幽☆遊☆世紀エヴァンゲリオン
YU☆YU☆ GENESIS EVANGELION
第弐拾六話
神鳥ガルーダ(旧かのもの)
零号機の自爆によって壊滅した第3新東京市を蔵馬は眺めていた。
残る使徒はあと一体。
『自由意志』を司る使徒、『タブリス』。
それさえ終わればこのうっとうしい戦いも、ようやく最終局面に移るだろう。
蔵馬にとって、この戦いで得たものは、レイとアスカとの出会い。再会したマナ。そして、死んだと思っていた母、ユイとの邂逅だけである。
さっさと始末をつけて、レイたちを連れて盟王高校に帰りたいと思い始めていた。

「フンフンフンフン、フンフンフンフン♪」

蔵馬の耳にベートーベン交響曲、第九の鼻歌が聴こえてきた。

「歌はいいね」

声のする方に目を向けてみれば手摺に腰掛ける少年が居た。
レイと同じく紅い瞳と色白い肌。
違うのは髪の色だけであった。

「歌は心を潤してくれる。リリンの生み出した文化の極みだよ。そう感じないかい?碇シンジ君」

「……俺の名前を?」

「知らない者はいないさ。失礼だが、君はもう少し自分の立場を知ったほうがいいと思うよ」

そう言うと少年は名乗った。

「僕はカヲル、渚カヲル。君と同じ仕組まれた子供……フィフスチルドレンさ……」

カヲルと名乗った少年はアルカイックスマイルの良く似合う少年だった。

「渚君……か…」

「カヲルでいいよ」

「なら、俺もシンジでいい」

蔵馬はカヲルからレイと同様の気配を感じていた。
つまり、彼はレイと同じように生まれた存在であることに気付いていた。
しかし、何故か好感を持ち始めている自分に気付いた。

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渚カヲル。
綾波レイと同じく過去の経歴は抹消済み。
生年月日は、セカンドインパクトと同日。
人類補完委員会が送り込んできた、フィフスチルドレンである。

蔵馬とカヲルがシンクロテストを行っていた。
カヲルは参号機のデータを使用していた。

「マヤ、後0.3下げてみて」

「はい、先輩」

リツコの指示に従い、マヤは操作する。

「この数値で間違いないのね?」

「全ての計測システムは正常に作動しています」

リツコの確認に日向が答えた。

「MAGIによるデータ誤差、認められません」

「まさか、コアの変換もなしに参号機とシンクロするなんてね……この子…」

シンクロ率は戦闘時の蔵馬たちより低い……が、初号機と零号機にしかシンクロ出来ない蔵馬とレイ、弐号機のみのアスカと違いコアの変換無く全てのEVAとシンクロできるだろうこの少年は異常である。
もっとも、参号機のコアの変換なしでシンクロしたことにより、他のEVAともシンクロ出来るというのは、リツコの勝手な推論でしかない。
初号機、弐号機のコアの魂。
ユイとキョウコが覚醒しているので、流石にカヲルではシンクロ出来ないのだ。
ユイとキョウコが拒否すれば……の話ではあるが……。
とにかく、初のシンクロテストにおいて、カヲルはコアの変換なく参号機とシンクロした。
それは、システム上有り得ないことだった。
蔵馬に続いて、またしても理解不能なチルドレンが現れ、リツコは頭が痛くなっていた。

☆      ☆

蔵馬君の下に行こうとする私の前に、フィフスチルドレンが現れた。

「君は僕と同じだね……『アヤナミレイ』」

この人の感じ……私と同じ……この人はまさか……

「私は私。貴方じゃないわ」

この人と私は違う。私は……蔵馬君と共にある。
『SEELE』や碇司令の目的とは関係ない存在。
それが、今の私。

「お互い、この星で生きていく為にこの体にたどり着いたという訳さ」

「……私は……蔵馬君と出会い、蔵馬君と生きていくために生まれてきた……貴方とはまったく違うわ」

おそらく、この人は次の『使徒』。
私は使徒の遺伝子を持っていても使徒じゃない。
だから、この人とは違う……。

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ずるずるずるーーーー!
日向、青葉、マヤのオペレータ3人は、食堂でユウスケのラーメンを食べていた。

