幽☆遊☆世紀エヴァンゲリオン
YU☆YU☆ GENESIS EVANGELION
最終話
神鳥ガルーダ(旧かのもの)
ヘブンズドアからEVA2機が回収された。
しかし、もはやこの2機は使えない。
魂が無くなったからである。
もはや、シンクロシステム自体作動しないのだ。

アスカは一旦、本部に戻ったがすぐさまセントラル・ドグマに降りた。
やっと一緒にいられるようになったキョウコに甘えたいので、しばらくそこで過ごすつもりのようだ。


蔵馬はリツコの下に来ていた。

「リツコさん……『SEELE』が事を起こし、父さんがセントラル・ドグマに降りたら、貴女も降りて下さい。面白いものが見れますから……」

蔵馬は、今のリツコの望みを大体理解していた。
そして、リツコの本来の性格を……。
ゲンドウに道具のように利用され、レイに嫉妬して……その為、冷徹な科学者という仮面を被っていたリツコ。
彼女はプライドが高いが、本来は人情あふれる心優しい性格だった。
しかし、ゲンドウに強姦されたとき、そのプライドの高さから、嬲られ慰み者にされたということに耐えられなかった。
だから、ゲンドウを愛した。
あれは、慰み者にされたのではなく、双方同意の上の、愛の営みであった……と、己を偽ったのだ。
そして、愛する男の望みを叶えるため、仮面を被ったのだ。
しかし、リツコは最後まで、ゲンドウの都合のいい道具でしかなかった。
その事実を思い知らされ、愛しながらも憎むようになった。
愛しているが、見限ったという矛盾をはらんだ感情を抱いているのだ。
リツコは蔵馬の言うことに黙って頷いた。

☆      ☆

「約束の時が来た」

「ロンギヌスの槍と『リリス』による補完を行う」

「我らは人の形を捨ててまで、EVAという名の箱舟に乗るつもりはない」

「これは通過儀礼なのだよ。閉塞した人類が再生するための」

「滅びの宿命は新生への喜びでもある」

「神もヒトも全ての生命は死を持って、やがて一つとなるために」

『SEELE』の宣言を黙って聞いていたゲンドウと冬月だったが、ゲンドウが口を挟んだ。

「死は何も生みませんよ」

「碇。未遂ゆえに大目に見ようと思っていたが、明確に我らに反旗を翻す気か?」

「ならば、息子共々死を与えよう」

モノリスはそう告げると姿を消した。
これで確実に来るであろう。
NERV本部、襲撃が……。
その時こそ、ゲンドウの願いが叶う時だ……ゲンドウは己の妄想を確信していた。

☆  ☆  ☆

「先程、第2東京からA-801が出ました。特務機関NERVの特例による法的保護の破棄及び指揮権の日本国政府への委譲です」

「やはり、人間の敵は、同じ人間だったか…。『SEELE』は総力を上げているな。戦自、約一個師団の投入か。奴らの目的は、本部施設及び、残るEVA2体の直接占拠だな」

「ああ。『リリス』そして『アダム』さえ我らにある」

「老人たちが焦るわけだ……結局、お前は『SEELE』に反旗を翻したのだから……」

「冬月先生。後を頼みます」

「…わかっている。ユイ君に宜しくな」

(本当に、ユイ君と逢えると思っているのか……碇…?)

冬月は、もはやゲンドウを見限っている。
レイが離反した今、ゲンドウの願いが叶うはずがない……と。
レイの存在理由……それだけに縋った今のゲンドウの計画に付き合う気はさらさらなかった。
それよりも、やることがある。
A-801と同時に、NERV本部のMAGIに他の支部から一斉にハッキングを受けたが、リツコが第666プロテクトを掛けたので問題はない。
ならば、直接占拠に来るだろう。
それの対応をしなくてはならない。
しかし、いつまで経っても戦自はNERV本部に進攻してこなかったのだ。

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・。

「何だ、このガキは!?」

「こんな子供に!?」

NERVに向けて進攻を始めようと移動していた戦自の部隊は、突如幼い少年に進攻を阻まれた。

「魔妖妖!」

鈴駒の魔妖妖が戦自隊員たちを容赦なく打ちのめしていった。






また、ある処では……。

「酔うほどに、おいらの技は冴えてくる……ヒック」

モヒカン刈りの酔っ払いに次々とぼこられる戦自隊員。

「この酔っ払い!邪魔をす……ぶげっ!!」

「撃て!撃ち殺してしまえ!!」

「駄目です!千鳥足のくせに当たりません!!」

銃を乱射するが、何故か当たらない。
酎の酔拳に次々と倒されていった。






更に、ある処では……。

「寒い…こんな寒さは初めてだ……」

「暖房設備がまったく役に立たない」

「このままじゃ、俺達も他の奴らのように……」

その言葉を最後に凍りついた。
呪氷使い・凍矢の冷気によって、あたり一面氷の世界と化した……。
そこには氷付けになった戦車や装甲車。そして凍死体と化した戦自隊員が転がっていた。






