『誰かを愛する気持ち、そう、人の愛情に勝るものは世の中にはないの』
 









最後の真実
第3章 一番幸せだもの
 
第13話 「最後の真実」
 
シルビア











「お兄様とも……もうお別れなのね。
 ……今までありがとう、お兄様。さようなら……」

咲耶は泣きながら席を立ち、その場を立ち去ろうとした。
潤はその咲耶の左手をつかみ、引き留めた。

「今日は咲耶の誕生日のお祝いだと言っただろう?
 慌てないで座りなよ、咲耶ちゃん」

「何で引き留めるの、お兄様……私、こんな誕生日のお祝いなんて要らないわ!」

「咲耶ちゃん、今、席を立ったら一生後悔するぞ?」

「えっ?」

「咲耶ちゃん。もう1つの書類、見てないだろ?
 その意味がわからないのかい?
 それが俺からの咲耶ちゃんへの誕生日プレゼント……俺から咲耶への返事」

咲耶は少し冷静になって、潤から受け取った書類を見直した。
そして、咲耶の目は一枚のA3の紙に凝視した。

「え?……あ、あ〜〜〜〜〜! お兄様……私、私……」

それは『婚姻届』の書類だった。
既に潤の署名捺印、それと保証人欄に三上純一郎・三上加奈子の署名捺印がされていた。

「この指輪も咲耶に返すよ。咲耶が持っているべき、そうだよね?」

潤は掴んでいた咲耶の左手の薬指に結婚指輪をはめた。
それは、潤と咲耶の思い出の品、サリアであった咲耶から預かった結婚指輪であった。
……そう、咲耶が何よりも大切にしていた宝物の指輪。

「もちろん。これは俺からのプロポーズだよ。
 『結婚しよう、咲耶』
 これからは咲耶に俺の事をお兄様とは呼ばせないよ、いいよね?」

「お兄様……いいの、本当に……私、これを受け取ってもいいの?
 ……私……お兄様以外の人なんて、考えられなかった。
 私とお兄様は運命の赤い糸で結ばれている、これからもそう信じていいのね……」

「もちろんだよ。ずっと一緒にいたい、そう思うから。
 戸籍の手続きが終わり次第、籍をいれよう、咲耶ちゃん……いや、咲耶だね……」

「うん」

「咲耶、俺にもう一方の指輪をはめてくれるね?」

「……ううん、そうしたいけど……結婚式まで待って。
 でも、お兄様のプロポーズはその〜……OKよ……お兄様♪」

「それも悪くないな。じゃあ、そうしようか」

「でも、もうお兄様と呼べないのね。
 なんか、ちょっと名残惜しいけど。えーと……これからは『潤』でいいのかしら?」

「咲耶、誕生日祝いとプロポーズ記念も兼ねてね。
 クリスマスは内輪の婚約披露を兼ねて、両親・妹達とでやろう」

「でも、お兄様、意地悪だわ。いきなりプロポーズするなんて……」

「俺達に恋愛の課程が必要だったか?」

「そうね。……でも、もっとお兄様と恋愛したい、そんな気持ちもあるの……」

「俺達は生涯、恋愛し続ける……だろ?」

「も〜お兄様ったら♪ あ……潤だったわね」

「サリアの頃の気持ちを思い出せば、自然にそう呼べるって。そうだろ?」

「……意地悪」




「わー、雪、降ってきたわ……綺麗……」

「ホワイト・クリスマスになりそうだな」

「うん♪ ……お兄様、最高の誕生日だったわ、ありがとう」

咲耶は潤に近寄ると、潤の頬に不意打ちでキスをした。

「お兄様……あ……でも、しばらくはこう呼ばせてね、お兄様。
 お兄様に会う前、私はいつも一人で誕生日を過ごしていたの。
 クリスマスの雰囲気が街を彩るのに、一緒に祝う彼氏がいなかった。
 ……道を歩くカップルが羨ましくて
 ……ネオンの光が映える幸せそうな彼女の表情がまぶしく見えて
 ……寄り添っている手が温かそうに見えて
 ずっと、羨ましく見つめていたわ」