「いやぁ、ユウスケ君がNERVの食堂で働いてくれるようになって助かったよ」

「上があんなことになって、ユウスケ君のラーメンはしばらくお預けだと思ったからね」

「でも、ユウスケ君がシンジ君の友人だったなんてね……」

この3人、実はユウスケの屋台の常連だったのだ。
残業後、深夜の帰宅途中によくユウスケの屋台でラーメンを食べていたのだ。

「こっちも商売あがったりだったからな……蔵馬には感謝しているぜ!」

ユウスケは他に客が居ないため、日向たちと談笑していたのだ。

「ユウスケ君。そういえば、レイちゃんとアスカもそうだけど……どうして、シンジ君のこと『蔵馬』って呼ぶの?」

マヤの質問に青葉も疑問を口にする。

「そういえばそうだな……『碇シンジ』と『蔵馬』。なんの共通点もないよな……」

「……そうだな…むしろ、俺達にとっては『碇シンジ』より『蔵馬』の方が本当のあいつの名前なのさ」

「えっ?それってどういう……」

「それ以上は今は秘密さ」

ますます疑問が膨らむマヤ達であった。

☆  ☆  ☆

「やあ、僕を待っていてくれたのかい」

レイとアスカと話していた蔵馬に、カヲルが声を掛けた。
カヲルの雰囲気が何故か気に入らないらしく、アスカは不愉快そうな顔を隠そうともしなかった。
レイは……カヲルの存在を警戒していた。

「……そうだな……今日は汗を掻いたし…一緒に浴場にいくのはどうかな?」

しかし蔵馬は、そんな2人の様子にも気にせず、実に親しそうにカヲルと話す。

「いいね、君とはもっと話をしたいからね……」

「私も一緒に入る!」

仲の良い二人に割り込むようにレイが叫んだ。

「レイ……NERVの大浴場は男女別だ……」

「そんなの関係ない…」

レイは強引に一緒に行こうとするが、それをアスカが止めた。

「アンタね……蔵馬はともかく、こんな奴に裸を見られたいの?」

「それは嫌!!」

即答するレイ。

「おやおや、僕はどうやら彼女達には嫌われているようだね」

カヲルは苦笑しながらそう言った。

《蔵馬君、そのフィフスは……》

《分かっている……だから心配するな……》

カヲルに聴かれないよう念話で話す蔵馬とレイ。

《大丈夫なの蔵馬?》

アスカが念話に加わってきた。

《ああ。それに俺は彼といろいろなことを話してみたい……初めて意思を疎通できそうな使徒が現れたわけだしな……》

「じゃあ、行こうか。カヲル君」

そう言って、カヲルと大浴場に向かった。

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浴場には先客がいた。

「よう、蔵馬。お前も風呂に入りにきたのか?」

ユウスケであった。
夕食の前に風呂に入っていたのだ。

「ユウスケ……」

「そいつは誰だよ、蔵馬?」

「彼は渚カヲル君だ。新しくきたEVAのパイロットだよ」

「へぇ~。俺は浦飯ユウスケ。ここの食堂で働いてる。よろしくな」

「よろしく……」

蔵馬とカヲルは、体を洗い浴槽に隣り合わせにつかった。
その前にユウスケがいる。
しばらくくつろいでいると、突然カヲルが蔵馬の手に自分の手を合わせてきた。
流石に驚き、手を離す蔵馬。

「一時的接触を極端に避けるね、君は……怖いのかい?人と触れ合うのが?」

「いや、男にそんな風に触られるのが嫌なんだと思うが……」

「他人を知らなければ裏切られることも、互いに傷付くこともない」

「人の話……聴いてね~な…」

「常に人間は心に痛みを感じている。心が痛がりだから、生きるのも辛いと感じる。ガラスの様に繊細だね」

「蔵馬はガラスはガラスでも、防弾ガラスだと思うけどな……」

ユウスケは、さっきから茶々を入れていた。

「ユウスケ……いちいち茶々を入れないでください……笑えますから…」

「本当に君達は面白いね……好意に値するよ」

「好意?」

「好きってことさ……」

きょとんとした蔵馬は、その後苦笑しながら言った。

「カヲル君の気持ちは嬉しいよ……でも、俺にはそんな趣味はない」

「そうかい。僕にとっては男も女も等価値なんだけどね…」

カヲルは微笑みながらそう答えた。

「同性愛者?それとも両刀使いか?」

☆      ☆

ゲンドウは、初号機の前に立っていた。

「まもなく最後の使徒が現れるはず……それを消せば願いが叶う……。もう直ぐだよ、ユイ」

いまだに諦めていないゲンドウだった。
何故、今の状況になっても諦められないのだろうか……それは、ゲンドウにはある考えがあった。
しかし、その考えも自分に都合のいい考えなのである。
それは、『レイは、結局己の存在理由から逃れることができない』という考えだった。
今は、蔵馬の傍に居るが、約束のときになれば自分の下に来るしかない……そう考えていたのだ。
すでに彼は狂い始めてい.るのだ。
ユイは、初号機の中からそんなゲンドウを見て、ため息を吐いていた。

