北川潤が北の街にやってきて以来、およそ2年が過ぎた。


北の街に本格的な冬景色が訪れるこの時期、潤の高校2年生の3学期が始まろうとしていた。









最後の真実
第3章 一番幸せだもの
 
第1話 「親友」
 
シルビア








数日前、北川は1通のメールを受け取った。
それは、潤がかつて居た東の街での親友、相沢祐一からのメールであった。

「北川、元気か?

 俺は年明けの3学期から北の街に住むことになった。
 両親が仕事で海外に行く都合で、俺は北の街にある水瀬家に
 居候することになった。
 学校は北川と同じ高校に編入することに決まった。
 これからもよろしく頼む。

                         相沢 祐一」




始業式の朝、潤は妹の四葉・千影の二人と一緒に登校した。

「兄チャマ、ご機嫌デスね。何かいい事でもあったのデスか?」

「今日、俺の親友の相沢祐一が転校してくるんだ」

「兄チャマの親友が? いい事聞きましたデス。四葉、早速チェキするデス」

「相沢祐一? 確か……星の運命の語っていた兄くんの親友のことかな」

千影は相沢祐一の名前を耳にしたとたん、神妙な顔つきをした。

「千影ちゃん、星の運命って?」

「兄くん……ごめん、まだよく分からない。  ただ、相沢祐一がこの街にくる事は何かの運命に導かれている。
 兄くん、舞先輩の事、覚えているかい?」

「ああ、栞ちゃんが怪我した時に力を貸してくれた先輩のことだよな?」

「そうだよ、兄くん。私と似た『力』をもつ少女、だがその心は癒されていない。
 舞さんの心はまだ負の感情に囚われている、それを救えるのは相沢祐一なる人物だけだと、兄くんに言ったことがあったね」

「そうだったね。確かに千影ちゃんはそう言っていたね。
 相沢か〜、昔この街にいた時期があったみたいだけど、何かあったのかな?」

「分からない……どんな運命が待ち受けているのか」


3人の歩いている先に、クラスメートの美坂香里が歩いていた。

「おはよう、美坂」

「あ……北川君、おはよう」

北川が声をかけると、どことなく元気のない声で香里は答えた。
香里は妹達を一瞥すると目線をそらして、そのまま北川達を置いて学校の校舎に向かって歩き去ってしまった。


「美坂、なんとなく元気がないな。それに栞ちゃんの姿も見えないし」

「そういえば、兄チャマ。
 栞さん、2学期の終わり位から学校に来てませんよ。具合が悪いらしいデス」

「え、そう?……言われてみれば栞ちゃんを最近見かけてないな」

北川はなんとなく腑に落ちないような気持ちのまま、校舎に向かって歩いていった。
そして、昇降口で妹達と別れ、教室に入った。

「美坂、あのさ〜……・」

「北川君、何?」

キーン〜コーン〜カーン〜コーン〜、予鈴が鳴った。

「HRが始まるわ、北川君、後でね」

「……あ、ああ」


しばらくして、担任の石橋が教室に入ってきた。

「あ〜、みんな静かにしろ。これから転校生を紹介する」

教室にざわめきが起きる。

「……ちなみに男子だ」

「え〜〜〜〜!」

男子生徒の悲鳴まじりの声が教室に轟いた。

「……そんなにがっかりするな、もう一人転校生がいる。かわいい女子だぞ」

「やった〜〜〜〜〜!」

現金な男子生徒の声が教室に再び轟いた。

「転校生の相沢祐一君、それと、水瀬名雪君だ。みんな、仲良くしてやってくれ」

「相沢祐一です。よろしくお願いします」

女子生徒から歓声めいた声が聞こえる。

(相変わらず、相沢の奴、女子にもてるな〜)

