幽☆遊☆世紀エヴァンゲリオン
YU☆YU☆ GENESIS EVANGELION
第八話
神鳥ガルーダ(旧かのもの)
本日、葛城宅には4人の来訪者が来ていた。

「いよ!蔵馬。久しぶりだな」

「お久しぶりです、蔵馬さん」

「ひさしぶりじゃな、蔵馬」

「おじゃましま~す!」

桑原カズマ、雪菜、ゲンカイ、ぼたんである。
桑原は久々に蔵馬に勉強を見てもらう為。雪菜はその付き添い。
ゲンカイとぼたんはレイの為に、蔵馬が呼んだのだ。レイは遺伝子治療を受けなければ生きることができない体である。そこで、ゲンカイの霊波動とぼたんの心霊医術によって安定させようと考えたのだ。実際、この二人なら可能であった。

「では、師範。こちらが綾波レイです」

「うむ、よろしくな、レイ」

「……よろしくお願いします」

心霊医療のことは、蔵馬から説明を受けてレイも承知していた。
説明といっても詳しく説明した訳ではない。気孔のようなものだと説明したのだ。レイは蔵馬が自分が人間ではないことを知っているとは教えられていない。蔵馬も今の段階でそのことを伝える気もなく、精密検査をしなくても気孔の力で肉体を活性化させると説明していた。
レイは別に科学の信望者ではない。それよりも大好きな蔵馬の言うことを真に受けたようだ。蔵馬が自分に酷いことをしないと信じきっている。
ゲンドウと蔵馬との信頼度の違いは感覚によるものであった。
ゲンドウを信じたのは、自分の創造主であり、絶対者であったから。
以前、レイは人の心に疎いと記述したが、それは表面上のことであり、本能はかなり聡い。ゲンドウが自分を通して別の人間を見ていることも本能では悟っていた。しかし、当時は彼しか縋れなかった。だから、気付きながらも気付かぬ振りをして無意識に自分を騙していたのだ。
蔵馬を今、信じているのはまさに感覚である。
自分に対して、蔵馬は真っ直ぐ見てくれている。それを感覚で感じ取っているのだ。だから、かつてのゲンドウ以上に蔵馬を信じきっているのだ。いわば『碇シンジ(蔵馬)至上主義』状態である。それも問題であるかもしれないが、蔵馬はレイの信頼に真っ向から応えるつもりなので、いずれ問題点も解消されるだろう。

「じゃあ、あんたの部屋で行おう。ぼたん、ついといで」

「はいな~」

レイのことをゲンカイとぼたんに任せ、蔵馬は⡑原の講師を始めた。

「すいませんね、桑原君。わざわざ来てもらって。俺は今のところ、気軽に第3新東京市を離れられなくなっているので」

「いや、勉強を教えてもらっているのはこっちだしな。だったらこっちから出向くのが礼儀だぜ」

桑原は義理堅く、礼儀を知っている。ユウスケとはそこが違う。

「それに、雪菜さんにも色々なところを観てもらいたいしな」

「ありがとうございます。カズマさん」

「いえ、男桑原。雪菜さんの為ならたとえ火の中、水の中」

「はいはい。とにかく始めましょう」

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・。

勉強もとりあえず終わり、蔵馬はレイの様子を見に来た。

「どうですか?」

ぼたんとレイの様子を見ていたゲンカイが蔵馬に答えた。

「ああ。それほど難しくはないな。一週間続ければ、彼女の肉体と魂は完全に調和するだろう」

レイが遺伝子治療を受けなくてはならないのは、肉体と魂が霊的に調和していないからである。そういうことを理解できないリツコは薬などで無理やり安定させていたのだ。ちなみに遺伝子に障害がある人間の2割くらいは、肉体と魂の霊的不一致が原因である。
ゲンカイの霊波動とぼたんの心霊医療で調和させれば、もはやリツコの治療など必要なくなり、毎日薬を飲まなくてもよくなるだろう。
碇ユイと使徒の遺伝子で造られたクローン。レイの肉体と魂が霊的に調和できない理由である。無理な遺伝子の組み合わせにより、安定できなかったが霊的に安定させれば問題にはならない。所詮、科学はまだ万能ではないのだ。特に科学者が科学で証明できない超常現象を非科学的と否定し続ける限り、決して万能にはなれないのだ。

