変わらない親しみ……それが幼なじみの私たち4人の間柄だった。
でも、私達はその関係を捨てて、恋することを選んだ。

不思議……恋をしながら私は変わっていく。
数年の間変わらなかった想いなのに、数ヶ月の間に瞬く間に想いが変わっていく。

引き返せないところまで、私の想いはふくらんでいく。
……それは分かっている、
……でも、たとえその結末がどうなろうとも、私はきっと振り返ることはない。

私は恋することを選んでしまったから。




蒼き新星45万HIT記念
 
系譜
第1章 秘められた想い
 
第6話 深愛 III
 
シルビア





季節は夏、秋子や雅達に夏休みが訪れた。

秋子や雅、信二や浩の四人にとって、今年の夏休みは例年にない特別なものとなった。
そう、去年と違うのは幼なじみの仲間でなく、今年は恋人同士で迎える夏だからだ。
信二&秋子や浩&雅のツーペアのカップルが誕生していた。

夏休みの初日、秋子と雅はデパートの水着売り場で、どこにでもありそうな平凡な(?)ショッピングをしていた。

【秋子】

「え〜! 恥ずかしいよ〜〜」
「なーに、言っているのよ、秋子! まさか、スクール水着で海にいくつもりじゃないでしょうね?」
「だからって……こんな水着、恥ずかしくて、私、着れないよ〜。
 だって……ただでさえ、人前で肌をさらすのに?
 それなのに、こんな大胆な水着なんて着たら……私、熱病になっちゃう」

かなりカットのきわどいビキニの水着を試着した秋子は、それだけで顔が真っ赤になっていた。
雅の方はそこはかとなく色気のある水着をちゃっかり選んで、既に決めていたのだが、秋子の方はなかなか決まらなかった。

「も〜、仕方がないわね……じゃ、こんな感じの水着でどう?
 これなら、秋子には似合うと思うけど?」
「白のビキニ? 
 まるで下着みたいじゃない…………私、絶対に意識しちゃうよ〜」
「それもそうだね……でも、白、秋子にはよく似合うんだけどな〜?
 じゃ、百歩譲って、こんなデザインでどう?」
「う、うん……これなら……まだ、大丈夫。……それでも少し恥ずかしいけど」
「じゃ、決まりね! はぁ〜、3時間もかかるなんて思わなかったわ」

昼から水着を選びはじめてかれこれ3時間、時計の針は午後4時近くを指していた。

「ごめんね、雅。おわびに好きなものを奢るから……許して」
「はい、はい…それでいいわよ。
 ま〜、秋子がちょっと大人っぽい水着を着たいなんて言ったからって、好奇心を抱いた私もいけなかったのよね」
「う、うぅ〜……だって〜、えーと、その〜」
「さてと、どうして急にそんな心境になったのかは、あとでじっくりとパフェでも食べながら、たっぷり訊問してあげるから」
「え〜! 雅、見逃してよ〜」
「だめ! それに、秋子の恋愛ってちょっと興味がわくのよ」

雅は秋子を追求しようとする腹つもりを止める気などなかった。
去年までの秋子のおとなしめの水着姿を知っている雅にしてみれば、秋子が今年の勝負水着を選ぶらしいということだけでも、興味はしんしんなのだ。
当の本人・雅が選んだ水着にしても、去年のものに比べ十分色気の加わったものなのだが。

「それで、秋子! どういう心境の変化なのかな?」
「あのね……信二さんが割ともてるってこと、分かったの。
 それでも信二さんは私一筋だっていってくれるのだけど
 ……やっぱり周りに綺麗な女性がいると、私、不安になっちゃうのよ」
「ふーん……分からなくもないけどね。でも、それだけじゃないね?」
「う、うん……雅、鋭すぎだよ〜。
 ……あのね、これからは私も少し積極的になって、お兄様を喜ばしてあげたいの。
もっと女の子らしくなって、お兄様の側にいても恥ずかしくないぐらいに……」

