本当にどんなお願いでもいいの?


あゆ・・・・・


 ああ、もちろんだ。


あゆ・・・・・


 本当にほんと?


あゆ・・・・・


 本当にほんとだ。


あゆ・・・・・


 本当に本当にほんと?


あゆ・・・・・


 本当に本当にほんとだ。


あゆ・・・・・


 だったら・・・


あゆ・・・・・


 ボクの・・・ お願いは・・・
あゆの居ない日常
第一話
るる~
「名雪、俺は先帰るから。」
俺は、席を立って歩き出す。
「うん。じゃあね。祐一。」
「じゃあ、また明日な。」
ちょっとからかってみる。
「明日じゃないよ~、家で会うよ~」
名雪の言葉を無視して、俺は昇降口へ向かう。
靴を履き変えて外へ。
「・・・ん? ・・・・・雨か?」
空を見上げる。
「天気予報では、降るのは夜からって言ってたのに。」
そう、雪ではなく雨。
あれから一ヶ月。
季節は変わり始めていた。
「・・・・仕方が無い。近くで傘を買って帰るか。」
誰に言うでも無く、ポツリと呟く。
そして、ため息をついたあと、まだ雪の残る道を走り出した。







とりあえず、一番近い商店街でビニール傘を買った。
「そういえば、前にもこんなことあったな。」
空を見上げ呟く。
今は雨。
あの時は、雪。
そして・・・・
「あゆに、襲われたんだっけ。」
苦笑しながら呟く。
「・・・・まあ、これで帰れるな。」
俺は、傘を差して歩き出す。
「祐一君!」
「え!」

・・・・・・・あゆ!?

不意に、背後から名前を呼ばれ、あゆの事が頭をよぎる。
俺は、驚いて振り返る。
「あれ? 驚かしちゃったかな?」
声を掛けてきたのは、クラスメートの女の子だった。

確か名前は・・・・・・森崎友美・・・・・・・

うだよな・・・・・あゆは・・・・・もう・・・・・

「どうしたの? 変な顔して?」
友美が、不思議そうに尋ねる。
「いや、この顔は生まれつきなんだ」
何時ものように答える。
「あははっ、そうなんだ~。」
「あぁ、いつもは気を張って普通に見せてるけどな。」
平静を装う。
「ねえ、名雪は一緒じゃないの?」
友美にさらりと流される。
「・・・用事があるとか言ってたから、まだ学校に居るはずだけど? でも、何で俺に聞くんだ? 香里とかに聞けば良いじゃねーか?」
「祐一君、何時も名雪一緒に居るからわかると思っていたんだけどね。そうなんだ。残念。今日部活休みって言ってたから、遊ぼうと思ってたのに~。」
「じゃあ、俺帰るから」
「あ、うん。じゃあね。」
友美と別れ、雨の強くなってきた商店街を歩き出た。








友美は祐一と別れしばらく自宅への道を歩いたていた。
「祐一君誘えば良かったかな? 最近悲しそうだし・・・・・」
友美はポツリと呟いた。








俺は少し歩いた所で、足を止める。
そして、商店街を見渡す。
友美の姿はもう無い。
足元を見る。
雨は少しづつ雪を溶かし始めていた。

・・・・・・なんか・・・違和感あるよな・・・・・・

街は姿を変えていく。
白一色だった景色。
その色彩を取り戻していく。
それは・・・・
俺の記憶に無い姿だった。
変わりゆく街。
同じ様に・・・・
この景色の様に・・・・・
変わりゆくのだろうか・・・・・・
この思いも・・・・・
いつか、変わりゆくのだろうか・・・・・










「ただいま。」
そう言って、リビングへ入る。
「おかえりなさい。」
「おかえり。」
秋子さんと名雪が言う。
「あれ? 用事もう終わったのか?」
用事があると言って残っていた名雪が先に帰宅していたのでそう言った。
「うん。私もいま帰ったところだよ、祐一。」
「そうか。そういえば、クラスメートがお前を探してたぞ。」
「え、誰が?」
「え~と、森崎さんだったかな・・・? 確か・・・・ 自信が無い。」
「祐一・・・まだ、名前覚えてない人が居るの?」
「ふ。二十四時間以内に人の顔を忘れるのが特技だからな、俺は。」
「まあ、変わった特技ですね。」
「・・・・・」
秋子さんにそう言われ何も言えなくなってしまった。
「じゃあ、そろそろ食事の用意しようかしら」
「あ、私も手伝うよ」
そう言って、二人は台所に入る。







いつもと同じ・・・
変わらない日常・・・





あれから一月・・・
あゆが居なくなってから一月・・・





・・・・・俺は。
・・・・・・あの出来事が幻であったかのように。
それまでと同じ日常に居た・・・・・・・・









夕食が終わり部屋に戻る。
別途に倒れこむ。
そして・・・・・・思い出す。







7年前の記憶・・・・



二人だけの学校・・・・



・・・・あゆ・・・・



・・・・赤い雪・・・・



・・・・俺は・・・・



・・・・思い出さなければ・・・・良かったのか・・・・



・・・・名前を呼ぶことすら・・・・できなかった・・・・



・・・・思い出さなければ・・・・あゆは・・・・



・・・・ただ・・・・その手を握る事しかできなかった・・・・



・・・・あゆは・・・・今でもここに・・・・



『・・・うん、約束・・・だよ』








「・・・・やめよう。考えても・・・・仕方が無い。」

そう・・・・考えても意味は無い。
全ては・・・・七年前の出来事なのだから・・・・
そして・・・・俺は、この日常を・・・・
あゆの居ない、この日常をゆくのだから・・・・・







おわり
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