☆      ☆

蔵馬、桑原、雪菜の三人は今、ミサトと共にヘリで太平洋上空に来ていた。
雪菜は始めて乗る人間界の空飛ぶ機械からの景色を興味深く眺めていた。
何故、こんなことになったかというと、勉強を終えくつろいでいたところミサトが戻ってきて、蔵馬を連れ出そうとしたのだ。そこで、蔵馬の友人の姿を見たミサトは、強引に桑原と雪菜、ゲンカイとぼたんも誘ったが、ゲンカイとぼたんはレイの治療がある。ミサトにはそのことを説明しなかったが、レイはもしもの時の為、留守番と聞いたぼたんが。

「レイちゃん一人残るのは可哀相だから、あたしと師範は残ります」

などと勝手に返答した為、桑原と雪菜は強制的に連れて行かれてしまった。

「見えてきたわよ。あれが国連軍太平洋艦隊よ」

「へぇ~。テレビじゃなく、こうやって直接艦隊を見るのは初めてだぜ」

桑原は少し興奮しているようだ。

「あんな老朽艦がよく浮いていられるわね?」

ミサトの何気ない台詞に蔵馬が苦笑した。
セカンドインパクトが原因で、現在の航路は20世紀後半に比べてけっして安全とは言えなくなっていた。
セカンドインパクト直後は海賊などが跋扈し、豪華客船や輸送船が襲われるなど日常茶飯事になっていた。故に人々の移動手段はほぼ空路となり、客船の存在は無くなってしまったのだ。しかし、物資の運搬は空路のみでは足りない。そのため、太平洋艦隊のような存在は必要不可欠になっていた。老朽艦とはいえ馬鹿にはできないのである。
ミサトはそのことを理解していないようであった。

☆  ☆  ☆

「ふん。いい気なもんだな。玩具のソケットを運んできおったぞ……ガキの使いが!」

太平洋艦隊旗艦、空母『オーヴァー・ザ・レインボー』。そのブリッジから双眼鏡で見ていた艦長が毒づいた。自分達を蔑ろにして、好き勝手振舞うNERVを彼は毛嫌いしていたのだ。
その艦長たちの上、ブリッジの上に一人の少女が接近しているヘリを見つめていた。

☆      ☆

「私、船に乗るのは首縊島以来はじめてです」

「いや~。雪菜さんに喜んでもらって、男桑原、感激です」

「別に桑原君が連れてきた訳ではないでしょう」

はしゃいでいる雪菜と桑原を蔵馬は微笑ましく見ていた。

「Hello!ミサト、元気にしていた」

声に反応した蔵馬たちはその方向に顔を向けた。
そこに立っていたのは、レモンイエローのワンピースを着た、朱金の髪の少女であった。
その顔立ちは絶世の美少女と冠しても問題なく整っていたが、気の強そうな顔をしていた。

「まっね~。貴女も背が伸びたんじゃない?」

「そ!他のところもちゃ~んと磨きがかかっているわよ」

ミサトが彼女と一緒に居た頃よりも美貌に磨きがかかったと言いたいようだ。

「紹介するわね。彼女がエヴァンゲリオン弐号機専属パイロット、セカンドチルドレン、惣流・アスカ・ラングレーよ」

ミサトが蔵馬たちに紹介しているときに甲板に強い風が通り過ぎ、アスカのスカートが捲れあがった。顕になる下着。
アスカはすかさず平手を蔵馬たちに放とうとした……が、蔵馬と桑原はあっさりとかわした。
蔵馬に放った平手を難なくかわされ、とりあえず隣の桑原にも放ったが、それもあっさりとかわされたのだ。
これが、シズルやぼたんが放った平手なら桑原も引っ叩かれただろうが、見ず知らずの女に引っ叩かれるほど桑原も間抜けではない。
自分の平手を難なくかわされ、ムキになったアスカは今度は拳を握り蔵馬に殴りかかった。蔵馬はアスカの手首を掴み後ろに捻り上げた。

「…痛た…離しなさいよ!」

蔵馬は直ぐに離した。
そんな蔵馬たちを睨みつけるアスカ。

「ちょっと。何してるのよアスカ?」

いきなりの険悪なムードにミサトが焦り、アスカに問いただした。

「だって、こいつらあたしの下着を見たのよ。見物料よ」

その台詞に桑原がキレた。

「…ふざけんじゃね~!金払ってまでそんなもん見たかねぇ~や!!」

「はん。こんな美少女の下着をただで見れると思ってるの」

「けっ…。お前みたいな女より、雪菜さんの方が何倍も美しいぜ」

「なんですって~~~!!」

アスカは雪菜の方に目を向けた。

「……この女の方があたしより美少女だって言うの?」

「当然よぉ。この可憐なお姿。まさしく天女のようだ」

恥ずかしげもなくほざく桑原に他の面々は呆れていた。

(惣流……!?そうか、彼女はキョウコさんの娘か)