上空において……。

「修羅旋風拳!」

「何故、人が空を飛んでいるんだ!!」

「一号機撃墜!」

「竜巻が発生したぞ!巻き込まれ……うわぁぁぁぁぁぁぁぁ~~~~!!」

風使い・陣の風に、航空隊は次々と墜とされていた。






「魔哭鳴斬剣、爆吐髑蝕葬!」

死々若丸の魔哭鳴斬剣から、髑髏の怨霊のようなモノが出て戦自隊員達を襲った。

「ひぃぃぃぃぃ。た……助け!!」

髑髏に頭から食われ死に至る隊員たち。
鈴駒、酎、凍矢、陣、死々若丸、鈴木が蔵馬に呼ばれたのは、NERVに進攻してくる戦自を迎撃させる為であった。
マナの件があり、蔵馬は戦自に対して余りいい感情を抱いていない。
それに、いかに命令とはいえ、自分がそれなりに親しくしている者たちを殺しに来る輩に情けをかける蔵馬ではなく、殺しても構わないと指示したのだ。






そして、NERV進攻の命を受けた師団の本隊において……。

「全ての部隊が全滅しました……」

「ば……馬鹿な……NERV本部に辿り着く前に全滅だと……」

師団長は、信じられなかった。
NERVに対する恨みをようやく果たせると思ったのに、それを果たす前に全滅するとは……。
NERVは、有人部隊に対する備えがなっていないはずであった。
予算が削られ、それに対する準備が出来なかったからである。
にもかかわらず、全滅するとは……。

「ぐわぁぁぁぁぁぁ!!」

「どうした!?」

「敵襲です!」

「何!?数は……?」

「1人です」

師団長は、呆れ返った。

「1人くらいさっさと始末せんか!!」

「無理です、次々とやられています!」

あたりを見回してみれば、本隊にいた兵はことごとく地に伏せていた。
そして、そこには1人の青年が立っていた。

「何者だ……」

「私は美しい魔闘家・鈴木!」

「鈴木……だと!?」

「私を呼ぶときは、名前の前に『美しい』をつけろ!レインボーサイクロン!!」

そう叫ぶと、鈴木は残っていた師団長達に七色の妖力波を放った。
鈴木の放った技を受け、その場に居たものは全て死んだ……かに見えた。

「ふむ、そこの逃げようとしている男!」

こっそりとその場を離れようとしていた男を鈴木は呼び止めた。

「お前からは、妖気を感じる……人間ではないな、正体を現せ!!」

「ちっ!」

男は舌打ちした後に、正体を現した。

「……見たことがあるな……確か……そうだ、お前は奥義破り専門の妖怪、乱童」

そう、この男の正体は、剛鬼と共に霊界から脱獄した乱童であった。
乱童は剛鬼と違い、脱獄したあとは人間達に紛れ大人しくしていたのだ。
人間に化けることが得意な乱童は、今の今まで霊界の捜査から逃げおおせていたのだ。
潜伏先が戦自というのはまさに盲点であり、今まで気付かれなかったのだ。
乱童は、自分を逃がしてくれた組織に対する、感謝の念など持ち合わせていない。所詮、霊界の人間、奴らには奴らの思惑があるのだから、恩義に感じる必要はない……と思っていた故に、人間界で騒ぎを起こすことなく隠れていたのだ。
ほとぼりが冷めるまで……。

「鈴木さんでしたっけ?」

「だから、名前の前に『美しい』を付けろ!」

「失礼。美しい鈴木さん……見逃してもらえませんか?」

C級妖怪の乱童では、S級の鈴木を相手にして勝てるはずがない……。
この男に比べれば、自分など雑魚に過ぎないと認めている乱童は、命乞いをした。
しかし……。

「断る!」

「何故ですか!?」

あっさりと断られ、乱童は動揺する。

「私は、ゲンカイ師範の関係者だ!」

その言葉に、乱童は絶句した。
忘れもしない名前…ゲンカイ。
彼女の奥義を奪おうとして、霊界探偵・浦飯ユウスケに逮捕されたのだ。

「それに、お前を見ているとかつての自分を思い出し、不愉快になる」

かつて、鈴木がまだ『強い妖戦士・田中』と名乗っていた時と、暗黒武術会で、老人に化け『怨爺』と名乗り、死々若丸たち『裏御伽チーム』を率いていた頃の情けない自分を思い出す。
ピエロだった頃の自分を……。
乱童は、すさまじい格闘センスで他人の技を見ただけで真似ていたが、その技の本質を見抜くことができなかった。
鈴木は、『裏御伽チーム』に渡した『闇アイテム』を作る技術は天才的だったが、それを自分の強さと勘違いした。
どちらも己の過信から、間抜けな敗北をさらしたのだ。
今の鈴木はその過信を捨て、真の強さを手に入れていたが、乱童を見ていたら、道化だったかつての自分を思い出し、不快になっていたのだ。

