最後の真実
第2章 お兄ちゃんと一緒の時
 
第4話 「お菓子」 〜白雪編〜
2月11日 白雪の誕生日SS
 
シルビア








-------1月4日 正月明け

朝食後、三上家の執事が潤に話をもちかけた。

「潤様、お願いがあるのです」

「水田さん? お願いって何でしょう?」

「旦那様が今年の正月は仕事で海外から戻れません。
 そのため、旦那様の代わりに三上の名代で、孤児院への挨拶をお願いしたいのです。
 例年ですと正月あけに先方に伺って寄付金とその目録を渡してます」

「孤児院ですか?」

「三上家は旦那様の命により、社会福祉活動の一環として孤児院や保育園、交通遺児育英事業等の各種育英事業への協賛を行っています。
 とりわけ、孤児院については、旦那様がかなり力を入れてらっしゃいます。
 三上家の屋敷から500M程離れた先に孤児院が1つございます。
 今回はそこにご訪問し、潤様にも旦那様の社会福祉活動の一環をごらんになるようにと、旦那様から命を受けました。
 明日、伺う約束をとりました」

「分かりました。明日ですね。俺でよければ父の代理で伺わせて頂きます」

「ありがとうございます。私もお供します。
 細かい準備等は私がいたしますので、潤様は視察をして頂き、孤児院の運営などについて感じたことを仰って頂けると助かります」

「俺にできることでしたら」




--------1月5日



「よくいらして下さいました。潤君、はじめまして。水田さんもお元気そうで何よりです」

潤と水田は孤児院の院長の出迎えを受けた。
二人はとりあえず院長室に案内された。

「こちらが三上家からの今年分の寄付となります」

潤は水田から預かった小切手を院長に差し出した。

「毎年これほど高額の援助をしていただき、本当にありがとうございます」

「気になさらないでください。三上家の養女達を育てて頂いた恩もあります。
 それに一時期は私達の力が及ばず、院長をはじめとする方々が必死になって資金繰りをされた頃もありましたので心苦しさもあります」

水田は院長に言った。

「そういえば、そんな時期もありましたね。
 でも、今は三上様の援助と倉田様の援助でこの孤児院は安泰で居られます。
 それに資金だけでなく、優秀な人材を紹介して頂いて、三上様には感謝で返す言葉すらありません。
  これもすべて三上純一郎様の暖かい御心ですね」

「父が孤児院についてそれほど熱心だったとは初めて聞きました。
 私の父についての印象は仕事一筋で気むずかしいとしかありませんので」

「潤君、三上純一郎様はそれほど気むずかしい方ではありません。
 そもそもこの孤児院の慈善事業も三上純一郎様が始められました。
 私は三上純一郎様の熱意ある説得に応じて、保育園長をやめてこの施設にきたのです。
 それで、今もここで院長をやらせていただいてます。
 潤君はお父上の事をあまりご存じないようですが、人として尊敬に値する方ですよ」

「そうですか……」

潤は不思議に思っていた。
ほとんど会ったことのない父、それに、母と離婚しつつも母は父の元に俺を遣わせた。
いろんな疑問符があるが、今、こうして潤に話している院長の話は父が善人であると言っている。

「潤君でしたね?
 よろしければ孤児院での子供達の暮らしなどをご覧になっていって下さい。
 不遇な環境に育った子供達がこうして明るく元気に過ごせるのも、三上様のお力あってこそ、それを実際にお目にかけたいのです」

潤は院長に案内され、施設を見回った。
授業の風景、一緒に遊ぶ風景……どれをとっても職員や子供達はとても明るく楽しそうだった。

(なるほど……これが俺の父親のやっていることか)