惣流・キョウコ・ツェッペリン。
蔵馬の母、碇ユイの親友で東方3賢者の一人。蔵馬は幼い頃、数回会ったことがあった。

「で、ミサト。いるんでしょサード。まさかこのブ男じゃないわよね?」

「誰がブ男だこら~!」

「まあまあ、落ち着いて下さい桑原君」

蔵馬が桑原を宥めた。

「違うわよ。そちらの長髪の男の子よ。彼がサードチルドレン、碇シンジ君よ」

「ふ~ん。女みたいな顔してるわね」

ピクッ…。

蔵馬の顔が引き攣った。

「ま、ま、ま、ま……」

今度は桑原が蔵馬を宥めた。

「まあ、あたしが来たからには、もうあんたは必要ないわ。これからの使徒は全部あたしが倒してあげる」

勝気なポーズをとるアスカ。

「では、期待させてもらいましょう」

蔵馬は呆れながら返答した。

「なによ。その態度は~~~~!」

「人のことが言えるのかてめえ~~~!」

「ちょっと~、いい加減にしてよ~」

前途多難な雰囲気にミサトは泣きたくなった。

☆  ☆  ☆

「おやおや、ボーイスカウト引率のお姉さんかと思っていたが……それは、どうやらこちらの勘違いだったようだな」

「……ご理解戴けて幸いですわ、艦長」

対外用の表情で返答するミサト。

「いやいや、私のほうこそ久しぶりに子供達のお守りができて幸せだよ」

艦長はさらに皮肉を言う。

「この度はEVA弐号機の輸送援助、ありがとうございます。こちらが非常用ソケットの仕様書です」

「ふん。大体、この海の上であの人形を動かす要請なぞ聞いちゃおらんぞ」

「万が一の事態に対する備え……と理解して戴けますが」

不機嫌に仕様書を受け取る艦長に対し、ミサトは嘆息した。

「万が一の事態に備えて、我が太平洋艦隊が護衛しておる。いつから国連軍は宅配屋に転職したのかな?」

「某組織が結成された後だと記憶しておりますが」

艦長の問いに副官も皮肉を言う。

「玩具1つ運ぶのに大層な護衛だよ。太平洋艦隊勢ぞろいだからな」

「EVAの重要度を考えれば足りないくらいです」

艦長の皮肉にミサトも皮肉で返す。
この皮肉の言い合いに蔵馬、桑原は呆れ果てていた。特に蔵馬はNERVに係わってから呆れることが多い。

「ではこの書類にサインを」

「まだだ!」

艦長の拒否にミサトの顔が引き攣った。

「EVA弐号機及び同操縦者はドイツの第3支部より本艦隊が預かっている。君らの勝手は許さん!」

「では、いつ引渡しを……?」

「新横須賀に陸揚げしてからになります」

ミサトの問いに副長が答える。

「海の上は我々の管轄だ。黙ってしたがってもらおう」

「わかりました。でも、有事の際は我々NERVの指揮権が最優先であることをお忘れなく」

そのとき、ミサトと艦長の会話に乱入する声が聞こえた。

「相変わらず凛々しいな」

その声にアスカが頬を赤くして反応した。

「加持先ぱ~い」

全員がその方を見ると一人の男が手を振っていた。

「げっ!?」

ミサトの顔が驚愕に歪んだ。

「加持君。君をブリッジに招待した覚えはないぞ」

「それは、失礼」

ミサトは持っていたファイルを落として呆然としていた。

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・。

「Shit!子供が世界を救うと言うのか?」

「時代が変わったんでしょう。議会もあのロボットに期待していると聞いています」

「あんな玩具にか。馬鹿共め、そんな金があるならこっちに回せばいいんだ」

艦長も副長も憮然としていた。
子供を戦わせるなど彼らの軍人としての矜持を傷付けるには充分だった。

☆      ☆

「何であんたがここにいるのよ?」

ミサトか加持に食ってかかった。

「彼女の随伴でね、ドイツから出張さ」

「迂闊だったわ。充分考えられる事態だったのに…」

などとミサトと加持が痴話喧嘩をしながら士官食堂に到着した。時間外であるため蔵馬たち以外誰もいなかった。
コーヒーを飲みながら、加持がミサトに話しかけた。

