私が誰かを恋する自分の気持ちにはじめて気づいたのは…
 









蒼き新星45万HIT記念
 
系譜
第1章 秘められた想い
 
第1話 覚醒
 
シルビア








「秋子〜、一緒に帰らない? 何か食べていこうよ」

少女、神楽崎 雅はミドルヘアーを風になびかせながら、秋子の背後から声をかけた。

「ごめん、雅。今日はちょっと人と待ち合わせなの」

少女、二宮秋子は腰まで伸びたロングヘアーを風になびかせながら振り向いて答えた。

二人は中学以来の親友、この春に高校に入学した女生徒である。

「待ち合わせ? あっ、そうか…信二さんね?」
「…そうなの、お兄様と駅前で会うことになっているの」(照)
「ふふ、相変わらずよね、秋子。デート?」
「デ、デートだなんて…そんな大袈裟なものじゃないわ。…ちょっと会うだけよ」
「そんなこと言って、も〜。好きなんでしょう、信二さんのこと。いよいよ告白?」
「す、好きだなんて………私から、そんなこと言うなんて」(照)

「それなら、私が秋子と一緒に行っても大丈夫ね。デートだと邪魔できないけど」
「………雅、本当に一緒にくるの?」

「照れちゃって、も〜。秋子、可愛い♪ やっぱりデートするつもりだったんだ」
「も〜、雅ったら、やめてよ。そうじゃないったら…
 信二さんに新しい制服姿の私を見て貰おうと思って…。
 それに、雅だって…」

秋子は背後から抱きついた雅を引きはがした。

「おーい、秋子〜、雅〜!」

秋子と雅のクラスメートの水瀬 浩が遠くから声をかけてきた。

「ふふ、雅、憧れの人のお出ましね」
「秋子の意地悪……」(照)

「うん、どうかしたか、雅? 顔、真っ赤だぞ?」
「あのね、浩、雅はね……(モゴモゴ)」
「う、ううん……なんでもないの。気にしないで」

雅は秋子の口を押さえ、そっと秋子の耳元でささやいた。
雅は浩に好意をよせているものの、なかなか告白できず、今でも友達以上の関係のままだった。

(秋子、まだ内緒だって言ったじゃない)
(あ、そうだったね。ごめん、雅)
「……何だかな? まあ、いいか」

何か腑に落ちない、浩はそんな表情で秋子と雅を見つめた。

「秋子、行くわよ……信二さん、きっと、待ちくたびれているわよ。浩君も来る?」
「いいぞ。暇だから、一緒するよ」
「本当? 嬉しい」
「はぁ〜?」
「な、なんでもないの……さっ、行こう」
「そうね」

雅は浩の腕を取って、引っ張った。
秋子も冗談まじりに浩の反対側の手を取って、引いた。

「おいおい。雅、秋子……恥ずかしいだろ?」
「ふふ、浩君、まさに両手に華ね」
「美少女二人に手を引かれるなんて、浩君、もてるわね♪」

秋子は幼なじみの年上の従兄、田代 信二のことをお兄様として密かに慕っていた。
秋子は次女で、年上の姉との二人姉妹の環境で育った。
幼い頃から近所に住んでいた従兄の田代信二、彼は秋子と同じ学校を卒業して、秋子の住む町から2駅ほどいったところにある大学にこの春に進学した。

秋子、信二、雅、浩の4人は幼い頃からの知り合いで互いに長いつき合いであった。
10年ぐらい前の頃の4人の有様、それは……

「おかえりなさい、信ちゃん」
「…………」
「信ちゃん、ただいまは?」
「…………秋子、やっぱやめようよ、ままごとなんて、俺、いやだよ」
「(ぐす、ぐすん、うわーん)……信ちゃん、意地悪だよ〜」
「あ、あきこ………………」

「あ〜、信ちゃん、秋子を泣かせたな!」
「いや、そんなつもりじゃ、ないんだけど……」
「でも、秋子がこうして泣いているじゃないか」
「わ、わかった、秋子……まじめにやるから、もう泣くな」
「(ぐす、ぐすん)……信ちゃん、本当?」
「ああ、本当だ」
「うん♪」

