最後の真実
第2章 お兄ちゃんと一緒の時
 
第13話 「大和撫子」
12月6日 美汐の誕生日SS
 
シルビア








「はぁはぁ〜……潤兄様、もう少しゆっくりと歩いてくれませんか」

潤と美汐はいつもより早い時間に、登校した。
美汐は学級委員の仕事に真面目なせいか、潤や他の妹よりも早く登校することが多い。
最近、美汐が潤と一緒に学校に行かないことを拗ねていで、この日の潤はいつもより
早い時間に登校することにしたのだ。

「あ、悪い。いつもの癖で、つい」

「潤兄様は男性なのですから、歩幅が長いのです。
 潤兄様のペースだと、私は小走りでちょうど追いつくぐらいなのですよ。
 それに……」

「それに?」

「……制服のスカート、裾が短いのです。
 ですから、走ったりするとスカートがめくれないか、つい気にしてしまうのです。
 ……キャッ!」

美汐がそう言っている側で、晩秋の冷たく強い風が、美汐のスカートをめくり上げる。
美汐は片手でスカートがめくれるのを押さえつけものの、それでも潤にはばっちり見えてしまった。

「確かに……」

「潤兄様! デリカシーというものが無さ過ぎますよ。
 例え中が見えたとしても、見てないフリをしてくれてもいいじゃありませんか。
 人としてとても不出来です。も〜」

「そういうものか?」

「そうです! とても恥ずかしいのですよ」

「何て言うか、しょっちゅう目にしているから実感がないんだよな。
 ほら、花穂ちゃんなんてしょっちゅう転んだりするだろ?
 まあ、春歌ちゃんだけかな、そんな光景を目にしたことないのは」

「春歌ちゃんは普段から大和撫子のような素振りが慎ましいですから。
 でも、不思議です。あれだけ動き回っても大丈夫なのでしょうか」

「アクションといえば、春歌ちゃんは川澄先輩の剣さばきといい勝負だからな。
 美汐ちゃんは二人が対決したらどっちが勝つと思う?」

「そうですね……春歌ちゃんではないでしょうか。
 なにせ、春歌ちゃんは薙刀の他にも弓等の武具は大抵使いこなしますからね。
 でも、潤兄様も知っていました?
 春歌ちゃんって武芸だけでなくて、大和撫子を絵に描いたように茶道とか
 生け花とか日本舞踊をこなすのですよ。私、すっかり感心しました」

「そういえば、美汐ってよく春歌ちゃんと一緒に稽古とかしていたね」

「はい。春歌ちゃんとは趣味がとても良く合うのです。
 でも、春歌ちゃんと並ぶと私ってよくからかわれたりすることも多くて、それが悩みなのですけど」

「何で?」

「よく久瀬さんなんかが言っている言葉です」

「久瀬が? えーと……あっ、そうか。”おばさんくさい”か」

「潤兄様、酷いです! せめて、"物腰が上品"だと言って下さいませんか?
 傷つきますよ、私。
 でも、春歌ちゃんみたいに、明るく元気という感じではないのです、私」

