海神航、年齢は20才、米国に留学し、バード大学生である。
義妹・咲耶、18才、ハイスクールに通う3年生である。
プロミス島での12人の妹達との共同生活の後、航と咲耶は米国に渡ってきた。


【航】

いつも俺に寄り添い、ちょっと大人びた誘惑の視線を投げかける、ちょっと可愛い妹
…それが咲耶だった。

咲耶はいつも俺の事を兄というより恋人と接しているようにふるまう。
だけど、最初、俺はちょっとそれが苦手だった。
ちょっとドキドキさせられたけど、きっと自分の気持ちにとっても素直で優しい妹だと気が付いた。
最近はそんな咲耶の兄でいられるのも悪くないと思っていた。

だが、ある時、俺の心は、光陰の矢に射抜かれたように、咲耶の魅力の虜になった。
…もう妹として咲耶を見ることができなくなって
…咲耶を一人の女性としてしか見られなくなっていた。
 









二人の時
〜Forever〜
 
★2003年 咲耶生誕記念SS
 
第6話 「誰のために私は魅せる」 〜咲耶編〜
 
シルビア












それは咲耶の誕生日である12月20日の少し前の日の出来事だった。



【咲耶】

ルン・ルン・ルン♪

お兄様ったら、私が二人きりのデートに誘うと、いつも口実つけて避けるんだから。
でも、今回はしっかり捕まえたわ、お兄様!

でも、お兄様ったら、酷かったのよ。

「え〜〜〜、お兄様! それって本当?」
「咲耶、ごめん! 本当にごめん! 
 12月20日…教授の講演の手伝いに駆り出されてしまって…」
「せっかくの私の誕生日なのに…お兄様の馬鹿〜〜〜! もう知らない!」
「許してくれ、咲耶。他の日なら何にでも付き合うから! 頼む、咲耶」
「お兄様がそう言うなら仕方ないわ……でも、本当に何でも付き合ってくれるの?」
「二言はない。きちんと埋め合わせはする。だから、許してくれ、咲耶」
「いいわ、それなら、お兄様には-----------」

だから、お兄様にね・・ふふっ・・二人きりの日帰り旅行をねだったの♪
それに、クリスマス・イブもお兄様を予約しちゃった♪
誕生日を祝って貰えないのは残念だけど、かわりに2つのデートを取り付けたの。
それも二人きりで♪(ごめんね、妹達……)

弱みにつけ込むのはちょっと気がひけるけど、でも、お兄様もいけないのよ。
この前なんて、ゼミで一緒だとかいうブロンド女性と二人きりで酒を飲んでいたじゃない、ずるいわ。
あの時のお兄様、他の仲間が帰った後だって弁明していたけど、それでも許せないわ。

でも、うかうかしていると、お兄様が他の女性に取られてしまいそう。
だから、私も後には引けないの、お兄様。
お兄様、最近、素敵になって・・魅力的になって・・男らしくなって
…あ〜、やっぱりお兄様って素敵♪

お兄様の好みは、とっくにチェキ済みよ・・あら、違うわね、四葉ちゃんの影響かしら。
とにかく、お兄様の好みは、わ・た・しなの!
お兄様を好きな気持ちなら、私、誰にも負けないんだから。

せっかくの二人きりのチャンス、今度こそお兄様のハートをゲットするの♪

シャワーで汗を流して、
ほんのり湯気の立ち上る体を軽くマッサージして、無香の制汗スプレーをふきつける。
少し背伸びしたショーツをまとい、前屈みの姿勢でブラを着ける。
少しずれた胸とお尻を寄せ込み、ちょっとだけ背筋を伸ばしてみる。

今日のデートは動きやすい格好にしようかな。
ふふ♪ 私、ジーンズもね、すらっとした足と後ろ姿に、ちょっと自信があるの。
今日は健康的でさわやかな女の子でいくわよ、お兄様♪

顔をはっきり見せたいから、さりげなくリボンで長髪をまとめて…
お兄様って厚化粧を嫌うから、気が付かない程度にちょっとだけ化粧してと…
でも、リップはとっておきのものを使うわよ。

