最後の真実
シルビア
原作:Kanon/Sister Princess/Air
第1章 お兄ちゃん、会いたい!
第8話(第1章最終話) 「会いたかったから」
【ALL】


--------------4月18日

朝、教室。

「おはよう、可憐ちゃん、今日は早いのね」

「あ、香里さん、おはようございます」

クラスメートである可憐・咲耶・美坂は案外仲良しである。
栞の件があってから、北川とその妹に対して、香里はいい意味で世話を焼きたがっていたのだ

妹達にすれば、北川が兄なら、香里は姉のような存在になっていたのであった。
もっとも、潤と香里の間に恋が生まれるまでには至ってないが、その二人も友達以上恋人未満の間柄であるにはちがいなかった。


「可憐ちゃん、どうしたの、元気がないわね。それに、今日はお兄さんと一緒じゃないの?」

「う……うん。今日はちょっと一人で考えたいことがあって」

「深刻な悩み?」

「いえ、そんなことはないんです。
 ただ……今日はお兄ちゃんの誕生日で……その、プレゼントの準備もまだで」

「あらあら、シスコンの北川君へのプレゼントなら、簡単じゃない。
 妹全員から、"お兄ちゃん、大好き"とほっぺにチュッでOKよ」

「香里さん! それにチュッだなんて……恥ずかしいです。(したいけど)」

「冗談よ、可憐ちゃん。
 ま、北川君なら何でもいいんじゃないかな。
 かわいい妹が選んでくれたものなら、何でも喜んで貰ってくれるわよ。
 それに、今までもてたことないから、女の子からのプレゼントなら絶対OKだし」

「それが、お兄ちゃん、ああ見えて今は結構もてるんですよ。
 この前もラブレター10通ぐらい、お兄ちゃんの机の上にありましたし。
 メガネをとったお兄ちゃん、結構格好いいと思うから、可憐、心配です」

「嘘~~~!」

「ただ、お兄ちゃんは、好きな人がいるからって、みんな断っているみたいなんです。
 私、それが誰なのかも知っているんですけど……」(ジト)

大好きなお兄ちゃんが他の女性とつき合うなんて……
可憐は、いくら自分が妹の立場でも、それは理不尽だと思う少女だった。
ましてやお兄ちゃんの想い人が近くにいるわけだから、気分のいいものではなかった。

「あはは~、はぅー、うぐぅ……今日はUFOでも見れるかしら!」

香里とて、北川の気持ちには気付いていた。
ただ、香里は北川に告白する勇気をもてなかったのだ。
恋人関係になるよりも、今のまま仲良く過ごすのでも十分だと思っていた。
だが、自分のせいで、妹達を含めて何人の女性が泣いているのかしらと思うと、少し心が痛むのだ。

「は~、良いです。香里さんに相談したのが間違いでした」

「そ、そんな事ないわ。
 分かった、私もプレゼント選びに協力してあげるから、ね、ね?」

「本当ですか? お兄ちゃんも香里さんが選んでくれたら喜びそうだし……」

「でも、今からみんながプレゼントを準備するのって大変じゃない?
 だから……ということで、こういうプレゼントでどう?」

「あ、それ良いですね。でも、それって今から間に合います?」

「大丈夫、あたしに任せて。こう見えても学級委員なんだから、コネはあるわよ。
 そうね~、久瀬さんを巻き込むと話が早そうね。
 ああ見えて、久瀬さんってつかいっぱするには便利なのよ。
 それに、久瀬さんは、咲耶ちゃんのファンだから、咲耶ちゃんがお願いすれば一発で話がまとまるわ」