「浩くん、どうしてよそのお家に行くのよ? 浩くんの相手は私なのに」
「み、雅……い、いやこれはな……」
「浩くんは雅の旦那様なのよ! 秋子を庇うなんて浮気だよ〜。許せない〜」
「ちょ、ちょっと待て、雅」

雅は砂地の泥をつかんで、浩に投げつけた。
浩はその泥を避けきれず、服がべっとりと汚れた。

「やったな〜、雅!」
「浩くんがいけないんだよ、浮気者〜」

そして、浩と雅の泥の投げ合いがはじまった。
止めにはいった信二と秋子の服も泥だらけになった。

「(ぐす、ぐすん)……新しいお洋服なのに……酷いよ〜! 浩ちゃんのばか〜!」

秋子は泣いてしまい、あげくに泥の投げ合いに加わってしまう。
少し冷静な年上の信二にさえ、もはや3人の泥投げを止められない。
そして、泥投げは3人が疲れ果てるまでひたすら続いた。

「くすん、くすん、えーん、お母さん……」
「あら、あら……どうしたの、秋子。それにみんなも?」

秋子の母は子供達の姿を見て仰天したものの、落ち着いて対応した。
手にもったタオルで子供達の泥を落として、早く風呂に入っておいで、とせかした。

「うん♪」

新品の洋服を泥だらけにしても何も叱らない、そんな母の微笑みを見て、秋子はほっとしたのか泣きやんで、風呂場に駆けていった。

「ごめんね、秋子」
「ごめん、秋子」

風呂場で体を洗いながら、浩と雅が謝ってきた。
秋子はそんな二人を笑って許して、シャワーを二人に向けた。

「えへへ♪ お返し〜」
「えっ、あっ、秋子〜、ひどいよ」

「秋子、何しているんだ? いいかげん仲直りしろよ」

信二が秋子を制した。

「ごめんなさい……」

信二と浩は溜息をついた。
4人の子供は風呂場でじゃれ合って後、母の淹れた紅茶とケーキを仲良く食べた。
ケーキのクリームを口元にべったりつけてショートケーキを食らう子供達の姿があった。




「ふーむ……あの泣き虫秋子がもう高校生か」

ファースト・フードでハンバーガーを食べながら、信二は秋子に言った。
信二が秋子達に会うのは、四ヶ月ぶりだった。

「お兄様、酷いわ。私だって、もう乙女よ。
 もっと女の子扱いしてくれてもいいじゃない!」
「いやな……秋子をみていると、どうしても幼い頃の泣き虫秋子のイメージが…」

苦笑いを浮かべながら信二が言い訳をした。

「お兄様の意地悪! せっかく新しい学校の制服姿をみてもらおうと来たのに」
「あ、そうだったな。……うーん、まあまあだな。秋子が立派に女の子しているとは」
「も〜、お兄様。私、髪だって一生懸命伸ばしたのよ。それなのに……」

秋子は伸ばした前髪の端を手にとりながら、拗ねた。

「そうね、秋子ったら、”お兄様に女の子としてみられたい”って、一生懸命髪をのばしていたもの」
「雅、それ、言ったらダメ! …内緒にしているんだから」
「ムダだって。秋子は昔から信二さんを、お兄様〜って、慕ってるんだからバレバレだって〜の」

Sサイズのジュースをストローで飲む雅や、照り焼きバーガーにぱくつく浩が何気なく秋子をからかった。
秋子は二人の言葉を聞いて、顔を真っ赤にして、俯いてしまった。
泣き虫秋子ではなくなっても、秋子はどことなく内気で恥ずかしがり屋なのだ。
会話を聞いた信二も視線のやり場に困って、どことなくきょろきょろした。

