最後の真実
第2章 お兄ちゃんと一緒の時
 
第14話 「約束」
1月7日 あゆの誕生日SS
 
シルビア








中には、潤が北の街に来て初めて会った妹もいた。

少年時代の潤が、出会った後の妹となる少女と交わした『約束』、
それは潤にとって記憶に深く残るほどの大切な約束になるとは想像しがたいものだった。
だが、それは少女にしてみれば、たった一人のお兄ちゃんと交わした再会の約束だった。
その約束さえあれば、少女は会えない寂しさに耐えられた。

しかし、人の記憶というのは、意識しないと忘れていくかほとんど思い出さないものなのだ。
それは、潤も例にもれない。




『今度は、いつ会える?』

『うーん、わからないな』

『そんなの嫌だよ! きっとまた会えるって約束して!』

『そうだね。じゃ〜、君が僕のことを本当に必要とする時には会いに来るから』

『本当? じゃあ、約束! ……ゆびきりげんまん……指切った』




何年もの月日が流れ……




潤とあゆは森の大樹に、二人でやってきていた。
ものみの丘に隣接する森の大樹、今はその大樹は姿がなく年輪を刻む切り株だけがそこにあった。

「潤兄ちゃん、ボクとの約束のこと、覚えてなかったんだね」

「ごめん、あゆ。あの時は自分の妹だったなんて知らなかったから」

「いいんだよ。今はこうして会えたから」

「それにしても衝撃的だったよな、俺とあゆの再会は。
 幼女の姿で現れたかと思えば、いきなり少女の姿のあゆが目覚めたし……」

「そうだね。だってボクは7年間も寝たきりだったから。
 でも、いつも同じ夢ばかり見ていたような気がするよ。
 それも、潤兄ちゃんと会う約束をした時のこととか……」

「それだけ何度も同じ夢を見るなら、俺とあゆが交わした約束をあゆが忘れるはずはないよな」

「そうだね。だけど、その約束があったから、きっとボクは今こうして居られるんだと思うんだよ。
奇跡って、きっと強く願う気持ちが起こすものかもね」

「そうかもしれないね」

「ボクね、ただ潤兄ちゃんに会いたかっただけだよ。ひとりぼっちだったから。
 そうすれば、ボクはきっと笑顔で居られるからだと思ったから」

「ふーん。でも、あゆはいつも笑っていた方がいいな。その方が可愛い」

「えへへ〜、嬉しいよ。でも、潤兄ちゃんも笑っていてほしいな〜。
 だって、その方が優しく見えるもん」

「そうか?」

「そうだよ」



「この樹、伐られちゃったんだね。
 でも、いつもボクが登って遊んだ大樹だってすぐに分かったよ。
 ここにいると、いつも優しい気持ちになれるから。
 ここでね、いつも潤兄ちゃんの事、考えていた」

潤とあゆは、大樹の切り株に背中合わせに腰かけていた。

「俺の事?」

「うん。潤兄ちゃんは元気かな〜とか、潤兄ちゃんもこの街に来ないかな〜とか。
 今度はいつ会えるかな〜とか、ここで見られるオレンジ色の夕日を一緒にみたいな〜とか。
 考える事は、いつも潤兄ちゃんの事ばっかりだったんだよ」

「……そうか。なんか嬉しいような恥ずかしいような。照れくさい」

「お兄ちゃんがいるって分かってから、幸せな兄妹になれますように、それをいつも願ってたんだよ」

あゆは合わせた背中越しに、潤の温もりを感じていた。

「潤兄ちゃん、ボクってどうしてこの世に生まれて、どうして再び目を覚ましたのか、それは分からない。
 ただ、潤兄ちゃんが嬉しそうだと、ボクも嬉しいかな」

「俺はあゆに出会えて嬉しいよ。さて……」

潤は立ち上がった。
あゆは背中に潤の温もりを見失ったが、すぐに、潤の手が自分の胸の前にあることに気が付いて、その手を見つめていた。

その時、あゆは首筋に、金属の触れるようなちょっと冷ややかな感触を感じた。
あゆは、その金属のような感触を心地悪く思ってはいなかったが、それが何なのか気になって自分の手でそれに触ってみた。

(チェーン?)

あゆが視線を落とすと、背中越しに回された潤の右手と、その手のひらに乗ったペンダントが見えた。
潤がペンダントをあゆの首もとに着けたのだ。

「誕生日おめでとう、あゆ。俺からのプレゼント、『再会』の証のつもり」

プラチナのプレートに小さなレインボー・フローライトがいくつかあしらわれ、差し込む光が虹色の光を醸し出す。
中央の台座には、エメラルドグリーンの輝きを放つダイオプテーズが星のような輝きを放っていた。

「わ〜、綺麗だね……ボク、この色、好きだよ」

「宝石にはメッセージがあってね。
 中央の宝石がダイオプテーズで、『再会』を意味するんだ。
 虹色に輝くのはレインボー・フローライトといって、蛍石ともよばれるけど、『願望達成』を意味するんだよ。
 まあ、咲耶ちゃんに言われたことの受け売りになってしまったけどね」

「『再会』、『願望達成』……えへへ」

「あゆの願望はかなったかな? ごめんな、長い間、約束した事を忘れていて」

「うん♪ でも、約束の事はもういいんだよ。今は潤兄さんと一緒にいられるから」

過去が大切なのではない、約束は未来のためにするものだ。
未来が現在になった時に、現在が幸せなものであるために。

潤はあゆの言葉の中に、そんなことを感じ取った。










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後書き by 作者
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佐祐理:「あはは〜、宝石のメッセージ、ですか〜。
     SILVIAさん、私の話では使ったことのないネタですね〜。(ジト)」
作者 :「そう言えば……」

咲耶 :「私は宝石にも詳しい……というわけね」
作者 :「だって、咲耶、将来はコーディネーター希望だろ?
     こういう知識も勉強しておくものだぞ」
咲耶 :「え? そうなの?」
作者 :「コーディネーターは、デザインだけでなく、そのデザインに使われた
     花とか宝石の意味がデザインのコンセプトに合うかどうかという事まで
     考える、そんなもんだ」
咲耶 :「ふーん、さりげない所まで考えなければいけないのね」

あゆ :「SILVIA兄ちゃん、このSSのテーマの由来は?」
作者 :「あゆのキーテーマは、やはり『約束』に尽きるでしょう。
     それに、シスプリでも約束というのは重要な意味を持っている。
     クロスオーバーの話としてこのテーマは適しているかと」
あゆ :「ふーん、SILVIA兄ちゃん、一応考えていたんだ」
美汐 :「あゆちゃん、SILVIA兄様は裏工作が大好きだってこと忘れていません?」
四葉 :「SILVIA兄チャマ、チェキです!
     この名探偵・四葉にはSILVIA兄チャマの企みは既にお見通しなのデス。
     第3章の内容の伏線を、しっかりと張ってましたのデスね」
作者 :「うっ……ばれてる? 四葉、降参するから、内容はばらさないでくれ」
四葉 :「SILVIA兄チャマ、名探偵・四葉の推理に降参したデスね。
     よろしい。では、四葉とデートするデスよ♪」


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