「レインボーサイクロン!!」

容赦のかけらもなく、必殺技をぶちかまし、乱童はあっさりと倒れ付した。

「まあ後で霊界の連中が、こいつを連行するだろう」

そう言うと、鈴木はその場から離れた。

☆      ☆

「制圧部隊、全滅か」

「サードチルドレン抹殺は叶わず……か」

「フン。所詮、東洋の島国のサルどもなど役に立たんか」

「やむを得んな。エヴァシリーズの投入を」

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・。

「接近する飛行物体を確認!数は9体!!」

「モニターに出します!」

「あれは!?」

「エヴァシリーズか………よし、こちらもEVAの出撃させろ」

「パイロットがいません!」

「何、シンジ君やレイ、セカンドもか?」

パイロットロストの報告に冬月が焦り始めた。

「はい。確認が取れているはフォースのみです」

フォース……鈴原トウジ。
未だ一度も実戦に出ていない彼では、役に立たない。

「背に腹は変えられん。とにかく彼に準備をさせろ!!」

トウジでは無理なことは分かっているが、何もやらないよりはマシと考え、準備をさせる。
破壊された参号機のコアを弐号機のコアと取り替える作業を行おうとした。
しかし、ここで深刻な問題が発生した。
コアにインストールされている筈の魂が存在していないである。
調べてみれば、初号機と弐号機のコアにも魂が存在していないのである。

「馬鹿な!?どうなっている……」

報告を訊いた冬月はどうしていいか分からず、おろおろするしかなかった。
何より、初号機の中に居るはずのかつての教え子にして、密かな想い人であった碇ユイの魂が消えていることに動揺を隠せない冬月であった。
ユイとキョウコは蔵馬によってサルページされ、トウジの母の魂は、他の保管された別の魂たちと共にぼたんたち霊界案内人が霊界に連れ去っていたのだ。

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・。

ヘブンズドア。
その中にある『リリス』の間。
ゲンドウの予想通り、そこにはレイの姿があった。

「やはり、ここにいたか……レイ…。それで良いのだ。所詮、お前は私から離れることは出来んのだから…」

ゲンドウは、己の計画の成就を確信し、機嫌がよかった。

「『アダム』と『リリス』の禁じられた融合……A・Tフィールドを解き放ち、『アダム』を受け入れるのだ」

ゲンドウは手袋を外し、己の掌に融合させた『アダム』をさらけ出し、レイの胸に手を伸ばした。

「そして、ユイの下に連れて行ってくれ」

ゲンドウの手が、レイの胸に触れようとした瞬間、レイの拳がゲンドウの顔面にヒットした。

「ぐはっ!!」

「ここを触っていいのは、蔵馬君だけ……」

鼻血を出しながら蹲るゲンドウに、そう言うとレイはこちらに歩いてくる蔵馬の下に駆け寄った。

「……シンジ……貴様!!」

蔵馬が来たことを知ったゲンドウは、鼻を押さえながら蔵馬を睨み付けた。
普通の人間なら、ゲンドウに睨み付けられたら恐れを抱くが、ゲンドウなど歯牙にもかけない蔵馬にとっては何の恐怖も湧かないのだ。

「その『アダム』には魂がない……だから、貴方は綾波レイと融合することは出来ないよ……」

蔵馬の背後から、カヲルが現れそう言った。
ゲンドウは、カヲルの姿を見て驚愕した。

「貴様はフィフス!?……生きていたのか?」

カヲルが存在しているため、『アダム』の魂は、ゲンドウの手に融合している『アダム』の肉体には存在しておらず、いまだカヲルの中に存在していた。

「僕の生死なんかより、自分の手の中の『アダム』を見て下さい」

カヲルにそう言われ、ゲンドウが己の手のひらを見ると、その手に融合していた『アダム』がどろりと溶けていき、ゲンドウの手から零れ落ちた。

「……これは!?」

そして、レイの後ろにある磔にされた『リリス』も同じように溶けていき、その胸に刺さっていた『ロンギヌスの槍』のみが残った。

「馬鹿な!?」

『人類補完計画』に必要な『アダム』と『リリス』。
その二つが目の前で消滅し、ゲンドウは呆然となった。
レイは『リリス』に還ることを拒み『綾波レイ』として生きていくことを望んだ。
カヲルもまた『アダム』に還ることを止め『渚カヲル』として生きていくことにした為、『アダム』と『リリス』の体は、その存在意義を失ったのだ。
だから、消滅したのだろう。

「フッ……これで、父さんと『SEELE』の『人類補完計画』は絶対に不可能になったな………」

その言葉を聞き、ゲンドウも悟った。
この生意気な息子は、自分の計画を阻止するべく動いていたことを……

「息子の分際で、親のやることを邪魔するとは!この親不孝者め!!」

あまりにも都合のいい台詞に、蔵馬とレイは呆れ果てていた。
親としての義務を果たしてもいないくせに、都合のいいときだけ親の立場を取る。
碇ゲンドウという人間は、余りにも身勝手すぎるのだ。

「俺は、貴方の事を親とは、かけらも思っていない!俺にとって貴方は、ただの遺伝子提供者だ…」

「何だと!」

それ以前に『妖狐・蔵馬』から見れば、ゲンドウなどただの小悪党に過ぎないのだが、それは置いておいて……。

「母親なら、無条件で親と認めることはできる。何故なら子供を産む時の苦しみは、男の俺達はただ想像することしかできない程の苦しみだ……。子供を産むという行為そのものに、俺は敬意を払う。しかし、男親に関しては……子供を作る過程は、はっきり言って男にとっては快感を味わうだけだ。『碇シンジ』を作る過程においては、貴方は至福のときを過ごしただろう。ならば父親の責任とは、生まれてきた子供を育てることだ。その責任を放棄した貴方を、何故、父と認めなければならないんだ?」

