最後の真実
第2章 お兄ちゃんと一緒の時
 
第2話 「ロケット」 〜可憐編〜
9月23日 可憐の誕生日SS
 
シルビア








「可憐、このロケット、貴方にあげるわ。これはね、大切な人への想いを入れるのよ」



可憐の祖母はそう言うと、可憐にロケットを与えた。
後の可憐にとって、そのロケットは亡き祖母からもらった大切な形見の品となった。
やがて、可憐は一枚の写真を切り取って、ロケットにはめた。

……可憐にとって一番好きな人の写真を。



放課後、可憐と潤は並んで下校した。
そして、二人は夕食の買い物のために、商店街に来ていた。



「あのさ〜、可憐ちゃん。
 俺と最初に噴水で会った時、どうして俺がお兄ちゃんだって気付いたんだ?」

「お兄ちゃん、それはね……これ」

可憐はロケットを取り出して、それを開いては、その中の写真を見せた。


「あの時はね、この写真が濡れちゃったかと心配して開けてみたのです。
 でも、写真と見比べて、お兄ちゃんだってすぐに気が付いたのです」

「そうか。髪型からすると俺が中学1年の頃だな」

「ええ。2年前にお兄ちゃんに最初に会った時、一緒に撮ったものです。
 でも、この写真をロケットに入れる時、可憐、とても困りました」

「何で?」

「だって、このロケットの大きさだと、どうしても写真を切り刻まないといけないんです。
 お兄ちゃんと一緒の写真にハサミを入れるなんて……可憐、とても悩みました。
 だから、できるだけ切り取らなくて済むように小さく映っている写真を探して入れたんです」

「写真を刻むぐらい、気にしなくてもいいんじゃないのか?」


「お兄ちゃん、そんなこと言うなんて酷いです!
 可憐はずっとお兄ちゃんと会えるのを楽しみにしていたのです。
 いつも会えなかったから……たとえ写真ひとつでも、お兄ちゃんと私との絆の証と思って大事にしていたのです。
  それを刻むなんて……可憐、心がとても痛いです」

「そ、そうか……すまん」

「気にしないでいいですよ、お兄ちゃん。今は本物のお兄ちゃんが側にいますから。
 だから、可憐は今、とても幸せなんです♪」

そういうと、可憐は潤の右腕にしがみついた。


「あら、北川君じゃないの?……街中で、ずいぶんなシスコンぶりを発揮してるわね。
 いくら妹といっても、こんな商店街のど真ん中で年頃の女の子に抱きつかれている姿なんて、スクープものよ?」