《この人は……もう、駄目ね……救い様がないわ……》

『バルディエル』との戦いのときの所業で、完全にゲンドウを見限っているユイは、そう心の中で呟くとゲンドウから目を逸らした。

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リツコとマヤは、結論を出していた。

「渚カヲル……シンクロ率を自分の意思で自由に変動させることができる」

「それも、コアの変換もなしにです……」

「間違いないわね。彼は………最後のシ者…」

「どうするんですか、先輩?」

「別にどうもしないわ」

リツコの答えに、マヤが驚愕する。

「せ……先輩…!?」

「私たちが気付いていることを、あの子が……シンジ君が気付かない筈ないわ」

「そんな、いくらシンジ君でも……」

「マヤ。覚えておきなさい……シンジ君はね、私なんか比べものにならないほど優秀なのよ……」

その言葉にマヤが反論する。

「先輩より優れた人なんて居るはずありません!」

その答えに苦笑する。

「マヤ……貴女のそれは信頼じゃなく、盲信よ……」

☆  ☆  ☆

カヲルは、参号機の前に立っていた。

「さあ、行くよ。おいで、アダムの分身、そしてリリンの下僕」

カヲルは宙に浮き、EVA参号機の目が光った。
第17使徒『タブリス』、最後のシ者。

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「EVA参号機、起動!」

発令所は騒然となった。

「そんな馬鹿な!?鈴原君は?」

ミサトが確認を取る.

「現在、食堂に居ます……確認済みです」

青葉が食堂の様子をモニターに移した。
トウジが、ユウスケのラーメンをおかわりしている様子が映し出された。

「こんなときに何、暢気にラーメン食ってんのよ!しかもおかわりなんかしているんじゃない!!……それはともかく、参号機には誰が乗っているの?」

「参号機は無人です。エントリープラグが挿入されていません!」

「セントラル・ドグマにA・Tフィールドを確認!」

「参号機?」

「いえ、パターン青。間違いありません、使徒です!」

モニターに映し出されたのは、参号機の傍で宙に浮いているカヲルの姿であった。

「そんな、あの少年が……使徒!?」

ミサト達は驚愕した。
まさか、使徒がチルドレンとして送り込まれてくるとは……。

「セントラル・ドグマの全隔壁を緊急閉鎖。少しでも時間を稼げ!」

冬月が命令した。

「まさか、『SEELE』が直接送り込んでくるとはな……」

「老人たちは予定を一つ繰り上げるつもりだ……我々の手で」

NERV内に警報が鳴り響く。

「装甲隔壁が参号機により突破されます!」

「目標は第二コキュートスを通過!」

「EVA初号機と弐号機を出撃させろ!いかなる手段を用いても目標のターミナル・ドグマへの侵入を阻止しろ!」

ゲンドウがEVA出撃の命令を下した。
そして、冬月と小声で話していた。

「もしや参号機と融合を果たすつもりなのか?」

「あるいは破滅を導く為、にか……」

初号機と弐号機が参号機に追いついた。

「来たようだね、シンジ君……いや、君は……綾波レイ?」

初号機に乗っているのは、蔵馬ではなくレイであった。

「ちょっと、レイ……シンジ君は?」

発令所でも困惑していた。何故、シンジではなくレイが初号機に乗っているのか。

「蔵馬はやることがあるの……」

「だから、私が代わりに初号機に乗っている…」

初号機とレイのシンクロ率……138.6%。

《よろしくお願いします……ユイおば様》

《よろしくね、レイ》

ユイは、自らの遺伝子を受けついたレイをきちんと受け入れていた。
故に、お互いの意思の疎通は完璧であり、シンクロ率も零号機搭乗時とたいして変わらぬシンクロ率をたたき出していた。

「……シンジ君じゃなければ、用はないよ」

弐号機の腕をA・Tフィールドで防ぐ。

「A・Tフィールド!?」

「そう、君達リリンはそう呼んでいるね。何人にも侵されない絶対領域。君たちリリンも気付いているんだろう?A・Tフィールドは誰もが持っている心の壁だということを……」