「………」

「まあ、それでも確かに遺伝子を提供してくれたという借りはあるか……じゃあ、その借りはさっさと返すことにしよう」

蔵馬はそう言うと、陰に居た人物をゲンドウに引き合わせた。

「……ユイ!?」

「貴方が求めてやまなかった人物と逢わせてやった。これで借りは返したぞ!」

「本当に……ユイなのか?」

ユイは静かに頷いた。
ゲンドウはとても信じられなかった。
愛し、求めた存在が目の前に居る。
初号機に取り込まれ、何度サルページを試みても呼び戻すことが適わなかった。
故に、『人類補完計画』を利用することを思いついた。
その逢いたかった存在が目の前に居る。

「……ユイ~~~~~~~!!」

ゲンドウは、ユイの下に駆け寄り抱きしめようとした……が、

バシン!!

抱きしめようとする瞬間、ユイの平手打ちがゲンドウにヒットし、止まった鼻血が再び吹き出した。

「気安く近寄らないで!!」

ユイの一言に、ゲンドウはショックを隠せなかった。

「ユイ?……何故!?」

「ゲンドウさん……私が知らないとでも思いましたか?貴方が、シンジを殺そうとしたことを……」

ゲンドウは顔色を変えた……が、直ぐにとぼけだした。

「シンジがそう言ったのか?それはシンジの被害妄想だ……私が、君との間に出来た可愛い息子を殺そうとするはずがないだろう…」

ゲンドウの返答にユイは、憤怒の表情になった。

「ごまかさないで……私はシンジによってEVA初号機の中で覚醒していたのよ!……第13使徒との戦いのときからね……初号機に使われたダミーシステムを初号機の中で解析したのは私なのよ!!」

ゲンドウの顔は更に蒼白になった。
第13使徒のときに使用したダミーシステムがどんなものであるかをユイが知っている。
もはや、言い逃れが出来る状況ではなかった。

「それだけじゃない。ナオコさんの娘さんにしたことも……私は知っているのよ……」

リツコを強姦したことは、女性としてとても許せることではなかった。
赤木ナオコがユイに対して嫌がらせをしていたことは、蔵馬から訊いて知った。
ユイ自身は、彼女に恨まれていることを全然気付いていなかったが……。
しかし、ナオコの娘のリツコには罪はない。
そのリツコを、己の目的に利用するために犯すなど、箱入り娘のユイにとってはとても許せる行為ではない。

「私は……貴方に対する接し方を間違えたようですね……」

憤怒の表情から哀しみに満ちた表情に変わったユイがそう呟いた。
結局、ゲンドウという男は、ユイが居なければ何処までも暴走し、他人に迷惑を掛ける男なのであった。
リツコがどれだけ愛そうが、ゲンドウはユイ以外を信じない。それ故に、今までリツコではユイの代わりにはなれなかったのだ。
そして、ゲンドウは大きな勘違いをしていたのだ。
自分がどんなことをしようが、ユイは自分を受け入れてくれる……と思い込んでいたのだ。
そして、ゲンドウにとって息子は、そんなユイを自分から奪っていく存在にしか見えなかったのだ。
だから、息子を愛せなかった。
ユイに対する独占欲が、とてつもなく強すぎたのだ。
自分以外、たとえ息子でも、ユイが他の者を愛することに耐えられなかったのだ。
これは、ユイの責任ではない。
ゲンドウの業が、あまりにも常軌を逸していたのだ。
しかしユイは自分のゲンドウに対する甘さが、ゲンドウをこんな風にしてしまったと思い込んでいた。
しかし………。

「……でも、それでも……私が居なくなった後に貴方がやってきたことは許せる物じゃないわ……だから……私はもう貴方とは一緒に居られない……それが…貴方に与える私からの罰よ!……さよなら……」

それは、決別の言葉。
心優しいユイでも、決して許せないことをゲンドウはやってしまったのだ。
ユイはそう言い捨てると、蔵馬とレイを連れてゲンドウから離れていった。

「待ってくれ、ユイ。私を見捨てないでくれ!!」

追い縋ろうとしたゲンドウの手を蔵馬が払った。

「シンジ……貴様!!」

「母さんに逢わせてやった以上、もはや借りは返した。母さんに捨てられるのは貴方の自業自得。そこまで面倒は見れん!……後、祖父からの伝言です。『碇ゲンドウを碇の一族から追放する』とのことです。貴方は『碇』の姓を剥奪され、たった今から『碇ゲンドウ』ではなく、『六分儀ゲンドウ』に戻りました……確かに伝えましたよ!」

蔵馬は、ユイとレイと共にその場を後にした。
がっくりとうなだれるゲンドウにキョウコが声を掛けた。

「……惣流博士!?」

「碇所長。いいえ、今は六分儀さんでしたわね。……結果論ですけど…『人類補完計画』などに頼るより、シンジ君にきちんと父親として接していれば、こんなことにはならなかったと思いますよ。現に、シンジ君はユイと私を簡単にサルページしたんですから……父親として当たり前の事をしていれば……シンジ君を、自分からユイを奪う存在ではなく、六分儀さんとユイとの愛の結晶という認識を持っていれば……貴方は……幸せで居られたでしょうに……」