潤のクラスメートである美坂香里が腰に手を当てながら、呆れたように潤の方に話しかけた。


「美坂、スクープってな〜……」

「あら、今日は、チェキ娘こと四葉ちゃんはいないわね?
 ふふ、あの娘は、こういう時には必ずどこかから姿を見せるのにね」


「四葉ちゃんか? 今日は読書クラブに顔をだしてると思うぞ。
 なんでも、アルセーヌ・ルパン全集を読みあさっているそうだ」

「ふふ、名探偵の次は怪盗なのかしら。でも、あの子、明るいし楽しいわ。
 そうね、私のいる演劇部に勧誘しようかしら」

「やめとけ、美坂。名探偵ならぬ迷探偵、怪盗ならぬこそ泥にしかならんから」

「いいの? そんな事言って? あの子を甘く見ていると……ほら!」


香里は薄ら笑いを浮かべて、潤達の背後を指さした。


「そうデスよ。……兄チャマ、ひどいです。
 迷探偵とかこそ泥だなんて……それが純情な乙女にいう科白とは思えないデス」


潤と可憐の背後から四葉が姿を見せた。
ふくれっ面をしているので、明らかに拗ねているのは誰が見てもわかる。


「よ、四葉ちゃん・・いつの間に」

「さっきから後に居たデスよ。
 兄チャマを見つけて声をかけようと思ったら、香里さんが先にかけたデスよ」

「やっぱり兄チャマにベッタリなのよね、四葉ちゃんは……ふふふ、面白いわ。
 ところで、北川君、今は何をしているのかしら?」

「可憐と夕食の材料の買いだしをしているが?」

「私、今、ちょっと暇なのよ。一緒に遊ばない?」

香里はちょっと誘惑の視線を投げた。

「ああ・・だけど・・せっかくの誘いは嬉しいんだが・・」


潤は少し照れて返事をした。
潤の読み通り、こういう潤の表情を可憐や四葉が見逃しはしない。

「香里さん、お兄ちゃんは買い物中ですから!」

「兄チャマをチェキできるのは四葉だけデス」

可憐と四葉は嫉妬の視線を香里に向けた。

「も、もちろん……可憐ちゃんと四葉ちゃんも一緒にね・・ね?」

香里は二人の視線に怖じ気づいてか、いくぶん口調が弱気になっていた。

「それなら、……ちょっと位、いいわよね、お兄ちゃん?」

「ちょうどいいデスね。四葉も兄チャマと遊ぼうと思っていたのデス」

可憐と四葉も香里の提案に乗って潤と遊ぶことで妥協した。
二人は、香里さんを無下にすると潤の機嫌が悪くなる、それを知っていたから。

「まあ、それなら、俺は構わないが。じゃ、遊びに行くか。
 それで、みんなはどこに行きたいんだい?」

可憐・四葉・香里の3人はしばし考えたが、その時に、目に飛び込んだ店構えを見て答えた。

「「「ゲームセンター」」」

「めずらしく意見が一致したな。じゃ、入ろうか」

「本当は校則で禁止されてるんだけどね。今日は"保護者同伴"だし、いいよね、北川君」

「確かに俺は妹の保護者がわりではあるがな。親父は海外でほとんど家にいないし」

「北川君、学校の父兄参観は来週にあるわよ。その日、北川君は大忙しね♪
 その日は可憐ちゃんと咲耶ちゃん以外の12人の妹のクラスを回るんだもの」

「ソレヲ イワナイデクレ。頭が痛くなる」

「お兄ちゃん、可憐も一緒にクラスを見回りましょうか?」

「兄チャマ、四葉のクラスには絶対に来るデス。
 来ないと、兄チャマの秘密を一つ、ばらすデスよ」

「四葉、それは脅迫というものだ。
 ……もういい、とにかくゲームセンターに入ろう。
 俺もなんだか気を紛らわしたくなった」

「じゃ、行きましょうか、北川君」


それから、4人はゲームセンターに入って遊んだ。
なにげに占いをしている可憐や、
ダンシング・レボリューションで踊る四葉、
麻雀ゲームで勝ち進む香里、

……普段の姿からは想像し難いが、息抜きとはそんなものなのだろう。


「北川君は何をしているの?」

メダルの競馬に興じている潤に香里が声をかけた。

「まあ、平たく言ってギャンブルだな。競馬の予想ってのもなかなか面白い」

「そういえば、ここって、メダルを景品に交換できるのよね。
 ねー、北川君、さっきね、あゆちゃんの言っていた『天使の人形』、あれのぬいぐるみ版を見つけたわよ。
 なんでもあの人形って、あゆちゃんの奇跡以来、ここでも大人気らしいの」

「へぇ〜、あゆへのお土産にしたら喜びそうだな」

北川達はちょっと席を離れて、景品交換所にある景品を見に行った。

「……っと 500枚か」

「兄チャマ、四葉も景品が欲しいデスね。200枚の『名探偵セット』」

「お兄ちゃん、可憐ね、20枚の『レターセット』が欲しいです」

「北川君、私ね〜、時計を壊してしまったの。700枚の時計を取ってくれると嬉しいな〜」

なにげに、3人の少女は潤にねだっていた。

「おいおい、みんな……えーと、合計1420枚だぞ〜?
 第一、俺、そんなにメダルを持ってないぞ、せいぜい100枚といったところだ」

それから、4人はメダル・ゲームの方に戻った。

「兄チャマ、15倍以上の馬に賭ければ良いんデス。25倍の4-8なんていいかも。
 四葉にちなんで4-8です!」

「四葉ちゃん、一発勝負はダメよ。もう少し堅実に賭けないと。5倍の2-3がいいかも」

「北川君、こういう賭け事はリスク分散が大事なのよ。堅実なのと一発勝負と両方に手堅く分散するといいわよ。
 でも、私の予想でも、4-8も2-3は悪くはないわね」

「じゃ、4-8に40枚、2-3に30枚でいくか」



……「第4R菊花賞」各馬、ただ今ゲートに入り終えました。

パラパパッパ〜パラパパッパ〜チャチャラチャチャーン

パン!……各馬一斉にスタート!