これで完璧よ、お兄様♪
…あ、私ったら大事なこと忘れているわ。鏡の前で笑顔の練習もしないと、ね♪

待ち合わせの時間までは・・え〜、あと15分!
お兄様をまた待たせちゃうわ。急がないと。


…プー、ププー、

「遅刻だぞ、咲耶」
「あ、お兄様♪ ごめんなさい」

今日はお兄様とドライブなの。
私はカーステレオにお兄様と選んだ音楽DVDを挿入して、流れる音楽に耳を傾けたわ。
流れる景色を見つつも、時々運転しているお兄様の横顔を眺めたりするの。
お兄様、真剣な顔で運転しているのね、ちょっと凛々しいかも。
いつもと違う表情が見られるのもとっても素敵。
それに、お兄様の運転ってとても静かで優しいのよね、助手席にいても全然揺れないし。

それから、ドライブインで休憩したわ。

「咲耶、今日行くところ、今時期に行っても大丈夫なのか? 少し寒いかもしれないぞ」
「大丈夫よ。それに景色がとてもいいの。だから、お兄様と一緒に行きたくて。
 でも、お兄様、運転するのに疲れたなら、私が替わるけど?」
「いや、慣れない道だし、咲耶の運伝では怖いから遠慮しておくよ」
「も〜、お兄様ったら! 学校できちんと練習したし、免許もちゃんと持っているわ」
「それはペーパー・ドライバーと言うのだよ、咲耶」
「む〜、そんなに心配なら、今度お兄様が運転を教えてくれるわね? 約束よ!」
「分かった、分かった。でも、今日は俺が運転するからな」

でもね、私の運転する車の助手席に最初に座るのはお兄様って決めているんだから。
咲耶は運転うまいねって、お兄様に言って貰うのよ。

「うーん……道、間違えたみたいだな。咲耶、ちょっとナビに切り替えてで確認してくれる?」
「えっ、あ、うん……えーと、こうだったかな……ちがうな〜」

お兄様の車にはDVDナビがついているけど、私が車内で音楽DVDを見ていてナビ機能を使ってなかったのよね…道、迷っちゃったのね…でも、ちょっとスリルだったりして♪
うーん、ナビに切り替えるには地図メディアに入れ替えるのよね……えっと〜。

あら、地図メディア、どこにおいたかしら……
…ここでもないし
…ここにもないわ。
…ここかな?

(えっ……何、この吸い殻……口紅のあと?)


小物入れだと思って灰皿をあけたら、赤い口紅のついたたばこの吸い殻があった。
お兄様たばこを吸うけど、妹達は吸わないわ。
それに銘柄もお兄様のすっているショートホープじゃない、細いたばこ……

私の手が止まったのを見たお兄様が、

「咲耶、メディアは見つかったか?」

なんて言ったとき、私、ちょっと動揺してた。
見つかったわよ……メディアではなくて、浮気の証拠だけと……
運転しているから前方に視線を戻していたけど、なんていうかお兄様が不潔に思えてしまって……

「ううん……それよりも、お兄様、ちょっと聞いていいかしら?
 お兄様の運転する車の助手席に乗った女性は誰なの?」

口紅のついたたばこを灰皿に入れる妹なんていない……他の女の人だ。

「えっ? いや、その、これは……」
「お兄様…妹達以外の女性を助手席に座らせたらダメってあれほど言ったのに!」
「ち、違うよ、咲耶……落ち着けって……これは鈴凛の先輩が……」
「お兄様が私以外の女の人と……他の女の人と……そ、そんな…」
「待て、咲耶、違うって!」


「弁解なんてしないで!
 お兄様の不潔〜〜〜〜〜〜〜! 大嫌いよ〜〜〜〜〜〜!」


私は助手席からお兄様の肩を思いっきり押しこんだ。


……キ・キキキー・ズサ、ガン、ガン


航はハンドルを左に急に切ってしまい、車は後輪をスリップさせた。
車体は右の路側帯を突っ切って街路樹に飛び込んでしまい、運転席の右前が大樹に衝突した。
それはほんの一瞬の出来事だった、だが、二人の命はエアバッグによってかろうじて救われたものの……運転席の航は衝撃で運転席ドアに体を強くぶつけた。