「今、付き合っている奴いるの?」

「それが、貴方に関係あるわけ……」

「あれ、つれないなぁ~~」

不機嫌なミサトに加持も残念そうな態度をとる。

「君は葛城と同居してるんだって」

加持は蔵馬に話しかけた。

「まあ、一応」

「彼女の寝相の悪さ、直ってる………?」

「えぇ~~~!」

その言葉にアスカが悲鳴をあげた。

「ななな…何言ってるのよあんた!!」

ミサトが真っ赤になり加持に詰め寄った。

「……相変わらずか?碇シンジ君」

「フッ…確かに起こすよう頼まれたときを見る限り、寝相はかなり悪いですね……ところで、俺のことをご存知なんですか?」

「そりゃ、知っているさ。この世界じゃ君は有名だからね。何の訓練もなしに実戦でEVAを動かしたサードチルドレン」

加持の賞賛にアスカは蔵馬を睨んだ。

「確かに、訓練は受けていませんね。しかし、父さんは最初から知っていたんじゃないんですか。俺がEVAに乗れることを」

「何故、そう思うんだい?」

加持が興味深そうに聞いてきた。

「聞いた話ではファーストチルドレンのレイはEVAとシンクロするのに7ヶ月かかったそうです。俺はやってきて直ぐにシンクロできました。しかも、俺がNERVに来たのは使徒襲来当日。偶然にしては出来過ぎです。作意を感じますね」

「しかし、マルドゥック機関が君をサードチルドレンに選んだのはつい最近だろう?」

「だから、それ以前から知っていたんじゃないか……と言っているんですよ」

その台詞に加持は興味を惹かれたようだった。ミサトは何かを考え込んだ。桑原と雪菜はある程度事情を知っているため、とくに気にしていなかった。アスカは相変わらず蔵馬を睨んでいた。

☆  ☆  ☆

艦外のデッキでアスカと加持が話をしていた。

「どうだい、碇シンジ君は……?」

「ふん。何よ、あんな奴、女みたいな顔してさ。大体、使徒を倒したのだってまぐれでしょう。たまたま運よく使徒を倒しただけに決まっているわ!」

「しかし、さっきはアスカもシンジ君に手玉に取られていたじゃないか」

「だから、あんなのもまぐれよ!」

アスカは蔵馬に軽く捻られたことを認められないでいた。
加持はそんなアスカを見て、ため息をついた。蔵馬の動きを見て、アスカでは蔵馬には勝てないことを悟っていた。あれはまぐれだとかそんなレベルではない。恐らく自分でも彼とやりあえば、タダでは済まないと……しかし加持もまた、蔵馬の実力を見誤っていた。タダでは済まないどころか瞬殺されるのがオチだということを……。

「だが、彼のシンクロ率はいきなりの実戦で80%オーバーだったそうだぞ」

「嘘!?」

アスカはそれ聞き、驚愕した。
ちなみに今のアスカのシンクロ率は70%前後である。初回から自分の記録をあっさりと超えられていることに悔しさを隠しきれなかった。

☆      ☆

「サードチルドレン。ちょっと付き合って」

エスカレーターを昇っていた蔵馬にアスカが上から声を掛けてきた。いかにも高飛車な態度で。

「何の用ですか?」

「いいから、付いてくればいいのよ!」

と言い、蔵馬の耳を引っ張ろうとした。蔵馬はその手を掴み、またしても後ろに捻り上げた。

「…痛た……離しなさいってば!」

「おめえも懲りねぇ奴だな?」

桑原は同じことを繰り返すアスカを嘲笑した。

「で……あらためて何の用ですか。ちゃんと理由を言ってください」

「あ……あんたにあたしの弐号機を見せてあげるのよ!」

開放されたアスカは腕をさすりながら蔵馬に怒鳴った。

「……別に興味はありませんが」

「いいから、来なさい」

「はいはい。じゃあ、桑原君、雪菜ちゃん。ちょっと行ってきます」

蔵馬はアスカと共に弐号機を積んでいる輸送船『オセロー』に向かった。

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巨大なシートの一部を捲り、その下のLCLのプールに浮かぶ、EVA弐号機。