十分女の子らしいのに、当の秋子本人はそうでないと思っているらしい
……雅はそう思っていた。

「ふーん、秋子って今でも十分に女の子らしくみえるけどね。要するに、嫉妬というものを経験したわけだね、秋子は。
 それでお兄様を取られたくないから、誘惑すると」
「ちょっと……雅。それじゃ、まるで私がお兄様を色仕掛けしているように聞こえるよ〜」
「あら? 秋子ったら信二さんに色仕掛けを全くしたことないの? 本当に?」
「実は…………ちょっとだけ……したこと……ある」
「だと思った。あんなに恋愛に奥手の秋子が、大人っぽくなりたい、なんて不自然だもん。でも、信二さん絡みなら納得できるのよね、これが」
「雅〜!」
「私だって信二さんや秋子の側で二人をずっと見てきているのよ?
 それぐらいすぐに想像がつくわ。
 お兄様とどこまで進んだの? 隠しても無駄よ♪
 ほらほら、白状してしまいなさい、秋子」
「実はね…………お兄様とはね……Bまでなの」
「それで、今年の夏は一大決心をして、お兄様が望むなら何をされてもいい、そういう気持ちになったわけ?」
「も〜、雅ったら、なんてことを言うのよ! そんなこと……そんなこと……」

「『お兄様、秋子の一番大切なものをあげるわ。お兄様に捧げるためにずっと守ってきたの……』
 『秋子……嬉しいよ』
 ……なーんてシーンが浮かんでくるわね?」

雅は手振り素振りで一人芝居をした。

「雅〜〜! そんな恥ずかしいこと、私、言えるわけがないじゃない〜!」
「本当に?」
「……………」
「お兄様を求める女性がたくさん居ても?」
「……………そんなの…いや」
「じゃ、お兄様が求めてくるならあげちゃうのでしょ?」
「……多分。……って、あ〜、雅ったら〜! ずるいよ、ずるいよ……私ばっかり」
「だって、私は浩が求めてきたら、あげちゃうもん♪」
「そんな…あっけらかんと……凄いこと言わないでよ、雅」
「だって、誰でも一度は経験するのよ……誘惑の甘い罠♪
 それだったら、大好きな人にあげたいじゃない♪」
「私の負けね……でも、私も大好きな人に……あげたいかな」
「そう、そう♪」
「はぁ〜………」

二人はレストランに入って、パフェとクレープの飲み物を注文した。
オーダーしたものを食べながら、他愛もない話をしていた。
そのうち、二人の話はさっきの話に戻っていた。

「雅……私ね、一度、お兄様をちょっぴり誘惑したんだ。
 でも、お兄様、応じてくれなかった。
 私を大切にしてくれるお兄様は嬉しいけど、私って魅力ないのかって不安になるの」
「そうかな〜、信二さんってかなり秋子のことを意識していると思うけど?」
「それは雅が信二さんの周りにいる女性達を見てないから、そう言えるんだよ。
 ……美人ばっかりなのよ。それに比べると、私ってまだまだって思うの。
 少し強引でも、私のすべてを貰ってほしかったのに……」
「恋人になる前のつき合いが長いからね。それに、秋子は信二さん一筋だったし」
「うん……そうなの。だから、今年は水着も少し冒険したかったの。
やっぱり、妹じゃなくて、もっと一人の女性として意識してほしいから」
「秋子なら大丈夫だって。
 水着だって、とっても色っぽくて、信二さんでもきっとイチコロだって。
 それに、デザインが秋子らしくて、とても似合うと思ったよ」
「……うん、頑張ってみる」


あくる日。
4人を乗せた車が海岸沿いの高速道路を走っていた。
そして、信二は海の見えるパーキングに車を乗り入れて、止めた。

「雅と浩ときたら、魅せつけてくれるよ。こちとら、運転しているっていうのに」
「……うん、そうだね。でも、羨ましいな」

秋子はそう言うと、信二の手を取って、自分の手と組んだ。
そして、秋子は信二の手を強く握りしめて、自分の胸にたぐり寄せた。

「お兄様、もうすこし、あのままにしてあげようよ。私達はこうして……ね?」
「……あ、ああ、そうだな」

浩は寝不足とかで車内で寝ては、雅の肩に顔をもたげかけいていた。
休憩と車を止めても浩は寝たままなので、雅はそのまま車に残った。
信二と秋子は、仕方なしに、二人の分を含めて、パーキングの売店に飲み物とかの買い出しに出かけた。

信二はたばこに火を付け、一服した。
秋子は少し嫌そうな顔をしたものの、これでも車中では吸わないで我慢していたのだろうから仕方がないと諦めた。
それに、信二なりに、雅達だけの時間をあげようとしたのだろうことも、秋子は察していた。