「咲耶……」

咲耶は潤の左手に抱きついて、その腕に自分の腕を滑らせて、手を組んだ。

「ねえ、お兄様、しばらくこうして歩いてくれない?」

「ああ……」

「お兄様の腕、とても暖かいわ。
 ね〜、お兄様、覚えている、出会ってからのこと。
 お兄様の誕生日に、妹達みんなと踊ったんだよね。
 とっても楽しかった♪」

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   ♪ 〜〜〜〜 ♪

   咲耶「私、似合ってる?
      いつかは私のウェディング・ドレスも見てほしいの。
      もちろん、お兄様にね♪」
   北川「このドレスだって十分、綺麗だよ。これ以上綺麗だとは、俺の心臓が止まる。
      でも、咲耶のドレスは俺が必ず選んでやるからな」
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「お兄様、私のウェディング・ドレスは、約束通り、お兄様が選んでね。
 うふ、でも、お兄様とはプロミス島の撮影で二人揃っていろんな服装をしたのよね。
 あの時は、とっても恥ずかしかったけど、私、とっても嬉しかったの。
 でもね、お兄様の本当のお嫁さんになれないって、いつかお兄様が離れていくって、
 少し不安になったりもしたの。
 お兄様、そんな私の気持ち、気付いてくれてた?」

「……ごめん。あんな格好をするだけでも緊張してたから」

「ふふ、お兄様らしいわね、ウブなんだから。
 こうして、お兄様と結婚できて、夢が叶うんですもの。
 去年のクリスマスの劇の時も、王子役のお兄様と踊ったわね。
 あの時のお兄様は私だけの王子様だったのよ……ふふ、子供っぽいかな」

「さては咲耶、最初に俺に会った幼い頃のエピソード、お前は覚えてないんだな?」

「えっ、何のことなの、お兄様?」

「咲耶と数日過ごして後、俺と別れる前日に、咲耶が『私、潤のお嫁さんになるの』と言ったね。
 まあ、ここまではよくある話なのだが……その後が……今、思いだしても……」

「あ〜〜〜〜! お兄様、覚えていたの?」

「あんな面白いこと、忘れるはずないだろ♪ 咲耶のウェディング・ドレスで思いだした」


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咲耶「ね〜、私、似合っている? これ、ウェディング・ドレスなの。
   私、これから、潤のお嫁さんになるの
   そうしたら、ずっと一緒にいられるよね」
北川「は〜? 作ったのか、これ?」
咲耶「うん。これでも一生懸命考えて作ったの」

シーツで作ったドレス、シルクのテーブルクロスで作ったウェール、花で作った冠、キャンデーで作ったブーケ、
それらを纏った幼い咲耶が潤の前にいた。
ドレスの縫い目はバラバラ、ウェールはずれていて、花の形はまばらで、キャンデーで作ったブーケは溶けかかっていた。

咲耶「それでね、これから、ちかいの言葉を言って指輪を交換するの」
北川「ところで指輪は?」
咲耶「あ〜っ、作り忘れた〜。
   ……えーと、じゃあ、ブーケのキャンデーあげる。一緒に食べよ」
北川「おー、サンキュー!」
咲耶「これで二人は一緒だね」
北川「本当?」

それは幼い頃の潤と咲耶のした結婚ごっこだった。

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「それにしても、幼い頃から器用だったよな、咲耶。
 今思い出しても、本当に笑える、あはは〜」

「…………も〜、お兄様の意地悪〜♪」(ポッ)