「春歌ちゃんに比べたら内気で物静かだからな、美汐は。
 でも、ちょっとおばさんくさいと言われても仕方ないか」

「潤兄様! 私、春歌ちゃんに武芸も習っているのですよ?」

そう言って、弓の入った入れ物の先で潤の頭をこづいた。

「……わ、悪い。もう言わないから許してくれ」

「もう、いいです。潤兄様の意地悪! 潤兄様まで私の事をそう思っていたなんて」

美汐は歩調を早めて、潤に背を向けて先の方へと歩いていった。

「待ってくれよ、美汐ちゃん……」

その潤の言葉を無視するように、美汐はいそいそと先へ歩いて行った。



昼休み、美汐と四葉と春歌は、白雪の愛のお弁当宅配便の弁当を一緒に食べていた。

「美汐チャマ、どうしたデスか? 元気ないデスよ」

美汐がちょっぴり元気ないので、心配した四葉は美汐に声をかけた。

「何でもないのです。四葉ちゃん、ごめんなさい、心配かけて」

「何でもないという表情では有りませんわ。何か悩み事でもお有りですか?
 ワタクシでよければ相談に乗りますけど」

「春歌ちゃん……実はね、潤兄様にまで私が”おばさんくさい”って言われて、
 それで、どうにも気が晴れないのです」

「はぁ〜、兄君さまも罪なことをなさりますね。
 美汐ちゃんは古風で十分に物腰が上品だと私はおもいますよ」

「春歌ちゃん位、大和撫子を絵に描いた雰囲気が私にあればと憧れるのですが。
 とても無理ですね、私には」

「そんなことないデス。美汐チャマはとっても上品デスよ」

「ええ、そうですよ。美汐ちゃんだって十分に大和撫子みたいですわ。
 わかりました! この際、兄君さまにとくと美汐ちゃんの良さを知って貰いましょう。
そうです、兄君さまに知って貰えばいいのですわ!」

「潤兄様に?」

「美汐ちゃんは控え目なので、兄君さまも美汐ちゃんのことをあまりよくご存じ
 ないのですわ。じっくりと兄君さまに知って頂くには、返って良い機会です」

「そ、そうですか? でも、私を見て貰えるなら……」

「決まりですわ。ワタクシからも兄君さまにお願いしておきますね」

「四葉も美汐チャマをたっぷりチェキして、兄チャマに見せるデス♪
 妹をチェキした情報、兄チャマ、いつも喜んでくれるデスよ」


美汐は春歌の部活に加わって、一緒に武道や芸稽をした。
古風の似合う二人が揃って何かをやるとなかなか様になっている。
部員達もすっかり乗り気で、二人に加わった。

チェキ〜・チェキ〜・チェキ〜・秘密は無しよ♪
チェキ〜・チェキ〜・チェキ〜・ハートにぎゅん♪

四葉はデジカメを片手に、謎(?)のかけ声をあげつつ、美汐をチェキしまくった。
楽しい雰囲気の部活の様子や、町中で春歌と美汐が一緒に過ごす様子等が四葉のデジカメのファイルに蓄積された。
時折、話を聞いた可憐や咲耶も加わったりして、変な競争意識が生まれた。

「兄チャマ〜♪」 「兄君さま♪」

四葉はルンルンした表情で、潤の部屋を尋ねた。
春歌も四葉と一緒に来ていた。

「よ〜、四葉ちゃん、春歌ちゃん」

「兄チャマのパソコン、借りるデスね」

「ということは、また例のやつだな?」

「はいデス♪」

潤のノートPCを開いて、スタンバイから立ち上げると、四葉はデジカメをUSBケーブル経由でPCに繋いで、ファイルを転送していった。
潤は、まあいつものことだしな、と四葉の様子を横で見ていた。

「兄チャマ、準備は終わったデス♪ さあ、名探偵・四葉の定期報告、開始デス♪」

「出来たか。どれどれ?」

潤はPCの液晶画面を眺めた。
四葉の報告は、毎回、何かしらのテーマ付きで撮影されていて、面白い。
潤も、なにげに毎回楽しみにしていたのだ。

普段は、潤の写真がまあ50%位を占めるのだが------

「うん? 今回はやけに美汐ちゃんや春歌ちゃんのショットが多いな」

「はいデス♪ 今回は『大和撫子』特集なのデス」

「ほほう、これは、これは……春歌ちゃんは当然として、他の妹達もなかなかやるじゃないか。
 可憐や咲耶の着物姿なんて初めて見たよ」

映像の中にある妹達の姿はなかなか様になっていた。
もっとも、雛子や花穂あたりは、失敗して恥ずかしがっている写真が目立ってはいたが。

「兄君さま、美汐ちゃんのことを、おばさんくさいなどと言ったとか。
 これを見てもまだそう仰います?」

「誤解があるな〜、美汐ちゃんの事をそうは思ってないんだけどな。
 ほら、美汐ちゃんの大和撫子ぶりだって、よく似合っているだろう?
 それに、普段の美汐ちゃんも、笑うと案外可愛いじゃないか」

