次の日。

バタン!!

「お待たせー!」

シンジは驚いて声のした方に振り向くと、マナがドアを勢いよく開けて出てきたところだった。

「ゴメン。待った?」

「ううん。そんなに時間経ってないし・・・。」

「ホントに?」

マナは上目遣いでシンジの顔を覗き込む。

「ホ、ホントだよ。」

「よかった。」

ゆっくりと微笑む。

その表情を見て内心ドキッとしながらも、なんとか自分が動揺していることを隠そうと頑張る。

「そ、それじゃあ・・・。い、行こうか?」

が、どう考えてもこれでは『気づいて下さい。』といっているようなものだ。

そんなシンジを見てクスッと笑ったあと、

「うん。そうね。」

と言い、さりげなくシンジの隣に来る。

そのまま二人は並んで歩き始めた。

 

 


S・S・S
〜SHINJI・IKARI〜

幼かったあの日(後編)


 

昨日。

「・・だったよね。」

「そんなこともあったね。」

「で、その時・・・。」

マナとシンジが昔話に花を咲かせている時、

コンコン。

ドアをノックする音が聞こえる。

「はい。」

マナが返事するとドアを開けておばさんが入ってくる。

「ジュース、持ってきたわよ。」

手にはお盆に二つオレンジジュースの入ったグラスを載せている。

おばさんはテーブルにグラスを置く。

「あっ、すみません。」

「ありがと。おばあちゃん。」

「いえいえ。」

おばさんはお盆を持ち部屋を出ていく。

マナはグラスを手に取り、口を付ける。

「そうだ。マナちゃんは明日何か予定ある?」

「ん・・・。」

マナはグラスをテーブルに置く。

「ないけど?」

「だったら僕が街を案内するよ。ここって昔とはガラリと変わってるから、すぐに迷うよ。」

「だよね。今日だって駅でてすぐどっち行けばいいか解らなかったから。」

「だから案内するよ。」

「ホント!ありがとう!」

マナはテーブルに身体を乗り出しシンジの手を取り、そのままブンブンと上下に振る。

「わっ、わっ・・・・わ、解ったから、手、放して・・・。」

「あっ、ゴメン。」

パッと手を放す。

「ふぅ・・・。じゃあ明日何時に待ち合わせにする?」

「う〜ん・・・・。10時・・・でいい?」

「うん。いいよ。」

「じゃっ、決定ね♪」

「うん・・・あっ、もうこんな時間だ。」

時計の短針はすでに『8』を指している

「え?まだ8時だよ。」

「母さんにすぐに帰ってくるっていってあるんだ・・。まだ御飯食べてないし・・・。マナちゃんもまだ食べてないだろ?」

「うん。」

「また明日も会えるし・・・今日はもう帰るよ。」

シンジは立ち上がり玄関に向かう。

 

「今日はありがとう、来てくれて・・あと道教えてくれて。」

靴を履くシンジの背中を見ながら言う。

「いいって。じゃっ、また明日ね。」

「うん・・あっ!」

出ていこうとするシンジの後ろで大きな声を出す。

「どうしたの?」

「待ち合わせ場所・・・。」

「あっ!・・・忘れてた・・・。」

「何処にするの?」

「・・・・・僕がここに迎えに来るよ。」

少し悩んで、シンジは迎えに来ることに決める。

「解った・・・。それじゃあ・・・。」

「うん・・。バイバイ・・・。」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

そして、今。

シンジとマナはバスに乗って繁華街へと来た。

「うっわぁ〜〜〜〜・・・・。」

マナは軒を連ねてある店を見て驚く。

「・・・・・こんなところにこんなにお店あった?」

隣にいるシンジに聞く。

「数年前に突然出来たんだよ。最初何軒か建ったら次々と・・・今ではこの状況に。」

「それに・・この街ってこんなに人いた?」

マナは周りを見る。

「マナちゃんがいたころはまだこの街ができてそんなに経ってなかっただろ?それにたしか・・・・。マナちゃんがこの街を出て2、3

年後にこの街に首都が移されて・・それからが凄かったよ。ホントに人口爆発って感じだったよ。」

「そうなんだ・・・。」

「・・・まず何処に行く?このままここにいても何だし・・。」

「そうだね。それじゃ〜・・・ん〜〜・・。んっ?」

マナは遠くにある大きな建物を見つける。

「あれは?」

「デパートだよ。この頃できた。」

「じゃっあそこ行こ!」

「そうだね。」

 

