海神航、プロミス島での12人の妹達との共同生活の後、航が米国に渡った。
現在21才、米国・バード大に留学する3年生である。
義妹・千影は、19才、米国のハイスクールに入学を控えていた。
航は夏休みを利用して、日本にいる妹達に会いに来ていた。

そんなある日、航は千影の家を訪ねた。
そこから物語は始まる。


【千影】

私はタロットで自分の未来を占ってみる。
こうして自分の未来を占うのは、とても難しい。
自分を占うということは主観が入りやすいからだ。

カードの示した自分の未来は『試練』とある、
……多くの迷いが決断を鈍らせ正しい選択をするのが難しくなる、そんな意味だ。

私の近い未来……私に訪れる『試練』、それが何を意味しているかは分かっている。
それは私と兄くんとの関係のことだ。
今は兄くんと私は、兄妹の関係だ。

だが……未来の二人の関係を示すもの、それは……

「兄くんとの契りが永久でなくなる……か」

私はカードから目を離し、天井を眺める。
過去に、永久の契りを望んだのは私だ……そして、こうして今の私がいる。
そして、契りが永久でなくなる未来を選択したのも、私の願いからだ。
だから未来が変わるだろう……今の私のままでは、過去の望んだものと違う未来となる。

残り時間も少ない……私は決断を迫られている。
その決断には必ず迷いが生じる……それが何か、私は知っている。









二人の時
〜Forever〜
 
第10話 「永久でなかった契り」 〜千影編〜
 
シルビア












【千影】

重ね合わせられた唇……結ばれた心……叶えられた今の私の願い……永久であること。
そして、これは……私が願わなかった事、【禁じられた想い】でなければならかった想い。

「千影……俺は……もう、千影を妹として見ることはできない。
 俺は千影のことが好きだ」
「……嬉しいよ、兄くん。だけど……私は兄くんを好きになってはいけないんだ。
 ………………ごめん、兄くん」
「どうして? 俺と千影は血が繋がっていない兄妹、一緒になることはできる」
「兄くん………………もう、言わないといけないんだね……」

本当は言いたくなかった。
兄くんの妹のままでいられた方がよかった。
兄妹でなければ、
……こうしてそばに一緒に居られない。
……一緒に過ごした思い出すら失ってしまうかもしれない。

兄くんは真剣だね……こんな兄くんの表情を見ることになるとは、予想しなかったよ。
もう……話さなければいけないらしい。

「兄くん……兄くんに話さないといけないことがあるんだ。……今だからこそ」
「俺に話さないといけないこと?」
「そう………………私と兄くんは……本当は……義兄妹ではなかった」
「何言っているんだよ、千影? それに、義兄妹じゃないって、どういうことだよ?」
「それが真実なんだよ、兄くん……よく聞いて欲しい」

私は兄くんに語った、……そう、過去にあった出来事を。

あれは、私が10才の時だった。
私は父を失い、母は落胆のあまり病気がちになっていた。
その母も後を追うように、この世を去った。
一人残された私は、耐え切れぬ寂しさから、たった一つの願いをした。


『いつも一緒にいられる兄が欲しい』


その願いは叶った。
私の願いが叶えられたパラレル・ワールドが出現した。
そして、私はある女性の娘として、新しい人生を歩むことになった。
その女性が、今の兄くんと私の母親、兄くんの父親の後妻で私の母となった人だよ。
だから、兄くんと私は……義兄妹になれた。

兄くん……私はね、兄くんの事を誰よりも愛している。
それは……ひとりの妹としての愛情……私が求めた兄が、今、目の前にいる兄くん。

兄くんは素敵な兄だよ、一緒に居られて、私は本当に幸せだった。
きっとこれからも幸せで居られる、そう思っている。

「それなら……一緒に幸せになれるんじゃないか?」
「ダメなんだよ……兄くん。幸せになれるのは、兄くんが兄でいるからなんだ。
 恋する相手として、私は兄くんを見てはいけないんだ。なぜなら…………」


そうだよ、兄くん。
私が兄くんを恋する相手として見るということは、兄を求める妹としての自分の願いを消すということ。
兄くんを好きになるには…………「兄が欲しい」という自分の願いを否定することになる。
それは、兄を求めた私の願いの効果が消えてしまうことを意味する。

「兄くんと私はもう兄妹でいられなくなるから」
「俺は……もう、千影を妹として見ることは……出来ない」
「とても嬉しいよ……兄くん。そこまで私のことを想ってくれるなんて……私は幸せな女だね。
 私も兄くんのことを……兄じゃなくて男性として何度見つめたことか……そして、それは私の禁忌」
「禁忌?」
「私が兄くんを恋人として求めたら……妹の私は、この世にいないかもしれない。
 つまり…………兄くんに会えなくなるかもしれない」
「千影……」
「済まない……兄くん」

「兄が欲しい」という自分の願いを消すこと……それは、今の自分を捨てるということ。
私はもう兄くんの妹でなくなる。
もしかしたら、兄くんの記憶から私の存在が消えるかもしれない。
だから……禁忌……私は兄くんの想い人にはなれない。


