時間は残酷にもやさしくも私の心を変えていく。
そんな終わらない時の流れの中で私は生きている。
想いを語る人がいなくなろうとも、私の中に募る思い出は色褪せない。
いつか、誰かにその想いを伝える日まで、ずっと。





蒼き新星45万HIT記念
 
系譜
第1章 秘められた想い
 
第10話 新星 (第1章完結話)
 
シルビア





【秋子】


不思議な空間の中にただ一人佇んでいたわ。
その中に浮かぶ人影、それは私の最愛の人達の姿だったの。

「秋子、お前はまだここに来るべきじゃないよ」
「……信二さん!」
「秋子、綺麗になったな。
 浩の奴も、案外りっぱな旦那さんだったわけだ。
 迷うなよ、秋子、これからも幸せに生きろ」

「そうさ、名雪には秋子がまだ必要だからね」
「……浩さん!」
「秋子、もう泣き虫秋子に戻るなよ?
 どんな時でも笑っていろ、それが一番秋子らしいから。
 俺は秋子の笑顔が今でも好きだし、それで幸せになれた」

忘れようもないその二人の面影、そして、誰かの声がする。

「あなたは……あゆちゃん!?」

間違いない、あゆちゃんだった。
うっすらと輝く、天使の姿をしたあゆちゃんの姿があったわ。
迷いのない、とてもすっきりした明るい表情のあゆちゃん。
私、こんなあゆちゃんが好きだったわ。

『秋子さん……秋子さんを必要とする人のために帰らないとダメだよ。
 だから、今はボクが力を貸してあげる。だから、ボクと一緒に』

一瞬の光に包まれて、私は思わず目を閉じた。
次に目を開いた時、私の目に、四角い模様の天井らしきものが見えたわ。

ピッ・ピッ・ピッと周期的な音が聞こえる。
私の顔にマスクが、そして体のあちこちにちくりとした痛みを感じる。

そして、私の右手の手のひらを握る暖かい感触を感じたの。
それが、名雪の手だって気が付いて、そっと手を握り返したわ。

自分の手のひらから、名雪の方へそっと目線を移していく。
涙を浮かべる名雪の顔、

(あら、酷い顔をしているのね。どうしたのかしら?)

「な・ゆ・き?」
「お、お母さん! ……先生、お母さんが! お母さんが!」

名雪ったら、どうしたのかしら?

その理由はしばらくして駆けつけた医師が教えてくれたわ。
私、交通事故で10日ほど意識不明になっていたのね。
それで、体の自由があまり利かない理由が分かったわ。


数日後、私の病室に祐一さんが見舞いに来ました。

何か迷っているような悩んでいるような、そんな祐一さんですね。
祐一さんが再びこの街に来てからというもの、名雪との間にもいろいろあったみたい。

「秋子さん、俺、名雪のこと傷つけてばかりでした。昔も今も」

祐一さん、名雪はそれでも貴方と一緒に居たいのですよ。
だって、貴方は傷つけたくて名雪を傷つけたわけではないもの。
ちょっとした行き違い、きっと名雪もわかってくれるわ。
なにより、祐一さんは、いつも名雪にとって優しいお兄様ですもの。

……あの時も、

「名雪の嘘つき、やっぱり外は寒いじゃないか!」
「え〜、私、寒くないよ〜! 祐一が寒がりなんだよ〜」
「こりゃ、名雪は針千本の刑だな。今なら特別で畳針を千本だ」
「そんなに飲めないよ……」
「ダメだ!」
「祐一の意地悪! いいもん、祐一、今日の晩ご飯は紅ショウガづくし。
 紅ショウガごはんに紅しょうがをかけてたべるの。飲み物はコップ一杯に絞った紅ショウガをしぼった汁なんだから!」

庭に座っていると、よくそんな二人の声が聞こえたきたわ。
二人のやりとりは、聞いていて本当に楽しいわ。
祐一さんはいつも口が悪くて、名雪は泣き虫で……でも、最後は祐一さんが名雪に優しくしてあげる。
まるで、私と信二さんとの幼い頃みたい。

……だから、私は心配していないんだけど、つい口を出してしまいますね。

「名雪は今でも白馬の王子を待ち続ける少女なんですね」
「そうなんですか?」

名雪はきっと、私に似たんですね。
待っているばかりでは、なかなか実らないのに。
ふふ、なら、少しだけ祐一さんの気持ちを後押ししてみましょうか。

「祐一さん、恋は人を育むものですよ。
 たとえ実っても実らなくても、恋する気持ちはその人の生きる糧になるんじゃないかしら?」
「恋は人を育むもの、ですか?」

祐一さん、きっと、まだ意味が分からないでしょうね。
でも、名雪も祐一さんも恋すれば、きっと気が付くでしょう。

だって、私は恋をしたから大人になれたんですもの。
いつも、信二さんや浩さんに包まれて、私の愛情は育まれたから。
そんな私が何をしてあげられるかわかりませんけど、ひとつお節介をしてしまいましょうか。

