どんな時でも二人でいる時間があるなら、 想いは紡がれる。
結果が全てなのではない……二人で居る時間が、二人にとっての生きる糧となるのだと。





蒼き新星45万HIT記念
 
系譜
第1章 秘められた想い
 
第9話 結愛
 
シルビア





秋子と雅が高校2年の3学期の半ばを迎える2月のこと。
秋子と雅は屋上で二人きりで話をしていた。

【ALL】

「そう……浩が秋子にプロポーズしたんだ」
「うん、それで私、2年の終わりに学校を中退するの」
「寂しいね」
「でも、すぐに会えるよ」
「えっ、どうして?」
「私と浩君ね、学生結婚を認めてもらう条件が大学に進学することなの。
 将来のことを考えてちゃんと勉強しなさいってことで。
 それで、私と浩君は北大を受験するつもりなのよ。
 私は、今年の春に大検をうけて、今年、合格したらだけど」
「あは、秋子のお母さん達らしいね」
「うん。でも、北大に合格したら、二人で一緒に住むの。
 北の街に浩君の親戚の空き家があって、そこを浩君が譲り受けるの」

雅は秋子のどこか恋に呆けた様子に呆れていた。
まあ、この二人ならうまくやっていけるのかもしれないと、雅は思っていた。
そのために、雅は失恋したのだが、浩が幸せにならと心の中で諦めていた。

「秋子ったら、もうラブラブ新居まで決定しているわけ?」
「ラブラブって……恥ずかしいよ」
「第一、内気で泣き虫の秋子が、私よりも先に学生結婚するなんて……運命って分からないわ」


この年、
 3月 秋子が高校を中退する。
 5月 相沢家に嫁いだ秋子の姉・春子が男の子を産む。祐一と名付けられる。
 9月 秋子、大検に合格する。
10月 浩が18才になる。
    秋子と浩は家族と親しい人との内輪の結婚式を挙げ、入籍する。
12月 出産予定より1月遅れて、秋子は女の子を産む。子は名雪と名付けられる。

その翌年、
 2月 秋子・雅・浩の3人は揃って北大に合格し、進学した。
    秋子は心理学科、雅は経営学科、浩は社会学科であった。
 3月 秋子と浩が北の街の新居に移り住む。


そして、4年の月日が流れた。
祐一と名雪、それぞれ4才、秋子の家を訪れた相沢夫婦に連れられた祐一は、秋子の娘の名雪と初めてお互いに顔を合わせる。

雅は大学院に留学し、そこで修士課程を終えた。
就職後、仕事の関係で再会した高校の先輩の桜庭と友達の間柄になり、桜庭グループの企業に転職した。
そして、その桜庭の紹介によって出会った男性と恋に落ちた。

そして……
雅と秋子が大学を卒業して3年後のことである。

娘の名雪を車の事故から守ろうとした浩が、車にはねられ重傷を負った。

病院の集中治療室、駆けつけた秋子を前に、ベッドに横たわる浩の姿があった。
浩の容態は悪く、医者はここ数日が峠だと秋子に告げた。

秋子はただ浩の側に寄り添ったまま、時折、浩に向かい話しかけていた。

「浩さんまで私を置き去ってしまうんですか?
 そんなの、そんなの、あんまりです。
 ……お願い、目を覚まして、私を愛しているって言って
 ……私、私……」

その声に、浩の意識がゆるやかに戻った。
だが、医療機器の示す情報は、命の終焉を予告しているかのようだった。
医師が最後の別れを言うように、そう秋子に告げた。

「あ…………秋子…………どこに……いる?」
「あなた! あなた! 私は、秋子はここです」

秋子は浩の手を取り、力一杯握りしめた。

「俺のこと……まだ恨んでいるか?
 秋子の親友の雅を……裏切り……お前を妻にしたことを。
 秋子の……信二さんへの……気持ちを……捨てさせたことを」
「いいえ!
 恨んでなんていません。
 私は、私は……今はあなたの事を心から愛しています。
 ……貴方が告白してくれたあの日からずっと。
 その気持ちを私に気付かせてくれたのは、あなたです。
 だから、そんな風に思わないで」

泣きたい気持ちを抑え、懸命に最後に伝えたい気持ちを告げるために言葉を繋ぐ秋子だった。
7年にわたる結婚生活だったが、どこか夫婦の中にあったわだかまりは永らく残っていた。
それは、名雪が浩の娘かどうかということに起因していたことだ。
秋子はつい数日前、DNA鑑定の結果を聞いて、その結果を浩に告げようとしていた矢先に、浩は事故に遭ってしまったのだ。


浩は黙ってその言葉を聞き、かすかに微笑みを浮かべ

「そうか……俺は秋子が幸せなら……もう悔いはない。
 こんな形の夫婦だったけど……俺は幸せだった、秋子」
「あなた…名雪は、名雪は貴方の実の娘でした。それを伝えたかったの。
 それに、あの時私と名雪を受け容れてくれて、ありがとうって」
「そうか……名雪が……俺の実の娘なのか……嬉しいよ。
 秋子、俺の娘の名雪を……頼む。
 でも、今度は……俺は力になって……やれそうに……ない……な」
「あなた!」