 

 

 

 

「マナちゃ〜ん・・・。」

シンジはベンチに座って休んでいる。

その横にはいくつもの紙袋がある。

「なに?」

「まだ買うの?」

「うん。」

マナは服を選びながら頷く。

「もうこんなに買ったのに?」

「うん。あっ、これかわいい!」

「・・・はぁ〜・・・。」

ため息を吐くシンジ。

「何処にそんなにお金あるの?」

「私ってあんまり無駄使いしないし、ここに来るとき、お母さんやおばあちゃんからもお金もらったから、たくさんあるのよ。それに・・・。」

さきほど『かわいい』と言った服を自分にあててサイズを見る。

「・・ちょうど・・っと。ここにあるほとんどの服、私のいる所にはないからほしくなっちゃって・・・。」

次に鏡の前に立つ。

「うんうん。」

鏡に映る自分(プラス服)を見て何度も頷く。

「これ、買っちゃお♪」

それをシンジは聞いて項垂れ、

「はぁ〜・・・。また増えるのか・・・。」

大きなため息を吐いた。

 

 

 

 

 

喫茶店。

シンジの『もうこれ以上は保ちません!少し休まして下さい!!』宣言により、マナが『しょうがないなぁ〜・・。』とシンジの言い分を

承諾し、近くにあった喫茶店に入った。

「つかれたぁ〜!!」

シンジはイスにグッタリと身体を預ける。

その横には先ほど以上に増えた紙袋がある。

「いらっしゃいませ。」

そこに店員がやってくる。

「そういえばまだお昼食べてないよね?ここで食べてく?」

「そうだね。」

マナはメニューを開く。

「う〜ん・・・。パスタ系でいいかな・・。私はカルボナーラ。シンジ君は?」

「僕もそれでいいよ・・。」

「じゃ、これ二つで。」

「カルボナーラ二つですね。少々お待ち下さい。」

店員は頭を下げた後、店の奥に消えた。

 

 

数分後。

再び注文を取りに来た店員がやって来る。

「カルボナーラです。」

そしてすぐに立ち去る。

「いただきま〜す。」

マナはフォークを手に取りクルクルとパスタを巻き付ける。

「・・・・うん、おいしい。」

「うん。」

 

「何か・・変な気分だな・・・。」

マナはパスタをクルクルと巻き付けながらポツリと言った。

「どうして?」

「だって・・・私がいた時とは全然違ってるんだもん・・。どこにも昔と同じところがない・・・。」

「仕方ないよ・・。首都になったんだから・・・。」

「そうだけど・・・。私の思い出とは全然違う街っていうのも・・・・。」

「僕はずっとここにいたからそんなことは思わないけど・・・・。」

「何か・・・寂しい・・・。」

「・・・・・・。」

マナのその一言を聞くと、シンジは突然食べる速度を上げる。

「ど、どうしたの?もっとゆっくり食べようよ。」

マナもそんなシンジを見て驚いている。

「・・・。」

そういう内にシンジは全部食べ終わる。

シンジは水を流し込む。

「・・・ふぅ。さっ、マナちゃんも早く食べなよ。」

「だ、だから突然どうしたの?」

 

「昔と変わってないところ。一ヶ所だけ知ってるよ。」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ねぇシンジ君。いったいどこまで行くの?」

「いいから付いてきて。」

シンジとマナはバスに乗り、朝乗ったバス停で降り、住宅街を歩いていた。

「たしかそろそろ・・・・・。あそこだ!マナちゃん!」

そういうとシンジは走り出す。

「ま、待ってよシンジ君。」

マナもシンジの後を追って走り出す。

 

 