「(ひゃっ)!」
「はは、そろそろ目を覚ませよ、浩。もうそろそろ海に着くぞ?
 それとも雅の肩は心地良いから、そのままがいいか?」
「信二さん! も〜……」

冷たいジュースの缶を頬に当てられて、浩は驚き目を覚ました。
浩はその顔が雅の肩にあると知って少し照れていたが、それ以上雅の方は満足そうな表情で浩を眺めていた。

いつしか、みんなを乗せた車が旅館の駐車場に止まっていた。
信二は浩の耳元で囁いた。

(信二さん、酷いですよ〜)
(雅の水着姿……楽しみなんだろ? だったら早く目をさませって)
(……かないませんね、信二さんには)
(そう言う俺だって、秋子の水着姿を楽しみにしているからな。類は友とやらだ)


「浩、信二さん、おまたせ♪ これ、似合うかな〜?」
「おまたせ……しました。えーと、あの……その〜……」

水着に着替えた雅と秋子が砂浜に姿を見せた。

「…………」
「…………」

浩と信二は二人の美少女の水着姿に呆然となった。

「ほら、秋子! 感想聞くって約束したでしょう?」
「う、うん……そうだね。あの〜、お兄様、……私のこの水着、似合っていますか」

「……あ、秋子……と、とっても似合っているよ。……可愛いし」
「ふーん、浩は私の水着を褒めてくれないのね?」
「……い、いや、そんなことはないよ。……ただ、言葉でうまく言えなくて……」
「冗談よ、浩。浩の表情見てもう分かっているから、大丈夫! 
ほら、鼻の下伸びているわよ」
「え、えっ?」

浩と信二はただ、照れているしかなかった。
雅と秋子はあわてふためく二人の様子に、笑みをこぼした。

「はい、浩……日焼け止めオイル、塗ってね?
 言っておくけど、私の水着のこと、ちゃんと褒めてくれない罰だからね!」
「あ、ああ……」
「でも、この水着、結構勇気が要ったんだけどな〜。褒めてくれないんだ、浩……」
「綺麗だし、色っぽいし……よく似合っているとは……思う。雅、とってもいいよ」
「本当に?」
「うん……」
「それじゃ、後で、いい女の私と腕を組んで浜辺、一緒に歩いてくれる?」
「……光栄だよ」


「お兄様……ちょっと、この水着、私にはちょっと大人っぽい感じすぎたかな?」
「少しね。でも、秋子、急にどういう風の吹き回しだい?」
「…………お兄様にもっと…………私を見て欲しかったの。それで…」
「馬鹿だな、俺は秋子一筋だって言ったじゃないか」
「お兄様……」
「でも、秋子もいつのまにか、すっかり女の子じゃなくてレディになったね。
 少し、驚いた。悪いな……今は付き合っているのに、今更こんなこと言って」
「本当?」
「ああ、本当だ。これからはもう少しレディを扱うつもりで付き合うとするよ」
「嬉しいです♪」


「信二さん、そろそろ泳ぎ始めませんか?」
「ああ、そうだな。じゃ、秋子も雅も行くぞ?」
「「はい♪」」

信二はフリスピーを抱えて海に向かっていった。
腰まで浸かる深さに達すると、手に持つフリスピーを後から追ってきた秋子に向けて投げた。
フリスピーは秋子の手前で水面に落ちそうになる、それを掴もうとした秋子は頭から海中に突っ込んでしまった。

「えへ…えへへ♪……えーい!」

秋子はめげずにフリスピーを浩に向けて放った。
高く舞い上がったフリスピーを、浩はキャッチ出来ず背後に倒れ海中に転げ落ちる。

「浩! だ、大丈夫〜?」
「……あ、ああ。うんしょっと…」

雅は海中で起きあがろうとする浩に手を差し伸べた。
だが、体の軽い雅は、逆に浩の手に引っ張られて、浩ごと海中にドボンした。

「雅〜、浩〜、何をしているの〜♪」
「こら〜、そこのバカップル! 海の中でまでいちゃつくな〜♪」
「「あはは……」」

……2組のカップルは、ただ時の流れの中で幸せを感じていた。
夕日が水平線にさしかかる、その時まで。


「おーい、焼けたぞ〜! 秋子、そっちは準備できたか〜?」
「お兄様、こっちも準備できました!」

夕暮れ、4人は浜辺でバーベキューをしていた。
厚めに切った肉を豪快に焼く信二は、焼き上がった肉をテーブルに運んだ。

「うわ〜、豪快ですね、信二さん!」
「はは、やっぱ、肉っていうのはこのぐらい厚みがないとな」
「お兄様、頂きます〜♪」
「え、ちょっと秋子ったら……それ、これから切るのよ?」
「えっ? ……あ、つい……せっかく、お兄様の作ってくれたものだから……」
「気持ちは分かるけどね♪」
「もう、雅ったら意地悪なのね」

