魔界と霊界。



 魔界とは、数々の妖怪が住む世界。



 霊界とは、『あの世』と呼ばれる世界。



 魔界は何階層にも別れており、上層部の一部を霊界が管理している状態である。



 その管理している階層において、霊界の法における犯罪を犯した妖怪を退治する『ハンター』と呼ばれる存在がいる。



 その『ハンター』が今、魔界において一匹の妖狐を追い詰めていた。



「俺としたことがっ!!」



 銀髪の妖狐がハンターから逃げていた。



 ハンターの霊的攻撃のため、体のところどころに怪我を負っていた。



「このままではまずい。確実に殺される」



 ハンターは犯罪者を捕えて法に照らし合わせて裁くというより、その場で狩る(処刑)することが多い。



 妖狐は魔界を脱出し、人界に向かう。



 しかし、ハンターはまだ追ってきていた。



 そして致命的な一撃を受けた。



「ぐあ… ここまでなのか…」



 妖狐の意識がとぶ直前、目の前に穴が見えた。



「…!」



 穴に吸い込まれ、妖弧の意識がとんだのだった。






………………

……………

…………

………

……






 妖弧の意識が戻る。



「これは……」



 動けない体。


「俺は… そんな事が…」



 目の前にいるのは人間の女性だった。



 妖弧は人間として転生したのだった。






 時に2000年…


 伝説の極悪盗賊と呼ばれた妖弧蔵馬は人間として生を受けた…
第壱話 『水-Sachiel-』前編
 2015年………

 あれから15年…

 親戚の家に預けられていた蔵馬は、人間としての父である人物から手紙を受け取る。


『来い』


 その一言と、謎の女性の写真。

(いったい今更、何のようだろう。関わりたくないんだけど…)

 そう思いつつも行ってみることにした。何となくだった。
 これが苛烈な戦いの始まりだったのである。



 そして、蔵馬が、第三東京市につき、リニアを降りたときだった。

『本日12時30分、東海地方を中心とした、関東地方全域に特別非常事態宣言が発令されました。住民の方々は速やかに指定のシェルターに避難して下さい。繰り返します…』

「特別非常事態宣言? それはなんだろう。今の状況では判断できない。まぁ、手紙に書いてあるところに電話して、情報を集めよう」

 動揺するところか冷静になった蔵馬は、封筒に書かれた電話番号で電話をしてみる。

『特別非常事態宣言発令のため、現在通常回線は全て不通となっております。繰り返し…』

「不通か」

 とりあえず状況を判断すべきその場を動かず、周りを見回す。人っ子一人いないが、変わった様子は見られない。
 そして上を見上げると、普通では飛行してないモノを発見した。戦闘機だ。

「ん…?」

 よく見ると攻撃をしているようだ。かなり遠くに煙が上がっている。

(戦争でも始まったのか?)

 煙が少しずつ晴れていく。そこには巨大なモノが見え始めた。人型したモノだった。

(妖怪…? ではなさそうだが。)

 そう思って見ていると、一台の車が走ってくる。
 その車が、蔵馬の前に止まり、一人の女性が出てきた。

「南野シュウイチ君ねっ!! 遅れてゴメンッ!! 乗ってっ!!」




 車に乗り込んでしばらく走った後、蔵馬は口を開いた。

「葛城ミサトさんでいいですね? あれはいったい何ですか?」

(あの写真の女性だな。)

「落ち着いているわね南野シュウイチ君。 あれはね、使徒よ」
「使徒?」
「そっ …って、NN地雷っ! 伏せてシュウイチ君っ!!」

 ミサトは蔵馬を抱えて車の中で伏せる。同時に大爆発が起き、その爆風で吹っ飛ぶ車。

「大丈夫だった?」
「ええ。砂が口に入ったくらいです」
「そいつは結構。じゃ、行くわよ」

 ミサトが横倒しになった車を元に戻そうとするが、女性一人では持ち上がるわけがない。蔵馬も手伝い起こした。

「ありがとう。意外にパワフルなのね。よろしく。南野シュウイチ君」
「こちらこそ。葛城さん」
「ミサト、でいいわよん」




 そのころ、ネルフ作戦本部………

「ミサイル攻撃でもきかんのか!? 全弾直撃のはずだぞ!!」
「クソがッ!!」

 目の前のモニターには、いっさいの攻撃を受け付けないモノがうつっている。使徒と呼ばれるモノ。
 その使徒を何とかしようとしてる軍人たちの後ろにサングラスの男と初老の男が立っている。
 軍人たちが何処からの通信を受け取り、苦々しい顔しながら、その二人にいる後ろを向いた。