(事故………)

やがてエアバッグが縮み、私は突然起こった現実を受け容れた。

「…お、お兄様!」
「……大丈夫だ……怪我したけど。咲耶こそ、大丈夫か?」
「ええ、大丈夫、……なんとも無いわ。でも、お兄様、怪我って……!」
「心配するな、意識は今のところ大丈夫だ。
 だが、肩がかなり痛む、それに、右膝もどこかにぶつけたみたいだ。
 とりあえず、助けを呼ばないと……救急車……呼んでくれないか」

割れたガラスで切れていたお兄様の肩口を、学校で習ったとおり、応急処置したわ。
そして運転席の座席を倒して、そのままお兄様を横たえたの。

そして、携帯電話を取り出し、緊急通報した……

「……圏外…通じないわ、どうしよう……このままでは」

横を見ると、お兄様の息が少し荒くなっている、痛むみたい……
早く病院に連れて行かないと……でも携帯、通じないし……そうよ、通じるところまで行けばいいのよ。
たしか15Kmほど歩けば高速道路まで戻れる、そっちの方角にいけば電話も通じるかもしれない。
さっきから他の車をみかけていない、ここにいても助けを呼べるあてはなさそう。

「お兄様…ここで待っていて…私、助けを呼びに行ってくるから」
「……咲耶?」
「きっと、呼んでくるから……」




咲耶は車から出て、小走りにきた道を逆に辿り始めた。
その頃、少し雲行きが妖しくなってきた。
ぽつりぽつりと降りだした雨が、次第に強くなってきた。

(こうなったら、強硬突破よ! 早くいかないと……お兄様を放っておけないわ)

私は先を急いだ。

(痛っ!)

でも、すぐにアスファルトの上で転んでしまった。
ジーンズの膝のあたりが破れて、その辺りから血が流れていた。

走りにくい、かかとも折れてしまった……えーい、こうなったら。
私はパンプスを脱いで、その場に投げ捨てた。
ストッキングを履いているものの、裸足ではさすがに痛かったけど……お兄様のためだもの。

……どれだけの時間がたったのか

私は高速道路の表示のある道路案内板をみつけた。
5Km先に高速道路があると表示されていた。

雨に濡れ、服もやぶけて、裸足の痛みに耐えながら……なんとかここまで来たけど。
手にもつ携帯の画面を見ても、アンテナマークのところは相変わらず”圏外”のまま。

(こんな姿、とてもお兄様には見せられないわね……)

せっかくのお兄様とのデートなのに……
何していたのかしら、私……変に嫉妬して、お兄様を困らせて。
ただ、お兄様に振り向いてほしかっただけなのに。
私だけを見てほしかっただけなのに……
もう、ダメ……きっと、お兄様に愛想を尽かされてしまうわ。

あたりには車が通る気配すらない。
公衆電話どころか、店も、人家もない。
私の体力ももう限界だった、走る気力もなかった。


私は道路の端に崩れるように座り込んだ。
雨は上がった、だけど、今度はふるえる寒さが私を襲った。

(寒い……)

……ゆっくりと私の意識が薄れていった。




<ところ変わって……AiBMの研究室、>

そこで工学博士号をとった鈴凛が勤務していた。
鈴凛は研究中に自分のPCの発した警報を聞いて、目を見張った。

(緊急連絡?)

