二体が使徒に向かって膝蹴りを喰らわせる。
 そして、その反動を利用して一回転して着地した。
 同時に近くの兵装ビルが開き、パレットガンが現れる。それを素早く掴むと使徒に向かって乱射し、使徒は煙に包まれる。
 その煙を突き破るかのように使徒がエヴァに向かってビームを発射。これをばく転をしながら、かわしつつ後退した。
 途中の道路から壁がせりあがる。その後ろにはパレットガン二丁が設置されていた。
 素早くそれをとるとその壁に隠れつつ、乱射。しかし、使徒はジャンプして回避し、その壁を切断する。

(なんという回避能力。)

 使徒の動きに感心しつつ、蔵馬は次の行動に移った。
 三枚になった壁から左右へ散る。そこへ、ビルに偽装した兵器からミサイルの援護射撃が入る。
 使徒は再び煙に包まれた。ダメージこそ与えられないが、煙幕としてなら役にたつ。
 体制を整えたエヴァは、再び空中にジャンプする。

『シュウイチ!!』
『…』

 空中を一回転して、使徒のコアに向かって蹴りを放つ。同時にコアと思われる球体を破壊した。
 そして、使徒は大爆発をした。エヴァもその爆発に巻き込まれる。
 その煙が消えた後、巨大なクレーターのような穴と重なりあって倒れているエヴァの姿があった。