北川はぽつりとつぶやいた。

「水瀬名雪です。これからよろしくお願いします」
 
ナイスだぜ〜、そんな男子生徒の歓声が教室に響き渡った。

「私、祐一と一緒に水瀬家に住んでます。今度、遊びに来て下さい」

名雪がそう言ったとたん、男子生徒と女子生徒から共に悲鳴が上がる……感情表現の豊かなクラスメートである。

「ば、ばか、名雪! その事は言うなって言っただろうが?」

「祐一〜、そんなこと聞いてないよ〜♪ それに……ゴメン、もう言っちゃった♪」

実は名雪はわざと言った……名雪にしてみれば、祐一を狙うライバルが一人でも少ないに越したことはないのだろう。

「そんな〜〜〜……俺のこれからの高校生活、どうなるんだよ〜」

「祐一、やっぱり言ったら駄目だったかな〜?」

「当たり前だろ! 何が悲しくて転校初日に同棲の誤解を受けなきゃならんのだ」

「だって、祐一は家で一緒に住んでるよ? 嘘じゃないもん」

「……だからと言ってもだな〜」

「ほらほら、相沢、水瀬。仲がいいのは分かったから早く席につけ。
 えーと、窓際の美坂と北川の後の席が空いてたな。じゃ〜、二人ともそこに座って」

「「は〜い」」

相沢と水瀬は北川・美坂の後の席に座った。

「祐一♪ 同じクラスだね〜♪ 席も隣同士だよ〜。嬉しいよ〜」

「……良かったな、名雪」

「……祐一、あまり嬉しそうに見えないよ?」

「そうか? そんなことないぞ、思わず踊ってしまうほどだ〜」

「祐一、なんか変だよ〜。白々しいよ〜」

名雪はふて腐れたような表情を浮かべて拗ねた。


「起立! 礼!」

週番のかけ声と共に、HRは終わった。


「名雪、久しぶりね? 中学で一緒だった香里よ、覚えてる?」

「香里? あ〜、美坂さんちの香里ちゃん! わ〜、ずいぶん綺麗になったね〜。
 見違えたよ〜♪」

「……そ、そう?」

「うん♪」


「よう、相沢! 元気だったか?」

「お前こそ。たくさん妹が出来たんだって? 今度、紹介してくれよ」

「そのうちの可憐と咲耶なら、クラスメートだぞ。
 おーい、可憐ちゃん、咲耶ちゃん!」

ロングヘアーでサイドを三つ編みにしている女生徒と、ツインテールのロングヘアーの女生徒が二人、潤のそばにやってきた。

「可憐ちゃんと咲耶ちゃん、俺の昔の親友で相沢祐一。仲良くしてやってくれ」

「分かりました、お兄ちゃん」

「はい、お兄様」

「北川〜、お前の妹ってこんなに可愛いいのか〜? ちょっと羨ましいぞ」

「ははは……そう言ってもな〜、これはこれでなかなか苦労も「お・兄・様! 何か言うことが?」……」

「祐一〜……また〜?」

名雪はちょっと嫉妬めいた視線を祐一に向けた。

「な〜、相沢〜。お前の方こそ、名雪と付き合ってたっけ?」

「付き合うもなにも……名雪が俺の家に居候してたから、今まで一緒だったんだよ。
 まあ、いとこ同士の仲ってやつだ」

「祐一〜、酷いよ〜!」

「事実だろうが」

「うぅ〜〜……それでも酷いよ〜」


祐一と名雪はいうならば幼なじみの関係であった。
だが、名雪が北の街の高校受験に失敗し、応募の遅かった東の街の高校の2次募集にうかり(祐一とは違う)東の街の高校に通っていた。
東の街にいる間、名雪はいとこの相沢の家に居候していた。

「名雪もよくここの編入試験に受かったもんだんだ。問題、結構難しかったのに」

名雪は祐一の両親が海外にいくのをきっかけに、祐一共々、北の街の水瀬家に戻ってきたのだ。
北の街の華音高校の編入試験に受かるため、名雪は祐一にかなりしごかれたらしい。

