最後の真実
第2章 お兄ちゃんと一緒の時
 
第7話 「発明」 〜鈴凛編〜
7月9日 鈴凛の誕生日SS
 
シルビア








鈴凛7才、孤児院で暮らし、養父母となったある夫婦の許に引き取られた。
養父の父(おじいちゃん)は北の街でも有名な発明王だった。

鈴凛は仕事の忙しい養父母よりも、ラボにいつもいるおじいちゃんの許によく遊びに行っていた。

「じい〜、なんでじい〜はいろんなモノを作っているの?」

「儂のつくったモノを気に入ってくれて、いろんな想いを込めてくれるのが嬉しいからだよ。そうだな〜、鈴凛ちゃんはなにか好きなモノがあるかい?」

「チョロQ! それも消防車のチョロQ」

「そうか、チョロQか。
 チョロQを最初に開発した人も鈴凛が気に入ってくれたなら、きっと嬉しいだろう。儂も儂の作ったモノが気に入ってもらえると嬉しいからいろいろと作っているのだよ」

「ふーん。じゃ、鈴凛もじい〜が喜ぶものを何か作りたい!」

「そうかそうか。じゃ〜、この箱の中にある物はなんでも使っていいよ。
 でも、何を作るかきめないとね」

「じい〜の研究を手助けするロボット!」

「わしの研究を手助けするロボットじゃと? これはいい。とするとロボットだな。どれ、部品はと……」

じいちゃんは箱からいろんな小物を取り出して、鈴凛に渡した。
鈴凛はそれを組み立てて、小さなメカを作った。

「出来た〜!」

それは鈴凛の処女作で、卵のような形をしたメカで上半身が回転する仕掛けのものだった。メカはセットした時間がくると回転して、録音した音声をならす仕様だった。
鈴凛は自分の声で、”おじいちゃん、晩ご飯だよ〜。”なんて録音をしてみた。

「ほ〜、目覚ましみたいでいいの〜。儂は気に入ったぞ。ありがとう、鈴凛」

「あは♪」

それからというもの、鈴凛は日々の精進を重ね、中学生でありながらプロト・メカを開発できるほど、ロボット工学・機械工学の達人となっていた。


やがて、アニキと出逢い、それからはアニキの役に立つ様々なメカを開発していった。
時々、研究資金をアニキからカンパしてもらっているのが鈴凛のお決まりの愛嬌といえた。



----6月9日


「おはよう、鈴凛ちゃん」

「あ、アニキ……おはよう……」

「うぅん? どうした、元気がないみたいだけど?」

「実はね、幼い頃からよく遊びに行っていた発明家のおじいちゃんの事でね。
 おじいちゃん、ついこの前、亡くなったの。
 私、いつもお世話になっていたの、鈴凛の師匠なの」

「そうか…………
 でも、鈴凛ちゃんに慕われて、おじいちゃんはきっと幸せだったんじゃない?」

「うん、そう思うとちょっと気が楽になる。
 ねえ、アニキ、私、おじちゃんに焼香したい。
 世話になった養父母にも久しく会ってないし。
 あのさ〜、アニキ、私と一緒に行ってくれないかな?」

「ああ、俺でよければ構わないよ」



----6月10日


潤と鈴凛は、かつての鈴凛の養父母を尋ねた。

「お帰りなさい、鈴凛」

「……ただいま、お母さん。でも、私、今はアニキと暮らしているし……」

「分かっているわ。でも、ここも貴方の家ですから、遠慮しないで。
 でも、お兄さんも姉妹達もいい人なのね。今の鈴凛を見ているとそう思えるわ」

「はじめまして。北川潤といいます」

「こちらがそのお兄さんなのね? あら、素敵なお兄さんじゃない、ふふふ」

「お母さん……」

「玄関で立ち話もなんだから、上がって。
 それに、鈴凛、義父さんに焼香してあげてくれるでしょ?」

「……うん」

「義父さん、鈴凛が来てくれてきっと喜んでいるわ。いつも一緒だったものね」

潤と鈴凛は、最初、和室に案内された。
そこには鈴凛の慕っていた発明好きのじいさんが静かに眠っていた。

「じい〜、俺、今は幸せだよ。
 じい〜、いつも言っていたよね、儂も儂の作ったモノが気に入ってもらえると嬉しいからって。
 今ね、私もそう思えるようになったよ……大好きなアニキのために、いろんな物をつくるようになったから。でも、これから、じい〜は私が作った物を見てくれないのがちょっと寂しい。完成したメカRinRin、じい〜にも見て欲しかったよ」