通信の発信元は……メカ鈴凛だった。
それも、衛星経由でファースト・クラスが主に利用する経路での通信が入って来た。
普段、この経路で情報が飛び込むことはほとんどない…おかしいと鈴凛は感じた。
鈴凛は発信元からの情報をPCの画面で確認した。

……現在位置:緯度xx.yy度、経度zz.dd度
……回路損傷:aa時bb分 マグニチュード3相当の衝撃あり。
       自己診断により左手より動作確認信号を検知できず、破損の恐れあり。
……情報検知回路・正常、現在位置の情報を送信

そんな状況報告のメッセージと共に、数秒ごとに電送写真が鈴凛のPCに送られてきた。

「こんな……!」

写真を注視した鈴凛は驚愕の表情を浮かべた。
鈴凛は情報からメカ鈴凛の位置を特定し、ただちに緊急措置の対応を依頼した。

10分後、AiBMの研究所のヘリポートから1機のヘリが飛び立った。




「さく……さくや……咲耶!」

風をきるような機械音が規則正しくあたりに響き渡っている。
その音に混じって、数人の人の声が聞こえてきた。

「う、うん、……おにい…さま?」

あはは、夢かな、これ……お兄様の姿が目の前にある。
そんなはずないのに……

「大丈夫か、咲耶、気を確かにもて…」
「お、お兄様? ……無事だったのね……よかった」

なんだろう、とても嬉しい。

「しっかりしろ……さく……」

それは、夢のような夢でないようなうつろな出来事、しばしの夢……
全身から力がぬけていく、瞼が重い……





総合病院の個室、そこに一人の女性が眠りについていた。
その女性の傍らに鈴凛と四葉の姿があった。




「う……ううぅん………………こ、ここは?」
「目が覚めたデスか、咲耶姉チャマ? 
 ……鈴凛チャマ、咲耶姉チャマが目を覚ましたデスよ」
「そう、良かった……痛っ…」
「咲耶姉チャマ、まだ痛むデスか?」

ほっとした表情を浮かべる鈴凛と四葉の側で、私は何が起こったのか理解できなかった。
少し痛む足裏と膝の痛みで、私はこれが夢ではなく現実だということを理解した。
その痛みが私の記憶を呼び覚ました。

「あっ……お兄様は…お兄様は…どうしたの!」
「アネキ、アニキのことなら心配しなくても大丈夫だよ。
 アニキは隣の病室でゆっくり休んでいるから」

「そ、そう……でも、どうして、私とお兄様がここに?」
「鈴凛チャマが助けにいったんデスよ、咲耶姉チャマ。無事でよかったデス」
「それでも、一時は何事かと思ったのよ。
 アニキの車の事故風景の写真が送られてきた時は、心臓が止まりそうになったのよ。
 感謝してよね、アネキ。これも全部メカ鈴凛のおかげなのよ」
「メカ鈴凛の?」

鈴凛はうれしそうな、でもちょっぴり寂しそうな表情を浮かべて話を繋げた。

「アネキと出かける前日に、私、アニキにメカ鈴凛のテストをお願いしていたの。
 それで、アニキの車のトランクにメカ鈴凛が乗ったままだったんだけど、事故で車の
外に飛ばされたみたいでね。
 それで、衛星経由で緊急信号が私のPCに届いたの、事故の写真と一緒にね。
 だから、急いで助けを出したのよ」
「そう……ありがとう、鈴凛」
「えへへ♪ それとアネキに謝っておくね。
 アニキの車のたばこの吸い殻ね、あれは私の先輩がアニキを気に入ったのか、無理に帰り道を送ってもらってたの。
 ごめん、アネキに誤解させたみたいで……」
「そうだったの……」

その時、鈴凛の携帯の着信メロディが鳴った。

「はい、海神です。……すいませんでした。……そうですか
 ……えっ、本当ですか?……はい、よろしくお願いします」

携帯を切った鈴凛はにこり顔で会話を繋げた。

「……会社の上司から。
 社費でメカ鈴凛を開発したこと、会社にばれちゃった、えへへ♪
 でも、ロボットの出来とか、人命救助したことと緊急通報システムの仕組みを報告することで、今回はおとがめはナシにするって♪
 そのかわり役員用のセキュリティ・システムの開発、命じられちゃった〜。
 やっぱ、衛星通信の回線を使ったのはまずかったな〜、あはは〜。
 それにヘリを緊急発進させたし……始末書は覚悟していたけどね…えへへ♪
 ……あ〜、本当に良かった〜〜!」
「ごめんね、鈴凛」
「いいって……私にとってはアニキとアネキが一番大切だもん、AiBMの研究なんて二の次よ。
 だから、アニキとアネキの役にたって嬉しいわ……メカ鈴凛、本当に偉いわ♪
 ………でも、ちょっと壊れちゃったけど。
 あ〜あ、研究資金、どうしようかな……修理費高くつきそう……」