突如、ピーと心電図の機械が音を立てた。
心拍数を示すラインで0の所でフラットになっていた。

「あなた〜〜〜〜!」

去りゆく夫を呼び叫び、泣き崩れる秋子の姿があった。


「秋子、元気だして……って、今は無理そうね」
「雅……私、私……もうどうしたらいいか分からない。
 信二さんだけじゃなくて、浩さんまで……どうして、どうしてなの!」
「秋子……」

浩の通夜、秋子は雅といた。
通夜に参列する人達から離れ、ベランダに抜けた二人が話していた。
そのベランダに、母を捜しにきた名雪がやってきた。

「あっ、お母さん、居た〜♪」
「名雪……」
「秋子、信二さんの時とは違うよ。……浩は秋子に名雪を残してくれたんだから」
「雅……そうだね、雅。浩さんとの娘がいるんだものね」

秋子は少し冷静さを取り戻した。
だが、対照的に、雅は落胆したような寂しい表情を浮かべた。

「雅?」
「秋子が少し羨ましい……私は子を授かれたいんだもの。
 …………私ね、子供が出来にくい体みたいなの」
「えっ!」
「それが原因で、私、今は夫とうまくいっていないの。多分離婚することになりそう」
「そう……」

心配そうな表情を浮かべる秋子に向かい雅は首を横に振った。
そして、秋子に尋ねた。

「私の事は気にしないで。名雪は、浩の子、それだけでも知って嬉しいの。
 浩と信二さんとの4人で過ごした日々のこと、今でも忘れていない。
 むろん、浩を好きになったこと、今でも後悔していない。
 秋子と浩の忘れ形見がこの世にあるから、私はみんなの事を忘れずにいられる。
 だから、私も元気にならないとね……だから、今は泣かないことにするの」
「私も……今は泣けないわね。名雪と雅がいるから」
「ふふ、私達、似たもの同士なのかな?」
「ええ、だって親友じゃない。似ていてもおかしくないわ」

そして、秋子と雅は目を合わせて吹き出し笑いを浮かべた。
その笑いの意味が分からず、うぅ〜と呻いている名雪の姿があった。

「私ね、今後、桜庭家の跡継ぎ娘の教育係をすることになるかも。
 葵ちゃんっていう子なんだけど。名雪よりちょっと年上かな?
 名雪ちゃんを見ていると、私もこのぐらいの娘を育ててみたいし、話を受けようかな」
「あら、いいじゃないの。この年頃の女の子は楽しいわよ、変化があって」
「そうね」

秋子は名雪の頭を撫でながら雅に言った。
雅は名雪のことをみつめながら返事をした。
秋子は思い出し笑いを浮かべつつ、会話を繋げた。

「最近ね、名雪ったら、相沢祐一という従兄の男の子にぞっこんみたいなの」
「あれ、それって、秋子と信二さんの関係と同じじゃないの。
 でも、葵ちゃんという子もね、花菱薫という少年と婚約しているらしいの。
 まだ10才にもなっていないのに」
「そう。この子達も私達みたいに、4人で遊ぶ日がくるかしら?」
「そうなると、面白いわね。秋子みたいにお兄様とか呼ぶようになったりしてね」
「も〜、雅ったら……でも、お兄様か……懐かしいわね、その響きも」
「秋子は、今では信二さんですらすっかり思い出の中なのね。
 ということは、浩もああ見えても、秋子と一緒になってから結構頑張ったわけね。
 あーあ、ラブラブ夫婦には叶わないわね」

雅は夜空を見上げながら、秋子に言った。
秋子はそんな雅を見つめ、陽気な口調で返した。

「雅ったら……意地悪だよ〜♪」
「あは、ごめん♪ でも、秋子はやっぱり笑っている方が可愛いね」

幼い頃からどこか変わっていない、そのままの二人の姿があった。
二人は今は亡き信二と浩との思い出を夜空に浮かべていた。
彼らが二人に残した笑顔を浮かべながら。


後書き

作者:「さてと、次の話でいよいよ章END、秋子さんの代の恋愛を締めることになるね」
秋子:「締めのシーンはもう決めているのでしょう?」
作者:「そうだね、二人個々に話を締めることになるか」
雅  :「SILVIA様は私に冷たいですよね。私、全然ハッピーエンドになっていませんが?」
作者:「話は最後まで、ですよ、雅さん。それに2章も含めて全体的にどうかと言う面もあるし」

美汐:「さて、SILVIAさんはどういう話で締めることでしょうね」
香里:「さしあたり本編に橋をかける、そんなところではないかしら?」
栞  :「シナリオのプロトによれば、私たちの存在を一気にすっ飛ばすみたいですけど……」
香里:「えー! まさか、私達をさしおいて連載するなんてこと……」
美汐:「SILVIAさんならやりかねませんね。
    これは、佐祐理お姉様にお願いしてSILVIAさんを説得しないと、第2章で私達の出番ないですよ、きっと」

<作者・シルビアよりSS読者の皆様へ>

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