祐一さんが去った後、私は携帯電話を取り出して、姉に電話しました。

「もしもし、姉さん?」
『秋子? 体の方は、もう大丈夫なの? 心配したわよ』
「体は順調に回復しているわ。
 ところで姉さんに頼みがあるの。
 祐一さん、もうしばらく、私が預かっていいかしら?」
『秋子がいいなら構わないけど、一体、どういう風の吹き回し?』
「祐一さんと名雪の恋心をもうしばらく側で見守ってあげようと思って。
 あの二人、まだまだ心配だもの」
『大丈夫よ。だって、秋子が結婚したのも高3の頃じゃない。
 でも、秋子ほどではないかもね。
 いいわ、とりあえず、祐一が卒業するまで秋子にお願いするわね』
「ごめんなさい、無理を言って」
『気にしてないわ。
 秋子、二人きりの姉妹なんだから、たまには私にも甘えなさいな』

私は知っていたの、あゆちゃんがこの病院にいるってこと。
これから先、名雪とあゆちゃんとで祐一さんの取り合いになるかもしれないわね。
でも、それも楽しいわね。

「お母さん!」
「どうしたの、名雪? そんなに血相を変えて」
「あゆちゃんが、あゆちゃんが生きているんだよ。それもこの病院で!」
「知っているわよ。
 でも、それを一番聞きたいのは私よりも、祐一さんでしょう?
 ……迎えに行きなさい、名雪、列車の時刻にはまだ間があるわ」
「う、うん……お母さん、ごめん。行ってくるね」

名雪は慌てて病室を出ようとしたわ。
でも、ドアの前で急に立ち止まったの。

「あ、あのね……お母さん……一つお願いしていいかな?」
「何? 名雪、言ってごらんなさい」
「祐一、もう少しの間、家で暮らしてもいいかな?」

私は静かに息を整えて、ちょっと親としての威厳を込めて返事したわ。

「了承」

あゆちゃん……名雪の恋のライバルの登場ですね……先の長い話になりそうです。
名雪、大丈夫かしら、心配だわ。


【雅】

今日、離婚届を役所に出してきた。
私に子供ができにくい、それで夫婦仲が冷めてしまったわ。

それから10年後、

(子供……か)

もし、浩さんと結ばれて子供が生まれていたら、今頃いくつになっていたのかな。

「雅さん、そろそろ合気道の稽古をお願いします」

私に声を掛けてきたのが、桜庭葵様、桜庭グループの娘。
私は彼女の教育係になって、葵様が幼い頃からずっと側で見守ってきたわ。

それこそ、私の実の娘以上に可愛がって……いえ、厳しく教育しました。

「雅様、私を雅様の娘だと思ってもいいです」

そんな可愛い事をいう優しい葵様。
純粋で、優しくて、何事にも一生懸命で、笑うと人形のように可愛い。
そんな葵様だったから、私は全てを忘れて葵様一筋で尽くしてこれました。

そんなある日、

「雅さん、ごめんなさい。
 私、薫様に会いにいきます」

葵様には、花菱財閥の御曹司である薫という、幼い頃からの婚約者がいたのです。
しかし、数ヶ月前、突然花菱側から縁談の破談が言い渡された。
理由は分かりませんが、一方的な話だったのでしょう。

私にも、幼なじみの浩や信二さんがいました。
この年頃の娘が恋をすることがどんなことか、実感できます。

葵様は薫様一筋、それは私には痛いほどよく分かります。
辛い稽古事を一生懸命こなす葵様は、なにかにつけて、薫様・薫様と言っていましたから。
そんな葵様の心を裏切るようなそんな破談をした男に、葵様を任せることなどできません。

(葵様は私が絶対に幸せにして見せます!)

私は愛車のキーを手にし、葵様の後をおうように、薫という男の元へ車を走らせました。

(葵様、決して早まってはいけません!)

私の車をあるアパートの前で止めました。
そして、今、「花菱薫」と書かれた表札のある部屋を静かにノックする。
そして……



第1章 FIN, 第2章へ続く。

後書き

秋子・雅「読者の皆様、第1章の章ENDまでお読みいただき、ありがとうございました」
名雪・葵 :「第2章からは私達二人の話になります。応援をよろしくお願いします」


作者:「やっと第1章の章END」
秋子:「SILVIAさん、お疲れ様です」
雅  :「SILVIA様、私の恋はどうなるのです? ちょっと、あんまりなのでは?」
作者:「あはは……第2章の終わりまでに考えておきます。なにせ、二人のENDは本編にないもので……」
秋子:「それにしてもヒロインがほとんど出ない話なのに、10話とは粘りましたね」
作者:「ちょっとオリジナルっぽかったけどね。でも、伏線に1章使う結果になったかも」

<作者・シルビアよりSS読者の皆様へ>

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