「祐一〜、それを言わないの!」

「そうよね〜、名雪ってそれほど成績のいい方じゃなかったわね……
 第一、中学の頃の名雪って授業中、寝てばかりだったもの」

「香里まで〜! うぅ〜酷いよ〜」

香里と名雪は中学時代の同級生だった。
その同級生に香里にまで追い打ちをうけ、名雪は拗ねる以外に為す術がなかった。

「ふふ、冗談よ。
 名雪と、その"彼氏"の相沢君の歓迎も兼ねてお祝いしたいわね。
 たって、名雪と会うのは本当に久しぶりだものね」

「う、うん♪ 香里、ありがとう」

「水瀬さんと相沢さんってやっぱり付き合ってるんですね?
 可憐、なんか羨ましいです〜」

「いいな〜、私もお兄様と♪」

「あの〜、可憐さん、咲耶さん? いつ俺と名雪が恋人同士だってことに?」

「相沢……やめとけ、何を言ってもムダだぞ。女同士のなんたるかというやつだから」

「分かって居る。でも、北川もそういう所に随分明るくなったもんだな。
 さすがに毎日妹に囲まれると鍛えられるもんなのかね〜?」

「それを言うなって、それを……」

「相沢さん、お兄ちゃんは格好いいです!」

「相沢さん、お兄様は素敵なのよ。なんたって私のお・兄・様なんだもの♪」

「…………」

「北川……お前、間違いなくシスコンだな……」

「言うな……相沢。……すでに噂されているんだから」

「そうね、シスコンの北川君ともっぱらの評判だわね……ご愁傷様。
 だけど、相沢君もいとこと同棲中だと、すぐに噂が広まりそうね」

「…………俺、もう帰ろうかな」

「…………相沢、俺も付き合うよ」

名雪に追っかけられ状態の相沢には、この学校でも居場所は無いに等しかった。
一方の北川も、香里にまでシスコンと言われて心が痛んだ。

だが、現実はそうは甘くはなかった。
そういう二人の思惑を遮るように、授業開始の予鈴が鳴ってしまった。

「北川……勉強でもするか」

「相沢……そうしようか」

祐一と潤の二人は帰るのを諦めたのか、大人しく自分の席についた。
後に、香里と学年トップ3を奪い合うことになる祐一と潤は、とにかく勉強するかと真面目になった。
……すでに、祐一と潤にとって、勉強することは格好の逃げ場となっていたが。


--------------そして、放課後-------------


「お兄ちゃん、18:00に三上家に集合ですよ」

「分かったよ、可憐ちゃん。じゃ、後で」

潤は祐一を連れて屋上に行った。
屋上についた二人は久しぶりに対面で話した。

「北川、随分変わったじゃないか。昔のガリ勉姿もまあ捨てたもんじゃなかったが。
 そういやトレードマークみたいだったあのメガネ、今は付けてないのか?」

「妹達に我が儘言われて、コンタクトにしたんだよ。
 そうだな〜、あの頃の俺からすれば、今の俺の姿は想像もつかないよ」

「やはり、お前がなんとなく変わったように見えたのは、やっぱり妹達の影響か。
 お前のメールにも、随分楽しそうに書いてあったし、察しがつくよ」

「ああ、そうだ。
 俺も最初は随分戸惑ったけど、今は14人の妹達が可愛く思えてきたよ。
 ここ1年ばかり、ほとんど妹達と過ごした思い出ばかりだ」

「妹か……俺にも実の妹じゃないが、従妹なら名雪がいるし。
 少しは分かる気がするよ。北川、守ってやりたいんだろ、妹達のこと?」

「……妹達はだれも皆、いい娘達だからな。
 でもな、俺はあの娘達をどうやって守ってやればいいか、それが分からないんだ。
 勉強なら一生懸命やれば結果は出せたが、こういう事は慣れてない」

「そう肩意地を張らなくていいんだよ、北川。
 今だって妹達には慕われて居るんだろう、"お兄ちゃん"とやら。
 なら、その気持ちにだけ応えてやればいい。結果は自ずと出てくるさ。
 まあ、俺も人のことは言うほど、偉くはないけどな」