………………・第4コーナーを回って、1着4番、2着2番、3着3番・・5着8番……

……・・いよいよ各馬、最終コーナーにさしかかります。



「それいくデス、四葉の4-8!」

「可憐の2-3頑張って〜!」

「うーん……微妙な展開になったわね」



なにげに可憐と四葉も競馬ゲームに熱中していた。
この展開、もう少しで的中しそうだ。


……・・あっと、8番がもの凄い勢いで順位をあげた。2番落馬。
……・・ゴール! おっとこれはきわどい、「審議」
……・・写真判定の結果、1着4番、2着8番、3着3番と確定しました。
……・・連複4-830倍、3連単4-8-3220倍、以上が第4Rでの配当結果となります。


「やったデス・・四葉の4-8!」

「……嘘みたい。本当に取っちゃった……」

「おーっと、1230枚になったぞ〜。これで全部の景品をゲットだ〜。
 これも四葉ちゃんの予想のおかげだ〜、ありがとう、四葉ちゃん!」

潤は四葉の頭を撫で撫でした。

「えっへん、四葉の推理・・もとい予想に狂いはなかったデス!」


4人は景品交換所で、それぞれの景品とメダルを交換した。

「可憐、嬉しいです♪」

「さて、帰るか。このおみやげ、あゆもきっと喜ぶだろうしな」

「そうね」


帰り際、可憐はふとある機械の前で足をとめて、その機械をじーっと眺めた。
可憐はやりたそうな感じだったが、この時はみんなが家路を急いでいた。

「どうした〜可憐ちゃん、時間がないから早くいくぞ〜!」

「……う、うん」

潤は可憐の視線の先をちらっと見ては、なるほどな〜と思った。


----9月23日可憐の誕生日、当日


「可憐ちゃん、誕生日おめでとう。これ、俺からのプレゼントだよ。開けてごらん?」

可憐は潤から誕生日プレゼントを受け取ると、その袋を開けた。

「わー♪ 可憐、嬉しいです。ちょうど新しいのを買おうとおもってたんです」

袋には日記帳が1冊入っていた。

「おや? もう一つのプレゼントも一緒に入っているはずだが?」

「え、もう一つですか?……えーと・・」

可憐は日記帳を取り出した袋の中を覗きこんだ。

「あ・・これってプリクラの写真ですね、それもお兄ちゃんの♪」

「それなら写真をあまり切らないで、ロケットに入れられるだろ?
 2年前の写真っていうのもちょっと芸がないかと思って撮ってきたんだよ。
 でも、恥ずかしかったぞ……1人で撮るのは。ははは〜」

「お兄ちゃん・・プレゼントありがとう。可憐、とても嬉しいです♪」

「いやなに……可憐ちゃん、今度は四葉のデジカメを借りて、二人の写真を撮ろうな」

「うん♪ でも、今日は私の誕生日ですし、できれば今日撮りたいです」

「そうだな。じゃ、早速撮るとしようか。
 ……・おーい、四葉ちゃん、タンスの中に入ってないで出てこいよ〜」

「……ばれていたデスか……最近、兄チャマ、鋭すぎデス」

「当然だろ?
 ところでその手に持っているデジカメで、俺たち二人の写真をとってくれないか?」

「このデジカメは兄チャマの秘密をチェキするものデスよ……」

「いいだろ? せっかくだし、四葉ちゃんとも一緒に撮ってやるから」

「それなら、良いデス♪」

可憐と四葉、それに潤は互いにいろんな構図で写真を撮った。

「あとは、凛々に頼んでプリントしてのパソコンでプリントしてもらおう」

「うん♪」


デジカメで撮った写真をレビューした潤は、そこに映る妹・可憐の嬉しそうな笑顔を見てなんとなしに微笑んだ。

「当然・・か。今は一緒に暮らしているんだから」

そして、可憐と一緒に映っている自分の写真を見ては、更なる笑みを浮かべた。

「2年前の俺と比べると、俺も随分と自然に笑うようになったもんだな」


そして、可憐のロケットには今の俺の写真が入った。


俺もロケットに写真をいれようかな、潤はそう思った。
だが、潤はすぐにその案を却下した。
ロケットに収まる写真のサイズでは、14人の妹が収まりきれなかったから。



後書き by 作者



可憐:「SILVIAお兄ちゃんって、ロケットとか写真とかって好きですよね?
    SILVIAお兄ちゃんのSSでもよくネタに使っていますし」
作者:「そうだな。こういうメモリアル・アイテムって好きかも」
可憐:「でも、この設定だと萌えない、という感想が来たらどうするつもりでしょか」
作者:「……」
可憐:「仕方ないですね。咲耶ちゃんの時にはもっと頑張ってくださいね。
    SILVIAお兄ちゃんの一番のお気に入りなのに、咲耶ちゃんのSSが
    不真面目だと咲耶ちゃんに怒られて、その結果、SILVIAお兄ちゃん、
    振られてしまいますよ?」
作者:「……はい。いっそう真面目に取り組ませていただきます」


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