恋することは楽しいことだけだと思っていた……それが間違いだと気付くまで。
でも、目覚めた私の想いは止まらなかった。
 









蒼き新星45万HIT記念
 
系譜
第1章 秘められた想い
 
第2話 淡恋
 
シルビア








【秋子】

夢だったのかしら……

『秋子……俺と付き合ってくれないか?』

……ううん、違う
……あれはお兄様の気持ち
……うけとった証、それはお兄様の気持ち

私は自分の唇にそっと人差し指をあてて、その余韻をかみしめていた。
突然打ち明けられたお兄様の気持ち、うれしかったけど、びっくりしたわ。

ずっとつき合いたかった……彼女としてお兄様の側を歩いていたかった。
それがやっと叶ったわ♪。

だから……キス……はじめての私のキス……お兄様にあげちゃった♪
ちょっと男らしくなったお兄様…でも、相変わらず優しいお兄様…今は、私の彼氏♪


【ALL】


「あき…、あ…こ、秋子!」
「あ…う、うん…何、雅?」
「も〜、さっきからぼーっとしちゃって、どうしたの、秋子。授業、終わったよ」
「そ、そう…」
「帰ろう、秋子♪ それに、パフェ、奢ってもらう約束だよね、秋子?」
「…そうだったね」

先日、デートで少し帰りの遅くなりそうだった秋子は、雅に口実を作ってもらい、その見返りとしてパフェをねだられた。

「この前はどうしたのよ、秋子。
 まさか、信二さんと……うわぁ〜、秋子、積極的〜♪」
「そ、そんなんじゃないって…だって、まだ……キスしただけだもん……」
「えぇ〜〜〜キ・ス〜〜〜? 秋子が〜?
 ねぇねぇ〜、どっちからキスしたのよ〜、信二さんから? それとも秋子から?」
「も〜、雅ったら……恥ずかしいよ。やめてよ〜」
「いいじゃないの。教えてよ〜、どっちから?」
「……お兄様からしてくれたの」

可愛い〜♪……真っ赤に照れてしまう秋子をみて、雅は心が躍ってしまった。
恋する秋子の表情は永らく見てきたものの、それでも、今目の前にいる秋子はとびきり可愛く思えた。

「信二さん、やる〜♪ そりゃそうよね、秋子からキスするなんて想像できないもの」
「酷いよ、雅。私だってお兄様になら……」
「私だって? え、何々、秋子から積極的になにかしてあげるってわけ?
 それは無理よ、無理……天地がひっくり返っても、無理だわ」
「そ、そんなことないもん……お兄様が望むなら、私、何でもしてあげたいもん。
 だって…その…やっと、彼女にしてくれたから……私を好きになってくれたから。
 お兄様が喜んでくれるなら……ちょっと位…いけない娘になってもいいもん。
 ……あはっ♪ へんな事言っちゃったね。内緒だよ、雅」
「はぇ〜……秋子、それ、マジで言っている?」
「……うん」
「分からなくもないね…片思いが長かったもん、秋子。
 ずっと信二さんのことを好きで、憧れて……私、知ってるいよ、秋子が信二さんのことをお兄様と呼ぶ理由もね」
「えっ?」
「お兄様って言わないと、好きだって言ってしまいそうだった、だよね?」
「……気が付いていたの? もう、雅の意地悪!」
「当然。伊達に親友だといってないわよ、秋子。
 いいわ、秋子の恋、じゃんじゃん応援しちゃうから♪」
「雅……ありがとう。でもね…雅…」

雅の表情が一瞬曇った。

「分かってる……私の方はどうなのって聞きたいのでしょ?」
「……うん。だって私だけなんてちょっとずるい気がして。
 ……雅、浩君のこと、好きでしょ?」
「……秋子には隠してもしかたないね。そうよ、浩君のこと、大好き。
 でも、まだ振り向いてもらえそうもない」
「……そう」
「う、うん……でも、いいのよ、私ね、浩君がダメなら、他の人を捜すもん♪
 これでも、少しはもてるのよ!
 つい最近だって、ラブレター貰ったんだから」
「ラブレター? えっ、それって?」
「あっ……ははは……口が滑っちゃったね……あのね、3年生のね、西川さんなの」
「西川さん? バスケ部の西川さん? 格好よくてスポーツマンで噂の?」
「うん…私もね、ちょっと驚いている。……ライバル、多そうだね、ははは」
「そうだよね。でも、ラブレター貰うなら、脈があるかも♪
 そうか〜、じゃ〜、雅も彼氏ができるんだ〜」
「ちょ、ちょっと秋子。まだ、返事してないって」