「何より、俺が女の子に慣れていないからな。
 相沢は少なくとも俺よりは女には慣れて居るからいいだろうけど。
 それだけでも羨しいね」

「なーに、北川だってすぐに慣れるさ。
 なにせ毎日14人もの女の子に囲まれて暮らして居るんだから」

「そんなもんか?」

祐一と潤はそれから女談義に明け暮れては、久しぶりの再会を楽しみあった。
祐一の東の街でのもてっぷりと、名雪の嫉妬ぶりの話は、潤をおおいに笑わせた。

「じゃ、北川、後で三上家に行くよ。
 ちょっと商店街に出かける用事があってな。
 名雪の部活もそろそろ終わる頃だし、待ち合わせてるんだ」

「ああ、後でな。
 俺の妹の白雪ちゃんが腕によりかけて料理を作るからって言っていたから、お腹は空かせておけよ?」

「わかった。名雪にもそう伝えておく。かわりに、イチゴサンデーも用意するようにと白雪ちゃんとやらに伝えておいてくれ。
 さもないと、俺が名雪に奢らされかねん」

祐一はそう言うと、屋上の扉を抜けて階下に駆け下りていった。

「分かった。イチゴサンデーのリクエスト、白雪ちゃんに伝えておくよ」

(ふっ、なんだかんだ言いながらも名雪には甘いな、相沢は。
 さて、俺も帰るとしよう。おまけも連れて)

潤もまた、屋上を背にして、階段を下りていった。

「四葉ちゃんも、帰るぞ! さっさとこないと置いていくからな」

「……うぅ、見つかってしまったデス。兄チャマ、やっぱり勘が良くなったデス。
 せっかく兄チャマの親友をチェキしてたデスのに」

「フラッシュを焚いたらバレるに決まっているだろ? ほら、帰るぞ?」

「はい……です」(いじいじ)

「あー、もう……いじけるなよ、四葉ちゃん。可愛い顔が台無しに見えるぞ」

「可愛いって……兄チャマ、四葉をからかってるデスか?」

「そんなことないぞ。 だったら、腕は貸さないだろ。
 なにげに腕を組んでいるのは誰だっけ、四葉ちゃん?」

「えへへ〜、それは四葉デスね♪」

「まあいい。だが、咲耶ちゃんあたりに見つかるときっと何か言われるぞ?」

その時、後に人の気配を感じた四葉はゆっくりと振り向いた。

「あはは〜、もう見つかっているデスね……」(汗)

「お・兄・様! 随分と四葉ちゃんとばかり仲がよろしいことで……結構ですわね。
 私を教室でずっと待たせて、この有様なの、お兄様?」

「す、すまん、咲耶ちゃん……」(汗)

咲耶ちゃんの両手の拳が握られているのを潤が見逃すはずはない、伊達に兄妹ではないのだった。

「私が何を望んでいるか、お兄様は分かりね?」

「はい……」

潤は四葉に握られていない左手を咲耶に差し出した。

「さすがお兄様♪ さあ、デートしましょう、お兄様♪」

咲耶はにっこり微笑んで、潤の左手に抱きついた。

(ああ……どうしても俺はこういう宿命になるのかな……)

「咲耶姉チャマ、ずるいデス!」

「四葉ちゃん、お兄様のデジカメ写真をくれるなら、一緒に連れて行ってあげるわ」

「うぅ〜、せっかくチェキしたデスのに……分かったデス」

「こらこらお前等、勝手にそんな取引をするなよ。とっとと家に帰るぞ」

「え〜! お兄様、私とのデートは?」

「ダメ! 家に帰って可憐達を手伝うの。デートはまた今度にしよう」

「お兄様の意地悪! ……でも、今日は仕方ないか」

そんなこんなのやりとりはあるものの、結局、3人は家路を急ぐことにした。
とはいえ、校門で他の妹達に待ち伏せされていたので、その人数は増えたが。

「おにいたま、一緒に帰ろ♪」

「亞里亞〜も〜♪」

亞里亞は潤の左腕の袖口を掴んで、離さないとばかりに佇んだ。

「あ〜、亞里亞ちゃん、ずるい! ヒナも〜おにいたまと手をつなぐんだよ」

雛子も潤の右手を掴んで、小さな可愛らしい手を重ねた。

それを見ていた咲耶と四葉は、あっと叫んではクレームを付けた。

「あ、こら、亞里亞ちゃん、雛子ちゃん、ずるいわ。お兄様は私と♪」

「兄チャマは四葉と腕を組んで帰るんデス!」

「おいおい、皆、俺の手は2本しかないんだぞ?」



-----その日の夕方、三上家にて。



「ね〜、可憐ちゃん、聞いてよ〜!
 祐一ったらね〜、私は手みやげを買いに行くから待っててもらっていたら、私を商店街に置き去りにしたんだよ〜!
 もう、許せないよ〜!」