「鈴凛ちゃん……」

「ね〜、アニキ。私、これからもいろんな物つくるから……だから、これからも資金援助よろしくね」

泣きたいのを無理に我慢した鈴凛は、いつものお決まり文句をいった。

「アニキ、じい〜のラボ、見て来ていいかな」

「あ、ああ」

「じゃ、ちょっと行ってくるね。すぐ戻るから、アニキはリビングで待っていて」

「鈴凛、行ってらっしゃい。それと何か必要な物があったら持ち帰ってもいいから」

「うん。ありがとう、お母さん。じゃあ、行ってくる」

鈴凛はそう言うと、部屋から出て行った。

「潤さん?」

鈴凛が出て行くのを見送った鈴凛の養母は、潤の方を正視して話しかけた。

「は、はい」

「私も夫も仕事が忙しくて、あの子はいつもおじいちゃん娘だったのです。
 引き取ったとはいえ、あの子にはいつも寂しい思いばかりさせてました。
 そのせいか、女の子なのに、すっかり発明に没頭するようになってしまって。
 だから、あの子がお兄さんに会いに行って一緒に暮らすと私達に言った時は、嬉しそうでした。
 それで、私達夫婦は鈴凛が家を出ることを承知したのです」

「そうだったのですか。
 鈴凛ちゃんはいつも研究ばかりしているけど、明るくて楽しい妹です。
 他の妹達にもとても馴染んでますよ」

「そうですか。少し安心しました。
 これからも鈴凛をよろしくお願いしますね。
 私達にできることでしたら、なんなりと相談してください。
 ……それと、今日はよろしければここに泊まっていってください。用意しておきます」

「はい、ありがとうございます。では、お世話になります」


その夜、潤と鈴凛は実家の近くにある公園にでかけた。

「アニキ……私、アニキに話さないといけないことがあるんだ」

「鈴凛ちゃん、何?」

「俺の研究が認められて、アメリカの研究施設からオファーがあったんだ。
 できるだけ早い時期にアメリカに来てほしいって。
 私もロボット工学の分野で将来アメリカに行きたいと思ってるんだ。
 だけど……そうすると、アニキや姉妹たちと別れることになるから……」

「そうか……鈴凛ちゃん、凄いな、そんなオファーがあるなんて。
 ……なあ、鈴凛ちゃん、俺達、いつまでもみんな一緒に暮らせないと思う。
 いつか、みんなもそれぞれの道に進むのだからね」

「そうだね」

「でも、鈴凛ちゃんには鈴凛ちゃんの夢があって、とても人の役に立つことだからね。
 俺は鈴凛ちゃんの夢を応援するよ」

「……アニキ」

「なあ、鈴凛ちゃん、物は考えようだよ。なにもみんなで北の街に住むことないじゃない。必要ならアメリカに住んだってイギリスに住んだっていいしね。
 それに、俺も将来は事業家になって、海外を飛び回れたらと思うんだ。
 だから鈴凛が海外に行っても、俺達はきっとまた会えるんじゃないかな」

潤は自分で口にしながらも、そういえばそうだよな、と思った。

「う、うん。そうだよね、離れていても会いたい時には会えるんだよね?」

「ああ。俺も鈴凛ちゃんとずっと会えないと寂しいよ。
 だから、寂しくなる前に会いに行くさ」

「アニキ!」

「その時は鈴凛の作った物、俺にみせてくれよな?」

「うん♪ 私、がんばるからね。
 でも、一度でいいからアニキと一緒に何か作ってみたいな〜」

「いいぞ、じゃ、明日は電気屋にパーツでも買いに行くか。
 研究資金も特別に奮発してやるぞ」

「それじゃ〜、アニキ、メカRinRin用のパーツも買ってくれない?」

「ああ。もちろんだ」

「ありがとう、アニキ。いつも感謝しているよ」

「じゃ、帰ろうか、鈴凛ちゃん」

「うん♪」

潤と鈴凛は手を繋ぎ合いながら、実家に戻った。

その夜、アニキ〜、と寝言を言う鈴凛の髪を潤はそっと撫でていた。
いつかはみんなも別れ別れになる日が来る、潤はそれを少し寂しく思っていた。
自分は妹達に何をしてやれるのだろうか、もしかすると何もできないかもしれない自分が少し情けなかった。


「ね〜、アニキ〜、そのパーツで一体何を作るの?」

「鈴凛の誕生日プレゼントに、俺の手製のアイテムを作ろうと思って」

「本当? 私、楽しみだよ」

「プレゼントがばれると面白くないだろうから、本当は鈴凛に内緒で作りたいのだが、少しだけ鈴凛にも組み立てを手伝ってもらうからね。
 道具は適当に借りるからね」

「うん、分かった」

潤は基本的なメカの組み立ての部分だけを鈴凛に手伝ってもらった。
それから、春歌や鞠絵にデザインと絵の部分を、咲耶に金属装飾の細工を、可憐には包みをそれぞれ手伝ってもらいながら、なんとかプレゼントはできあがった。

「ふぅ〜、出来た」

「兄上様、なんとかリクエスト通りの絵が出来ましたね」

「兄君さまのお手伝いをして一緒に作るなんて、ワタクシ、幸せですわ」(ポッ)

