最後の真実
第1章 お兄ちゃん、会いたい!
 
第6話 「5番目の出会い」
 
シルビア








--------------4月14日


俺は東の街の友人、相沢にいつものようにメールした。

「相沢、元気か?

 昨日もな、3人の妹が現れたんだ。
 物静かな鞠絵ちゃん、ドジっぽいけど精一杯元気な花穂ちゃん、愛らしい幼女の雛子ちゃんとね。
 
 いったい俺の妹って何人いるんだろうな。
 もう12人だぜ? 名前すらおぼえきれないぐらいだよ。

 それに、今日は更に2人の妹と出会う千影ちゃんの予言があったんだよ。
 結構当たるんだ、千影ちゃんの予言って。
 てことは、俺の妹は全員で14人というわけか?

 もう、何がなんだか、よく分からないや。
 だけど、何か楽しいんだよ、最近。

 相沢もなんか楽しいことがあった?



俺はものみの丘にやってきていた。
北の街そのものは田舎町の雰囲気があるが、森だの原っぱだの並木道だの、とにかく自然の豊かな所だ。

都会っぽい東の街にはこんなのどかな場所はなかった〜
……ってこんなこと考えている場合じゃないな〜、みんなとはぐれてしまったし。

「兄くん、そんなに心配することはない。夜になれば星の位置で方位は分かる」

「夜って、今はまだ9:00だぞ?」

「フッ……兄くんと久しぶりに二人きり……たまにはいい」

千影ちゃん……手を組むのはちょっと

「と、とにかくだ。丘の原っぱを探すぞ」


---同じ頃 丘の広場に続く並木道

「お兄ちゃん、どこにいってしまったんでしょうか?」

「可憐ちゃん、お兄様ならきっと大丈夫よ。千影ちゃんもいるから」

「でも……可憐、心配です」

「ボク、ちょっと探してくる。森の方に心当たりがあるんだよ」

「あ、あゆさん、勝手に行ってしまっては……」

「大丈夫だよ、春歌ちゃん。この森はボクの遊び場だから、迷わないよ。
 みつかったら、広場に連れて行くからね〜。美汐ちゃん、みんなを案内してね」

「はい。私は皆さんと丘の広場で待ってますから、気を付けていってくださいね」

その時、並木道を走る1台の自転車が、可憐達の側で止まった。

「君たち、なにかあったの? ずいぶんと困った顔しているけど?」

「実はその……連れが迷子になったみたいなんです」

「あの実は私も少女の連れが迷子になってまして、探して居るんです」
年配の女性が可憐達の話を聞いて、話かけてきた。

「そうなんだ。じゃあ、ボクも一緒に探してあげる。自転車だと便利でしょ?」

帽子を後ろ向きにかぶり、パンツルックでパーカーを着た少女が答えた。



---同じ頃 森の中


「……兄くん……待って! この気配は?……水晶に何か写ってる」

「どうした、千影ちゃん?……って、あれ千影ちゃん?千影ちゃん?」

千影ちゃん、どこに行ったんだ?
なんだろう、辺りが霧のようなものに包まれている。

何だ、あの光?
俺は強い光の放つ方向に足を向けた。

そこに、少女がひとり、ぽつんと座っていた。
一面が木々に囲まれたその場所に、ただ1カ所ぽつんと広い空間を残している。
そこには大きな切り株と、そこに腰かける幼げな少女の姿があった。

うつむいていた少女は面をあげると


「あ〜、兄や〜♪ 亞里亞、兄や〜、みつけた〜」


(にいや〜?)
俺はその場に立ちすくんだ。

少女はゆっくりと立ち上がると、俺に向かって駆けだしてきた。

「こんどは〜、兄や〜が鬼〜の番だよ」

「ね〜、君、君は誰? それにここで何をしてるんだい」

「亞里亞はね、亞里亞っていうの。
 大好きなにいや〜とうさぎさんとりすさん達とね〜、亞里亞〜、鬼ごっこ〜」

ふと周りを見渡すと、俺と少女の周りに森の小動物達が近寄っていた。

「鬼ごっこか……でも、ぼくは亞里亞ちゃんのにいや〜じゃないよ?」

「兄や〜! 亞里亞のにいや〜なの。おにいちゃん。いつも一緒なの〜」

(おにいちゃん……あ、そうかひょっとしてこの子が千影の言っていた妹かな?
 にいや〜ってお兄ちゃんってことか)

「じゃ、お兄ちゃんと一緒に行こうか。森の動物たちとお別れするんだよ」

「うん。亞里亞、兄や〜と一緒♪ うさぎさん、りすさん、バイ〜バイ〜♪」

……

(兄くんらしいな、動揺もしないなんて。
 森の精霊が導くなんて……兄くんはやっぱり心優しいんだな。
 これで一人の妹と出会えたということになるな)