施設の様子を見た潤は、初めて父の背中を見た気がした。



そして……・



「あれ、白雪! どうしてここに居るんだい?」

潤の目先に、孤児院の調理場で子供達と一緒にお菓子作りをしていた白雪がいた。

「あら、にいさま? どうしてここにいらっしゃるのですか?」

「水田に連れられて、三上家の名代として院長に挨拶に来たんだよ」

「あ、そうですの。
 そういえば、にいさまも三上家の跡継ぎでしたですの」

「それで、白雪ちゃんは何故ここで料理してるんだい?」

「姫は時々、ここの子供達と一緒にお菓子を作って食べているですの。
 姫……小学を卒業する時までは、ここで暮らしたんですの。だから……」

「潤様、実は、白雪様は三上家に引き取られるまでは、ここにいた孤児だったのです」

「そうか、そんなことが……な〜、白雪ちゃん、俺も混じっていいか?
 水田、もう俺のやることは終わったよな?」

潤は白雪の過去を知って少し動揺したが、明るく料理していた雰囲気を壊してしまった事が気になって、少し気がとがめていた。

「はい。あとは私めがやっておきます。潤様はご自由にお過ごしください」



「にいさまが一緒に料理するんですの?」

「こう見えても、俺も母子家庭の育ちだから、料理ぐらいはできるぞ?
 それで、今は何を作ってるんだ?」

「はいですの♪ 姫、今、アップル・パイをつくっているんですの」

「よっしゃ、何か手伝うことはと・・じゃ、俺は生地を練るとするか」

潤は上着を脱いで、シャツの袖をめくっては、白雪の横に立った。

「はいですの♪」

白雪も笑顔を浮かべた。
自分の過去を知られた気恥ずかしさはあったが、それをにいさまに受け止めてもらえたように感じてほっとしたからだ。

その日、潤と白雪の二人は一緒にお菓子づくりをしたあと子供達と遊んで帰った。



「へ〜、お兄様、白雪ちゃんとそんな事があったの」

「お兄ちゃん、優しいんですね。さすが可憐のお兄ちゃんです」

「潤兄ちゃんはやっぱりボクの兄ちゃんだね」

「お兄ちゃま、とっても格好いいです」

その夜、白雪の話を聞いた咲耶・可憐・あゆ・花穂は、なぜか潤のことをベタ褒め気味だった。
何故にこにこしているのか、潤にはよく分からなかった。




--------2月10日



「もしもし、三上潤といいますが」

『潤君ですか? 院長の寺田です。
 お久しぶりですね、先日はどうもありがとうございました』

孤児院の院長が潤の電話に応対した。

「実は少しお願いがありまして--------というわけなんですが、よろしいですか?
 必要なものは明日にでも、こちらからお送りしますので」

『ええ、構いません。子供達も喜ぶでしょうから。では、準備しておきます』

「ありがとうございます、院長」

潤は受話器を置くと、執事の水田を読んで、指示をだした。
水田は快諾し、さっそく手配します、との返事をした。




--------2月12日 白雪の誕生日




昼、潤は弁当を届けにきた白雪に言った。

「白雪ちゃん、今日の放課後は予定を空けておいてくれないか?」

「にいさま、姫はかまいませんけど。何ですの?」

「今日、白雪ちゃんの誕生日だったよね。だから、放課後に俺と一緒にでかけよう。
 それと、水田が校門の所まで車で迎えに来てくれることになってるから」

「はいですの、よくわからないけど、姫なら構いませんですの」

「じゃ、放課後に」

「(???)」

白雪は頭に疑問符マークを浮かべたが、潤の言うとおりに従った。



放課後、潤と白雪は水田の用意した車に乗り込んだ。
その車の行った先は……




孤児院だった。
そして、院長が車から出る二人を出迎えた。

「白雪ちゃん、誕生日おめでとう。
 さあ、早く中に入って! 子供達も待ってるから」

白雪は院長に連れられて孤児院の施設の中に入った。
潤はその後に付いていった。

…パン・パン

「「白雪お姉ちゃん、誕生日おめでとう」」

白雪は部屋に通されると、子供達からいきなり歓待をうけた
それはいつも白雪に料理を教わっている子達や、お菓子のおこぼれに預かっている子達だった。

「あ、ありがとうですの♪ でも・・これって?」

「仲のいい子供達も白雪ちゃんの誕生日を祝ってあげたらいいかなと思ってね。
 その事を院長にお願いしたら、快諾してくれたよ。
 どうだい、こういう風に祝って貰うのも悪くないだろ?」