「これが、あたしのEVA弐号機よ。所詮、零号機や初号機は開発過程のプロトタイプとテストタイプ。訓練無しの貴方なんかにいきなりシンクロするのが、その証拠よ。けどこの弐号機は違うわ」

弐号機の上に乗り、アスカは自慢げに説明している。

「これこそ実戦用に造られた、世界初の本物のエヴァンゲリオンなのよ。制式タイプのね…って、何よその態度は!!」

アスカの説明をあくびをしながら聞いていた蔵馬に、アスカが怒鳴った。

「いや先程、興味がないと言いませんでしたか……と、冗談はこれくらいにして、貴女の勘違いを正しましょうか」

「何よ、勘違いって?」

アスカが不機嫌そうに答えた。

「貴女の言っている事は逆だ……と言いたいんですよ。普通は制式機より実験機のほうが扱い難いものなんですよ。問題点の解明を目的としているんですからね。制式機はそういう問題点を克服した機体であるため、扱い易くなっている物ですよ」

「つまり、自分の方が優れていると言いたいわけ……?」

「いや多分、シンクロについてはどのEVAも一緒ですよ。初号機の方がシンクロし易いとか、シンクロし難いとかはないでしょう」
(そう、EVAの中にいる魂とどれだけ繋がれるか……それが何よりの条件だろうな……もしかしたら初号機に母さんが居たように弐号機の中にはキョウコさんが居るのでは?)

その時、激しい衝撃が艦隊を襲った。艦内が揺れる。

「どうやら、何かがこの艦隊を襲ってきたみたいですね」

蔵馬とアスカが甲板に出てみると、確かに何かが艦隊を襲っている様だった。撃沈されていく戦艦……。

「……使徒のようだな」

「あれが、使徒……チャーンス」

不敵に笑うアスカは蔵馬を促し、艦内に入っていった。

☆  ☆  ☆

「各艦、艦隊距離に注意の上、回避運動……状況報告はどうした!」

「シンメリン、沈黙。タイタスランド、リカス。目標確認できません!」

「くそ、何が起こっているんだ!」

艦長たちが突然の事態に必死に対応していると、桑原、雪菜を伴ったミサトがブリッジに現れた。

「ちわ~。NERVですが、見えない敵の情報と、的確な対処はいかがですか?」

「戦闘中だ、見学者の立ち入りは許可できない」

「これは私見ですが、どう見ても使徒の攻撃ですねぇ」

「全艦、任意で攻撃!」

「無駄なことを」

頑なな艦長に呆れ返るミサト。

艦隊の総攻撃が始まったが、第6使徒は威も返さず次々と艦隊に損害を与えた。

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・。

「この程度じゃ、A・Tフィールドは破れないか………」

先程アスカと共にいた場所で、見物していた加持は真顔で呟いた。

「しかし。何故ここに使徒がここに……まさか、弐号機……」

使徒の突然の襲撃の原因は弐号機にあると思いついたミサトである。実は別の要因なのだが………。

一方その頃。

「ちょっと、何処行くのよ?」

一人でどこかに行こうとする蔵馬をアスカが問い詰めた。

「この艦のブリッジに……」

「あたしと来なさいって言ったでしょう」

「EVAを動かすつもりだろう。準備をしておけ、俺は艦長にこの船を旗艦に近づけてもらうよう掛け合ってくる」

「何でよ……!」

「ここから、非常用ソケットがある旗艦まで距離がある、飛び移っていったら何隻かの船が破損する。使徒の攻撃を受けているときにそんなことをしたら混乱が広がるからな。余計な軋轢は避けるに越したことはない」

「わかったわ。その代り、その後で直ぐ弐号機の所に来なさい」

「……何故だ?」

「あんたにあたしの見事な操縦を見せてあげるのよ」

アスカは蔵馬に予備のプラグスーツを投げつけた。

「それに着替えてから来なさいよ!」

そう言って、アスカは弐号機の方に向かった。

「……やれやれ。こちらの返答も聞かずに行ってしまったか……」

蔵馬は苦笑しながら、ブリッジに向かった。

☆      ☆

「こんな所で使徒襲来とは、話が違いすぎませんか?」

《問題ない。その為の弐号機だ。……パイロットも追加している……最悪の場合、例のモノを持って君だけでも脱出したまえ》

「……わかっています」

加持は携帯電話をしまうと、懐からタバコを取り出し口に咥えた。

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・。

ひと悶着あったものの、蔵馬の説得を受け入れた『オセロー』艦長は周辺を警戒しつつ、艦を旗艦に向かわせた。(というより、蔵馬の眼光に押し切られた。)
蔵馬はそのまま、プラグスーツに着替えアスカの待つ弐号機に到着した。