(数日後)


なのに……なぜ、兄くんは私を求めるのだい?
なぜ、私は兄くんを求めてしまったのか。
限界だった……溢れる想いはもう……止められない。


「どうしても……ダメなのか?」
「叶えようとするなら……とてつもない代償を払うことになる。それでも望むのかい?」
「ああ……俺は本気だよ」
「ひとつだけ方法がある。ただ、結果がどうなるかは分からない。
 それは私が一人の女の子として生まれ変わること、そして兄くんに巡り会うこと。
だけど……その時、兄くんが私に気が付いてくれないかもしれない、他の女性と恋におちるかもしれない」
「そんなことはない!
 俺と千影が永久の契りで結ばれているなら、きっと巡り会える……そう願いたい」
「兄くん……永久の契りを願うのかい?」
「……ああ、俺の気持ちだ。
 俺は千影の事を心から、愛している。これからもずっと」
「兄くん……私は……もう我慢しなくてもいいのかい?」
「一緒にいよう、千影」


私は……自分の気持ちを抑えられない。
恋をしてしまった、愛してしまった……兄くんのことを。
妹に戻れない、それでも、兄くんを愛してしまった自分を……禁忌を犯してしまうことを……私は……望んでいる。

なら、もう迷うまい……交わそう、兄くんと【永久の契り】を。

妹としての多くの思い出と引き替えに、兄くんと一人の少女として、巡り会う可能性を信じよう、願おう……想いを失ってもこれからの出会いを求めよう。


「永久の愛が叶うなら……私達はきっと出会う。
 ……今度は一人の男性と女性としてね。
 私はきっと兄くんを探すだろう。
 兄くんはきっと私を探すだろう。
 今の気持ちが本物なら……きっと」
「そうだな、千影」
「兄くん、交わそう、永久の契りを……覚悟はいいかい?」
「ああ、それが俺の……願いだから」


【永久の契り】の儀式が始まる。

純白のローブに身を包んだ私は、願いの言葉と共に、兄くんに抱かれていく。
私と兄くんは言葉で気持ちを伝える必要はなかった。
心に浮かぶ感情のままに、互いに想いを伝える……求め合う。
そして、ただ私の詠唱の声だけが二人を包んでいく。

「兄くん……心に全ての想いを込めて願い事を」
「ああ」

そして儀式は……終わった。
二人の姿は、その場から消えた。




【航】

俺は11人の妹達と一緒に暮らしている。
だけど、心の隙間に、もう一つの暖かい気持ちがあった。

俺はそれが何なのか、ずっと心の底で気にしていた。
それが何かは分からない……だが、俺の手の温もりの中に、自分のものでない何かを感じていた。

俺は、海神グループの事業を引き継いだ。
今の俺は海神グループの会長である。

そんなある日のこと………

「会長、本日より会長の秘書となる、涼宮さんです」
「涼宮と申します。よろしくお願いいたします」
「ああ、よろしく頼む。早速で悪いが、今日の予定を」
「はい、本日のスケジュールは………(あれこれ)………となっております」
「そうか、それじゃ、出かけよう」

俺は待たせてあった車の右後部座席に乗り込んだ。
そして俺の左に、涼宮が座った。

並んで座る俺と涼宮の肩が何かの拍子に触れた。
俺は理由のない懐かしい気持ちを感じた。
涼宮も同じだったのだろうか……その目線が横を見た俺の目線と重なった。

「会長……どうか、なさいましたか?」
「い、いや、何でもない……」

まるで初恋でもしたような、そんな自分の感情に気が付いた俺はどこか照れくささを感じた。
こんな気持ちになったのは…何年ぶりかな。

俺はその日のスケジュールをこなし、車が会社の玄関に止まった。

「それでは、会長、気をつけてお帰りくださいませ」

涼宮は車から降りて、俺に挨拶をして、去ろうとした。

「ちょっと待ってくれるかい、涼宮さん?」
「はい? なんでしょうか?」
「俺はこれからプライベートで飲みにでもいこうかと思うのだけど、よかったら、君も一緒に来るかい?
 君の就任を祝って、一杯ご馳走させてもらいたいが?」
「よろしいのですか?」(ポッ)
「ああ。乗りなよ」
「はい」

ホテルの上層階にあるバー・ラウンジで俺と涼宮はカクテルを飲み交わした。

「会長は妹さんが11人もいらっしゃるのですか?」
「ああ、そうだよ。秘書室長の海神可憐も、その一人だよ」
「凄いですね。
 ですが、世の中って不公平ですね。
 私は身よりもなく、家族や兄妹のいる方が羨ましいぐらいですのに」
「兄妹って、たくさん居るのも楽じゃないよ?
 それぞれの好みとか趣味とかを理解するのだった一苦労だからね。
 ……そういえば、涼宮さんは何か趣味でもあるのかい?」
「そうですね……占いなどを。タロットが得意ですね。
 これでも結構当たると評判なのです。私の占い、評判いいのです♪
 特に、恋愛事なら私に任せてください」
「そうか、それじゃ、一度俺も占ってもらおうかな。
 今、彼女がいないんだが、いい人に出逢えるかどうかを占ってくれないか?」
「はい、分かりました。では…………」
「おっ? マイ・カードかい…それもいつも持ち歩いているの?」
「はい。私って、あまり話題性のある方ではないので、結構これに助けられます。
 だから、いつもカードを持ち歩いているのです」