「俺達二人の運命の予兆だったかも……これ」

「うん。ね〜、お兄様……お願いがあるの」

「何だい、咲耶」

「その……今度のクリスマス・イブ……私と二人で一緒に過ごしてほしいの。
 その、えーと……朝まで、ずっと。
 今までお兄様のためだけに磨いてきた私の魅力を……全て受け取って欲しいのよ」

「咲耶……」

「私ね、ずっと不安だったの。
 妹だから、お兄様にいつか振り向いて貰えない日がいつか来るんじゃないかって。
 お兄様の恋人みたいだったサリアの時でさえ、私は心の底で不安が消えなかったの。
 今なら、きっと、お兄様の全てを受け止められる……受け止める勇気を持てるから。
 弱い私のままじゃだめだよね……私、心も強くなれるようにする、お兄様のために。
 でも、すこしだけ、お兄様の勇気を……私に分けてね。お願い!」

「咲耶、勇気がなかったのは俺の方だよ。
 咲耶がいないと、俺は自分が自分でない気がした。
 だから……自分一人で全てを解決しようとしないで、咲耶にすがることを選んだ」

「……お兄様。お兄様っていつでも強くて優しいと思っていたわ」

「それは咲耶がいてくれたから……たぶん、そうじゃないかな。
 俺は……咲耶となら……これから困難に出会っても、きっと勇気を持ち続けていられる、そう思ったよ。
 だから、これからも二人で寄り添っていこう、咲耶」

咲耶は潤の腕をより一層力強く抱きしめた。

「……お兄様。愛してるわ」

「俺もだよ、咲耶。
 暖かいね、咲耶。もうしばらく、こうしていようか」

「うん♪」

二人は腕を組みながら、小雪の舞い散る歩道の上を、一緒に歩いていった。




三上邸。

「あなた、潤のこと、これでよかったのですよね?」

「加奈子、それはお前が一番分かっているのだろ?
 人を好きになったら、その想いに全てをかける、それが女の生き方らしいからな」

「あなた、ごめんなさい。静香さんのこと、今でも忘れてないのですよね」

「そうだな……静香はいい女性でいい妻でいい母親だったと思っているよ。
 だけどな、俺は加奈子とのことも運命の恋だと思っているよ」

「私はあなたと一緒に居られて幸せです。それに、たくさんの家族にも恵まれて」

「そうか……なあ、加奈子、たまには親らしいことでもしようか?
 加奈子にとっては実の息子・娘ではないけど、潤と咲耶の結婚、見守ってあげてくれないか、加奈子」

「はい。精一杯、あの二人のお手伝いをさせていただきます。
 でも、誤解しないでくださいね。
 私にとっては、あの子達はみんな家族ですよ、あなた。
 それに、静香さんと咲耶さんの母親の想いの分まで、私が大切にしますから」

「ありがとう、加奈子。だが、運命というのは不思議なものだな……」

純一郎は東の街の斉藤弁護士から送られてきたFAX原稿に目を通しながら言った。
FAXの内容は次の通りであった。

『先日、失踪宣言の取り消しの依頼を受けた依頼人がいました。
 その者の名は芙蓉大樹、水瀬秋子(旧姓:芙蓉秋子)の実兄にあたる方です。
 北の街の家族旅行中に自らの交通事故で妻を亡くし、失望のあまり自殺を図ろうと
 し、意識に重傷を負ったのですが、命は助かったという経緯がありました。
 意識不明・記憶不鮮明であったため、永らく身分が明らかでなかったのですが、
 数ヶ月前に全ての記憶を取り戻し、本人の希望により失踪宣言の取り消しを行いました。
水瀬氏の語る話の中に、私の知る重大な事実がありました。
この方のお名前は、咲耶様が孤児になられた時の唯一の手がかりである
咲耶様の記憶にある父の名”フヨウ・タイキ”の響きと一致します。
それで調査した結果、三上咲耶様の”出生届”が東の街の役所にて見つかりました。
その内容により、父の名は芙蓉大樹・母の名は芙蓉美智留ということが判明しました。
三上様の了解が得られるのであれば、引き続きの調査をおこないたいと思います。
お返事の程、お待ちしています』

