銃弾が本当に体を貫いたわけではない、その直前だ。
ゲンドウの狙いは完璧で、シンジとマナ、それぞれの顔の頬を銃弾は掠めていた。

シンジとマナは、夢が現実となった恐怖、撃たれたという事実、などで膝が崩れ、倒れてしまったのだった。

それでも銃弾が掠めただけあって、二人の頬からは血が流れ出ていた。

「聞こう、お前達にエヴァに乗る気はあるのか?」

拳銃を倒れた二人に向けたまま、ゲンドウは椅子から立ちあがった。
拳銃のトリガーには右手の人差し指がかけられており、次の銃弾を発射することは容易にできる。

「エヴァに乗る気・・・・だと?」

倒れていたシンジは、何とか四つんばいの体勢になり、ゲンドウに顔を向けた。
歯を食いしばり、ゲンドウに「怒り」を込めた視線を送るのだが、何らゲンドウの表情に変化はない。

「ふざけるなよ!!乗る気なんてあるわけないじゃないか!!父さんが強制したことだろ!!」

シンジは立ちあがり、ゲンドウに怒鳴りつける。
恐怖心はあるのだが、ゲンドウの発言が気に入らなかったのだろう、怒りの方が恐怖を超えてしまった。

「その発言は間違いだ。何時私がお前を強制した?「エヴァに乗れ」とは言ったがお前を無理矢理乗せた覚えはない」

ゲンドウはシンジの発言の間違いを言いつつ、銃口を未だ倒れているマナに向けた。

「やめろ!!」

シンジは止めさせようと、ゲンドウに向かって一歩足を踏み出したが既に遅し、

バン!!

再び銃声が司令室の中に響いた。

 

 


ヒネクレタ少年?

第2章 〜敵の集団の中に放り込まれた状態?〜


第11話「帰れ」

 

「あう゛っ・・・・」

銃弾は倒れていたマナの左腕を掠めた、外れたのではなくゲンドウの狙い通りだ。
マナは倒れたまま状態を横に向け、右手で銃弾が掠め、血が流れ出ている部分を押さえた。

「マナ!!」

ゲンドウの方に向かっていたシンジだが、進路をマナの方へと変えた。
マナをゲンドウから守るように、シンジは仁王立ちをした。

「どうしたシンジ、そんな小娘の一人がそんなに大事か?」

ゲンドウは冷たい視線に冷たい言葉をシンジに浴びせる。

「そんな小娘・・・・だと?それは父さんにとってはだろ!!僕には大切な人だ!!」
「くだらん・・・・お前には失望した」
「何が失望だ!!初めから期待もしてないくせに何を!!」

これ以上ないくらい冷たく言うゲンドウに対し、シンジは怒鳴り声で返す。
ゲンドウはシンジに銃口を向けるが、シンジは動かなかった。

「もう一度聞こう、お前達にエヴァに乗る気はあるのか?」

「何度聞いても無駄だ・・・・乗る気なんてない、僕もマナも」

きっぱりと言い返すシンジ、しかしゲンドウの反応が全くの予想外だった。

「そうか、では帰れ!お前達など必要ない

エヴァに乗る気のない者は必要ない、目障りなだけ、それがゲンドウにとってのチルドレンだ。

「帰れ・・・・だと?ああ、言われなくても帰らせてもらうよ。こんな場所にはいたくないからね」
「ならば帰れ、もう二度と会うことはないだろうがな」

ゲンドウは椅子に座り、机の上に置かれた電話の受話器を取った。
もうこの時点でシンジとマナを無視している。

「サードチルドレン及びフォースチルドレンは抹消・・・・ああ、そうだ・・・・ああ」

ゲンドウは受話器を置き、いつもの姿勢をとってシンジと倒れているマナの方を向いた。

「お前達のチルドレンとしての特権などはすべて抹消した。お前達はもうただの民間人にすぎない。1時間以内にこの施設から出て行かないと拘束することになる」
「ああ、そうかい。じゃあさっさと帰らせてもらうよ」

シンジは片膝をついて座り、倒れているマナに手を差し出した。

「マナ・・・大丈夫?」
「・・・・・・う、うん・・・・平気」

差し出された手を握り、マナはゆっくりと立ちあがった。
これでもシンジとマナは撃たれているのだ、銃弾が体を貫いていなくても・・・。
シンジは右の頬から、マナは左の頬と左腕から、それぞれ血が流れ出ている。
普通なら手当てをしないといけないが、今はそれを気にすることはできない、気にしている場合ではないのだ。

司令室から出る直前、シンジは振り返った。

「・・・・サヨウナラ、父さん。もう二度と会わないことを望むよ」

それを聞いたゲンドウは、ずれた眼鏡を右手で戻しながら言った。

「・・・・・・お前がそこまで臆病だったとはな。だがお前達がいなくなることで同様の苦しみを味わう者が新たに選ばれるということだ。まあ、何が起ころうとお前達とは無関係だがな・・・」

ゴゴゴゴゴ・・・・・ガシャン

扉が閉まり、強固な壁が二人とゲンドウを切り離した。
これで最後になるはず・・・・・そうならいいのだが・・・・。

 

 

 

「「・・・・・・・・・・・・・・・・」」

第3新東京駅の駅、「新箱根湯本駅」、ホームにはシンジとマナが無言で立っている。
二人とも、持ってきた物は特にない(特にマナは全くない)ので、帰る準備をする必要などはほとんどなかった。
友人にはこのことはあえて話さなかった、トウジにケンスケにヒカリ・・・・話すと別れ辛くなってしまうかもしれないから・・・。
ひっそりと姿を消し、今までの生活に戻る・・・・これが二人の望みだったのかもしれない。
けれども今の生活も、「エヴァ」さえなければ楽しい生活・・・・と、いうことは否定できない。
否定できないどころか楽しいと認めてしまいたいぐらいだ。
エヴァが全ての元凶、エヴァが苦しみと悲しみを運んできた悪魔・・・・。

『政府特別線が間もなく到着いたします。お乗りの方は白い白線の内側までお下がり下さい』

これがネルフからの最後の気遣いだ、これに乗り、目的地に着き降りたら最後・・・本当にネルフとの全ての縁が切れる。

二人の戦いは終わりを告げるはず・・・・。

そして前の学校に戻り、今までの全てを取り戻せるはず・・・・。

だが、その代償としてこの1週間と少しの全てを失う。

 

 

 

『政府特別線、発車します。ホーム内のお客様は白線の内側までお下がり下さい』

 

 

電車は新箱根湯本駅を発車し、遥かかなたへと走り去って行った・・・・。

 

 

 

 

続く

 


あとがき

うん・・・・どんどん短くなってる(←おい!!)

これからどうなる!?

 

次回・第12話「すべてを失った少年と少女」

シンジとマナが前の場所に戻ると・・・・


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