鈴凛が落ち込んでいると、病室の扉がゆっくり開いた。

(お兄様……)

お兄様、右肩に包帯を巻いている。
すこし元気がなさそうだってけど……無事だったのね、嬉しい。

「ま〜、そうがっかりするなよ、鈴凛。研究資金なら、俺がまた援助してやるからさ」
「あっ、アニキ〜♪ それ、本当〜!」
「無論だよ。今回は鈴凛に助けてもらったようなもんだしな。
 ……ところで、鈴凛・四葉、ちょっと席をはずしてくれないか?」
「「?」」

私はお兄様と目を合わせにくかった。
助かったとはいえ、お兄様をこんな目に遭わせたのは私だもの。

「ちょっと咲耶と二人で話したいことがあってね」
「…うん、分かった。アニキ、それじゃ、私、会社に戻るね。

 アニキ……研究資金の援助、よろしく♪ 約束したからね〜。ばいばい」
「分かった、約束するよ」

「む〜、四葉の前では言えないことデスか? ……チェキしようかな〜」
「四葉、そう言うなって。あとでとっておきの話、教えてやるから。な〜、頼む」
「……はいデス。じゃ、10分だけデスよ……」

鈴凛と四葉が姿を消したのを見届けて、お兄様は私の側にきて話をはじめた。
愛想を尽かされる、聞きたくない、そんな気持ちが私の心を占めていく。

「事故で遅れてしまったけど……
 咲耶、これ誕生日とクリスマスのお祝い。
 ……一緒に過ごそうと約束していたね?」
「お兄様……」
「開けてご覧、咲耶。
 実は昨日、買いに行った……勝手に外出したって看護婦に怒られちゃったよ。
 咲耶にどうしてもこれをあげたくて」
「私に? ……何かしら?」

お兄様言われて、私は航のプレゼントの包みを開けた。

「シルバーリング……えっ? お兄様がこれを私に?」
「そうだよ、俺からのプレゼントだ。……はめてあげるよ、手を出して」

航はプレゼントのリングを手にとり、私の手をとり指にはめた。
ね〜、お兄様……これって、これって。

「サイズ覚えていてよかった……ぴったりだね。
 前に一緒にショッピングした時に、咲耶がほしがっていたよね。
 あの時はあげられなかったけど…今更だけど…受け取ってくれる?
 俺の今の俺の正直な気持ちだから」
「お兄様の気持ちって……」
「咲耶……俺は咲耶に惚れてしまったみたい。
 俺と付き合ってくれないか……義妹としてだけでなく、彼女として」

嘘みたい、夢よねきっと?
でも、お兄様、本気で言っている。
それに、私の手には指輪がはめられている

「本…当…に? 私、お兄様の彼女になってもいいの?」
「俺ではダメか?」
「ううん。
 ……お兄様……大好きなお兄様の彼女にならないなんて私が言うと思うの?
 ずっと、お兄様が好きだったんだから……誰よりも好きなんだから……私……」

嬉しさに震えると、お兄様はそっと私の肩を引き寄せて抱きしめてくれた。
お兄様の胸の中に抱かれて、これが現実だって分かった。

「でも…お兄様、どうして急に?」
「そのな…咲耶のこと、本当に綺麗だと思ったんだよ。
 ヘリで救助された後、咲耶を捜して、見つかって……
 咲耶に呼びかけた時……体が雨にぬれて服も破れて髪もぐしゃぐしゃだったけど、
 ……一瞬目をさました咲耶の安堵した時の表情が、俺、忘れられなくて。
 なんていうか、こんなに俺のことを思ってくれたんだって感動しちゃって
 ……俺、その時、咲耶がとてもまぶしく思えたんだ。
 ……なんていうか、その……一瞬で惚れちゃうぐらい。
 ……恋の矢で射抜かれたみたいなそんな気持ちだった」