ビールの空き缶がテーブルの上に積み重なっていく……
かなりの量の肉も、皿の上に数切れを残すのみとなった。

「秋子……お前、一体どれだけ飲む気だ?」
「えぇ〜、もぉ〜のめぇなぁい〜んだよ〜。あきぃこは酔っぱらいなのら〜。
 ぐ〜、すぅぃ〜……」
「ちょ、ちょっと……秋子!」

秋子は酔っぱらってか、信二の胸元に転げ込んだ。
やれやれといった表情を浮かべて信二は、そっと秋子を受け止めてそのままで居た。
そして、そばにいる浩と雅に尋ねた。

「弱ったな〜、秋子、どうやって部屋に運ぶ? 男女別部屋だろ?」
「あら、信二さんの部屋で一緒に寝ればいいじゃない?」
「おいおい、雅、なんて事を言うんだよ」
「いいじゃない、浩は私と、ねっ♪」
「……まあ、仕方ないか。じゃ、浩、秋子と部屋を変わってくれないか。
 それで、秋子の荷物は俺の部屋に置いておいてくれ。
 それと、俺は秋子を連れて行くから、ここの片付け二人に頼んでいいか?
 えーと、俺の車のキー、渡しておくから適当に突っ込んでおいてくれないか」
「まあ……いいですけど」
「うん、わかった」

信二は秋子をそっと胸に寄せて、膝と首もとに手をそえて抱き上げた。
そして、秋子の手がなにげに信二の首もとに回されていた。
そして、旅館の方へと去っていった。

「わおっ♪ ね、ね、あれってお姫様だっこだよね? いいな〜♪ 私も……」
「あのな……雅……」
「ね、ね、浩! ……私にもしてくれない?」
「何を言うかと思えば…………ほら、早くかたづけて戻るぞ。
 第一、荷物を抱えて、お姫様だっこなんてできるわけないだろう?」
「そ、そうね。……でも、ちょっぴり残念だな〜。
 王子様の腕の中に抱かれて……なんて、乙女の憧れなのに」
「わ、わかったって。いつか……雅にやってやるからさ」
「いつかって、今夜?」
「…………」

浩と雅は後かたづけして、荷物を車に積み込んだ。
それから、二人で旅館の方へと戻っていった。
浩は、手荷物の交換のために、秋子のハンドバックだけ持って信二の部屋を訪れた。

「信二さん、浩です。入りますね」
「ああ、どうぞ。
 ……浩、悪いな、やっぱり今夜、秋子はここで寝かせていいか?
 なにせ秋子があの様なんでな……
すまないが、寝る部屋、変えてくれ」
「構わないですよ。じゃ、俺の荷物だけ持っていきます。
 秋子のハンドバック、こっちに置いておきますね。
 じゃ、俺は雅と一緒の部屋ということで。
 それでは」
「サンキュー、浩」


-------雅のいる部屋。


信二は雅の部屋に入った。

「お帰り、浩♪」
「……嬉しそうだな、雅?」
「だって、こうして二人きりで部屋にいるなんて、久しぶりじゃない?
 ちょっとわくわくしちゃう♪」
「……そうか」

雅は浩にすっと浩の首に両手を回して抱きついた。
そして、少し不安げな表情を浮かべながら言った。

「浩、本当は秋子のこと、気にかかっているんでしょう?
 ……分かるわよ」
「雅……」
「……やっぱりね。
 だって、浩は秋子に失恋したこと、吹っ切れているとは思えないもの。
 でも、秋子は信二さんの彼女……今の浩は私の彼氏なのよ」
「……分かっているよ」
「今は……私の事、愛している? 私と付き合って良かったの?」
「……ああ、愛している。それが今の俺の答えだよ、雅」