秋子と雅が話をしている時、雅の見知った声が聞こえてきた。
ボックス席に座る二人の側に、浩が姿を見せていた。

「よ〜、秋子、雅。こんな所で何をくっちゃべってるんだ?」
「浩君?」
「店の窓越しに二人の姿を見かけてね。雅、横、座って良いか?」
「う、うん……(ポッ)」
「ふふ、雅ったら」
「??? どうしたの、二人とも。秋子も、やけに機嫌がいいみたいだし?」
「ふふ、浩君が登場するタイミングがいいなって思ってね」
「ちょ、ちょっと、秋子……」
「何のことだ、一体? それにタイミングって?」
「「内緒♪」」



【雅】

もぅ〜、秋子ったら
……あんな風にふるまったら浩君に気づかれちゃうじゃない。

でも、いいな〜、秋子…なんか幸せそう。
恋したらやっぱり変わるのかな〜。
私も彼氏…ほしいな。

でも、浩君の馬鹿は振り向いてくれそうもないし。
ラブレターの返事、OKしてみよう。
…私に彼氏ができたら…浩君、あせるかな〜。

うん、決めた。OKしようっと。
秋子に負けてられないわ。



……数日後

【浩】

30分の遅刻か……派手にやってしまったな。
あ〜、かったり〜、今日はさぼるとしよう。

俺はいつものサボり場所に行った。
それは屋上にある、ちょっと階段をあがった貯水タンクのあるところだ。
ここなら、そうそう先生にも生徒にも見つからない。

晴れた日なら日射しを浴びながら雲を眺められる、俺はここが好きだった。
鞄を枕にして、俺はいつものように体を横たえた。
眠い…さすがに昨日は朝方までゲームしていたからな。
まぁ〜、ときメモみたいな事が現実にあれば楽しいが、まさかないだろうし。

俺は眠気に勝てず、瞼を閉じて、ゆっくりと休むことにした。
そして、俺は体を揺すられ、女の子の声で目覚めた。

「ひろ………浩君!」
「う、うわぁ〜、どうして雅がここにいる?」
「やっぱりサボリだったのね、浩君。
 欠席しているから心配になって家に電話したら、出かけたっていうし……
それでここに来てみたのよ。案の定、寝息を立てているし!
……もう、心配したのよ。
それに、もう”昼休み”よ」
「な、何〜!」
「嘘じゃないわよ、ほら」

そういう雅の手には、弁当箱があった。

「そ、そうか……そういや、腹が減っている」(汗)
「私、今日はここで食べようかな。浩君も弁当でしょ?」
「あ、ああ」
「一緒に食べる? 美少女のお誘いよ♪」
「何いってやがる」

浩は笑いながら、鞄から弁当箱を取り出して、開いた。

「雅の弁当、美味そうだな? 少しくれ」
「あっ、酷い〜……それ今日のメインのタコ・ウィンナーなのに」
「そうか、じゃ〜、かわりにこれをやる。
 これはな、カレーコロッケ、俺の好物なんだぞ」
「うん♪ なんか嬉しいな」
「雅、カレー味って好きだっけ?」
「う、うん……カレー味、大好き」

無邪気だよな、こいつは……浩は心の中でそう思いながら、雅に尋ねた。

「そういや、雅。秋子に聞いたぞ。
 なんでも、お前、ラブレターもらったんだって?
 それも、人気のある3年生の…たしかニシカワとか言う奴から」
「えっ、知っていたの……うん、もらったよ」
「雅ももてるな、意外だったよ。
 もう、彼氏と付き合っているんだろ?
 いいな〜、俺も早く彼女がほしいよ」
「……も〜、勝手にきめないでよね。まだ、返事してないわよ」
「えっ、そうなの? てっきり、もう付き合っているのかと思っていたよ」

雅の顔がどことなく寂しそうになった。
雅は箸をもつ手を早めて弁当を食べ終えると、立ち上がった。

「ごめんね…今日、日直だから、教室に戻らないと。浩君、午後からは授業受けなさいよ?」
「わかったって、じゃ、先にいってろよ。俺はもうすこしここで寝ているから」
「はい、はい。じゃね!」

雅がはしご階段を降りて、屋上の扉を開けて降りていくのが聞こえた。
しばらくして、二人の男子生徒らしき声が聞こえた。

??(西川、今すれ違った女の子って、お前がアタックしている子じゃないのか?)
西川(ああ、1年の神楽崎 雅っていうんだ。いいスタイルしているだろ、桜庭)

(雅? ニシカワ?)