「……三上の娘でなくなったと思えば、実の父親が見つかるとはね。皮肉なものだ。しかも、母は既に亡くなっていたとはね。
 それに、芙蓉家は千影の実家にあたる家だから、千影と咲耶は従姉妹だったのだね」

「あなた、千影が芙蓉グループの立て直しをすると言っていたこと、聞いていますか?」

「ああ、聞いているよ。
 千影の母・芙蓉香奈さんから話を聞いたことあるが、それは潤の世代の話らしい。
 だけど、香奈さんはそこまで見通していたのかな。
 あの人も本当に凄い能力者だね、頭が下がるよ。
 実のところ、三上家を救ってくれたといっても過言ではないだろうな」

「それは私との結婚を迷っていた時のお話ですね?」

「そうだよ。静香との別れも運命なら、加奈子との結婚もまた運命なのだと。
 三上家を立て直し、千影・咲耶・美汐・あゆ・春歌・四葉・花穂・可憐・白雪・衛達のことを
 三上の養女にすることを私に奨めたのも彼女だったよ。
 それが三上の者と、三上に関わる人すべてにとって幸せをもたらすとね。
 あの時は半信半疑だったが、潤の失踪の時には、その予言を痛感したよ」

「ふふ。その話では、彼女がいらしたから私はあなたと結婚できたということですね」

「そうかもしれない。私と加奈子は、運命の恋で結ばれる二人、だそうだ」

「運命の恋……嬉しいです。私はずっとあなたを慕ってきましたから。
 あなた、愛してます」

「(これでいいだろ、静香)加奈子、これからも私の側にいてくれ」

「はい」




--------翌年の6月




『新郎控え室』、そう立て札に書かれた場所に俺はいた。

(それにしても、あの時は面白かったな)

俺は一月前、咲耶とドレスを選んだ時の出来事を思い出しながら、笑っていた。

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「潤、似合う?」

「ああ、良く似合っている。
 ……昔着た、ままごとのウェディング・ドレス、あれも可愛かったな〜」

「あ〜、お兄様、酷いわ。シーツで作ったドレスと一緒にするの?
 今度は結婚ごっこではないのよ?」

「ははは、とても綺麗だよ、咲耶。
 だが、お兄様と俺を呼ぶなら結婚できなくなるな、咲耶はそれでもいいのか?」

「いえ、あの、その、もうお兄様じゃなくて……」

「じゃ〜、何だ?」

「も〜意地悪! 潤なんて、知らないわ!」

「ウェディング・ドレス姿で怒っても、様にならんぞ、咲耶」

「……馬鹿」

「咲耶の照れた顔って、可愛いな」

「お兄様!」

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三上家との養子縁組を解消した咲耶は、この日に晴れて俺の妻となる。
血のつながらない義理の兄妹から夫婦へ、それが二人の選択した生き方だった。
そして、咲耶は義理の姉として、俺の妹達と改めて姉妹になった。


「潤、準備はできました?」

「はい、母さん」

「母さん?……潤、本当にそう呼んでくれるの、私のこと」

「他に誰を母さんと呼ぶのかい、母さん」

「……潤。私、私……」

加奈子は嬉しさのあまり、つい泣いてしまった。
今まで、俺が後妻の加奈子を母さんと呼ぶことはなかったからだ。

「涙もろいな、母さんも。
 でも、俺の生みの親の母さんも涙もろかったかな。
 俺のいない所で隠れてよく泣いていたね」

俺は母・静香の写真を手に取りながら、言った。

「ごめんね、潤。……静香さんに気苦労させてしまった原因は私にもあるから」

「きっと、母さんはその事は気にしてないよ。
 それに、母さん、俺な、母さんに感謝していることがあるんだ。
 ……血のつながらない妹達を本当の娘のように可愛がって育ててくれたこと。
 ……傷心の咲耶を米国で慰め続け、励ましてくれていたこと。
 咲耶も、今はきっと、母さんを本当の母さん以上に想っているのじゃないかな。
 だから、俺も母さんと呼びたくなってね」