水晶を見つめていた千影ちゃんが、その目を離し、俺の姿を直視した。

「潤兄ちゃん〜、潤兄ちゃん〜、こんなところにいたの、探したよ〜。
 やっぱりここだったんだ」

俺のところにあゆが息を切らせながら駆け寄ってきた。

「あゆか。みんなは? それに千影ちゃんの姿をみなかったか?」

「兄くん。私ならここにいるよ」

「千影ちゃん、いつのまに? まあいいや。
 あと、この子は妹の……えっと〜」

「亞里亞(ありあ)」

「亞里亞ちゃんか、この子をみんなの所に一緒につれていくから」

「しかし、不思議だったよな。何だったんだろう、あれは」

「兄くん、森の精霊が純真な少女の想いを叶えてくれたのさ。
 あの木はかつてはあゆちゃんがお兄ちゃんに会いたいと願った場所なんだ。
森で迷子になった亞里亞ちゃんもまたお兄ちゃんに会いたいと願ったから、
それで森の精霊が兄くんを導いたんだよ……これも運命の導きというもの。
森の精霊が『お兄ちゃんに会えてよかったね』と言っていたよ」

「そうか。不思議なこともあるもんだな」

「この丘や森には多くの精霊が住んでいる。さっきからずっとその気配があるから」

「潤兄ちゃん〜、早く広場にいかないと。みんな待っているよ」

「わかったから、あゆ、そう急ぐな。子供連れてるんだから」

そうこう言いながら、俺たちはものみの丘の広場にたどり着いた。

「亞里亞様〜!」

「あ〜、じいや〜。じいや〜」

亞里亞ちゃんは年配の女性の姿をみつけると、駆けていった。

「すいません、この子がご迷惑をかけてしまったようで。
 あ、すいません……私、この子の世話をしているメイドで、藤田といいます」

「迷惑だなんて、思ってませんよ。この子は俺の妹のようですから」

「え? それでは、あなたは亞里亞様のお兄様でらっしゃいますか?」

「そのようなんだ。俺は北川潤といいます」

「間違いありません。あなたは亞里亞様のお兄様でらっしゃいます。
 実は、三上家の方へ伺うはずだったのですが、亞里亞様が森で遊びたがって
 しまい、仕方なく立ち寄ったのです。
 こんなところでお会いするとは奇遇です。
 すると、このお嬢様達は?」

「俺の妹達で、亞里亞にとっては姉妹にあたる子達です。
 俺たちはハイキングに来ていたので、せっかくですし、ご一緒しませんか?」

「ええ、お言葉に甘えさせていただきます」

「ところで、可憐? そっちにいるパーカーを着た女の子は誰なんだい?」

「えっと・・通りすがりの人ですが、一緒にお兄ちゃん達を探してくれた人です」

「えーっと……ひょっとして北川潤さんって、お兄さんのことなの?」

少年のような少女が北川に向かって話しかけてきた。

「ああ、俺だが?」

「やっぱりあにぃだったんだ。
 ボク、衛っていうんだよ。あにぃに会いにきたんだよ」

「すると、君は俺の妹?」

「うん、間違いないよ。
 水田さんに送ってもらったあにぃの写真だってあるよ。……ほら
 ボク、西の街から今日、こっちに着いたとこなんだ」

少女は荷物から北川の写っている写真を取り出し、北川に見せた。

「そうか……でも、西の街から自転車でこの街まできたの?
 随分、遠くからきたんだな」

「うーん、実は生まれ故郷から自転車に乗ってツーリングできたんだよ。
 その……水田さんが送ってくれたお金でつい自転車を買って・・ははは」

その時、衛ちゃんのお腹からぐぅ〜という音がした。

「それにね、あにぃ〜……お金なくて、実は昨日から何も食べてないんだよ。
 さっそくで悪いんだけど、・・その・・何か食べ物くれない?」

「プッ……何してんだい、衛ちゃん。
 まあいいや、……おーい、白雪ちゃん〜、衛になにか食べさせてやってくれ〜」

「はいです、にいさま。姫のお弁当はたくさんあるです。好きなだけ召し上がれ♪」

「わーい、やっとご飯にありつける〜♪」

なにやってんだかな、衛ちゃんは。
まあ、元気だけが取り柄ってとこか。

そういえば、今日会ったもう一人の妹はと……

「ぽんぽんぱっ、ぽんぽんぱっ……ぽんぽんぱっ、亞里亞の勝ち……」

あ〜? 何してんだ、亞里亞ちゃんは?"ぽんぽんぱっ"って何のことだ?