「あら、けっこう似合うじゃない」

女性タイプのプラグスーツを着ても、まったく違和感がなかったことに少し憮然とした蔵馬であった。

「L.C.L Fullung.Anfang.der Bewegung des Nerven anschlusses.Ausoloses von links-Kleidung.Sinkio-start.」

エントリープラグに乗り込んだ蔵馬は、アスカの斜め後ろに立った。
アスカの流暢なドイツ語がプラグ内に響く。
その時、鳴り響くエラー……。

「ちょっと、あんた。ドイツ語で考えなさいよ」

「世界共通語の英語ならともかく、いちいちドイツ語まで覚えてないよ」

「…たく、しょーがないわね。思考言語切り替え、日本語を基本にフィックス」

モニターが鮮明になり、外部の状況がわかるようになった。

「エヴァンゲリオン弐号機、起動!!」

☆  ☆  ☆

《オセローより入電。EVA弐号機起動中、及び本艦に接近するとのこと》

「なんだと。それにオセローがこちらに近付いてくるとはどうゆうことだ?」

《はい、弐号機がこちらに移るそうですのでソケットの準備をして欲しいとのこと》

使徒の動きを観察していたミサトは、ガラスに張り付いてオセローの甲板に立ち上がる弐号機を見て狂喜した。

「ナァイス、アスカ!」

「いかん、起動中止だ。元に戻せ!」

静止させようとする艦長からミサトがマイクをもぎ取る。

「かまわないわ、アスカ。発進して…!」

「なんだと!!」

ミサトからマイクをもぎ取り返した艦長は、再び制止させようとする。

「EVA及びパイロットは我々の管轄下だ、勝手は許さん!」

「何言ってんのよ、こんな時に。段取りなんか関係ないでしょう!?」

言い争うミサト達の横で双眼鏡でEVAを見ている副長が指摘した。

「しかし、本気ですか。弐号機はB装備のままです?」

「「えっ!!」」。

《今の装備で海に落ちれば戦えないぞ……》

《落ちなきゃいいのよ》

スピーカーから蔵馬とアスカの会話が聞こえてきた。

「シンジ君も乗っているのね」

《……はい》

「子供が二人…」

艦長が呆然とした。良識ある軍人として、子供を戦わせるのに抵抗感が強い。
『オセロー』が『オーヴァー・ザ・レインボー』に近付いたので、弐号機はそちらに移った。離れたところから飛び移ったわけではない為、艦は多少、揺れる程度で済んだ。

《ミサトさん。ソケットの準備は……?》

「今、用意できたわ」

用意されたソケットをリアクターに接続し準備は完了した。

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・。

艦隊を傍若無人に破壊していた使徒が『オーヴァー・ザ・レインボー』に接近してきた。

「来る。左舷九時方向」

「外部電源に切り替え……切り替え終了」

「しかし、武装がないな」

「プログナイフで充分よ」

弐号機は、ウェポンラックからナイフを取り出し構えた。
使徒が海面に上がり魚の形をしたその姿を露わになった。

「かなり、大きいな」

「思ったとおりよ」

「海面に浮かび上がってきたということは、飛び掛ってくるだろう。……間違っても、使徒を受け止めようとは考えるなよ」

「何でよ!?」

「わからないのか?あの巨体を受け止めるということは凄まじい衝撃を受けるという事だ。陸上とは違い海上に浮かぶ戦艦では踏ん張りきれない。間違いなく海に落ちるぞ」

「……じゃあ、どうするのよ?」

「……敵が飛び掛ってきたら、屈みこんでナイフを腹に突き刺せば、そのまま腹を切り裂くことができる」

「……成程……あんた、けっこう役に立つじゃない」

アスカが感心したように呟いた。
使徒が突撃してきた時、アスカは蔵馬の言うとおりに行動した。
腹を裂かれた使徒は海中に潜った後、のたうち回る。海面が真紅に染まっていった。