『タブリス』はそう呟くと、参号機を初号機と弐号機にけしかけた。

「あっ、こらっ待ちなさい!え~い邪魔よ!ミサト、参号機ぶっ壊すわよ!!」

「しょうがないわね……二度も使徒に利用されるんだから……参号機には変なジンクスが出来ちゃったみたいね…OK、廃棄しなさいアスカ!」

《よし、行くわよレイ!》

《わかった、アスカ》

初号機と弐号機は、参号機の処理に入った。
しかし、『タブリス』はすでにその場に居なかった。
どうやら、参号機で初号機と弐号機を足止めし、先に進んだようであった。

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ヘブンズドア。
その周りに存在したカメラなどは全て無力化されていた。
『タブリス』がそこにたどり着いたとき、ひとりの青年がそこに立っていた。
いや、青年ではない。
銀髪と金の瞳。白装束を身に纏った獣の耳と尻尾を持つ者がそこに立っていた。

「渚カヲル……いや、『自由意志』を司る第17使徒、『タブリス』。待っていたぞ」

「……君は……」

「俺の名前は蔵馬……『妖狐・蔵馬』」

「蔵馬……まさか、君は!?」

『タブリス』は驚愕した。
『蔵馬』という名に聞き覚えがある。
それは、ファーストチルドレンとセカンドチルドレンが『碇シンジ』をそう呼んでいた。

「そのとおりだ。『カヲル君』」

「シンジ君……なのか…?」

「そう、俺は貴様同様、ヒトではない……」

蔵馬はそう言うと薔薇を取り出し、それを薔薇棘鞭刃に変えた。

「『タブリス』。この先に行っても意味はないぞ。この先に居るのは『アダム』ではない。『リリス』だ……」

「……そうか、そういうことか……リリン」

『タブリス』は納得した。

「それで、シンジ君。君はこれからどうするつもりなんだい?」

「それは、貴様次第だ。俺と敵対するなら殺す。共存を望むなら生かす……好きなほうを選べ」

蔵馬の言葉に、『タブリス』は苦笑した。

「EVAに乗っていない状態で、僕を殺せるとでも?」

蔵馬の返答代わりに、薔薇棘鞭刃を振るった。
『タブリス』はA・Tフィールドを展開する。しかし、薔薇棘鞭刃はあっさりとA・Tフィールドを切り裂いてしまった。

「なっ!?」

『タブリス』は驚愕した。
ここまであっさりと、A・Tフィールドが破られるとは思いも寄らなかった。
『タブリス』のA・Tフィールドはこれまで襲来した使徒のより遥かに強力であった。
にも、関わらず蔵馬の鞭はやすやすと切り裂いたのだ。

「このとおりだ。この程度の壁など俺には何の意味もない……つまり、EVAに乗らずとも貴様を殺すのは造作もない」

『タブリス』は沈黙していた。

「一つ、訊きたい」

「なんだい、シンジ君」

蔵馬は、『妖狐』から『碇シンジ』に戻った。

「何故、俺達と敵対する?」

『タブリス』は、『妖狐』から『碇シンジ』の姿に戻った蔵馬を見て、一瞬、驚いた顔をしたが、直ぐにいつもの笑顔に戻った。
蔵馬の問いに『タブリス』は悲しそうに答え始めた。

「僕が生き続けることが、僕の運命だからだよ。結果、人が滅びてもね……だが、ここで死ぬこともできる。生と死は等価値なんだ。僕にとってはね……自らの死。それが唯一絶対の自由なんだよ」

そして、『タブリス』いや、カヲルは選択する。

「さあ、僕を消してくれ。そうしなければ、君の護る者たちが消えてしまう。滅びを免れ、未来を与えられる生命体は、一つしか選ばれないんだ」

その言葉を訊き、蔵馬は構えを取る。
それも見て、カヲルは微笑んだ。

「君達には未来が必要だ……シンジ君。君に逢えてうれしかったよ……」

蔵馬は構えを解いた。
その顔には微笑みが浮かんでいた。

「俺も、君のことを気に入っている。しかし、今の君は気に入らないな。何故、戦おうとしない?」

「たとえ戦っても君には勝てないよ……君にとって、僕を殺すなんていとも簡単なことだろう?」

既にカヲルは、蔵馬の実力を見切っていた。
自分達『使徒』とは、戦闘レベルが余りにも違いすぎる。
まともに戦って、勝てる相手ではない……と。

「俺とではないよ……運命と……何故戦わないのだ?『自由意志』の使徒……」

その言葉に、カヲルは目を見開いた。

「『自由意志』を司る者の唯一の自由が『死』か?本当にそうなのか……よく考えてみてくれ……君が本当に望むのは何だ?俺達と共に生きたいとは思わないのか……俺達と共に生きたくなく、死にたいと言いたいのなら、望み通りに殺してやる……」