俺は二人の会話が気になって、二人の様子を上から隠れて見た。

桜庭「まったくお前の女好きにも呆れるよ。今度は1年生のあの子か?」
西川「そういうお前だって、今の彼女は俺が紹介してやったようなものだろ?」
桜庭「確かにな。西川が女の子に手を出さなければ知り合いようがない」
西川「だいたい、お前は少し性格が固いんだって。
   もう少し、青春をエンジョイすることを考えろよ。いいぜ、女は」
桜庭「そういうなって。俺は何人もの女の子と同時につき合えるほど器用じゃないよ。
   今の彼女で満足してるさ」
西川「まあいい。ところで、お前の部屋、今度貸してくれ。
   今俺の部屋、アネキが来ていて、女を連れ込めないんだよ。
   さすがに受験生ともなると親の目が厳しくてな」
桜庭「はぁ〜…またか。分かったよ。だけど、ほどほどにしておけよ」
西川「サンキュー。もつべきものはやっぱり親友だよな」
桜庭「悪友の間違いだろ、それ?」
西川「まあ、そういうなって。お前にはいろいろ世話になっているから、本当に感謝してるって」




(な、なんて奴……あいつ、最初から雅を手込めにするつもりなのか!
 ふざけやがって! だけど……雅……)

俺は二人が立ち去った後、屋上から教室に戻った。
雅が気になって、その姿を探した。
俺は雅に声をかけようとしたが、予鈴に遮られ、タイミングを外してしまった。

結局、俺は、雅になかなか声をかえられずじまいのまま、数日が経ってしまった。
秋子とゆっくり話す機会があったから、俺は秋子に尋ねることにした。

「な〜、秋子。雅のやつ、最近忙しいのか?
 いつも、放課後になるとすぐに姿がみかけなくなるんだが」
「あれ、浩君は知らないの?
 雅はね、今、上級生の西川さんとつきあっているんだよ。
 西川さんていうのは、この前雅にラブレターをあげた人だよ。
 多分、今頃二人でデートしているんじゃないのかな。
 だから、私と一緒にいる時間も最近少ないの。
 でも、雅に彼氏ができるのって、ちょっと嬉しいかな、私」
「秋子……それ、本当か?」
「嘘なんか言わないけど? どうかしたの、浩君。
 あ! ひょっとして、浩君、雅の事が好きなのかな〜♪
 それで、嫉妬してたりなんかして……きゃは♪」
「そんなんじゃないよ」
「あ、浩君……どうしたのよ……真剣な顔しちゃって」

全く女の子というのはすぐに恋に結びつけたがるもんだな。
雅のことは…そんなんじゃないんだよ。

俺は秋子を置いて、その場を早足で立ち去った。

俺は心配なんだよ。
……雅は俺の幼なじみで、
……雅は俺の親友で、
……俺の気持ちを救ってくれた女の子だから。

俺は秋子への気持ちを諦めた。……ずっと好きだった秋子への気持ちを。
それをただ一人分かってくれたのが雅だった。

あの時、俺は泣くのを我慢していた。
だけど、あいつの胸に抱かれて、俺はやっと素直に泣くことができた。
だから、俺は秋子を諦めて、秋子の幸せを願って身をひく勇気がもてた。
あの時泣けなかったら、俺は秋子や雅と笑顔で過ごすことはできないだろう。

雅が慰めてくれたから……俺は俺のままで居られた。
『……馬鹿ね。でも、明日には笑顔に戻るのよ、浩君』
雅の言葉があの時嬉しくて……だから、俺は笑って過ごそうと決めた。

(その雅が……)

俺は屋上で聞いた上級生の会話を思いだして、雅が危ないと直感した。
このまま、俺が黙っているのは……いや、もう黙っていられない。

俺は雅の家に向かった。

(7時か……)

