自分の願いが二つあり、もし、その二つを同時に叶えられないなら……
 









最後の真実
第3章 一番幸せだもの
 
第4話 「対立する感情」
 
シルビア








----平日の放課後



「あ〜、今日も無事終わったと。咲耶ちゃん、可憐ちゃん、帰るうか」

「はい、お兄ちゃん」

「はい、お兄様。一緒に帰りましょう♪」

そう言って咲耶は潤の左手に抱きついた。

「あのね〜、咲耶ちゃん……人前なんだけど」

「いいじゃない、お兄様。私達はもう公認のカップルなのよ♪」

「あ〜、咲耶ちゃん、ずるい〜! それに公認のカップルって何よ〜」

可憐は潤に抱きついている咲耶の手をひき離しながら言った。

「……あはは。とっとと一人で帰れば良かったかな」

潤は二人のやりとりに呆れ、二人を残してさっさと帰ることにした。
教室の扉を抜けるや否や、潤は、珍しい姿を目にした。

「舞?」

「……北川、一緒に行って欲しいところがある。栞さんのこと」

「一緒に? ……ああ、いいけど」

それから、潤は舞と一緒に校門を抜けて、舞に付いていった。

「舞、栞のことって?」

「……昨日、栞が目を覚ました。体はもう大丈夫だと思う」

「そうか」

「…………」

潤と舞はやがて、病院の一室の前に付いた。
その病室の入り口に掛けられている名札には「美坂 栞」と書かれていた。

「……北川、栞を見舞ってあげてほしい。栞が会いたがっていたから」

「まあ、そういうことなら、全然構わないけど。(いや、構うか……)」

潤は教室に残した可憐と咲耶の事が気になったが、まあいいかと流した。
潤は一人で病室に入っていった。
舞は病室の外にいることにしたらしい。

「栞〜、どうだ、調子は?」

「あ♪ 北川さん」

「北川君?」

「美坂も来ていたのか」

「う、うん……目を覚ましたって川澄先輩から聞いたから、来てみたの。
 あ……ちょっと席を外すね。花瓶の水、替えてくる」

香里はそう言うと、花瓶を手にして病室から出た。
その香里を引き留めるように、舞が声をかけた。

「妹の事、許してあげて。それを彼女が望んでいたから」

「ええ、もうとっくに許しているわ。何があっても栞は私の大切な妹だもの」

「姉妹って、そういうもの?」

「言葉通りよ♪」

香里はそう言うと、舞の側を抜けて、どこかルンルンとした表情で洗面所のある方へと
歩いていった。

「香里姉ちゃん、今日は随分明るいよな。栞、何かあったのか?」

「舞さんと二人で話して、それから、お姉ちゃんと二人で話したんです。
 舞さんに姉妹二人で話し合った方がいいと助言されました」

「舞が?」

「ええ。気持ちをきちんと伝えなさいって」

「ふーん? でも、香里姉ちゃんがあんなにルンルンするものかね〜」

「北川さん……私、お姉ちゃんの事、嫌いではありません。
 でも……私、お姉ちゃんに嫉妬していたんです」

「嫉妬?」

「私、北川さんのことが好きです! だから……つい、お姉ちゃんに嫉妬して」

「ちょ、ちょっと待てよ、栞。いきなり何を言ってるんだ」

「酷いです、北川さん。私は本気で言ってます。
 何て言うか、
 ……北川さんのお兄ちゃんぶりを見ていて、優しい人だなって思って。
……いつの間にか異性として気になって
……恋人になってくれたらな〜と思って」

「とは言ってもだな〜。シスコンと言われ続けた相手から、いきなり自分を彼女に
 して欲しいって告白されても返事に困るよ。
 それに……ごめん、打ち明けてないけど、俺、好きな人がいるんだ」

「えへっ♪ とっても残念です。
 でも、ちょっぴり期待していたんですよ……付き合ってくれるって返事。
 でも……私、ちょっと情けないですね」

栞はそれまでの笑顔を浮かべた表情から、一転して、真剣な表情になった。

「……自分の魅力では、お姉ちゃんや咲耶ちゃんの魅力には勝てない、
そう思ったら自分がとても情けなくて思えて、
ちょっぴり悲しくなってしまって。
それで、お姉ちゃんに酷い事をたくさん言ってしまいました。
お姉ちゃんには全く罪はなかったのに。
あ、でも、少し違いますね。
お姉ちゃんが北川さんを好きになったこと、それが罪だったのです」