「本当ですか?……とりあえず、咲耶ちゃんにお願いしましょう」

香里と可憐は咲耶に事情を話した。
咲耶は最初はちょっと渋ったものの、大好きなお兄様のためなら、と二人に協力した。

香里と可憐、咲耶の3人は隣のクラスに行き、久瀬と話をした。

「あの~、久瀬さん、咲耶のお願い聞いてもらえます? 実は……」

なにげに、咲耶は瞳を潤わせて、上目使いで話した。

金持ちで権力志向のこの男だが、惚れた弱みか咲耶にはめっぽう弱い。
咲耶の前では、この男の本性、すなわち甘さと心優しさが表れる。
香里に耳打ちされた、"礼に、咲耶ちゃんの可愛い写真あげるから"という約束で交渉が成立するのだから単純な男である。
使えるコネは何でも使えとの香里の作戦はまんまと成功した。

「……何だ、そんなことか……なーに、この久瀬に任せたまえ、早速手配しよう。 みんなは、とりあえず今日の夕方、この店に行ってくれればいいから」

「ありがとう。さっすが久瀬さんね、頼りになる~♪」

「ふふ、私の言葉通りだったでしょ? じゃ、夕方に妹全員で店に行って来るのよ」

「香里さんはどうするんです?」

「私も? 今回は可憐ちゃんの達が主役よ。
 私は脇役で十分よ。栞にも協力させるからね。
 この前、北川君には助けてもらったから、そのお礼も含めて協力するわよ」

「ありがとう、香里さん」

実は、香里にしても、なんだかんだと頼られるのが好きなのであった。
だから、14人の妹達のこともそれなりに世話してあげたくなるのである。
とりわけ、可憐の甘えん坊なところと、咲耶のロマンティックな所は香里のお気に入りでもあった。

「栞~、ちょっといい?」

「何、お姉ちゃん?」

「実はね、……………………………………、協力してくれるわね?」

「はい、いいですよ」

栞もクラスメートのあゆや美汐のことがとってもお気に入りだったのだ。
当人も大のお姉ちゃん大好きタイプなので、お兄ちゃん想いのあゆや美汐に同じ雰囲気を感じるからだ。


……そして、その夜


学園にあるゲスト・ルーム、その控え室には14人の少女が勢揃いしていた。
女3人で姦しいというが、14人も揃うと、なんと表現すべきだろう。

可憐「お兄ちゃん、可愛いって言ってくれるかな?」
花穂「お兄ちゃまに、花穂のかわいい姿、見てもらうんだ」
衛「あにぃにこんな姿見られたら……ボク、ちょっと恥ずかしいよ」
咲耶「そんなことないわ、衛ちゃん。よく似合っているわよ。
   お兄様もきっと喜ぶわ。あたしもしっかりがんばろうっと」
雛子「ね~、鞠絵ちゃん、ヒナの髪飾り変じゃない?
   おにいたま、気に入ってくれるかな~」
鞠絵「大丈夫ですよ、雛子ちゃん。兄上様もきっと喜んでくれます。
   でも、わたくしもこういうのは初めてなんで、少し心配です」
白雪「姫はばっちりですの。にいさまに姫のこの姿見てほしかったですの」
鈴凛「アニキにこんな姿見られるぐらいなら、俺、逃げたいんだけど……ダメかな~」
千影「これを着て兄くんと……久しぶりだな」
春歌「兄君さまにワタクシのこの姿をごらんになって頂くなんて、私、シ・ア・ワ・セですわ」
四葉「四葉の姿を見て兄チャマのびっくりする顔、絶対にチェキするデス」
亞里亞「アリア、兄~や~に早く見て欲しい」
あゆ「うぐぅ、胸が足らない……」
美汐「潤兄様、一度、潤兄様とこんな風に……」


栞「みなさん、準備はいいですか? 北川さんもすぐに見えますよ」


北川「おいおい、美坂、一体どこに連れて行くんだよ?
   それに、お前、なんでドレスアップしてるんだ?」

香里「いいから、いいから。黙ってついてくればいいのよ。ほら、着いたわ」

北川「ゲストルーム?それに……久瀬、何してんだ、お前?」

久瀬「説明は後でいいだろう? さあ、中に入ってくれたまえ。
 さて、とりあえず、ボクと一緒にきてくれたまえ。
 美坂さん、彼をしばし借りるよ」

香里「了解。じゃ、私は先に行ってるわ」



北川「おいおい、一体どうなってるんだ?」

久瀬「北川君、君も男だろ? ウジウジせずにスパッと覚悟したまえ」

久瀬は北川の襟元を引っ張って、控え室に連れて行った。
そして、北川に衣装を渡して言った。

久瀬「これから妹達全員からのプレゼントがある。
 それに着がえてから、ゲスト・ルームに行きたまえ。
 そこでは、君の天使達が待ちかねているはずだ」

そういうと久瀬はその場を去った。
北川はとりあえず言われるまま着替えて、ゲスト・ルームに入った。


(妹全員からのプレゼント?)