「白雪ちゃん、今は三上家で幸せに過ごしていると伺いました。
 それでも私達のことを忘れずに訪ねてくれる貴方をみてると、私、とても嬉しいのよ。
 あと、もう一つ、白雪ちゃんには告げないといけないことがあるの。
 だから、こうして来てもらったのよ。
 ほら、あっちを見てご覧なさい」

「あ! 咲耶ちゃん、可憐ちゃん、あゆちゃん、花穂ちゃん」

「「「「誕生日おめでとう、白雪ちゃん」」」」

咲耶・可憐・あゆ・花穂は白雪に向かってウィンクしながら言った。

「咲耶ちゃん、可憐ちゃん、あゆちゃん、花穂ちゃんも皆ここで暮らしていたあなたの仲間だったの。年齢がちがうから一緒になることは少なかったとおもうけど。
 普通は守秘義務があるので、こういうことは明かさないのです。
 だけど、今はあなたの姉妹ですものね。だから、本人達の同意を得て、あなたと潤君には打ち明けることにしたのよ」

「そうか〜、咲耶ちゃん、可憐ちゃん、あゆちゃん、花穂ちゃんも……初めて知ったよ」

潤は少し驚きを隠せなかった。

「でも、今はみんなはあなたの妹なのです。潤君が知らないわけにはいかないわ。
 潤君と姉妹達が一緒に住む前までは、みんなそれぞれ独りぼっちだったはずよ。
 それを潤君にも理解して欲しいの、それでもなお妹達を受け容れてほしいから」

「言われるまでもありませんよ、院長。
 みんな、いい妹達ですし。俺はみんなが大好きですよ」

「にいさま……」

「さあ、白雪ちゃん、固い話は終わりにして楽しもうじゃないか。
 おーい、咲耶ちゃん、可憐ちゃん、あゆちゃん、花穂ちゃん、みんなもこっちに来いよ」

「「「「は〜い♪」」」」


その様子を眺めていた孤児院の院長は頬に涙を浮かべていた。
辛い境遇にいる子供達の笑顔を守ってほしい、そう三上純一郎に言われて院長となった彼女は、この仕事について良かったと実感した。
かつて白雪ちゃんを育てた時も、仲間となかなか交われず、料理と出会うまでは暗く独りぼっちだった。だが、その少女の表情に、今は花の咲いたような笑顔が浮かんでいたからだ。
実際、多くの兄と姉妹、孤児院の後輩の子供達に囲まれる白雪は楽しそうだった。

「白雪ちゃん、今度、私の料理レシピを伝授してあげるわ。
 いつでも遊びにきてね……ここはあなたのもう一つの故郷だから」

「はいですの♪」

「あ〜、白雪ちゃんだけですか〜? 院長、今度は私にも料理を教えてください」

「ええ、みんなもいつでも来ていいわよ」

「はい。それではお兄ちゃんを引っ張って一緒に来ますね」

これで兄とのデートの口実ができたとばかり、妹達はにんやりと笑顔をうかべた(?)

「おいおい、俺まで引っ張られるのか?」

「「「「「当然です、にいさま♪
     (お兄ちゃん♪)(お兄様♪)(潤兄ちゃん♪)(お兄ちゃま)」」」」」

「ははは……」







後書き by 作者


千影:「ふーん、これだと、他の妹は白雪ちゃんを祝ってあげてないな……
    SILVIA兄くんも詰めが甘いな」
作者:「(ドキッ)」
白雪:「いいんですの。これは白雪なりの回想曲ですの」
作者:「回想曲というほどにはなっていないような……」
白雪:「SILVIAにいさま? まさか、約束を違えたですの? まさか約束破り……」
作者:「えーと、あの、その……」

白雪はいつのまにかナイフを胸元から取り出していた。
4本のナイフを突きつけられて訊問されているシルビアの額には汗がにじんでいた。

千影:「SILVIA兄くん……自業自得だよ」
作者:「うわー、千影、お願いだから見捨てないで助けてくれ〜」
白雪:「命ごいをする相手が違いません、SILVIAにいさま?」

それからシルビアは白雪の訊問責めにあった。


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