「だから〜、こうして謝っているじゃないか〜。名雪、許してくれよ。事情があったんだよ〜。
 タイヤキ娘に体を引っ張られて森の小道まで走らされたんだから〜」

「相沢さん、タイヤキ娘って何ですか?」

可憐が祐一に尋ねた。

「確かあゆって名乗っていたな。
 えーと、いつもセーター姿でリボンを付けて……
 そうそう、こんな感じだ……って、あゆ、お前ここで何してんだ?」

「祐一君、昔出会って遊んでいたなじみの女の子を捕まえてタイヤキ娘だなんて酷いよ〜!
 ボクは潤お兄ちゃんの妹だもん、ここにいるのは当たり前だよ」

「なに〜、じゃあ、北川のメールに書かれていた妹のあゆって、お前か〜?」

「そうだよ〜」

「世の中、狭いもんだな……なのにタイヤキ娘はお金がなくて食い逃げしたと」

「祐一君、それどういう意味かな? 食い逃げじゃないよ〜、後でちゃんとお金払うもん」

「あゆお嬢様、そのことでしらご心配なく。
 あのタイヤキ屋は三上家の出資した店でございますので、食い逃げのことはもみ消させていただきました」

「水田さん、本当?」

「さよう」

「マジか?」




「名雪さん、名雪さんのお母さんって、ひょっとして『サロン・AKIKO』を経営している水瀬秋子さん?」

咲耶が名雪に尋ねた。

「うん、そうだよ。お母さんの仕事の事はあまりよく知らないけど、エステとかやっているって聞いてるから」

「わ〜、やっぱりね。私ね、今、そこでモデルのバイトさせてもらってるのよ」

「そうなんだ〜。道理で咲耶ちゃん、ずば抜けて綺麗だと思ったよ〜」

「うふふ、そう? でも、お兄様は全然気が付いてくれないのよね〜。
 私とお兄様は赤い糸の運命で結ばれた仲だというのに……」

「咲耶ちゃん、お兄様の事、本当に好きなんだね」

「あは♪ でも、名雪さんだって、相沢君の事好きなんでしょ?」

「えへへ♪ でも、祐一もつれないんだよ。私、ずーっと祐一が好きで側にいるのに」




「そういえば、森の小道でボクと祐一君ね、栞ちゃんに会ったよ。潤お兄ちゃんは栞ちゃんの事、知ってるよね?」

「ああ、美坂の妹の栞ちゃんだろ? 知ってるよ。最近、見かけてないけど。
 そういや、美坂、栞はどうしてるんだ、学校にも来てないみたいだけど」

「……私には栞なんて妹は居ないわ」

「は? 何言ってるんだ、美坂?」

「居ないといったら居ないのよ。……私、もう遅いから帰るわね。
 名雪、相沢君、またね」

香里は早々と帰る支度を整えて三上家を出た。

「み、美坂〜。(美坂の奴、何、わけの分からないこと言ってるんだ?)」



「相沢先輩……少し聞きたいことがあるんだけど、いいかい?」

千影が祐一の側に来て、尋ねた。

「確か、千影ちゃんだったね。 別にかまわないけど」

「相沢先輩より一つ年上で、川澄舞という少女の事、覚えているかい?
 多分、昔の幼なじみだと思うけど」

「川澄舞? ……いや、覚えてないな」

「覚えていないか……それならいいんだ。邪魔したね」



「なあ、北川?」

「なんだ、相沢」

「お前の妹達って、みんなお前と血がつながっているのか?
 顔が似てないような気がするんだが」

「俺もよくわからないけどな。まあ、妹だと言うんだから妹なんだろう。
 父親が養子にしたんだから法的にみんな妹なんだし、気にしてないよ」

「血がつながってないということは、お前と恋愛することもあり得るな」

「うーん、どうかな〜」

「まあ、出会ってそれほど経っていないし、今は兄と妹の関係でも十分かもな。
 先はわからんが」

「相沢こそ、名雪とはどうなんだ? 東の街では一緒に住んでたんだろ?」

「名雪はいとこだよ。それ以上でもそれ以下でもないさ」

「ふーーーーーーん?」

「何だよ、北川。その、ふーーーーーーん、というのは」

「言葉通りさ。怪しいなって思ってな」



後書き by 作者



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