ゲスト・ルームに入った北川の目の前は真っ暗だった。
突然、スポットライトの光が北川を包む。

そして、久瀬の姿もまた光の中に現れた。

久瀬「レディース & ジェントルメン 、
This is a present for Jun Kitagawa -- From all his lovely sisters.」

部屋の照明が灯り、北川の前に14人の少女が現れた。



ALL 「お兄ちゃん、誕生日おめでとう!」



それぞれの妹達は綺麗なドレスを纏って、めかしていた。

春歌「今日はお兄様だけをおもてなしする舞踏会ですわ」
可憐「お兄ちゃん、どう? 私達の姿、似合ってる?」
衛 「こんな姿、ちょっと恥ずかしいけど」
美汐「みんな、一度は潤兄様と踊ろうと、めかしてみたんです」
あゆ「潤兄ちゃんと一緒にいられる時間って今まで少なかったから」
咲耶「今日は私達みんなと踊ってくれるよね?」
千影「兄くん、今夜は二人で楽しもうじゃないか」
亞里亞「兄~や~、今夜はみんなの王子様」

香里「というわけ、北川君。あなたと妹達のための舞踏会よ」
栞 「よかったね、"お兄ちゃん"」

北川の横に香里と栞がいた。

北川「俺の誕生日のプレゼントが舞踏会か
    ……これだけの人数に祝って貰うだけでも俺ってシアワセなのにな」

華麗な妹達の姿を前に北川はちょっぴり涙ぐんだ。

香里「それでは妹達の所までエスコートしますわ、シスコン君♪」

栞 「私、お兄ちゃんも欲しかったんです。今夜ぐらい、こうさせてください」

両手を香里と栞の二人に捕まれた北川だった。
香里と栞の胸の感触がきもちいい、不純ながらもそう思った北川だった。

北川「おいおい、妹達に嫉妬を焼かれるのはごめんだぞ?」

亞里亞家の演奏家達による音楽が奏でられ始めた。
スポットライトが情熱的な光を照らしだし、部屋一面を照らす。


♪ ~~~~ ♪

香里「ふふ。行ってらっしゃい。"世界で一番大好きなお兄様"、北川君」

栞 「北川お兄ちゃん、ふぁいと~、です!」

香里と栞は手を離し、北川の後から背を叩いた。

北川「やれやれ……」


♪ ~~~~ ♪

あゆ「潤兄ちゃん、この大きなリボン、今度のボクのトレードマークなんだよ」
北川「ほお、あゆちゃんもイメージ・チェンジか? で、誰を恋人にするんだ?」


♪ ~~~~ ♪


咲耶「私、似合ってる?
   いつかは私のウェディング・ドレスも見てほしいの。
 もちろん、お兄様にね♪」
北川「このドレスだって十分、綺麗だよ。これ以上綺麗だとは、俺の心臓が止まる。
 でも、咲耶のドレスは俺が必ず選んでやるからな」


♪ ~~~~ ♪


衛 「あにぃ、やっぱり、このドレス姿は恥ずかしいよ~」
北川「たまにはいいじゃないか、衛ちゃんは女の子っぽいのも似合うぞ」
衛 「本当? うれしいよ~」


♪ ~~~~ ♪


北川「春歌ちゃんは和服だけじゃなくて、ドレスも似合うんだな」
春歌「……嬉しいですわ。
 兄君さまと着飾って踊れるなんて、とても幸せです。
 前から、ドレスを着て最初に踊るのは兄君さまって決めてたんですのよ」
北川「光栄だよ」