「ふふふ……兄君さま、その言葉は扉の影にいる美汐ちゃんに直接言ってあげて下さいませんか?
 どうやら、恥ずかしがってここに入れないみたいですから」

「え?」

潤が部屋の扉の方に行くと、そこには美汐が壁に寄りかかって部屋の様子を伺っていた。

「あっ、潤兄様……」

「そんな所にいないで、中で一緒に見ないか?」

「は、はい」

「そうそう、とても良く撮れていたよ。
 さすが美汐ちゃんだね、"物腰が上品"なだけあるよ」

「……恥ずかしいです」




------12月6日 美汐の誕生日 当日




「美汐ちゃん、誕生日おめでとう。これ、俺と春歌ちゃんからのプレゼント。
 受け取ってくれないか?」

「潤兄様、ありがとうございます。プレゼントだなんて、とても嬉しいです♪
 開けてもいいですか?」

「ああ」

美汐が大きめの包みを開けると、そこには着物が入っていた。
京の老舗のあつらえたものであるが、最近の若い人向けに工夫した色柄もので、とても綺麗な着物だった。

「美汐ちゃん、着付けをワタクシが手伝いますので、早速着てみてください。
 さて、兄君さま……少しの間、リビングでお待ちになっていてくださいね」

「分かっているよ。終わったら呼びに来てくれ」

「はい」

……

「美汐ちゃん、着替えが終わったら、兄君さまと一緒に茶でも点てませんか」

「はい?」

「兄君さま、美汐ちゃんの大和撫子ぶりを直にご覧になりたいそうですよ♪
 あのように見えて、今朝からすっかり楽しみにしているみたいです」

着物姿に着替えた美汐は、春歌に手助けしてもらいつつも、潤や他の妹達と一緒に古風な雰囲気で過ごした。


(美汐が仕える旦那様って、どんな人なのだろう……)


潤の側にはいつも春歌が仕えていた。
いつか美汐ちゃんにもそんな相手が現れる日々がくるのかな、なんて考えが自ずと浮かんできてしまう、そんな潤であった。
嬉しくもあり寂しくもある、そんな表情を潤は浮かべながら、美汐の様子を眺めていた。










後書き by 作者


あゆ :「SILVIAお兄ちゃん、やっぱり、タイトルに〜○○編〜と書いてないよ」
美汐 :「カノン・キャラには冷たいですね。作者としてとても不出来です」
作者 :「だって……名前を出すと、第1章のネタバレになってしまうから」
美汐 :「そんな理由ですか……
     はぁ〜、これでは佐祐理さんに登場願うしかないですね。
     佐祐理さんが第3章から登場すれば、こんな扱いはもうないでしょう」
作者 :「げっ……美汐、それは勘弁してくれよ〜。……あっ!」
佐祐理:「あはは〜、聞きましたよ〜、SILVIAさん。
     ということで第3章からは佐祐理も出演することに決定ですね
     ・・ね、ね?」
作者 :「・・はい、シナリオ、修正します。佐祐理も出演決定ということで。
     はぁ〜、それにしても佐祐理、上目使いの3段階UPでのお願いは
     絶対に反則じゃないか〜」
佐祐理:「あはは〜。SILVIAさんならOKなのです」


美汐 :「ところでSILVIAさん、大和撫子をテーマにした理由はなんですか?」
作者 :「カノンの大和撫子の美汐、シスプリの大和撫子の春歌、この二人を
     本当に競わせたら面白いかもしれないな、そんなところだ」
美汐 :「シスプリは12人の妹キャラがそれぞれ異なるというところが、ウリの
     一つだと聞いていましたけど。
     はたして、シスプリのファンが、これで納得するでしょうか?」
作者 :「……海より深く反省」


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