キョウコはそう言うとアスカを連れ、蔵馬たちの後を追うべくその場を後にした。
ゲンドウは、しばらくその場が動くことはなかった。

「結局、碇……六分儀司令は、自分で自分に引導を渡したのね……あたしみたいに途中からでも、蔵馬と良好な関係を築けば……いまさら言っても仕方ないか……」

アスカはそう呟いた後、もはやゲンドウのことを考えることも止めた。
セントラル・ドグマを出ようする蔵馬たちの前に、リツコが姿を現した。

「聞いていたとおりです、リツコさん。あの男のこれからの処遇については貴方に任せます。煮るなり焼くなり好きにしてください」

蔵馬は、ゲンドウのことをリツコに一任した。
ユイに捨てられたゲンドウを保護するなり、恨みを晴らすために殺そうが好きにしろと言っているのだ。
リツコは何も言わずユイに軽く会釈をすると、ゲンドウのいる方に向かって歩いていった。

☆  ☆  ☆

発令所では、信じられない光景がモニターに映し出されていた。
生身の男が2人、EVA量産機を相手に戦っているのだ。
しかも、次々とEVA量産機が破壊されているのだ。

「……あれは、ユウスケ君!?」

モニターに映ったその男の顔が顔見知りだった為、オペレータ3人…いや、発令所の面々は皆、呆然としていた。

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・。

「オラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラ!!!」

ユウスケのその両腕から繰り出されるパンチの嵐は、A・TフィールドもろともEVA量産機を破壊していた。

「邪王炎殺煉獄焦!!」

飛影の炎を宿した拳の無数の打撃を叩き込まれたEVA量産機は、あっさりと破壊。
EVAから、ユイとキョウコをサルページさせることによって、EVAが使えなくなったが、そもそもユウスケ、飛影、蔵馬の3人はEVAよりも戦闘能力が高い。
使徒が相手なら、性質上EVAを使わなくては倒せない使徒もいたが、EVA自体に関しては、ユウスケと飛影から見れば、ガラクタ人形同然であった。
故に蔵馬は、ユウスケと飛影に自分がドグマに行っている間、EVAシリーズの相手を任せていたのだ。

「うおりゃぁ~~~~~!!」

ユウスケの最後の一撃により、9体目のEVA量産機も沈黙した。

「エヴァシリーズ……全機沈黙……」

「やったの!?」

青葉の報告を聞き、ホッとするミサト……。
しかし、ミサトの内心は複雑だった。
使徒と同じ強さを持つEVAを生身の人間がいともあっさりと倒してしまったのだ(ユウスケたちは人間ではないが……ミサトはそれを知らない)。
そんなことを考えてながらモニターを見ていたが、そのとき変化が訪れた。
EVAシリーズが再び動き出したのだ。

「何これ……………!?倒したはずのEVAシリーズが……」

マヤが呆然としながら呟いた。

「EVAシリーズ、活動再開……」

マヤからの報告に冬月は苦虫を噛み締めた様な表情になったが……その時、懐かしい声が聞こえた。

「S²機関による力のようですね、冬月先生……」

冬月が声のした方角に目を向けるとそこには……かつての教え子の姿があった。

「……まさか……ユイ君!?」

「お久しぶりです、冬月先生」

「惣流博士まで……これは、一体」

冬月は混乱した。
初号機と弐号機にそれぞれ取り込まれた筈のユイとキョウコが、レイとアスカを引きつれ発令所に入ってきたのだ。

「ちょっと!あんた達、ここは関係者以外立ち入り禁止よ!!」

ミサトが2人を追い出そうとするが、アスカがミサトの前に立ちふさがった。

「ミサト!ママ達になにする気?」

「何する気って……もちろん、ここから叩き出……ママ?」

アスカの『ママ』という発言に目を白黒させるミサト。

「この人は、私のママよ!そしてもう1人は、蔵馬のお母さんの碇ユイ博士よ!」

発令所は静まりかえった。
蔵馬の母とアスカの母は既に他界している筈?
なのに何故ここにいるのか?
発令所の職員達は不思議に思っていた。
そんな中、2人の生存を知っていた冬月が、ユイ達に問いかけた。

「ユイ君。君の旦那とは、逢わなかったのかね?」

「あの人とは、縁を切ってきました。もうあの人は、私の夫ではありません」

その言葉に、冬月は納得した。
やはり、ユイはゲンドウを許さなかったのだ。
ゲンドウの蔵馬に対する態度を、息子を溺愛していたユイが許す筈がないことは想像がついていたからだ。
冬月は、ゲンドウに同情することなく……むしろいい気味だった。
冬月としては、ユイとゲンドウの結婚を祝福などしていなかったのだ。ゲンドウに対する第一印象は『いやな奴』だったからだ。
今でも、冬月はゲンドウが嫌いだったのだ。
しかし、彼の目指すものに興味があったため、彼の手助けをしてきたに過ぎなかったのだ。

