ことしのはじめまでこの名前を・・・

こんなに大事に・・・

思う様になるなんて・・・

想像もしなかった・・・

だけど・・・

その名の少女には・・・

もう二度と・・・

"会えない"
~the fox and the grapes~
"あの少女"
神陰るな
「ありがとうございました」

店員の声・・・

今、俺の手の中には・・・

肉まんが2つある・・・

"あの少女"が好きだった肉まんが2つ・・・

季節は春・・・・

普通、こんな季節に肉まんなんて買わない・・・

俺は、その肉まんを大事に持っている

さすがに暑いが、気にならない

「祐一さん」

背後から声が聞こえた

「何だ、美汐か」

「今日もいいお日柄ですね」

「あぁ、そうだな、"あたたかい"良い日だ」

「今日も肉まん買ったんですね」

「あぁ、"あの日"から毎日買っている」

「俺の日課になってるな」

「そうですか・・・」

美汐がちょっとくらい顔をする

「大丈夫だよ、約束は守る」

「肉まんを買うのは、"あいつ"の事を忘れてしまわない様に」

「"あいつ"のことを忘れたくないから買うんだ」

「はい」

美汐に笑顔が戻った

「やっぱり祐一さんは祐一さんですね、いつも元気です。」

「あぁ、元気だけが取り柄だからな」

「それを言うなら美汐も美汐だ」

「何故です?」

「おばさんくさい」

「失礼な!!物腰が上品といってください。」

・・・・・

その後他愛もない話をしながら帰った



「ただいま」

「おかえり~、また肉まん買ってきたの?」

「あぁ」

あいまいな返事をして、俺は2階へあがった

俺は自分の部屋へは入らずに

俺は"あの少女"の部屋へ入る

"あの少女"の部屋・・・


「にゃ~」

ぴろの声

あの少女が連れてきた猫・・・

ぴろがこの家に帰ってから

ここはほとんどぴろの部屋になってしまった

だけど俺にとっては"あの少女"の部屋

適当なところに座り肉まんを食べ始める

その横にぴろが来る

肉まんをちぎって皿の上に置いてやる

いつもの光景だ

"あの日"・・・

"あの少女が消え、ぴろが帰ってきた日"から

これが俺の日課になっている

"あの少女"の部屋で・・・

"あの少女"が連れてきた猫と一緒に・・・

"あの少女"の好きだった肉まんを食べる・・・

"あの少女"にはもう"会えない"・・・

もう2度と"会えない"・・・

もう2度と・・・

だけどこうしていると・・・

すぐ隣にいる様な気がする・・・

すぐ隣に・・・

そう、"あの少女"が・・・

"あの少女"・・・

沢渡真琴が・・・

すぐ隣に居る様な気がする・・・

真琴が・・・


おわり
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