「ここだよ。」

「ここって・・・公園?」

シンジが連れてきた所は住宅街の一番標高の高いところにある古びた公園。

遊戯施設はもう何年も使われていないかのようで、ひどく錆びている。

「そう公園。昔僕達が二人で一緒によく遊んでた公園。」

マナは滑り台に近づき、触れる。

「思い出した・・。ここってあまり人が来なくて、私達お母さんが呼びに来るまで二人でずっと遊んでたね。」

クスッと笑う。

「そうそう。それでよく二人で怒られて・・・・。」

シンジはベンチに腰掛ける。

「シンジは今もここに来るの?」

マナはシンジの隣に座る。

「時々・・・ここから見える景色が好きだから・・・。今の時間くらいに・・・・。」

シンジは立ち上がって公園の隅にある林を抜ける。

マナもそれについていく。

「いつもここにこうやって座って見てるんだ。」

「・・街が見えるのね。」

「うん。ここから街を見て、『これが僕の住んでいる街なんだな・・。』って当たり前のこと考えたり・・・。」

「へぇ〜・・・・。」

そのまま街を眺める二人。

「・・・・・・。じゃ、そろそろ帰ろうか?」

シンジは時計を見て立ち上がる。

「そうね。・・・今日はありがとう。」

「どういたしまして・・・。」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

一週間後。

駅のプラットホーム。

「ありがとう、シンジ君。楽しかった。」

「僕もだよ。」

「あっ、そうだ・・・。」

マナは突然ゴソゴソとバッグの中を探り出す。

「どうしたの?」

「えっとね。たしか昨日書いてここら辺に・・あった!」

マナはバッグから一枚の紙を取り出す。

「シンジ君・・これ。」

「え?」

マナはシンジにその紙切れを握らせる。

「それに私の住んでる家の住所と電話番号書いてるから・・・。」

シンジはその紙を握らされた手を見る。

「電話してね。たまには。」

視線をマナに戻す。

「うん、解った。」

「それ・・・冬休みにでも来てよ。私のところ。無理だったら春休みとか・・・。」

「うん。絶対行くよ。」

「・・・みんなにも紹介したいしさ・・・。」

俯いてボソッとマナは言う。

「えっ?なにって?」

「えっ!?な、何でない!!」

マナは紅くなって手を振る。

『間もなく発車いたします。』

「じ、じゃあ・・またねシンジ君。」

マナは急いでバッグを肩に掛け列車に乗る。

そしてシンジの方に振り向く。

「また来るからね。」

「うん。」

プルルルルルル・・・。

「シンジ君・・・私。」

プシュー・・・。

列車のドアが閉まる。

「・・・・・・・・・・。」

マナはドアの向こう側にいるシンジに何かを言う。

「えっ、聞こえないよ。」

シンジはマナに聞こえるように大声で言うが、マナはただ微笑むだけで何も言わない。

そして列車が動き出す。

列車はみるみるうちに加速し、すぐにホームから出ていった。

 

 

 

 

シンジはマナが去った後もただボーっと立ちつくした。

そしてふとシンジはマナに手渡された紙に気づき、それを広げる。

それにはマナの言っていたとおり、電話番号と住所が書かれており、

それともう一言こう書かれていた。

 

 

 

 

『好きです。』

と・・・・・。

 

 

 

 

〜終〜


コメント

こんにちは、SORAです。

一応このSSは僕の願望とも言えるものです。

それはというと、僕も幼かった頃(マナみたいに小学校まで・・とはいかないけど・・・。)、少しだけある所にいました。

そして数年後、今の場所に来ました♪

・・でも、小学校、中学校はここにいたけど、高校はまた違うところへいったけど・・・。

だから僕もいつかは『幼かった頃にいた街』に行ってみたいんです♪

どんなところで僕が育ったのか・・・・。そしてどんな街なのか・・・・。

それをこのSSに少しだけ表してみました♪

ただ、それだけだと面白くないので、シンジという幼なじみ(?)を出してLMSにしました♪

ちなみに・・・。

マナが『カルボナーラ』を頼んでいますが、それはその時思いついた食べ物がそれだったからで、深い意味はぜんっぜんないです(笑)


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