「そうか……それしても疑問が解けたよ……君がここに居るから……EVAか動かないんだな…」

他の面々には聴こえないほどの小声でユイに確認をとる冬月。

「後は、シンジに任せてください……シンジがきっと何とかしてくれますから…」

ユイの言葉に、冬月は安堵のため息をついた。

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・。

「ご苦労様です。ユウスケ、飛影」

「「蔵馬!!」」

S²機関の力によって再起動したEVAシリーズを見て、面倒くさそうな顔になっていたユウスケと飛影の前に蔵馬が現れた。

「おい……倒しても蘇ってくるんじゃキリがねぇぞ!!」

EVAシリーズは、今のユウスケからすれば物足りない相手である。
喧嘩は好きだが、鬱陶しいのは御免だった。

「確かに………しかし、あのEVAシリーズの一片も残さず消滅させたら済むことです……」

「そんなの面倒くさいじゃないか……」

「ですから、あれをやるんですよ。以前、面白半分で編み出したあの『技』を……」

蔵馬からの提案を聞き、ユウスケも飛影も思い出したのか、不敵な顔になった。

「そうだな。あれをやればいいんだ……飛影。用意はいいか?」

「誰に言っているんだ!」

飛影の返答に苦笑しながら、ユウスケは人差し指に妖力を集中させた。

「霊丸!!」

ユウスケの人差し指から、妖気の弾丸……霊丸が打ち出された。
妖気の弾丸とはいえ、ユウスケの妖力から放たれるそれは、もはや大砲の弾すら超える大きい妖力の弾丸であった。
そして飛影が妖力が高めると、霊丸の周りに魔界の黒い炎=黒龍がまとわり付いた。
霊丸と炎殺黒龍波の合体技。
霊丸の威力によって粉砕されたEVA量産機の残骸を全てを焼き尽くす魔界の炎によって消滅し、その場には影しか残らなかった。
今度は蔵馬が妖力を高める。
すると、霊丸と黒龍波はまるで鞭のように周りに居た他のEVA量産機襲い掛かる。
一瞬にして、残り8機のEVA量産機はその場から姿を消した。

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・。

「全滅!?………9体のEVAシリーズが……一つ残らず…一瞬に……」

「………悪夢だ……」

「それも、EVAによらず……生身の奴らに……」

EVAシリーズがあっさりと消え去るのを見ていた『SEELE』のメンバーは、がっくりと肩を落としていた。

「……『SEELE』の夢はここに潰えた……そして、我らも破滅する……」

ナンバー01……キール・ローレンツの言葉に他の『SEELE』の面々が問う。

「確かに夢は潰えたが、我らが破滅とはどういう意味ですか、議長?」

「EVAシリーズに費やした資金のため、SEELE系の企業は軒並み倒産寸前に追い込まれていたのだ……それを碇グループが救済した」

キールは苦虫を噛み締めるように現状を説明していた。

「もはや、企業の経営者どもは我々より、碇シンタロウに傾倒しておる。彼らにしてみれば、自分達を失業寸前に追い込んだ我々より、救ってくれた碇に鞍替えするのは当たり前だろう。我々は、『人類補完計画』が失敗した後のことを考えなかった……我ら『SEELE』の権力は空洞化したのだ。我らの権力は、財力が伴わなくてはその力を発揮できない……」

彼らは表立った存在ではない。
財力がなければ、報酬が出せなくなっているので今まで働いてきた部下達も『SEELE』を見限るだろう。
虎の子のEVAシリーズが失ってしまっては、その力を背景に脅迫することも出来ない。
もはや、国連も、各国の首脳達も『SEELE』に従わないだろう。

「では、我々はどうすればいいのだ」

「わずかに残った財産で細々と生きていくしかない…」

栄光の座から退場を余儀なくされ、皆の表情は暗くなっていた。

《フッ……貴様らに余生を心配する必要はない!》

全員の頭の中に、謎の声が響き渡った。

「なんだ今のは?」

「君達にも聴こえたか?」

「なんだ、頭に直接声が……?」

『SEELE』のメンバーの前に1人の男の姿が現れた。

「君は何者だ?」

キールが皆を代表してこの謎の男に質問する。

「我が名は、頼光。冥界の王、耶雲様の側近なり」

そう、この男こそ霊界から裏死海文書を盗み出した男であり、そして、その裏死海文書を改竄した男でもある。
頼光は、『SEELE』のメンバーに己の目的を語りだした。
『人類補完計画』が成功し、全員がL.C.Lの海に還ったら、それを生け贄にして耶雲を復活させるつもりだったことを。

「では、我々の夢は……」

『SEELE』はようやく悟った。
支配者だと思っていた自分たちが、実はこの男の傀儡に成り下がっていたことを……。
『人類補完計画』は、けっして人類を進化させる計画ではなかったのだということを……。

「もはや、この作戦は使えなくなった……故に……役立たずの道具を始末することにした。……死ね!!」

頼光の額の第三の目が開いた。
そう、この男も飛影と同じ邪眼師である。
しかも、手術で邪眼を移植した飛影と違い、生まれながらの邪眼師であった。
邪眼の魔力により、『SEELE』の面々は一瞬にして絶命した。
彼らは、自分達の精神力は強いと思い込んでいたが、強かったのなら『人類補完計画』のような逃げの計画など実行しようとは思わないだろう。
その弱い精神力では邪眼に対抗できよう筈もなかった。