「まぁ〜、秋子も随分可愛くなってきたよな。
 今なら、泣き虫秋子は認識を改めてやるから、そう拗ねたり俯いたりはやめろよ」

これ以上秋子をからかったら泣き出しそうだ、信二はそう感じたらしくフォローをいれようとした。
信二は未だに秋子からお兄様とよばれるのだが、それを恥ずかしいと思いながらも、成長した秋子の可愛らしさを前にして、お兄様と呼ばれないとブレーキの利かない自分の心にも気付いていた。
一方の秋子もまた……
大学生になり、私服姿で過ごすようになった信二の姿、そう背が高く肩幅も広くそれでいて優しい笑顔をしてくれる従兄の姿に、秋子はいままでにないほどドキドキしていた。

だが、雅や浩の前では、年上にあたる信二は、照れくさくなって秋子を素直に褒めてあげられない、そんな雰囲気もあった。

四人はしばらくの時をファースト・フードで過ごして、帰り道についた。

「信二さん、秋子を送ってあげてね。私は浩君と一緒にかえるから。
 浩君、いくわよ」
「えっ、ああ、わかった」

雅は浩の手を引っ張って、早々とその場を立ち去ってしまった。

「ちょ、ちょっと、雅。……あ〜、行っちゃった」
「まったく雅も相変わらずだな。変に気をきかせようとして。
 仕方ない、送ってやるよ、秋子」
「う…うん…お兄様」

並木道の遊歩道を抜け、噴水のある公園まで、二人は歩を進めた。
公園を通りぬけようとした時、信二は秋子に声をかけた。

「秋子……その制服、よく似合っているよ。ごめん、さっきは言えなくて」
「えっ? お兄様……」
「…なんか綺麗になったな、秋子。久しぶりにあって、ずいぶん見違えたよ」

突然の信二の言葉に、秋子は胸のドキドキがとまらなくなった。
信二の言葉は、秋子が一番言って欲しい言葉だったから。

「……そ、そうなの? でも、お兄様も……ずいぶん格好よくなったね。
 やっぱり大学生になると変わるのかな」
「そうだな、周りがずいぶんお洒落だったりするから、俺も意識するからつい」
「お兄様はそのままでも…十分格好いいと思うわ。
 私は今のお兄様でも……う、ううん、何でもないの」

信二は秋子の言葉に、戸惑いを感じ取ったが、何かを決意したような口調で秋子に言った。

「秋子……俺と付き合ってくれないか?」
「えっ、今なんて……? ……本当にいいの、私で?」

信二は秋子の両肩を掴み、秋子の顔をしっかりと見つめて言った。

「もう一度、言うよ。秋子、俺と付き合ってくれないか?」
「……はい!……あっ……う、ううん。とても嬉しいの。
 私……お兄様とずっと付き合いたかったから」

信二は秋子をそっと胸の中に引き寄せた。

「俺、ずっと秋子に自分の気持ちを正直に言えなかった
 …やっと言えたよ。ごめんな、秋子」
「いいの。今はこうしていられるから。お兄様……大好き」




そんな二人の様子を、雅と浩は遠目に眺めていた。

「よかったわね、秋子」
「まったく雅はお節介だよな。自分の恋はそっちのけのくせに」
「……仕方ないじゃない。でも……ふられちゃったね、浩君」
「放っておいてくれよ。
 第一、俺はな……なんていうか……秋子が幸せならそれでいいんだよ」

男だから泣かないぞ、そんな風に堪えている様子が目じりにうかがえる、そんな浩の表情をみた雅が会話を繋いだ。

「いじらしいわね、浩君。ふふふ、私でよければ慰めてあげようか?」
「よせやい、雅に慰めてもらう俺の姿なんて想像できないよ」
「も〜、そんな事言って………私だって女の子なのよ」

雅は浩の頭を両手で掴むと、自分の胸に押しつけて抱き込んだ。

「自分の気持ちに嘘をついたらダメよ、気持ちを隠したりしないの。
 こんな時ぐらい我慢なんてしないで、思いっきり泣きなさいよ、浩君。
しばらくの間、こうしてあげるから……好きなのでしょう、秋子のことが」
「……雅、苦しいよ」
「それなら秋子が好きだと、正直に白状しなさい。ネタは上がっているのよ」
「……そうだよ、俺はずっと……秋子が好きだった……小さい頃からずっと。
 どうして……どうして……う、うぅ、うわ〜〜〜〜」
「……馬鹿ね。でも、明日には笑顔に戻るのよ、浩君。
 秋子もいい娘だけど、浩君を好きな娘は他にもいるわよ」