「美汐ちゃん、亞里亞ちゃんは何してんだ?
 どうやら狐達と戯れているようだけど」

「潤兄様には、あの子達は狐の姿に見えるんですね。
 私にはうさぎやクマさんに見えますけど」

「うん。おにいたま、亞里亞ちゃんはうさぎさん達一緒に遊んでるよ」

「美汐ちゃん、雛子ちゃん……兄くんには狐にしか見えないさ」

「ふふ。そうですね。
 妖狐のまやかしは純真な少年少女にしか見えませんから。
 潤兄様のように世間に揉まれたら、ただの狐にしかみえないでしょう」

「美汐ちゃん、妖狐のまやかしって何のことだい?
 それに俺にはあいつらは狐にしか見えないって」

「お兄様はご存じなかったんですね。
 この丘には昔から長寿の狐達が住んでいたんです。
 そして、長く生きる間に、狐さんたちはまやかしの術という特殊な能力を持つように
なったんです。狐さんたちはとても心優しくて寂しがり屋なんです。
それで彼らの存在を信じる、純真な少女達の夢や願いを叶えてあのように無邪気に
遊んでくれたりするんです。
でも、時には人間の姿になって私たちの前に姿を現し、そんな奇跡的な能力をもつことから、人に忌み嫌われて厄災をもたらすなどと言い伝えられてます。
人に恐れられようとも、本当のあの子達は根はとてもいい子達なんです」

「美汐ちゃん、よく知っているね」

「私が母を亡くして1人だった時、私が理想とするような年上のお兄さんの姿になって、私の前に現れました。
今は狐の姿に戻ったようですが、あの子は本当のお兄さんのようでした。
『本当のお兄ちゃんが美汐を迎えにくるから……』
そう言って、あの子は姿を消しました。その後、潤兄さんに会えたんです。
私の寂しさを埋めてくれた、あの子には今もとても感謝してます。
 そんな子達が伝説のような悪い狐だと、私は思いません」

「そんなことがあったんだ」

「きっと、亞里亞ちゃんにはいいお友達、雛子ちゃんにはお母さんに見えるんでしょうね。それに以前、あゆちゃんのことで狐達に教えてもらったことがありましたし」

美汐ちゃん、雛子ちゃん、亞里亞ちゃん、千影ちゃん、あゆちゃん……不思議な妹達だな〜、と俺は思った。

俺はレジャー・シートの上で横になると、丘の上に広がる青空を眺めて、妹達の楽しそうな声を聞きながら、しばしの休息を取った。

衛ちゃん、亞里亞ちゃん、また二人の妹が増えたしな。
さすがに14人ともなると、騒がしいほど賑やかなもんだな、俺はそう思った。


……その時、


「兄くん!」

「千影ちゃん? 何だい?」

「兄くんに聞きたいんだが、水晶が語ったことなんだが、
 『ショートヘアの少女、長い髪を青紫のリボンで束ねた剣をもつ少女、夜の校舎、
  幻惑的な魔物』という事で思い浮かぶ節がないかい?」

「いや、それだけだと、何のことかよくわからないが?」

「そう……どうやら、兄くんに危険がせまっているようなんだ。
 気のせいならいんだが」

「おいおい、脅かすなよ、千影ちゃん。
 それでなくとも千影ちゃんの予言はよく当たるんだから」

------そして、その予言はやはり見事に的中することとなったが、
   その時の俺は全くといって気にもとめていなかった。
 









後書き by 作者


衛 :「SILVIAあにぃ、ボクの話、手抜きみたいだけど?」
亞里亞:「SILVIA兄や〜、亞里亞〜、キャラ〜ビデオ〜の話とそっくり〜」

……ポカッ・ポカッ (まあ、痛くないけどね)

作者:「衛、亞里亞……許してくれ、俺の発想が追いつかなかったんだ。
それに衛はキャラ・ビデオの話を忘れたんだよ」
衛 :「SILVIAあにい、次話までには見ておいてくれるよね?」
作者:「はい。それで……どうか、その鉄パイプはしまってください。
    亞里亞ちゃんも日傘で人を叩いてはいけませんよ」

美汐:「どうして妖狐の話をするのやら……
    はあ、SILVIA兄様の頭ってどうなっているのやら」
可憐:「この話の最後って、私達にはわからない話のようですね」
あゆ:「あれはカノンの方の話がベースだからだよ。
    可憐ちゃん達はしらないかも。
    まあ、夜の校舎だから、次の話の登場人物はかの美少女剣士と
    相場が決まっているけど、SILVIA兄ちゃん、どうやってSSの話に
    するんだろうね。あれがどうやって妹とつながるのだろう」

作者:「ははは……これで14人全員揃ったところだし、
    ここで、一つか二つぐらい、カノン・エピソードでも書こうかと。
     まあ、次回の話を楽しみにしてくれよ」

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