「フンッ!耶雲様復活は、また別の計画を立てなくてはならなくなったわ!」

頼光はそう吐き捨て、その場を後にしようとしたがそこから動くことができなかった。

「何!?」

頼光の周りに霊力で創られた結界が張られていたのだ。

「冥界の者よ、逃がさんぞ!!」

頼光の周りに8人の戦士が取り囲んでいた。

「貴様らは!?」

「我々は、霊界特別防衛隊だ。私は隊長を勤める舜潤」

霊界特別防衛隊。
妖怪達に追跡者(ハンター)と呼ばれている霊界のエリート軍隊である。
9人で構成されていたが、2代目霊界探偵、仙水シノブの引き起こした騒動の後、当時の隊長、大竹が辞任して8人になり、現在はこの舜潤が隊長を務めている。
この舜潤こそ、19年前に妖狐・蔵馬を追い詰めた張本人であった。
今の蔵馬には、もはや歯が立たないが………。

「何故ここが……?」

「計画が失敗した後、背後にいる者は必ず『SEELE』の前に姿を現すだろうという、妖狐・蔵馬の推論が的を射たようようだな……」

霊界の人間は、攻においては魔界の妖怪たちに劣るが、守においては上回る。
だからこそ、S級妖怪さえ通れない結界を張ることが出来るのだ。
特防隊員8人による結界により、身動きが取れなくなった頼光はあっさりと捕縛された。
黒幕にしては、あっけない幕引きであった。

全てが終わった。

☆      ☆

特務機関NERVは解散することになった。
全ての使徒を滅ぼしたので、その活動は終了したからだ。
第3新東京市は廃棄され、ジオフロントも同様であった。
魂を失ったEVA初号機、弐号機も解体が決定した。
そして、NERVの職員達は……。

司令の六分儀ゲンドウは、もはや見る影もなくなっていた。
妻であるユイに見限られ、碇家から追放されたので、今は、リツコの下に居る
結局、リツコはゲンドウを保護したのだ。
今のゲンドウにとって、縋れるのはリツコのみであった。
2人の立場は逆転し、ゲンドウはリツコに捨てられるのを恐れるようになり、主導権をリツコが握っているのだ。

副司令の冬月コウゾウは早々に辞表を提出し、京都の大学に戻り教授に帰り咲いた。

碇ユイは、ゲンドウと離婚しNERVの大部分の職員を連れて、新しい『人工進化研究所』を設立し、所長に就任する。
ちなみに、研究所は蔵馬が以前通っていた盟王高校のある町に設立した。

惣流・キョウコ・ツェッペリンは『人工進化研究所』の副所長に就任し、愛娘のアスカと共に生活を開始する。

葛城ミサトは加持リョウジと結婚し、加持ミサトとなる。そして、『人工進化研究所』の警備部主任となる。作戦部長としては無能だったが、戦闘能力に関しては一流なので、無能のレッテルから開放されることになった。
ちなみに、『SEELE』から受けた暗示は解かれた。
使徒という復讐の対象が、全て殲滅されたからである。
ミサトにかけられた暗示が簡単に解けるものではないと感じた蔵馬は、加持にミサトを真実から遠ざけさせたのだ。そして、使徒が殲滅されたという事実を与えることにより、暗示から解き放させたのだ。

赤木リツコは、研究チームの主任になる。
ゲンドウの件があるが、かつての嫉妬の対象であったユイとの関係は良好であった。
既にユイは、ゲンドウに対する未練が欠片もないためである。

日向マコトは、ミサトの下につき警備部の事務を一手に引き受けることになった。
ミサトと加持の結婚にショックを受けたものの、それでも憧れのミサトと一緒に仕事できることで妥協したのだ。

青葉シゲルは、副所長のキョウコの直属になり研究所の経理を担当することになった。

伊吹マヤは、リツコの研究チームに入り、リツコの補佐をしている。
最近は、青葉と付き合うようになり、かつての度を越えた潔癖症はなりを潜めたとのこと。
………潔癖症であることに変わりはないが…。

加持リョウジはミサトとの結婚後、内務省からも足を洗い『人工進化研究所』の監察部主任に就任した。

鈴原トウジは、EVAがなくなり多額の退職金を受け取り、洞木ヒカリが転校した高校に行くことになった。
結局、蔵馬と対等になるという彼の目標は達せられなかった。

「トウジ……委員長を幸せにしてあげてください……1人の女を愛し、幸せにする……それは俺には出来ないことです」

蔵馬には、レイ、アスカ、マナの三人がいるが、ある意味それは優柔不断とも取れる。
たった1人の女を愛し、そして幸せにする。
簡単なことに見えてそれは、とても難しい。
それを成し遂げられれば、女性を幸せにするという事に関しては、蔵馬を上回るだろう。

「蔵馬、元気でな……また会おう!」

握手を交わし、蔵馬とトウジは別れた。
2人は知らない。
これが、この2人の最後の握手であり、2人が再会することはなかった。

碇シンジこと蔵馬、綾波レイ、惣流・アスカ・ラングレー、霧島マナ、そして渚カヲルについて。
蔵馬はレイとカヲルと共に、盟王高校に復学した。
蔵馬が帰ってきたことを、盟王高校の女生徒たちは喜んだが、レイという彼女付きであることにがっかりした……が、一緒に転校してきた蔵馬とは別のタイプの美男子であるカヲルに、その矛先を向けたようだ。
ちなみに、碇家が用意した邸宅に、蔵馬、レイ、マナ、カヲル、ユイの5人で住み、その邸宅の隣に建っている高級マンションの一室に惣流母娘が住んでいるのだ。