「………」

「改竄された裏死海文書などに支配されるのが君の『自由』ではあるまい……」

「改竄?」

「ああ、『SEELE』の持つ裏死海文書は、ある者たちに改竄されたものなのだ……」

「それは、あまりにも不愉快だね……。僕は偽りの運命に踊らされていたわけか……」

少し考え、カヲルは蔵馬に答えた。

「……僕は、君達と生きる道を選びたい……シンジ君。君の事をもっとよく知りたいよ……」

「了解した」

蔵馬は薔薇棘鞭刃を下ろし、微笑んだ。

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・。

参号機を始末した、初号機と弐号機がヘブンズドアに降りてきた。

「終わったのね……」

「蔵馬君、お疲れ様……」

レイとアスカは、蔵馬と仲良く談笑しているカヲルを見て、むっとした。

「……結局、こいつはこれからも居るってことか……」

「とげのある言い方だね、セカンドチルドレン」

カヲルが、アルカイックスマイルで答えた。

「カヲル君。彼女は惣流・アスカ・ラングレーだ。番号で呼ぶのは止めてくれ」

「そうだね……これは失礼した。アスカ…」

「呼び捨てにするな!」

騒ぎ出すアスカ。
レイは、そんなアスカを置いといて、蔵馬に問いかけた。

「ところで、蔵馬君。私達にここに来てくれって…何をするの?」

「ああ、もう少し待ってくれ……もう直ぐぼたんが来る」

「もう来てるよ!!」

ぼたんがレイの後ろから声を掛けた。

「!!」

レイはびっくりして飛び上がった。

「ぼたん、例のモノは?」

「ちゃんと持ってきたよ」

そう言うぼたんの傍に1人の女性が横たわっていた。

「ママ!!」

その女性は、アスカの母、惣流・キョウコ・ツェッペリンの姿をしていた。

「アスカ、レイ……今から、母さんとキョウコさんのサルページを行う」

「!?」

「第17使徒『タブリス』をもって、使徒の襲来は終わった。もうEVAは必要ないからな……」

「本当に、ママが帰ってくるの?」

「ああ、その為に、ぼたんにキョウコさんの寄り代を用意させたんだ」

キョウコの肉体は、抜け殻のキョウコが自殺したため既に埋葬されている。
故に、蔵馬は霊界案内人が人間界で活動するための肉体をキョウコ用に用意させたのだ。

「では、始めるぞ」

蔵馬は幽体離脱に入った。
そして数分後、碇ユイが現れ、さらに数分後、ぼたんの用意したキョウコの肉体が目を覚ました。

「アスカちゃん……」

「………ママ……ママ……ママァァァァァァァァァァァァ!!」

アスカはキョウコに抱きついた。

「ママ……逢いたかった…やっと…ママに…抱きしめてもらえた……」

「アスカちゃん。ごめん……ごめんね……もうママは何処にも行かないからね」

肉体に戻った蔵馬が目を覚ましたら、ユイに膝枕をされていた。

「……母さん……」

「シンジ……やっと……大きくなった貴方を抱きしめられるわ……」

蔵馬は起き上がり、改めてユイを抱きしめた。
15年ぶりに母と子は、そのぬくもりを感じていた……が、ユイが一糸纏わぬ姿であることを思い出し、蔵馬は真っ赤になった。

「母さん…とりあえず、これを着てくれ」

蔵馬は自分の上着を渡した。

「蔵馬君……ユイおば様とキョウコさんをどうするの……」

「ああ、ここの使われていない部屋にいろいろなものを準備してある。カヲル君を含めて、時が来るまでそこに居てくれ。念のため、久遠が結界を張っているから、見つかることはない。これで、『SEELEの人類補完計画』は完全に瓦解した。このヘブンズドアの先の『リリス』と、EVA二体には魂がない。魂なくして奴らの儀式は行えない」

リリスの魂は、レイがリリスと融合しない限り復活しない。
そして、EVAの魂であるユイとキョウコは先ほどサルベージした。

「そして、『アダム』の魂はカヲル君の中にある……後は……『SEELE』とその裏に居る冥界の者を何とかすれば……全てが終わる」
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