「潤……」

「でも、咲耶の性格って、最近、母さんそっくりになってきたね」

「ふふ……私に似て性格美人になったと言ってくれないの?」

泣き顔を抑えて笑顔を浮かべた母さん・加奈子は、ちょっとお茶目な風に見えた。

「ははは……母さんに似て心優しい女性になりたい、咲耶はそう言っていたよ」

「嬉しいわ♪ 咲耶の花嫁姿、見てくるわね」

「ああ、咲耶も待っているはずだよ、母さん」




「気に入ってくれた、潤君?」

「あ、秋子さん。この度はお世話になります」

「いいのよ。咲耶さんはずっと私の仕事のモデルで頑張ってくれたのですもの。
 こんな時ぐらい、精一杯応援させていただくわ。
 それに、うちのモデルが素敵な花嫁になるのは、とても嬉しい宣伝でもあるのよ」

三上・倉田両家の関係者、それに招待客の数は相当であり、大規模な結婚式・披露宴となった。
次期の三上の当主となる潤、それと、モデルで有名になっていた咲耶の二人の結婚式のニュースは北の街の人々の話題を集めたからだ。
サロン・AKIKOの経営者、水瀬秋子は花嫁・咲耶のために、この結婚式すべてを取り仕切ってくれた。

「まさか、こんなに大規模になるとは思っていませんでした」

「ふふ、そうですね。
 でも、そのことよりも、今日の花嫁の姿を見たら、潤君も改めて惚れ直すわよ?
 なにせ、この私が自らしっかり磨きあげましたから。
 咲耶さんもとても頑張っていたわ。
 どんなお姫さまも令嬢も、今日の咲耶さんにはきっと叶わないわね。
 まさに、プリンセスだわ♪」

「プレッシャーかけないでください。
 そんなに素敵は花嫁の側に俺では釣り合いがとれなくなるじゃないですか」

「ふふ、
 『格好良くて、
  ……優しくて、
  ……誰よりも私達のことを思ってくれる
  ……・世界でたったひとりのお兄ちゃん』、そんな潤君でもですか?」

「あ、秋子さん、それ……咲耶に聞いたのですね?」

「ええ、いつも口癖にように言っていたわよ」

「……・照れますよ」

「それに、潤君にはお礼をいわないといけませんね。
 私の行方不明のお兄様を見つけてくれて、心から感謝しています。
 それに比べれば、今日の結婚式のプロデュースぐらい、私のささいな礼に過ぎません」

「三上家と倉田家のしたことです。
 それに、咲耶の実のお父さんが見つかるなんて、素敵じゃないですか」

「そうですね。それに、ナイスタイミングでしたね♪
 バージン・ロードを花婿の方に歩いてくる花嫁の側には父親が一番似合いますから」

俺と秋子さんの話を区切るように、進行係が秋子のもとにやってきた。

「そろそろお時間でございます」

「行きましょう、潤君。プリンセスがお待ちです♪」

「はい」



バージン・ロードの先の扉が開かれた。

      (最初は一人ぼっちだった)

ウェディング・ドレス姿の花嫁が姿を見せた。
ステンドグラス越しに差し込む光がシルクのウェールを柔らかにきらめかせた。
そばに一人の男性が佇んでいる、それは咲耶の父親だった。
咲耶の左手はその父親の右手と組まれていた。

      (はじめて妹に出会った時は、俺はただの少女だと思っていた。
       ずぶぬれになった俺の着替えの服を選んだのが、再会した妹だった)