浩のまっすぐな瞳が雅を捉える。
その浩の視線に、浩の気持ちを察した雅は、瞳を潤わせながら言った。

「ありがとう、浩。
 ……ね〜、浩…………その証……私にくれない?
 そのね……私も浩にあげるから……私の一番大切なものを浩にあげるから。
 もっとたくさんのこと……、浩に私を知ってほしいの」
「……雅」
「あのね……浩が望むなら……だけど……」
「いい女になったら今度は据え膳を食べてしまう、俺はそう言ったはずだぞ?
 雅はいい女だよ、知れば知るほどにね。だから……俺は我慢しない」

浩は、抱きついている雅の腰元にそっと左手を回し、強く抱きしめた。
浩の右手が、雅のあご下にそっと触れて、雅の顔を固定した。
浩の唇が雅に近づき、やがて、その距離が……0cmになった。

しばしの時間……その後に、二人の唇が離れていった。

「雅……」
「浩……連れて…行って」
「ああ……」

浩は少し前屈みにしゃがみ、左手を雅の膝裏に回した。
回された雅の両手はそのままに、その両手を体に引き寄せてゆっくりと雅を両手で持ち上げる。

「雅、さっき、こうして抱きあげてくれって言ったよな?」
「あはは、お姫様だっこ……でも、けっこう恥ずかしいね、これって」

両手に力を入れてしっかりしがみつく雅、
照れた表情を浮かべるその雅の唇に、浩はもう一度自分の唇を重ねた。

浩は、雅を抱きかかえたままベッドの近くにいき、雅をベッドの上にそっと横たえた。
そして、みずからの体を雅に寄り添うように、ベッドに乗り込んだ。

「いいんだな。引き返さないぞ、雅?
「……うん」

浩の右手が雅の頭の下に回り込んだ。
浩は回した右手をそっと自分の体に引き寄せた。
それが、二人のこれからの営みの開始の合図に……なった。


-------秋子のいる部屋。


信二は、酔いつぶれた秋子を寝かしつけ、そのベッド脇に腰を下ろしていた。
そして、信二の視線は、秋子に向けられていた。

「まったく、どうしたものかな……」
「……お兄様、そんなに悩まなくてもいいです」

秋子の両瞳が開き、信二は突然目覚めた秋子の様子にうろたえた。

「あのな、秋子、悩むって〜……」
「だって、お兄様、さっき、Hなこと考えていませんでした?」
「…………」

図星(?)を指されたのか、信二は動揺し、すぐに返す言葉を浮かべられなかった。
その様子を見て、秋子はくすくすと笑い出した。

「なんとなく……嬉しいですね。
 ほら、お兄様って、そんな風に私を見ることなんてなかったから。
 あっ、ひとりの女性として意識してくれているんだって、実感してしまいました」
「そりゃ、ま〜。今は秋子と付き合っているし、ちょっぴり意識は……するよ。
 幼なじみの頃とは訳がちがうよ」
「……ちょっぴり、ですか?」
「からかうなよ、秋子。
 ……俺だって年頃の男、理性で抑えるにも限界はある」

秋子は残念そうな、甘えるような視線を信二に投げかけた。
信二は照れて、秋子に背中を向けた。

秋子は上半身を起こして、信二の背中に抱きついた。
秋子は信二の背中を撫でるように顔をすりすりさせながら、信二に言った。

「秋子は……秋子は、お兄様にずっと愛される女性でいたいです。
 きっと、幼なじみの頃のようにお兄様とはつき合えません。
 お兄様が望むなら……いけない娘になってもいいんです。
 ……その覚悟、出来ていますから。
 愛しています、お兄様」
「秋子……」

秋子は、口にした言葉の恥ずかしさと不安に怯えた。
その気持ちが、ふれている信二の背中から、信二の心に伝わる。

「……無理するなよ、秋子。気持ちは嬉しいけど……秋子、震えているじゃないか?」
「お兄様……」
「愛し合っていれば自然と結びつくさ、そうだろう?
 あせらなくても、いつか、自然にそんな雰囲気になるさ。
 それに、酔っている秋子を抱くのはフェアじゃないみたいだから。
 ……今日は、ごめんな」
「ごめんなさい。
 本当は……今日、お兄様とって心に決めていたんだけど……やっぱり不安なの。
 酒をたくさん飲めばすこしは怖くなくなると思って……それで」
「もういいさ。秋子、今日はゆっくり休めよ」

秋子は着ている外着をゆっくりと脱いだ。
もぞもぞと物音が聞こえるのを信二は不可思議に思っていたが、そのまま秋子の反対を向いたままだった。
そして、掛け布団をかけ直して、端を持ち上げて信二を中に誘った。