惣流・アスカ・ラングレーは、蔵馬と一緒の家で暮らすことも考えたが、やはり母娘水入らずで生活することを選んだ。
いずれ一緒に住むようになるから、今のうちに十分、キョウコに甘えるつもりのようであった。
そのアスカは、既に大学を卒業しているため、高校には行かず、碇グループに就職した。
いずれ、グループを継ぐことになる蔵馬の助けになるためにグループ内で基盤を固めるつもりのようであった。

霧島マナも、結局、高校には行かなかった。
盟王高校は彼女の学力ではとても入れるレベルではなく、相変わらず家事をしているのだ。

渚カヲルは、リリンとしての生活を満喫していた。
盟王高校の女生徒に迫られることもあったが、持ち前の天然ぶりを発揮してのらりくらりと交わしていた。

綾波レイは、蔵馬と共に高校生活を楽しんでいた。
と言うより、いつも蔵馬にべったりくっついているので、蔵馬と海藤ユウを苦笑させていた。

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その後、霊界で剛鬼と乱童を脱獄させ、Dr,イチガキに降魔の剣を渡した組織……いや、宗教テロリスト『正聖神党』による審判の門占拠事件が勃発する。
テロリストの中には元霊界特防隊隊長、大竹も加わっていた。
かつて、霊界が調停者として神を気取っていた頃に使用していた超兵器『異次元砲』を人間界に向かって発射されたくなければ、人間界から妖怪を撤退させ、境界トンネルに再度結界を張るよう要求してきた。
霊界特防隊隊長、舜潤はユウスケに協力を要請。
ユウスケは桑原、蔵馬、飛影を召集し、見事事件を解決する。
しかしそのとき、ゲンカイの寿命が尽き他界する。
ゲンカイの死を知り、レイはとても哀しんだ。

大学で経営学を専攻し、首席卒業した蔵馬は碇グループの経営陣に迎えられた。
蔵馬の能力は、碇シンタロウを上回っていたため、重役達は蔵馬が次期会長に就任することに反対しなかった。
そして、アスカとの間に男の子を、マナとの間に女の子をもうけた。
アスカの息子は、母親の天才を受け継いでいたので、早々に碇グループの後継者にするための教育を施し、大学卒業と同時に会長職をその子に譲った。もちろん、若すぎる会長を補佐する信頼できる側近をつけたが……。
マナの娘は、類まれな霊力の持ち主であったため、ゲンカイが残した霊光波動拳の奥義書を頼りに霊能者として育てた。
そして魔族大隔世により魔族に隔世したユウスケにとって、もはや無用の長物となった霊光波動拳伝承者に代々受け継がれてきた『霊光玉』を受け継ぎ、ユウスケの次の霊光波動拳伝承者となった。

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そして、蔵馬がゲンドウに呼ばれ第3新東京市に赴いてより100年が過ぎた。
アスカもマナも、そして、かつて蔵馬と親交のあった人間は、ほとんどこの世を去っていた。

魔界。

「第25回魔界統一トーナメント準決勝第2試合。黄泉選手対蔵馬選手の試合は、蔵馬選手の勝利で終わりました」

蔵馬は、ついにかつての部下であり、上司であった黄泉を上回る強さに到達した。

「どうやら、立場が昔に戻ってしまったな蔵馬……」

黄泉は悔しそうにしながらも、どこかすっきりした表情で蔵馬の勝利を称えた。
この後、準決勝第1試合で飛影を破ったユウスケと決勝戦が行われる。
ユウスケは、ついに父・雷禅の全盛期時代に匹敵する強さに辿り着き、かつての雷禅の喧嘩仲間達を次々と破り、決勝進出を果たしていた。

「第25回魔界統一トーナメント決勝戦。浦飯選手対蔵馬選手の試合を行います!」

「蔵馬。考えて見ればお前とのバトルは今回が初めてだな」

「そういえば、そうでしたね……」

今までのトーナメントにおいても、ユウスケと蔵馬の試合が組まれたことは一度もなかった。
飛影とはお互い何度が、闘ったが……。

観客席には、レイ、カヲル、久遠が手に汗握り、観戦していた。
レイとカヲルは、使徒の因子を持っているため未だにあの頃のままの姿で健在であった。
アスカとマナの死後、魔界の妖狐の山に移り住むことにした。
レイには生殖機能が無い為、アスカとマナの様に蔵馬との間に子を成すことは出来ないが、2人が他界した後もすっと蔵馬の傍にいた。
そして、これからもずっと居続けるだろう。

「この大会の発起人でもある浦飯選手と、蔵馬選手はどちらも今大会が初の決勝進出であります。初優勝を果たし、新たなる魔界の支配者になるのは、浦飯選手か、それとも蔵馬選手か?」

2人の初対決は、最高の舞台で繰り広げられることになった。

「負けね~ぞ蔵馬!」

「俺もな……お前との初対戦。勝利を飾らせさせてもらう」

ユウスケも蔵馬も、妖力を放ち戦闘態勢に入った。

「それでは、決勝戦……初め!!」

「うおぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉ!!」

「はあぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!」

2人の対決が始まった。

〈幽☆遊☆世紀エヴァンゲリオン 完〉
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