「おいおい、栞。今度は香里お姉ちゃんが俺のことを好きだって言うのか?
 まあ、咲耶はいつも俺に好きだって公言しているけど……」

「あれ、気付きませんでした? ……周知の事実だとおもってました。
 でも、お姉ちゃん、恋に関してとても内気だから、無理ないかも。
 北川さん、本当にもてるんですね。私では無理だって納得しました。
 でも、北川さん、私が好きなのか嫌いなのか、それははっきり言ってくれませんか?」

「……栞ちゃん、ごめん。
 嫌いって言うわけじゃないんだけど、妹達への気持ちと同じように好きというか、
 そんな感じかな」

「えぅ〜、私、結局、北川さんに振られちゃったのですね。
 でも、妹みたいに可愛いと言ってくれるなら、特別に許してあげます♪」

「まぁ〜、その〜……栞ちゃんは”可愛い”よ、十分に」

「はい♪ それで許してあげます、えへっ♪」

そうこうしているうちに、香里が病室に戻ってきた。

「栞、嬉しそうね? さては、北川君に告白したのね?」

「うん♪ でも、結局、振られちゃった」

「そう……」

「でも、お姉ちゃんが北川さんのことを好きだって事も、ばらしちゃった! えへっ♪」

「ちょ、ちょっと待ってよ、栞!」

「いいじゃない、お姉ちゃん。お姉ちゃんももっと恋をした方がいいよ」

「ちょっと〜、誰のせいで恋ができないと思っているのよ、誰の! 栞のばか」

「ほらほら、北川さんが帰ろうとしているよ」

二人のやりとりを見ていた潤は、なにげにその場を逃げようとした。

「栞、あれは帰ろうとしているのではなくて、逃げようとしているのよ。
 ちょっと、北川君、待ちなさい!」

「美坂……頼むから俺を見逃してくれ。友達だろ?」

「私の大事な妹を振って心を傷つけるような、そんな友達を持った覚えはないわ!
 覚悟はいいわね、北川君!」

香里の表情が怒りの感情を如実に現していた。
香里は、右手の拳をあげて、は〜と息を吹き付けて……

「美坂、ちょっと待て、ちょっと!」

「……冗談よ。
 でも、下の売店でアイスを10個ほど買ってきて貰うわよ。
 もちろん、北川君のおごりでね。
 これから、栞に付き合って、アイスのやけ食いをするのよ」

「美坂……俺は「はい、ストップ!」 って?」

「言わないで。
 私は北川君のことを恋人として意識したことは……(げふんげふん)
 でも、当分は今の関係のままでいたいの、私。
 だから、今は聞かないことにしておくわ。
 しばらく考えさせて……北川君の答え、なんとなく分かるけど」

「お姉ちゃん……」

「美坂……」

「今は栞が元気になっただけでも十分に嬉しいのよ。
 だから、今は自分の恋のことを考えられないの。
 栞のこと、川澄先輩から聞いたわ。北川君……いろいろ、ありがとう」

「……美坂」

「はい、はい〜! 北川君、さっさとアイスを買いに行く〜!」

「分かったよ。買ってくればいいんだろ?」

潤は病室を出て、美坂に言われるままに、アイスを買いに行った。
潤がいなくなるのを見計らってか、香里は栞と話を続けた。

「栞、お姉ちゃんも振られちゃったかもね」

「お姉ちゃん……それでいいの?」

「いいのよ、それで。
 でも、栞がどうしても諦めるなと言うなら、無理矢理でも1週間だけ北川君に
 押しかけて、彼女になってみるのも良いわね?」

「お姉ちゃん、ダメです! ……と言う資格は、私にはありませんけど」

「まったく、どうして二人して北川君を好きになってしまったのかしら?」

「そうですね。でも、仕方がないです。
 こればかりは、当人の気持ちの問題なんです。
 それに、北川君はお兄ちゃんが似合うので、きっと私達は彼女になれないのかも」

「北川君が私達のお兄ちゃん? なるほど、シスコンの北川君に相応しいわ」

「はい♪ そう思えば、振られても悲しくないです。
 だから、私はこれからも北川さんのことを兄のように慕うつもりです」

「私もそうしようかな。
 北川君、ちょっとだけ年上で頼りになりそうだし、この際、私も甘えてみたり。
 でも、そうすると、あたかも16人の妹がいることになってしまうわね。
 北川君も大変だわ♪」

「それがお兄ちゃんのお兄ちゃんたる宿命というものです。運命ですね♪」

香里と栞は二人して笑い合った。


後書き by 作者


〜読者の皆様へのお願い〜
このSSについて、気に入って頂いた方、投票をお願いします。 投票方法:クリック→| 投票 |  









PREV BACK NEXT