「南野君。これより本作戦の指揮権は君に移った。お手並みを見せてもらおう」
「了解です」

 サングラスの男が言う。

「南野君。我々の所有兵器では目標に対し有効な手段が無いことを認めよう」
「だが、君なら勝てるのかね?」

 口々に言う軍人たち。不快感は顔に浮かんでいる。

「そのためのネルフです」

 南野は確信を持って言った。

「期待しているよ」

 軍人たちはテーブルごと本部から退場した。

「国連軍もお手上げか。どうするつもりだ?」

 南野の横に立っていた初老の男が口を開いた。

「初号機を起動させる」
「初号機をか? パイロットがいないぞ」
「問題ない。すぐにシュウイチが来る」




(しかし、何故だ… 私が入手した死海文書の予言より、一年遅い… 何か不確定要素でも入ったのか…)




「特務機関ネルフ?」
「そ。国連直属の非公開組織」
「父がいるところですね? 俺に何をさせるつもりですか?」
「それは、お父さんに会って聞いた方がいいわね」
「そうですか」

(国連直属… 情報統制は相当のモノのようだ。)
(取っつき難い子ねー。でも、なんで長髪なのかしら? 似合っているから良いけど。)

 しばらく二人で無言で道を進む。が、ミサトは道に迷ってしまったようだ。

「ここ、さっき通りませんでしたか?」
「ごめぇん。まだ道になれてなくて」
「………そうですか」

 冷めた目で見られたのは、ミサトの見間違いではなさそうな気がした。

(なんて、冷静…)

「さっき通りましたね。ここも」
「…」

 ミサトは何も言えなかった。




 それからしばらくウロウロという表現が正しいと思うぐらい、道を進む。二人はもちろん無言だ。

(組織員としては、迷子とは失格だな。)

 蔵馬のミサトへの第一印象はよくない。そこへ後ろから二人に声がかけられる。

「どこへ行くの? 葛城一尉」

 ミサトと蔵馬が同時に振り向く。白衣を着た金髪の女性が立っていた。少し冷たい感じのする美女だった。

「遅かったわね」
「ごみぃん!」

 ミサトが顔の前で手を合わせ、謝る。

「例の男の子ね」
「そう、マルドゥック機関から選ばれたサードチルドレン」
「わたしはネルフ技術一課E計画担当博士赤木リツコ。よろしく」
「南野シュウイチです。よろしく」




『総員第一種戦闘配置。繰り返す、総員第一種戦闘配置。対地戦用意。繰り返す…』

 突然、館内スピーカーから放送が流れる。

「ですって」
「これは一大事ね」
「それで、初号機はどうなの?」
「機動確率は0.000000001%。09システムとはよく言ったものだわ」
「それって動かないって事?」
「あら失礼ね。0ではなくってよ」
「数字の上ではね。でも、どのみち動きませんでした。じゃもうすまされないわ」

 二人の会話に我かんせずの蔵馬だったが、ふと蔵馬は一つ思った。

(たぶん父さんが呼んだのは、このためだな。)




 蔵馬はミサトとリツコにある部屋に入る。ミサトが入り口を閉めると真っ暗になった。

「真っ暗ですよ」

 リツコがスイッチを押す。
 ライトがつき、蔵馬の眼前に巨大な鬼のような顔がある。

(霊気も妖気も感じない。いわゆる巨大ロボットというモノなのか。)

「ロボットと思ったと思うけど厳密に言うとロボットではないわ。人の造り出した汎用人型決戦兵器。人造人間エヴァンゲリオン。その初号機」

(人造人間…?)

「これが父の仕事ですか?」
「そうだ」

 エヴァの頭上から声がかけられた。管制室と思われる部屋のガラス越しに自分の父親、南野ゲンドウを見つけた。

「久しぶりだな」
「………………」
「…出撃」

 ゲンドウがつぶやく。

「出撃!? 零号機は凍結中でしょ!? まさか、初号機を使うつもりなの!?」
「他に方法はないわ」
「だってレイは動かせないでしょ?」

 ミサトは蔵馬をチラッと見る。

「パイロットがいないわよ」
「さっき届いたわ」
「…マジなの?」

 リツコはミサトから蔵馬に視線を移す。

「南野シュウイチ君。あなたが乗るのよ」
「お断りします」
「即断なのね…」
「俺はよくわからない状況では流されないんですよ」
「座っていればいいわ。それ以上は望みません」
「お断りします」
「シュウイチ君…!」
「正規のパイロット?がいるでしょう? その方が乗れば良いんじゃないんですか?」

 何も言えなくなってしまうリツコ。そこへゲンドウから一言。

「…そうか。冬月、レイを起こせ」