私はお兄様の告白を聞きながら終始真っ赤になっていた。
でも、その言葉に、嬉しさを隠せなかった。

「お兄様……私ね、お兄様を魅惑していたい、これからもずっと。
 だから、私、お兄様のためだったら、どんなことしてでも美しくありたいの。
 でも、それはお兄様のためだけなの
 ………世界でたった一人、運命の赤い糸で繋がれた、私のお兄様にだけ」
「分かっているよ、咲耶。それに、ありがとう」
「じゃ〜、お兄様、もう一つプレゼントしてくれない?」
「何を?」
「も〜、誓いの証よ♪ お兄様が私だけの彼氏でいてくれるって…そんな証♪
 これだけはお兄様からしてくれないと、嫌なの。
 ……だって、もうたばこの吸い殻ぐらいで嫉妬したくないの」
「目を閉じて、咲耶………」

だけど、唇が触れようとしたその瞬間、病室の扉が大きな音を立てて開いた。
あ〜、も〜、良いところなのに!

「あ〜〜〜〜、兄チャマ、姉チャマ、二人で何をしているデスか〜〜〜!」
「も〜、いい所だったのに〜! 四葉、邪魔しないでよ〜」
「四葉、お前、覗いていただろう?」
「うっ…えーと、これは……いいのデス。これは重要な捜査なのデス」

「も〜、また、そんな事言って! せっかくの告白シーンだったのに、台無しよ!」
「咲耶姉チャマ…こ、告白デスか、そ、それって…兄チャマ、本当なのデスか?」
「ちゃっかり聞いてたくせに、白々しいぞ、四葉。
 俺は咲耶のこと好きになった。だから、咲耶に告白した。
 四葉も俺の大切な妹なんだから祝福してくれるよね?」
「そ、それは……嘘デスよね、兄チャマが咲耶姉チャマに告白するなんて…
 四葉は……四葉は……もうチェキできなくなったデス〜……」

ふふ♪
私、そんなに幸せそうに見えてるのかも。
そうよね、やっと大好きなお兄様と結ばれたんですもの♪



〜エピローグ〜

【航】


「咲耶、どうしたの急に、俺に来てほしいって?
 明日は俺達の結婚式だから、準備も忙しいんじゃないのか?」
「いいから、いいから、お兄様♪ とにかく、ついてきて」

結婚式の前日、俺は咲耶に急に呼び出されて、咲耶に連れられるまま、並木道を歩いていた。

「ね〜、お兄様。
 今日は兄妹として、恋人として、その最後の日よね。
 だから、1つだけ私のお願い、聞いてほしいの。いい?」
「ま〜、俺に出来ることなら叶えてやるけど…」
「お兄様にここでもう一度告白してほしいの。お願い♪」
「告白? 今更、恥ずかしいじゃないか」
「お願い!」