「……お兄様も、ちゃんと休まないとだめです。
 さあ、ふとんを被ってください、お兄様」

その声に振り向いた信二は秋子の姿に驚いた。
インナーだけの姿の、白いすべやかな肌とふっくらとした双丘の谷間は、秋子の純情さに反して信二を動揺させるのには十分だった。

「あ、秋子……その姿……」
「ちょっと恥ずかしいのですけど……服着たままで寝られませんし。
 お兄様、せめて……今日は一緒のベッドで寝てくれませんか。
 私、こんな気持ちでは、とても一人では眠れません」
「…………」

秋子は、驚く信二の右手を握り、その手を自分の胸の中に引き寄せた。

「その……最後までは…怖いのですけど、
 ……私の体に触れるだけなら……お兄様の好きにしてください。
私、今晩はお兄様のぬくもりを感じていたいのです」
「……それもいいかな。俺も秋子のぬくもりを感じていたいし」

信二は掛け布団の中に潜り込み、そっと秋子を抱きしめた。
ブレーキのかからない感情のまま、信二と秋子の二人は互いの肌を重ねていた。

「お兄様、一つ、聞きたいことがあるのですけど?」
「何だい?」
「これからお兄様のことを、お兄様って呼ぶの、止めようと思うのです。
 何て呼んだらいいですか?
田代さん、たーちゃん、信二、信ちゃん…いろいろ考えたのですけど、
どれもしっくりこなくて」
「呼び方か……名前の信二でいいよ」
「信二……ちょっと恥ずかしいです。信二さん……あ、これがしっくりきますね。
 それでいいですか?」
「信二さん? ちょっと丁寧なのは気が引けるが、まあ、いいか」
「信二さん♪」
「なんか……いざ呼ばれてみると背中がむずいような、あはは……」
「ふふふ、信二さんって、照れ屋さんですね」



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次話予告
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次回、第7話「錯綜」

  幸福なカップル達に訪れる出来事がそれぞれの心を揺り動かす。



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後書き by 作者
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秋子:「『深愛』話で、SILVIAさんが私をどのようなイメージで描いているのか、
    やっと理解できました」
名雪:「え〜、お母さん、私にはわからないよ〜」
秋子:「1960年代〜70年代にかけてスーパースターになったかの有名な歌手、
    そうですね、SILVIAさん?」
作者:「ご名答。第1章の秋子さんは、山○百恵さんの歌の世界がモチーフです。
    結婚して主婦になり子を産み、幸せに暮らす……ですからね。
    『深愛』で参考にしたのは『青い果実』『ひと夏の体験』の曲です。
    もの凄く衝撃的な歌詞で話題を呼びましたが、今でも萌える曲です」
秋子:「なぜ、中森○菜とか松○聖子の世代にしなかったのですか?」
作者:「それは 秋子さんのねん……あっ、何でもないです、(げふんげふん)!
    時々思うけど、カノンのヒロインがお○○○こクラブの『セーラー服を脱がさ
    ないで』なんて曲を歌ったら萌えるかも……見たいな〜♪」
名雪:「見たいのかな? それなら、私達みんなで踊ってあげるね♪」

チャン・チャン・チャラ・チャチャチャ♪

  KANON:名雪・栞・あゆ・舞・佐祐理・香里・美汐
    「セーラー服を……! 脱〜が〜さ〜ないで……」

作者:※現役高校生ヒロインs'の砲直撃により撃沈されました。

佐祐理:「あはは〜、作者さん、大丈夫ですか〜?」
舞 :「ダメ…………当分、執筆はお休み」
栞 :「薬、出しましょうか?」
香里:「心配ないわ。この程度だと、そのうち復活するだろうし」
あゆ:「去年の作者とファンへの感謝の気持ちだったのに……」
美汐:「SILVIAさん……この連載で私をヒロインにしなかった報いですね」
名雪:「えへ♪ 今回は私が連載のヒロインなんだよ〜」

繭 :「名雪さん、まだまだ甘いですわ!
    うかうかしていると、この私、繭が祐一さんをかっさらいますわ。
    2章のヒロインはこの美しく華麗な繭に決まってますのよ」
葵 :「そうすると……これで薫様は私だけの薫様なのですね♪」
繭 :「…………」




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