まだ帰ってきてない、雅の母親がそう言っていた。
それから、俺は、家の近くで雅の帰りを待った。
かれこれ3時間は経っている……


こうしていた俺の目に、雅の姿が映った。
だが、俺は足がすくんでその場を動けなかった。

西川「楽しかったよ、雅。明日もまた一緒にいてくれるかい?」
雅「ええ」
西川「じゃ、約束しようか……」

次の瞬間、西川が雅の唇を奪っていた。
雅はすこし驚いた表情を浮かべていたが、西川のなすがままだった。

西川「それじゃ」

西川は踵をかえして、颯爽とその場を去っていった。
それを見送る雅は、しばし、その場に立ちすくんでいた。

俺は出るタイミングを逸していたが、それでも覚悟をきめて雅の前に行った。

「浩君?」
「雅、話があるんだ。ちょっといいか?」
「浩君……話って……なに?」

雅の顔に怯えにも似た表情が浮かんでいた。
雅がなぜ、そんな表情をしているのか、俺は分からなかったが、俺は話しを進めた。

「雅のために言うよ。
 西川先輩と付き合うのは、やめろ!」
「……どうして……どうして、そんなことを言うの?
 ……浩君には関係ないじゃない、どうしてそんなことを言うのよ……」
「関係なくないよ。俺は……」

雅の表情がとたんに曇った、それをみた俺は一瞬、言葉を失った。

「……………」
「……………」
「……浩君、お願い、理由を言って。納得したら、浩君の言うことを聞くわ」
「……お前の親友だから」
「……それだけ? 他には理由はないの?」
「……ない。……いや、今は話せない。
 だけど、俺を信じて言うことを聞いてくれ」
「今は話せないって……そんなの、ずるいよ。どうして、今、言ってくれないの?」
「ごめん」
「……浩君の馬鹿。どうして私の気持ち、分かってくれないの。どうして!」

屋上での上級生の会話、俺はそのことを雅に話すことができなかった。
それを話せば、雅も納得してくれたと思う。
だが、それは雅の今の恋愛を明らかに邪魔することに他ならない、雅が彼氏を本当に好きなら雅も傷つくことは明らかだ。

俺は走り去った雅を、ただ見送っていた。

それからしばらく、俺は雅と話をする機会に恵まれなかった。
どちらからともなく、話がしづらかった。

そんな雅が、突然欠席した。
1日……2日……3日

心配になった俺は、秋子に尋ねた。

「雅が学校休んでいる理由、秋子は知っているか?」
「……知っているわ」
「教えてくれないか、秋子」
「……浩君。でも、雅から言わないでくれって頼まれているの、ごめんなさい」
「えっ! それに、俺に言わないでくれってどういうことだよ?」
「本当は私から言ってはいけないことだけど
 ……でも、雅の気持ちを分かってあげられるのは、きっと、浩君だけかもね。
 ………………浩君、雅の事、どう思っている? 教えて」
「雅の事どう思っているかって? ……親友だよ、大切な親友」
「そう……やっぱり……。
 でも、浩君、雅はね、きっとそう思ってないよ。
 ……これ以上は私からは言えないわ。
 お願い、浩君、浩君が直接雅から彼女の気持ちを聞いてあげて。
 今の雅には、浩君の言葉しか、きっと通じないから……私でも、ダメなの」
「秋子……」

泣き崩れそうな秋子の様子を感じて、俺はそれ以上、話を続けることをやめた。
とにかく雅に会いにいこう、それしかない。
幼なじみの少年・少女の想いは静かに目覚めていった。








 

後書き by 作者


葵 :「SILVIA様、桜庭という上級生はもしや私のお父様ですか?」
作者:「正解♪ 桜庭大輔、桜庭葵のお父様という設定です」
葵 :「そうですか。
    でも、SILVIA様は何故か、雅さんをいじめているように見えますけど?」
作者:「その辺は内緒だよ♪ 葵ちゃんでも教えられない」
葵 :「SILVIA様はやはり意地悪です」
作者:「雅さんのことになると葵は気になるだろうけどね。今は黙ってみてなさい」
葵 :「そうします」

名雪:「あ〜あ、お母さん、すっかり恋する女の子だね」
作者:「そうでなければ、名雪という女の子は生まれないだろう?
    人のこと言える?」
名雪:「……………」


「Kanon」と「藍より青し」の両作品の裏ストーリーではじまりますが、
秋子・雅の1st世代の恋愛は山あり谷ありという感じで進みます。
はらはらして読んでもらえると嬉しいです。

でも、1st世代では、秋子が誰と結びつくかの結果が分かっているって?
それでもいいんです。
これはキャラの心の成長が重要なテーマの一つなのですから。




<作者・シルビアよりSS読者の皆様へ>

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ほんの少しのお時間を割いて、ぜひ皆様の声を作者のシルビア宛にお伝えくださると嬉しいです。

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