(僅かに開いた口から微量だが力が発生するのを感じた。と、いうことは奴のコアは内側……口の中か)

「ミサトさん。口の中にコアを確認しました。奴の口の中を攻撃する手段はありますか。奴が自己修復する間に考えてください」

《……口の中…。わかったわ。艦長、考えるわ》

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・。

ミサトの考えた作戦は、EVAが使途に取り付き口を開かせ、生き残った戦艦二隻を突っ込ませ、口内で零距離射撃するというものだった。

《……どう、シンジ君?》

ミサトはこの作戦について蔵馬に意見を求めた。

「ちょっと、ミサト…なんで、サードに聞くのよ?」

《アスカ……。正直、シンジ君の方が私より遥かに作戦立案能力が高いのよ……悔しいけどね。だから、シンジ君の意見を聞くのよ》

ミサトの言葉にアスカは悔しそうな顔になる。

「……太平洋艦隊には申し訳ありませんが、その作戦はかなり有効だと思います。惣流さん、閉じた口を開けるかがこの作戦の鍵だ。できるな?」

「誰に向かって言ってんのよ!?」

その時、使徒が弐号機に体当たりをかましてきた。

「きゃぁぁぁぁぁぁ!」

弐号機は艦から海に落ちてしまった。

《アスカ。B装備じゃ水中戦闘は無理よ!》

「そんなのやってみなくちゃわかんないでしょ!?」

アスカは不敵に笑った。

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・。

犠牲にする2隻の戦艦からの乗組員を退避させている最中に、『オーヴァー・ザ・レインボー』から戦闘機Yak-38改が一機、発進体制をとっていた。

《お~い、葛城》

「……加持ぃ!」

無意識にミサトの顔が笑顔になっていたが、次の台詞で顔が引き攣った。

《届け物があるんで俺、先に往くわ》

「…はっ…!?」

………呆然となるミサト。

《じゃ、よろしく~。葛城一尉……》

戦闘機はそのまま飛び去っていった。

「……逃げちゃいましたね……」

雪菜が遠ざかっていく戦闘機を見上げながら呟いた。

「……逃げましたね……」

桑原も呆れ顔で見送った。

☆      ☆

「来るぞ!!」

サードの叫びと共に全方に視線を向けたあたしは、回避運動を取ろうとするが弐号機がうまく動かなかった。

「なによ、動かないじゃない!?」

「さっきも言っただろう。B装備では海中では戦えないと……」

「……どうすんのよ!」

「ケーブルを引き上げてもらうしかないだろう。多分、間に合わないだろうが……」

「…ミサト!!早く引き上げて」

そのとき、使徒が口を開けながらこちらに接近してきた。

「……なんで口を開け……まさか、喰う気ぃ!!」

逃げようとしたが、やはり動きが鈍い。このままじゃ……。
予感が的中し、あたしの弐号機に使徒が喰らいついてきた。

「……ぐぁ……」

使徒の牙が弐号機の腰に刺さった。激痛があたしを襲う。
このままじゃ、奴に噛み砕かれてしまう。でも、痛みで集中できない。

……あたしはここで死ぬの?

その時、激痛が和らいできた。後ろから感じる気配。
サードが身体を重ねるようにあたしの後ろからあたしの握る操縦桿に手を重ねていた。

「……あんた。なんのつもり?」

サードは苦痛を耐えている顔で呟いた。

「……これで、少しは痛みが和らぐだろう。…このまま奴の口を抉じ開ける。そうすれば、奴のコアは剥き出しになる。その後作戦通りに……」

「……あんたの手なんか、借りなくたって……」

「…………手を借りるのではなく、利用するとでも思えばいい」

サードはそう言って、あたしに微笑んだ。

……何よ、この胸の疼きは……。

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・。

「ミサトさん。戦艦の乗員退去は済みましたか?」

「ええ、完了しているわ」

蔵馬の問いにミサトが答えた。

「なら、このままケーブルを引き上げてください。そして、ケーブルに添って戦艦を潜航させてください。その間にこいつの口を開かせます」

「解ったわ。……それでは艦長、お願いします」

「……了解した」

2隻の戦艦が『オーヴァー・ザ・レインボー』からの遠隔操作で潜航していった。

(開け、開け、開け、開け、開け…………)

アスカは雑念を捨て、口を開かせる為に集中する。蔵馬が激痛の半分を請け負っている為、なんとか集中できている。

(………キョウコさん!!)