涼宮はテーブルに少しスペースを空けて、カードをかき混ぜた。
シャッフルというらしいが、俺にも混ぜてほしいと言ってきた。
俺はちょっとマジになって、占いに参加した。

涼宮がカードを配置しているらしい、それらをゆっくりと手にとっては真剣な顔で考え込んでいる。
俺は占いをする涼宮ってなんか変わった雰囲気があるな、と思っていた。

「うーん……会長、今は恋愛運がとてもいい状態です。
 まるで、運命の恋人に出会えるような、そんな未来が示されていますよ。
 案外身近にいる人で……近い将来に気持ちが通い合う……そんな予想です。
 迷いを捨てて、思い切って告白すると吉、ともありますね」
「身近にいる人か……案外、君だったりしてな。……まあ、これは冗談だが?」
「会長もお世辞が上手ですね。……私、そんなこと言われたこと、ありませんよ。
 でも、面白そうですね、試しに会長と私の相性を占ってみますか?」
「そうだな。ちょっと面白いかもしれない」
「では…………」

涼宮は再びカードを操った。
その涼宮の表情は次第に驚きの表情へと変わっていった。

「えっ? まさか?」
「うん、どうしたんだい?」
「いえ、あの……その……まさか、いいえ、そんなことは……」
「??」
「あ、会長、すいません。
 占いの結果ですね……えーと、その〜、実は……100%でした」(ポッ)
「100%? 凄いな、完璧じゃないか」
「私もこんな結果は初めて見ました。もう1度……占ってみますね」
「まあ、占いだからな……何度かやれば結果も違うだろう」

それから、涼宮は3度占ったが、結果は全て同じだった……そう、100%。

「……やっぱり、私の運命の人って、会長なのですね」
「うん?」
「実は今朝、私も自分の恋愛を占ったのです。
 そして、その結果は……会長と同じでした。
 こんなに偶然が重なるなんて……私も信じられません」
「ははは、とても偶然とは思えないね」
「はい……とても恐れ多いのですが。(ポッ)」
「いやいや、こんな美人秘書と運命の恋ができるなら、それも悪くないよ。
 なにせ相性が100%なら、一目ぼれもあり得るだろ?」
「会長……私をさっそく口説いています?」
「そうだな……今日は、一緒にゆっくり酒を飲みたいね。
 占いの結果通り、今夜は運命の恋人同士になってみるかな」
「あの〜……失礼とはおもいますが、会長は本当に彼女いないのですか?
 とてもそうは思えません……何て言うか、とても女性に慣れすぎです。
 それに…………そんな事言われたら……私、本気にしてしまいます」
「うん? 俺はマジで言ったんだがな。
 そういえば、君の下の名前を聞いていなかったね。
 せっかく、恋人同士なら名前で呼びたいね。涼宮ではムードがでないからね、はは」
「私の名前は『千影』です。数字の千、光と影の影と書きます」
「なるほどね。それでは……千影、今夜は俺と一緒に過ごそうか?
 俺のことは航と呼んでくれていいよ」
「……はい、航さん」


それからの俺たちは、千影の占い通りになった。
不思議なことに、俺達は初めて会った者同士の抱く感情ではなく、ずっと一緒にいたそんな気持ちにとらわれた。
それは11人の妹達も同じだったらしい。

世の中、不思議な事もあるものだ。




〜エピローグ〜



「航さん、今日は南の方角は凶です。それと、青のものをつけると幸運に恵まれるみたいですね」
「そうか。今日は大切な接待があるから、青のネクタイでも身につけていこうか」
「でも、あまり、占いと仕事を混用されてはいけませんよ?」
「そうはいっても、的中率いいからな、千影の占いは。それに……」
「それに、何ですか?」
「千影の占いにある通りにすると、何となく千影と一緒にいる気分になって、物事がうまくいくんだよ。
 まあ、おまじないみたいなもんだ」
「……いつも一緒じゃありませんか。これ以上べたべたしたら仕事に差し支えますよ?
 航さん、公私混同はいけません」
「そうだな。じゃ、出かけようか」
「はい」

スーツに身を包んだ二人は、家の玄関を出て一緒に会社に向かった。
千影は今でも、航の側で秘書を続けていた。
今ではそれが日常の風景となっていた。

ただ、出会った時の二人と今の二人の違いは、
…………今の千影の左手の指には、結婚指輪がはまっていることだった。

FIN.


後書き


めぐり逢い、それもまた運命の恋かも。
そう思って、かいてみたSSです。


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