花嫁と父はゆっくりと祭壇に向かってバージン・ロードを歩いてくる。
その1歩1歩を、俺は凝視していた。
花嫁のドレスの裾を整えながら付いてくる、可憐と春歌がいた。

      (それからの日常は兄妹として、培った思い出だった)

参列席の前の方で、歌をうたっている亞里亞達の妹達の姿が潤に見えた。

      (咲耶はいつも俺に、自分を恋人として見て欲しいと願っていた)

祭壇の前まで進んだ咲耶の手が、父親の手から俺の手に引き渡された。

      (いつからだったかな、俺が咲耶を一人の女の子として意識したのは)

式が始まった。
神への祈り、神父が結婚についての本人の意志の確認をする。

      (俺はサリアであった咲耶の前に初めて自分の気持ちをさらした)

参列者に、二人の結婚について異議がないか、神父はそう確認した。

      (咲耶は兄としての俺と、恋人しての俺との狭間で悩んだ)

「それでは指輪の交換を」

      (俺は咲耶が好きだから。誰よりも大事にしたいから)

「コホン……え〜、それでは、二人の誓いの気持ちを」

俺は咲耶のウェールを静かに持ち上げた。
俺は咲耶の口元に、優しいキスをした。

      (俺は咲耶を妻にする、咲耶は俺を夫にする。それが二人の結論)

「行こう、咲耶」

「はい、あ・な・た♪」

手を組み、バージン・ロードを引き返す俺と咲耶、俺はなんとも苦笑いを隠せない。
咲耶も柔らかな微笑みを浮かべていた。

やがて、俺は潤と咲耶は妹達の声と花吹雪の中を抜けて中庭に出た。

「お兄ちゃん、咲耶ちゃん、結婚おめでとう」、可憐のかわいい声、
「兄君さま、咲耶ちゃん、とても素敵ですわ」、春歌のしとやかな声、
「兄くん……二人の永遠の契り、祝福させてもらうよ」、千影の妖しげな声、
「兄や〜格好いい!咲耶ちゃん、綺麗〜!」、亞里亞の澄んだ声、
「にいたま、ヒナも花嫁さんになりたい〜!」、雛子の愛らしい声、
「にいさま、咲耶ちゃん、幸せそうですの〜♪」、白雪の嬉しそうな声、
「今度は咲耶ちゃんにも研究資金の援助をしようかな♪」、鈴凛の軽やかな声、
「咲耶ちゃん、ボクにもウェディング・ドレス似合うかな〜?」、衛の不安そうな声、
「結婚おめでとうございます。とても素敵ですよ」、美汐の落ち着いた声、
「あ〜、すばらしい結婚式でしたわ〜。わたくしもいつか……」、鞠絵の夢見がちな声、
「花穂ね、お兄ちゃまと咲耶姉ちゃまをこれからも応援するの♪」、花穂の元気な声、
「「おめでとう、潤、咲耶」」、二人揃った純一郎と加奈子の声、


「兄チャマ、咲耶姉チャマ、みんな〜、四葉が永久保存もののチェキをするデスよ〜♪
 みんな、1+1は?」

「2〜」……・カシャッ!

1枚の写真に収まったもの、それは家族という、運命に導かれた人達の集いの姿だった。
6月の広がる青空を見上げながら、俺は心の中で思った。


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俺は咲耶を今後は妹として見ることはもうないだろう。
ただ、咲耶が愛しい存在なのは、今も昔も変わらない。

血縁なんて関係ない、咲耶も他の妹達も、俺にとって、ずっと愛して守りたい人だ。
俺たちが互いに兄妹になることを選択するなら、俺達はみんな兄妹になる。
俺たちが互いに夫婦になることを選択するなら、夫婦として一緒に生きる。

☆---☆--☆---☆--☆---☆--☆---☆--☆---☆---☆--☆---☆--☆---☆

それが俺の結論であり、運命がどうであろうと俺が自分で決めた生き方
……これが、俺の「最後の真実」だと。





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