「お兄様って、案外ロマンチックなところがあったのね」

「お兄ちゃん、鈴凛ちゃん、きっと喜んでくれますよ?」

「ははは〜、何とでも言ってくれ。でも、物を作るって大変だよな〜」

「お兄ちゃん、日頃、料理を作る妹達の気持ち、分かってくださいね?」

「あ、ああ。いつもありがとう」

「ふふふ」



----7月9日


「さて、鈴凛ちゃん、俺の作品のお披露目だぞ。
 誕生日プレゼントは、鈴凛ちゃんのための世界でただ一つの俺の創作品だ。
 さあ、開けてみてくれ」

「アニキ……」

鈴凛はあきれ顔半分、嬉しい顔半分で、目の前におかれた箱をあけた。

「アニキ……これ、本当にアニキが作ったの?」

「ああ、妹達の力も借りたけどな」

潤の用意したプレゼントは、自作のデザイン掛時計だった。

25cmほどの時計盤には、時刻の場所に12星座の小細工がされていて、その盤面にはお神の姿をイメージした兄ちゃんと鈴凛の絵が描かれていた。
アナログの時計盤の下にはデジタル液晶があり、メッセージと時刻を表示する仕掛けが施されていた。
さらに、デジタル液晶の下には、三日月のブランコに少年・少女が乗っているイメージで振り子の飾りがされていた。
(ちなみに、メッセージ文字は無線LAN経由でPCから入力可能の仕様である。
 アラーム機能で音声をならすことも可能になっている)

「鈴凛ちゃん、12星座は私達妹全員の誕生月の星座をイメージしたのよ」

「鈴凛ちゃん、ブランコはお兄様と鈴凛ちゃんが二人で乗っている雰囲気で作ったの。気に入ってくれたかしら?」

「時計盤の絵はギリシア神話の雰囲気で描いてみました」

そばにいる妹達が時計をつくったいきさつを語ってくれた。

「鈴凛ちゃんの部屋にでも飾ってくれると嬉しいのだが?
 ……でも、いつもメカを作る鈴凛ちゃんの気持ち、よく分かったよ」


潤は鈴凛に近寄って、耳元で囁いた。

「なあ、鈴凛ちゃん、世界のどこにいてもインターネットはつながっているよな?
 会えない時には、リモートからメッセージをいれてあげるからな。
 でも、今のところ、他の妹達には例の留学話は内緒にしておくか」

「うん。でも、アニキのためのメカRinRinも楽しみにしていてよね。
 出発する時までに、ばっちり完成させるからね」




後書き by 作者


亞里亞:「亞里亞も時計、欲しい〜……」
北川 :「あれは1つだけしかない創作だから……」
亞里亞:「くすん……」
白雪 :「SILVIAにいさま、SSではいつも変わったアイテムを考えているですの。
     どうしてこんなアイテムが出てくるですの?」
作者 :「デザイン掛時計は割と売っているよ。このSSみたいなデザインもみかけたし。
     だけど、盤面の絵と振り子のデザインは、こんなのは市販されてない。
     それに、もともとはアニメでお兄ちゃんが妹にあげたプレゼントの
     オルゴール、あの雰囲気に近いアイテムを考えていたのだよ。
     お兄ちゃんと仲のいい姉妹を連想させるアイテムをね」
千影 :「SILVIA兄くん……相変わらず変なところは工夫するね」

咲耶 :「でも、プリ・ピュアの鈴凛の話に比べると、随分話を変えたよね?
     いいのかな〜?」
作者 :「そうだね、このSSの第1章の出逢いと整合をとるためと、第3章への
     伏線を少し張るためかな。実は白雪編でも少しやったことなのだけどね。
     要するにSSの先の話のために、過去話を少し作ってみた」
咲耶 :「あら、SILVIAお兄様、第2章と第3章とではつながりは付けないと
     公言していたような気がするわ」
作者 :「最初はそのつもちだったけど……回想曲風に書けなかったから」
美汐 :「つまり、SSを書くために都合よく話を変えたということですね」
作者 :「…………」
あゆ :「約束を破ったらいけないよ、SILVIA兄ちゃん」
作者 :「…………海より深く反省します」

千影 :「SILVIA兄くん……第2章、先は長いよ。分かっていると思うけど」
作者 :「誰だ〜こんなプロトを考えた奴は〜、と叫びたいわな」
春歌 :「それは他ならぬSILVIA兄君さまですわ。必ず書いて下さるとの約束して
     くださいました」(ポッ)
作者 :「はぁ〜、この個性派の少女達をどう描けというのだ。
     アイディアをくれ〜、アイディアを〜」

雛子 :「クシシシシ……ヒナね〜、知ってるよ。
     SILVIAおにいたまの部屋にね、アニメの全作とプリ・ピュアのDVDが
     あったんだよ。それ見て、必死に考えているみたい」
春歌 :「SILVIA兄君さまもワタクシの事を必死に研究されたのですね?」(ポッ)
作者 :「まあ……一応。DVDは香港から買ったら安かったよ。
     英語字幕だとちょっとニュアンスが違う部分もあって面白かったね。
     春歌は次の話で描くつもり」
咲耶 :「SILVIAお兄様、私の話の時はちゃんと研究して描いたのよね?」
作者 :「研究した…………と思う」
咲耶 :「本当かしら? 読者の評価が楽しみだわ」


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