一体何をお願いするかと思えば…
とはいえ、断り切れる状況でも・・ないな。
咲耶がこういう恋にからむお願いをする時は絶対に引かないのは分かっている。

「咲耶がそう言うなら・・一度だけだぞ?」
「うん♪ でも、私のことちゃんと見つめて言ってね♪」

みつめてって・・あのね〜
とにかく一度だけだし…諦めて…

「えーと・・あっ、その、なんだ・・
 『綺麗だね、咲耶。
  俺、咲耶のこと、好きになった。
  俺と付き合ってくれるかい?』」
「『はい。お兄様♪』

咲耶は俺の手をとり、その手を自分の胸にそっとうずめた。
そして、嬉しそうに手を頬ずったその時…

「チェキ♪
 兄チャマのとっておきのラブラブシーン、ばっちりチェキです〜♪」

突然、俺の目の前にデジカメを顔に当てた四葉が現れた。

「ちょ、ちょっと待て! な、なぜ、四葉がここにいる?」
「お兄様、ごめんなさい…実は、私が頼んだの・・」
「えっ?」
「そうですよ、兄チャマ。
 四葉はラブラブシーンの隠し撮りを姉チャマに頼まれたデス♪
 この名探偵・四葉に不可能はないデスから」
「はぁ〜?」
「だって、よく考えたら、お兄様と恋人の時のラブな写真が少ないから・・なの。
 最後だし、記念にと思って・・できるだけ自然な二人の写真が欲しかったの。
 …ごめんなさい、お兄様!」

別に隠して撮らなくても、俺はそう思った。
だが、少し恥ずかしかったから、四葉に矛先を向けた。

「なるほど。でも、四葉、お前、隠れてないぞ? それで隠し撮りと言えるのかい、名探偵殿?」
「うっ、兄チャマ、鋭いデス…これは強力なライバル出現デスね」
「とぼけてもムダだぞ? まあ、写真、見せてみな」
「うぅ…これです、兄チャマ、姉チャマ」

四葉は得意げな顔をして、咲耶にデジカメの液晶画面を見せた。

「ところで、四葉、また写真の売買か?」
「えーと、それは……」
「・・あら、四葉ちゃん、良く撮れているわ。素敵♪」

ちょっとあせった四葉と、ごまかしているような咲耶が俺の前でふざけあった。
とにかく、内容は確認しておくか。
俺は四葉のデジカメの撮影記録を再生して眺めた。

「80枚もある・・俺はこれを撮られるためだけに・・咲耶に呼び出されたわけか
 …まあ、いいか、出来はいいし」
「兄チャマ、これは明日の結…(う〜、モゴモゴ)」
「だめよ、四葉ちゃん! それは内緒なの!」
「内緒?」
「う、ううん、なんでもないの・・そう、何でもないのよ、お兄様♪」
「そうデス・・なんでもないデスよ。四葉は何もしらないデス」
「なんか妖しいな?」
「さぁ〜、お兄様♪ デートの続きしましょうね〜♪」

俺はどうにも腑に落ちないものがあったが、その時は気にしないことにした。
だが、気にした方がよかったと、翌日の結婚式の披露宴の時に思った。

司会:「次は二人の出会いからの思い出をご紹介したいと思います。
    皆様、スクリーンの方をご覧ください」

(あっ!)、俺は空いた口が繋がらなかった。

映像の小パートのタイトルは『ある日のデートの光景』などと書かれていた。
スクリーンに写った最後のワン・シーンに、昨日四葉の撮った写真があった。
兄の腕に抱きつき頬ずっている咲耶、ちょっぴり照れた微笑みを浮かべている俺。
まあ、ここまではちょっと仲のいい恋人の雰囲気だし今日は仕方ないか…

だが、画面に映ったテロップはさすがに恥ずかしかった。
こんな科白、披露宴の場で言わないでくれ、頼むから・・なぁ、咲耶。

『最愛のお兄様へ(はーと)、
 私、咲耶はこれからもお兄様を誘惑し続けます。
 お兄様、これからも”綺麗だよ”って私に言ってね♪』

紹介ビデオの終わりの一言が、まさに俺のその時の心境を表していた。

(___TO BE CONTINUED..___)

誰かが言っていたな、結婚は人生の墓場だと。
少し怖いな・・俺はこれから一生、咲耶の誘惑の虜になり続けるのだろう。

そう思う側で、さっそく咲耶の唇の感触が俺の頬から伝わってきた。
そして、それは開始の合図となった。
その夜から、咲耶は、魔女でものりうつったかのように幻惑的な魅力を漂わせて、俺の側で可愛い妻であり続けた。
それを愛しく思う俺も……ちょっと、どうかしているな。
まあ、いいだろう、俺達二人が幸せなら。


後書き

2003年、誕生日おめでとう。
咲耶、一生、私を誘惑してね♪


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