蔵馬が妖気を発し、弐号機の中に居る魂に呼びかけた。
その時、弐号機が活性化した。
どんどんと使徒の口が開いていく。
完全に開ききったとき、潜航していた戦艦が使徒の口の中に突っ込んだ。

「撃てぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇ!」

ミサトの叫びと共に遠隔操作で戦艦が全砲門から発砲した。
使徒は、内部から爆発した。その爆発の威力を利用し、海中から飛び立ち、甲板に着艦するEVA弐号機。

第6使徒は殲滅された。

☆  ☆  ☆

新横須賀港にリツコが待っていた。

「また、派手にやったわね」

リツコは傷ついた艦隊を見ながらそう言った。

「相変わらす、NERVは詰めが甘いですね」

プラグスーツから着替えた蔵馬が皮肉を言う。

「どういう意味かしら?」

リツコが不服そうに蔵馬に問うた。

「非常用ソケットを海上に届けるのなら、弐号機をU装備にしておくべきだと言っているんですよ。ドイツ支部からそうしておけば、艦隊がここまでの被害を被ることもなかったでしょうに……」

「………」

リツコは沈黙した。

「海路を使うんですから、万が一のことを考えU装備にする。それくらいの指示も出来なかったんですか。父さん達は……本当にNERVのトップは無能ですね」

蔵馬の言葉に反論できないリツコ達だった。蔵馬は桑原達を伴いリツコ達から離れていった。

「ね…加持さんは……?」

着替え終わったアスカがミサトに問いかけてきた。

「先にトンズラ…。もう本部に着いてるわよ!!」

不機嫌そうに言い返した。

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・。

桑原と雪菜を迎えにシズルが車に乗って港に来ていた。

「カズが迷惑をかけたわね、蔵馬君」

「いえ、こちらこそ桑原君と雪菜ちゃんを危険な目に遭わせてすいません」

「気にしなくていいわよ。殺したって死にゃしないから…こいつは」

「姉ちゃん、そりゃねーだろ」

シズルの軽口に桑原がムッとした。

「蔵馬君、ばーちゃんとぼたんちゃんはレイって娘の治療の為、しばらく第3新東京市のホテルに滞在するそうだから」

「わかりました。じゃあ、桑原君、シズルさん、雪菜ちゃん。さよなら」

「じゃあな、蔵馬」

「失礼します、蔵馬さん」

☆      ☆

「いやはや、波乱に満ちた船旅でしたよ」

NERV本部の司令室で加持がゲンドウと対面していた。

「やはり、これの所為ですか?」

デスクの上にトランクが開かれていた。

「既にここまで復元されています。硬化ベークライトで固めてありますが……間違いなく生きています。間違いなく……」

トランク中には、何かの胎児がベークライトで固められていた。

「人類補完計画の要ですね」

「そうだ。最初の人間……『アダム』だよ……」

ゲンドウは怪しい笑みを浮かべた。

☆  ☆  ☆

「ただいま」

アスカを連れ本部に行ったミサトたちと別れ、蔵馬は先に家に戻った。

「蔵馬君、おかえり」

笑顔のレイが駆け出して蔵馬に抱きついた。

「師範とぼたんは……?」

「今日はホテルに泊まるって……これから、毎日治療するからって……」

「そうですか……彼女達の『治療』はどうですか……?」

「……暖かかった。お婆ちゃんもぼたんさんも優しくて……あの二人とも……絆を結べた……」

嬉しそうなレイを見て、蔵馬も笑顔になった。



☆      ☆

二日後。

「おはよう、トウジ、ケンスケ」

「おはよう、鈴原君、相田君」

学校に登校した蔵馬とレイは、トウジとケンスケに挨拶した。

「おはよう、蔵馬、綾波……」

「おはようさん、センセ、綾波」

二人はなにか機嫌が悪そうだった。

「どうした、二人とも?」

「いや、昨日ゲーセンで凄い美人と会ったんだけど……。」

「顔が良~ても性格が悪いで、あの外人……。

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・。

始業チャイムが鳴り、教室に担任教師が入ってきた。

「今日は、転校生を紹介します」

入ってきた朱金の髪の美少女。彼女を見た、トウジとケンスケは呆然としていた。昨日、二人が会ったのは彼女だったのだ。

「惣流・アスカ・ラングレーです。よろしく!」

輝かしい笑顔で彼女は自己紹介した。
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