浩は雅の胸の中で思いっきり泣いた。
雅の目も潤みはじめ、浩の後ろ髪に滴が落ちていく。
自分を好きになってくれなくても、今はこうして好きな人を抱きしめていたい。
浩の気持ちにきがついていた雅にできることはそれだけだった。

信二と秋子の気持ちが通じた時、少し離れた所で、雅と浩の心は泣いていた。
そして、雅と浩の秘めた想いは恋情と友情との狭間で揺れ動いていった。

「おはよう、秋子」
「おはよう、雅。あっ、浩君、あっちにいるよ」

秋子と雅は浩の背後から声をかけた。

「「おはよう、浩君」」
「……お、おはよう。…秋子…雅」

想いをあきらめた秋子、そんな自分の気持ちを知られた雅、そんな二人を前に浩はいつものように振る舞おうと極力努力した。

雅はそんな浩の様子を、心の中でクスッと笑った。
浩の顔に浮かんだ笑顔、その笑顔を作るのに自分が少しでも係れたこと、それが雅は少し嬉しかったからだ。

幼なじみの少年・少女の想いは静かに目覚めていった。








 

後書き

SILVIAは2nd世代と対談していた。

名雪:「お母さんの幼少や少女の頃って、こんな感じなのかな〜」
作者:「名雪も人の事言えないと思うぞ? 泣き虫名雪だったじゃないか。
    Kanon秋子さんの幼少時代は、どちらかといえば甘え気味の女の子で
    ちょっと気弱で内気、でも自分の気持ちにはとても正直な雰囲気を
    イメージしていたんだけどね」
名雪:「うぅ〜…それは祐一がいけないんだよ〜。名雪は悪くないもん」
祐一:「俺のせいにするなよ。まるで俺が悪人みたいじゃないか」
名雪:「そうだよ、祐一がいつも意地悪ばかりして…」
作者:「まあ、名雪も祐一もその辺にしておきなよ」

葵 :「ところで、雅さんは随分快活な感じで描いてますね。
    私の教育係としての雅さんはとても厳しくてクールな感じなのですけど」
作者:「藍青の雅は、本当はこんな人ではというボクの想像を入れている。
    聡明で快活で、それでいて根が優しい、でも、
    恋愛は苦手でなかなか想いを伝えられないようなタイプかな。
    有る意味で、恋愛を頭で考えてしまいがちなところがある感じ。
    『君が望む永遠』に例えるなら、速瀬水月のように描きたいかな。
    雅と秋子はかなり対照的な性格だと、ボクは思うよ」

繭 :「ところで作者さん、繭と薫が結びつくENDもありですよね?」
作者:「どうかな〜、本編を裏切るか否か……というところだな。
    それは名雪&祐一についてもいえるが」
名雪:「SILVIAさん、私がヒロイン級の初めての作品でそういうことするの?」
作者:「この物語のヒロインは 4人いるぞ?
    名雪のわがままばかり聞くと思うか?
    葵ぐらい謙虚なら、名雪の話に手心をくわえてもいいな」


さて、長い間ためていたアイディアの「真愛の系譜」、いよいよ連載開始です。
「Kanon」と「藍より青し」の両作品の裏ストーリーではじまりますが、
秋子・雅の1st世代の恋愛は山あり谷ありという感じで進みます。
はらはらして読んでもらえると嬉しいですね。

でも、1st世代では、秋子が誰と結びつくかの結果が分かっているって?
それでもいいんです。
これはキャラの心の成長が重要なテーマの一つなのです。
第1章では、最終的に無敵の恋愛マスター・秋子と雅が誕生すればいいとね。



<作者・シルビアよりSS読者の皆様へ>

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