♪ ~~~~ ♪


鞠絵「兄上様、こんな体験、初めてです」
北川「はは、たまには冒険するってのも、いいもんだろ?」


♪ ~~~~ ♪


北川「雛子ちゃん、よく似合っているよ、とても可愛い」
雛子「おにいたま♪
 でも、ヒナね、いつかおにいたまに綺麗と言って欲しいんだよ」


♪ ~~~~ ♪


鈴凛「メカを一緒に作っている時は恥ずかしくないのに、
こんな姿でこんな近くでアニキと一緒だと……めちゃ恥ずかしい」
北川「なんでも一生懸命なんだな、鈴凛は」


♪ ~~~~ ♪


四葉「兄チャマ、照れてるデス~。今がチャンスです、チェキです~」
北川「おいおい、俺の秘密ばかり何でもチェキしないでくれよ。
 男には知られたくない秘密もあるんだぜ?」


♪ ~~~~ ♪


美汐「潤兄様、私はもう独りぼっちじゃないんですね」
北川「美汐ちゃんを独りぼっちにする奴は俺が許さないから」


♪ ~~~~ ♪


亞里亞「兄~や~は、アリアのこと~叱ったりしない?」
北川「兄やはな、アリアちゃんのこと大好きなんだ。だから、たまには叱るぞ」
亞里亞「兄~や~、意地悪~!」


♪ ~~~~ ♪


白雪「にいさま、これからもずっと姫の料理、食べてくれますの?」
北川「にいさまはもう、カップラーメンの生活に戻れないからな。頼んだぞ」


♪ ~~~~ ♪


千影「今日の兄くん、素敵だよ。でも、ふたりっきりで踊りたくなかったかい?」
北川「兄くんとしては、もうしばらく、他の妹達にも囲まれていたいんだがな」


♪ ~~~~ ♪


花穂「花穂ね、これからもお兄ちゃまをずっと応援するんだ。
 そしたら、花穂、もっとがんばれる気がするの」
北川「そうだな。だけど、たまにはお兄ちゃまにも花穂ちゃんを応援させてくれよ。
 そうだ、今日は、お兄ちゃまが花穂ちゃんをリードしてやろっか?」
花穂「うん♪」


♪ ~~~~ ♪


可憐「お兄ちゃん、可憐、こう見えても寂しがり屋で甘えてばかりなの。
   お兄ちゃんにはこれからも迷惑かけてしまうけど……ずっと側にいてね」
北川「今まで会えなかった分、側にいてやるよ。少しは甘えな、可憐ちゃん」




この様子を見ていた執事の水田は感慨にふけっていた。

水田(執事生活40年、こんな日がくること、この水田はどれほど待っていたか。
 悲しい運命の少女をお救いしたのは、やはり潤様でしたね。
 妹様達のあんな笑顔をみれるなんて、私はもう死んでも悔いはないです。ううう……)
 
久瀬「ほらほら、水田さんも、そんなところでしんみりしないで」
水田「は、はい」

香里「ふふ。シスコンの北川君にはぴったりだったわね。
 ……お似合いよ、北川"お兄ちゃん"」
栞 「お姉ちゃん、北川さんがちょっと羨ましいです」
香里「栞だって、ドレス似合っているじゃない。私と踊ってみる?」
栞 「はい、お姉ちゃん♪」

15人の側には、姉をだれより慕う妹と妹をだれより愛する姉がいた。
だが、そんな姉を好きになった北川の想いはまだまだ届かないようだった。


北の街に一同に会した15人……とその仲間達。


お兄ちゃん、会いたい!
妹達のプレゼントは、お兄ちゃんに再会できたその喜びの気持ちだった。
会えて嬉しいから、自分を見てくれるのが嬉しいから……そんな健気な妹達の気持ち。


会いたかったから-----願いの叶った少女達の想いを乗せて、夜は更けていく。





(最後の真実 第1章 FIN.)




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